第136話
「ナイトレイドッ!!」
「ダークプロミネンスッ!!」
ヴェノムと同時に砲撃を打ち出す、だがバロンに届く前に
「「ッギャアアアアッ!!!」
頭と翼は鳥、胴体は獣に尻尾はヘビのネクロがその砲撃の前に飛び出しバロンを庇う、これで17体目だが、空にはまだ何十体も飛び交っている、バロンはその手に灼熱の鞭を持ち、地面を打ち据えるそれと同時に空から、4体のネクロが舞い降り私達を睨む・・バロンは鞭を振るいながら
「中々粘るな、我が配下のグリュプスをここまで屠るとは・・だが・・最後まで持つかな?やれっ!!グリュプス!」
バロンが鞭で叩くと4体のグリュプスは口を開き
「「「「スーパーソニックボイスッ!!!」」」」
超音波を発してくる
「くっ!!」
私は地面を転がり、ヴェノムはマントで防ごうとするが、反応が遅れ弾き飛ばされる
「大丈夫か?」
吹っ飛んできたヴェノムを受け止めながら尋ねると、ヴェノムは
「大丈夫に見えます?・・もうそうなら貴方の目は節穴ですね?」
憎まれ口を叩くヴェノム、傷は大した事が無いのだが明らかに消耗している・・私は
「どうする?何か手はあるか?」
そう尋ねるとヴェノムは
「無い訳ではないんですけどね・・ただこれをするともう戦えないですよ?私も貴方も・・グリュプスは全滅させれてもバロンまで手が回りません」
それは不味い、バロンとグリュプス両方倒せなくては意味が無い・・私がどうしようかと考えていると、クラナガンを覆っていた雲が晴れ、そこから神々しいまでの魔力と騎士甲冑を身に纏った龍也が現れる・・その姿は正しく神としか言い様がなかった・・
「むっ・・馬鹿な・・我が神と同等の魔力だと?・・ちっ・・戻るとするか」
バロンが地面を叩くと黒い門が展開されそこから、無数のグリュプスが現れる、その数・・役200体、その内の1体の背中に乗ったバロンは
「私自ら手を下すまでもない、消耗した貴様らなどグリュプスだけで充分、精々足掻くんだな」
バロンはそう言うと龍也とヴェルガディオスのいる方向へと飛んでいった・・
「待て・・「ゴアアアアッ!!!」くっ!!邪魔だ!!」
ダークプロミネンスを放とうとする前にグリュプスに妨害され、バロンを逃がしてしまう、それと同時に空にいたグュプス達が降下して来て私達を取り囲む、私はヴェノムと背中合わせに立ちながら
「それで・・さっき言ってた手だが・・直ぐ出来るのか?」
そう尋ねるとヴェノムは
「今すぐにでも可能ですよ、どうします?やりますか?」
龍也にだけ負担を掛けさせるのは嫌だが、そうも言ってられない・・今はこの状況を打破しなくては・・私は
「頼む!」
私がそう言うとヴェノムは私の肩に手を起き
「それではやるとしますか・・」
そう言うとヴェノムは粒子となり騎士甲冑に吸収されていく
「なっ!?」
突然の事に驚いていると、脳裏にヴェノムの声が響き
(何を驚く事が?私は貴方に吸収されてるんですよ?強いて言えばこの状態が正しいんです、まぁ具現化も出来るんですけど・・疲れるんですよ、だから貴方に頑張ってもらうんですよ、大丈夫ちゃんと力は貸しますから)
ヴェノムの声が聞こえなくなるとカオスが漆黒の光を放ち、姿を変えていく・・赤い翼に暗い青の装甲・・両肩のキャノン砲を持つ姿に・・私は割れた窓ガラスに映ったその姿を見て
「・・悪魔にしか見えないのだが?」
その姿は正しく悪魔・・私がそう呟くとヴェノムは
(まぁ、私は闇属性ですし、このような姿になるのは我慢してください、力とかは上がってますから、ほら!右後方突っ込んできますよ!!)
ヴェノムの忠告通り突っ込んでくるグリュプスを回避し、そのまま
「デスクローッ!!!」
魔力を込めた左腕の爪でグリュプスを引き裂き、消滅させる・・一撃で消滅していくグリュプスを見て
「確かに能力は上がってるようだな・・やれやれ・・この際贅沢は言わん、早く片付けるとするか」
私はそう呟きグリュプス達へと向かって行った・・
一部が荒野と化した森の上で剣を持った騎士が2人・・お互いに交差した状態で停止していたがぽつりとヘルズが
「・・どうして・・剣を止めたのですか?」
私がそう尋ねるとルシルファーは
「お・・俺には・・で・・出来なかった・・に・・兄さんに・・止めをさ・・刺す事が・・」
切り裂かれた甲冑から血を流しながら言う、ルシルファーを抱き抱える
「馬鹿な・・私は望んでいたのですよ・・貴方に止めを刺される事を・・」
誰でもない、ルシルファーに私の人生の幕を引いてもらいたかったのに・・私がそう言うとルシルファーは震える手で私の仮面に手を触れ
「最後の時・・色んな事を思い出した・・兄さんに料理を作って貰った事・・兄さんに修行をつけて貰った事・・楽しい事だけじゃなかった・・でも幸せな時間の思い出を・・それを思い出したら・・俺は剣を振れなかった・・んだ・・」
そう言うと力なくルシルファーの腕が落ちる、慌てて脈を図ると弱々しいが脈はまだあった・・
「生きてる・・」
一安心しルシルファーを地面に降ろすと同時に、クラナガンの方向から凄まじい虹色の魔力の柱が立った
「まさか・・ジオガディス様が・・?・・うっ・・なん・・何だ・・ち・・力が・・」
凄まじい勢いで魔力が消えて行く・・鎧も変化する前の騎士甲冑へと変化する
「これは・・?・・どういう・・げほっ・・げほっ・・何が・・起きてるのですか・・?」
この時クラナガンではヴェルガディオスが復活していた、それに伴いヴェルガディオスの力で強化されていた、ヘルズも元の姿に戻ったのだ・・王国が滅び、戦いの後の傷付いた姿に・・
「ぐるおおお・・」
「ああああ・・・」
「見つけたああ・」
デクス、ネクロが姿を見せる・・私は剣を鞘に収め
「退きなさい、決着はついています」
ほっておいてもルシルファーは死ぬ、だから退けと言うとネクロの1体がその命令を無視して、ルシルファーに襲い掛かる
「なっ・・」
反射的に剣を振るい、ネクロを吹き飛ばし
「私の命令が聞けないのですか!」
私がそう怒鳴るとLV3が
「人間の言う事など聞くか・・俺達はお前と目障りな剣帝を消しに来たんだ」
耳障りな笑い声を挙げるLV3・・私は背中の鞘から剣を抜きながら
(そうですか・・私は人間に戻ったと・・何が起きてるかは判りませんが・・人間に戻ったと言うのなら)
残り少ない魔力を剣と全身に張り巡らせ
「やらせません!!・・私の弟には指1本触れさせませんよ」
人間なら・・兄ならば・・弟を護る義務がある・・気絶しているルシルファーの前に立ち言うと
「そんなボロボロで俺達に勝てると思ってるのか?」
騎士甲冑はひび割れその役割を果たさず、魔力もほぼゼロ・・だが
「貴方達は知らないのですか?・・護りたい者がある人間の力を・・見せてあげましょう!!人間の本当の力を!!
ふふ・・おかしなものです・・さっきまでは私も奪う側だったのに・・今更・・何かを護ろうなんて・・でも・・失いたくない・・護ってみせる・・ただ1人の血縁者であるルシルファーを・・
「地獄の道化師カイエルの最後の舞台です!!血と破壊に満ちた愚かな道化の最後の希望・・奪える物なら奪って見せなさいッ!」
私はそう言うと同時に駆け出した・・大切な者を護る為に・・
「ナイトレイドォッ!!!」
合わせた両手から蝙蝠を伴った砲撃を放つ、それは上空にいたグリュプスを飲み込み消滅させる・・
「はぁ・・はぁ・・これは・・魔力の消費が激しいね・・」
肩で息をしながら向かって来るグリュプスを殴り飛ばすと、ヴェノムは
(まぁ、普通の人間が私の力を使おうと言うのが無理なんですよね、急がないと強制解除されますよ?)
楽しげな口調のヴェノムに少し怒りを覚えながら
「ええい、判っている!!もう少しで終わりだ!!!」
残っているグリュプスもあと僅か、私は最後のカートリッジを使い魔力を増大させ
「これで止めだぁッ!!!」
ガバアッ!!!
音を立てて両肩の砲門が開き魔力が収束していく
「地獄の業火で燃え尽きろォッ!!ハウリング・・ブラッドォッ!!!」
ゴウッ!!!
残された魔力全てを注ぎ込んだ、赤黒い砲撃はバロンが呼び出したグリュプスを全て飲み込み消滅させたが、私の体力と魔力を全て持っていった・・
「はぁ・・はぁ・・き・・きつい・・」
指1本動かす事さえきつい・・私は地面に仰向けになりながらそう言うと
(いやいや、驚きですよ・・ネクロの魔力を使ってその程度の消耗とは・・どういう体の構造をしてるのか調べてみたいですねえ?)
楽しげな口調のヴェノムに
「黙れ・・マッドサイエンティスト」
そう言うとヴェノムは
(はいはい、判りましたよ・・今は黙りましょう、今はね?・・それじゃ貴方はここで守護者の勝利でも祈ってて上げて下さい・・私は疲れたので引っ込みますよ・・貴方の魂の奥底にね?では、シーユーアゲイン)
そう言うとヴェノムの気配は完全に消えた、奴の言うとおりなら私の魂の奥底とやらで休むのだろう・・上空では時折魔力が花火の様に光を発している・・私はそれを見ながら
「負けるなよ、龍也・・これ以上私の娘を泣かせたら唯じゃおかないからな・・」
そう呟き、意識を失った・・だが私は確信していた・・龍也は必ず勝つと・・そしてはやて君達の所に戻ってくると・・
「うっ・・お・・俺は・・?」
身体の痛みで目を覚ました俺は疑問を感じた
「なんで俺は生きてるんだ?・・ヘルズは俺に止めを刺さなかったのか?」
疑問を感じながら身体を起こした俺は目を見開いた・・そこには
「へ・・ヘルズ!?」
ヘルズ・・いや・・兄さんが剣を杖代わりにして立っていた・・その回りには剣に切り裂かれたネクロの姿や剣で木に磔にされたネクロの姿があった・・俺が驚いていると兄さんが振り返って
「よ・・良かった・・意識を・・取り戻したのですね?」
その顔に邪気はなく生前の優しい兄の笑みがあった・・だがそれは一瞬で消え、ぐらりと倒れる兄さんを慌て抱き止めると兄さんは、俺の腕の中で
「ルシルファー・・私は間違ってたんでしょうね・・復讐や過去に囚われて・・今思えば・・何と愚かな事をしたのでしょう・・あの時・・私はジオガディス様を止めるべきだったのです・・」
ぽつりと呟き続ける兄さん・・だが俺は気づいてしまった・・徐々に兄さんの体が冷たくなって行く事に
「今、回復魔法を・・」
補助系は余り得意ではないが、応急処置くらいなら・・俺が回復魔法を発動させようとするとそれは空中に霧散し消えてしまった・・
「ど・・どうして?」
俺が驚いていると兄さんが
「忘れたのですか・・?・・ネクロには回復魔法は使えないんですよ?・・死者は癒す事が出来ないんです」
穏やかに微笑む兄さんに
「駄目だ・・死んだら駄目だ・・俺はまだ・・兄さんに教えて欲しい事が沢山あるんだ・・だから死なないで・・」
俺がそう言うと兄さんは
「ルシルファー・・貴方はもう私を越えてますよ・・私が教える事なんて何も無いんです・・何時までも私の後を追う必要は無いんですよ・・貴方には貴方の進むべき道がある・・そうでしょう?・・それに私にはもう思い残す事も無いですしね・・」
兄さんはそう言うと震える手で自分の背中の鞘から剣を抜いて
「これを・・貴方に・・父さんの剣です・・私よりも貴方に相応しいでしょう・・」
美しい装飾が施された銀色の柄を持ったその剣は、確かに父さんの剣だった・・銘は確か・・反逆者の意を持つ魔剣リベリオン・・俺達の一族は聖王ではなく聖魔王の家系に仕えるもの・・あの時代で考えれば俺達は反逆者でしかない。だが反逆者の汚名を受けてもなお誇り高い騎士であれ・・父は生前そう言っていた・・そしてこの剣は現当主のみが持つ事を許される宝剣だ・。俺がそれを受け取ると兄さんは
「ふふふ・・弟の腕の中で死ぬんですか・・何とも変な気分ですよ・・でも何故でしょうね・・少し嬉しいと思いますよ・・ルシルファー・・私の分まで・・し・・幸せに生きてください・・ね」
ダラリ・・
力なく兄さんの腕が地面に落ちる
「兄さん・・?兄さんッ!・・にい・・さん・・」
揺するが反応が無い・・当然だ・・死者が目を覚ますことなど無いのだから・・暫くそのままで居たが・・兄さんの体はネクロと同様粒子なり消滅し始めていた・・俺は兄さんの姿が消えるまで抱きしめていた・・折角元に戻ったのに・・直ぐに別れなんて・・酷過ぎる・・これが運命だというのなら・・何と酷い運命だろう・・俺はゆっくりと立ち上がり
「兄さん・・俺は兄さんの分まで生きるよ・・だから・・見守っていてくれ・・俺の進む道を・・」
兄さんに貰った剣を腰の鞘に仕舞い、俺は木々の間を睨み
「何時まで見てるつもりだ・・いい加減に出て来い」
俺が吐き捨てる様にいうと無数のネクロ達が姿を見せる、俺はネクロ達を睨み
「俺は今機嫌が悪いんだ・・悪いが・・憂さ晴らしをさせて貰おうか!!」
俺はそう言うと右手に王龍剣、左手にリベリオンを構え駆け出した・・俺と兄さんの運命を変えたこいつ等を一匹残らず駆逐する為に・・
私がヴェルガディオスと対峙していると
「お下がりくだされ、我が神よ」
今まで戦いを見ていただけのダンテがそう言うと、私の前に移動し
「ほっほ・・人形がこれ以上、我が神に遊んで貰えると思うなよ?・・ここから先はワシとこいつらが相手じゃ」
ダンテが手に持った杖を振るうと、空間が裂けそこから
「「「「グオオオオッ!!」」」」
闇色の身体に鋭い鉤爪を持った1つ目の異形が無数に姿を見せる、ダンテはその後ろに移動し
「ワシの名はダンテ、堕天使ガイウスをその配下に置く、最古のネクロの1柱じゃ・・貴様の命運はここまでじゃ、ワシとガイウス達が貴様の命を刈り取ってくれようぞ」
ダンテがそう言っていると下の方から
「ちょっと待った!その戦い私も交ぜて貰おうか・・」
最初に街に降下して行ったネクロがグリフォンの様なネクロの背中に乗って現れる
「私の名はバロン、魔獣グリュプスを配下に置く者だ、貴様の首・・私達が貰い受ける」
バロンが手に持った鞭を振るいながら言うとダンテは
「行くぞ、バロン、目障りな人形を消すぞ」
「ああ・・」
バロンは鞭を、ダンテは杖を私にむけ
「「掛かれぇッ!!!」」
そう指示を出した、それと同時にガイウスとグリュプスが襲ってくる・・私は襲ってくるガイウスとグリュプスを見ながら
「行くとするか・・」
私はグランドホープを構え、ガイウスとグリュプスの方へと向かって行った・・見せてやろう・・私の・・いや・・皆の力を・・
第137話に続く