夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第138話

 

第138話

 

(強い・・なんという強さだ・・我と同等かそれ以上だ・・)

 

我は人形いや・・神王とカオスの戦いを見ながら、そんな事を考えていた・・

 

キンッ!!キンッ!!!

 

高速でお互いの獲物をぶつけ合う、神王とカオス・・速さは同程度で、力ではカオス、防御力では神王だろう・・だがそれでも、カオスが有利に立てないのは神王・・八神龍也の恐るべき反射神経と戦闘経験からだろう、どんな体制からでの反撃も即座に反応に防ぐ、そして即座に反撃している・・カオスは決して弱くない、弱い筈が無いのだ

 

(我に逆らった者を洗脳し、その魂をネクロの中に封じ込めたのだぞ・・戦闘力では無敵のはずなんだ・・何故・・押し負ける?)

 

カオスが徐々に押され始める、これが納得行かない、カオスは様々な世界で我に逆らった者の魂をネクロの器に押し込め作り上げた、存在だ・・強さで言えばダンテ、バロンより遥かに上の筈なのだが・・

 

(まさか!・・自意識を取り戻しかけているのか?)

 

考えられるのはそれだった、自分の意識を取り戻しかけているから動きが鈍い・・それは考えられる可能性の1つだ・・それと同時に我は恐れた、1000年間、完全なる操り人形と化していたカオスの精神を解き放とうとする神王・・いや・・夜天の守護者・・八神龍也と言う男に恐れを感じた・・それは神を自負する我にとって初めての体験だった・・

 

 

 

悲しい剣だ・・私はカオスと剣を交えながらそんな事を考えていた・・カオスの剣には悲しみと絶望しかない・・

 

(早く解放してやらなければ・・)

 

カオスの中には複数の人格がある・・それは剣を交えて感じ取った事だ・・恐らく魂をあの器の中に封じられた騎士達・・その人達の絶望と悲しみがカオスの剣に宿っているのだ・・私がそんな事を考えていると

 

「グルル・・ウオオオオッ!!!」

 

カオスが強烈な勢いで身体を回転させながら、唐竹切りに斬り掛かってくる

 

「くっ!!」

 

上段からの強烈な打ち込みを受け止めると同時に

 

「ガアアアアッ!!!」

 

尻尾による薙ぎ払いが私の胴目掛けて放たれる

 

「ぐっ・・」

 

防御したが衝撃まで殺せず後方に向かって弾き飛ばされる、カオスは吹っ飛んでいく私目掛けて

 

「くオオオオッ!!!」

 

魔力を龍の形に変化させて打ち込んでくる

 

「このくらい!」

 

何とか体勢を立て直し、魔力刃を飛ばして向かって来る魔力波と相殺させ

 

「はあああッ!!!」

 

フラッシュムーブでカオスの懐に飛び込み、グランドホープを振るう

 

「!!」

 

私の速さに反応できなかったのか直撃を喰らい吹っ飛ぶカオス・・だが直ぐに体勢を立て直し

 

「ガアアアアアッ!!!」

 

雄叫びと共に斬りかかって来る

 

「はああああッ!!!」

 

私も気合と共にグランドホープを振るう

 

ガキーンッ!!!!!

 

クラナガンの上空に凄まじい金属音が響き渡る

 

「ぐぐ・・」

 

「オオオオッ・・」

 

お互いに渾身の力で鍔迫り合いをしながら、カオスの隙を探していると

 

「・・・・」

 

悲しげな色を瞳に浮かべ私を見ているカオスと目が合う・・その目に先程までの狂気は無く、まるで助けてくれと言っている様に見えた・・だがそれは直ぐに消え再び狂気を宿した赤い光りがその瞳に宿り

 

「グオオオオッ!!!!」

 

雄叫びと共に剣を振るい私を吹っ飛ばす、カオス・・私は少し距離を取りながらさっきの目の色を思い出し

 

(やはり・・自意識はあるんだな・・憐れな・・今・・解放してやるからな・・)

 

さっきので確信したカオスには自意識があると、だがヴェルガディオスの魔力で無理やり戦わせられていると・・

 

「カオス・・いや・・名も知らぬ騎士よ・・その誇り高き魂・・今その呪縛から解き放ってやる!!」

 

グランドホープの切っ先を向けながら言うとカオスは

 

「グオオオオオッ!!!!」

 

凄まじい雄叫びを上げ向かって来る・・私はそれに合わせて向かって行った・・カオスと言う器の中に閉じ込められた者達を解放する為に・・

 

 

 

判るのか・・俺はそんな事を考えながら剣を振るっていた・・目の前に居る若い騎士はこう言った・・

 

「カオス・・いや・・名も知らぬ騎士よ・・その誇り高き魂・・今その呪縛から解き放ってやる!!」

 

あの騎士は俺という存在に気付いてくれた・・俺はその事が嬉しかった・・俺・・いや・・俺達は過去や平行世界でヴェルガディオスに逆らった者・・人間や獣人・・様々な者達がこのカオスと言う器の中でその意識を結合させ、俺という人格を作り上げた・・だが・・それに何の意味がある・・?

 

「ガアアアアッ!!!」

 

踏み込み袈裟切りにフラガラッハを振り下ろす・・

 

「くっ・・」

 

ギャリギャリ・・・

 

美しいまでの光沢を放つ剣で受け流す、若い騎士はそのまま流れるように体勢を立て直し

 

「はあッ!!!」

 

俺の胴を穿つ・・凄まじいまでの技量だ・・防御と攻撃が直結している・・俺は感心しそしてこう感じた・・

 

(こんな体で無ければ楽しい戦いなのに・・)

 

こんな異形の身体ではなく・・こんな破壊しか考える事の出来ない思考ではなく・・俺としてこの騎士と剣を交えられたらどんなに素晴らしいだろうか・・だがそれは叶わぬ願い・・あの時ヴェルガディオスに敗れた俺に与えられた罰なのだろう・・俺は過去のまだ生身の人間であったときの事を思い出していた・・といっても完全に覚えているのではなく断片的に覚えているだけなのだが・・俺はかつて龍騎士としてある国の守護騎士団長まで登りつめた・・俺の国には「4大龍の試練」と言う物があり、龍騎士だけがそれを受けることが出来る・・

そしてそれを修了できた者だけがこの鎧とフラガラッハを授かる事が出来る・・俺はフラガラッハを手にしたとき、絶対にこの国を最後まで護りきって見せると誓った・・身寄りの無い俺を騎士として取り立てくれた王に応える為に・・しかしそれは果たされる事は無かったのだ・・俺がフラガラッハを手にして数年後、俺達の世界にヴェルガディオスが現れた・・俺達は戦った・・だがある者は殺され、ある者はネクロと化した・・俺達の国は僅か半年で消滅した・・そして最後に生き残った俺はやつに

 

「くっくっく・・中々の強者だ・・このまま殺してしまうのは惜しい・・その力・・我の為に振るって貰おうか・・?」

 

「止めろ・・止めろッ!!!・・止めろオオオオオッ!!!!!!」

 

こうして俺はカオスを形作る物の基礎とされた、カオスの身体は4大龍の力が込められた、神秘の鎧をベースに・・その武器は神剣、フラガッラハ・・そして戦う為の技能は俺や俺と同じ様に魂を封じられた者達の物・・こうして俺・・カオスは生まれた・・それから何度も呼び出され破壊と殺戮を繰り返した・・もう止めろ・・こんな事はしたくない・・何度心の中で叫ぼうと身体は言う事を聞かない・・ヴェルガディオスの命令に従うだけ・・だが・・それももうじき終る・・

 

「はあああッ!!!」

 

ズバアアッ!!!

 

「ッギャアアアアアッ!!!!」

 

背中の翼と尻尾は切り飛ばされる・・俺の身体・・カオスはもうボロボロだった・・あの騎士は強く闘争本能と殺戮衝動しかない俺の身体を確実に破壊してくれていた・・

 

(もう・・終る・・俺達の苦しい時間が・・)

 

俺の中にいる者達が歓喜する・・もう終る・・漸く解放されると・・だが・・身体はまだヴェルガディオスの命令に従いあの騎士を殺そうとする

 

「・・がふ・・ガフッ・・グオオオオオッ!!!!」

 

残された力を振り絞り、凄まじい速度で騎士の懐まで踏み込み、フラガラッハを巻きつけようとするが・・それより早く

 

「多刃連閃舞(たじんれんせんぶ)ッ!!」

 

騎士が握る大剣が連結刃へと変化し、フラガラッハを弾き飛ばし、何度も俺の身体を斬り付ける

 

「ガフー・・ガフーッ・・」

 

全身を切り裂かれボロボロの俺に騎士はその剣を向け

 

「今、解放してやるッ!!!」

 

上段から振り下ろされた剣が俺を両断する・・俺は自分の意識が消えるのを感じながら、最後の力の絞り騎士に手を伸ばしながら・・

 

「がふ・・ガフーッ・・あ・・あ・・」

 

喋れる声帯を持ち合わせていないカオスの身体では一言喋るのも大変だが・・それでも俺は言いたかった・・

 

「あ・・あ・・あ・・り・・が・・と・・う・・」

 

ありがとう・・名も知らぬ騎士よ・・我が魂を・・解放してくれて・・これで漸く・・俺も逝ける・・皆の下へ・・俺は薄れ行く意識の中・・漸く戦いの中から解放された事に喜びを感じていた・・

 

 

 

私はありがとうと言い消えて行ったカオス、そしてジオガディスの事を考えていた・・

 

(やはりカオスはヴェルガディオスに操られ人形と化していた騎士・・そしてジオガディスもまた良い様に操られ、望まぬ戦いを強いられていた・・)

 

ジオガディスは恐らく、ヴェルガディオスによって間違った情報を植えつけられたのだろう・・そしてカオスは操られ望まぬ破壊と殺戮を強制されていた・・カオスもジオガディスも悪と言うわけではないのだ・・全ての元凶は・・

 

「人の運命を捻じ曲げ、それを操った貴様だ!!ヴェルガディオスッ!!!」

 

離れた所で私とカオスの戦いを見ていたヴェルガディオスにグランドホープを向けながら言うと

 

「人など所詮我の道具、道具をどう扱おうが我の勝手だ・・人形」

 

自分の腕を槍に変化させながら言うヴェルガディオスは私を睨んで

 

「人形には過ぎた力だな・・神である我と同程度の力を使うとは、分をわきまえよ」

 

上から押さえつけるような口調のヴェルガディオスに

 

「貴様が神だと?・・ふざけるな・・人の運命を捻じ曲げ、死者の魂を冒涜した貴様は神などではない!!貴様は唯の化け物だッ!!!」

 

私がそう言うとヴェルガディオスは鼻を鳴らし

 

「ふん、人形側が崇高なる思想を理解出来る訳が無い、神とは絶対なる存在だ、神がすることは全て正しく、それ以外が間違っている・・つまり貴様が悪なのだ、愚かな人形よ・・」

 

どうやら私とこいつの意見は決して交わる事がないようだ・・私は両手でグランドホープを握り

 

「ならば、私が貴様を倒し・・貴様が間違っている事を証明してやろう・・ヴェルガディオスッ!!」

 

全身に魔力を纏いながら言うとヴェルガディオスは

 

「人形が神に勝てるとでも思っているのか?人形は所詮人形・・その事を貴様に教えてやろう」

 

左腕を禍々しい姿をした槍に変化させ言うヴェルガディオス・・

 

「行くぞ・・ヴェルガディオス・・」

 

「来い人形、真なる神が如何なる者か・・その身をもって味わうがいい!!」

 

次の瞬間、私とヴェルガディオスが掻き消え、クラナガンの上空に凄まじい衝撃音が響き渡った・・

 

「ふん・・人形にしては中々だが・・所詮はこの程度か・・」

 

少し距離を取りながら言う、ヴェルガディオスの槍には私の肩の騎士甲冑の一部があった・・だが・・

 

「貴様こそ、神だ何だと言っておきながら、この様か?」

 

私の手の中にはヴェルガディオスの胴体の装甲の一部が握られていた・・それを見たヴェルガディオスは

 

「貴様・・神である我によくも傷を着けてくれたなぁッ!!許さん・・その行い万死に値するぞッ!!」

 

激昂するヴェルガディオスに

 

「ふん、神だ何だと自惚れているからだ・・次はその首を頂く」

 

こういう自惚れの強い奴には挑発が良く効く、それは神だ何だと言っているヴェルガディオスも同じだった・・

 

「己!己ッ!!人形の分際でッ!!!」

 

怒りに身を震わせているヴェルガディオスに右手を向け

 

「来い、3流・・格の違いを教えてやろう」

 

「調子に乗るなよ!!人形の分際でッ!!!」

 

全身に魔力を纏うヴェルガディオス、私も同じ様に魔力を纏い、ほぼ同時に相手に向かって行った・・そして次の瞬間響き渡る金属音・・これが最後の戦いの始まりの合図だった・・

 

第139話に続く

 

 




明日最終話まで投稿するつもりです。それなりに自信作なのでどうか、よろしくお願いします

なお、後書きにて、やりたい事があるのでどうかよろしくお願いします

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