夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第140話

 

 

第140話

 

「1年!?1年も経っているのか!?」

 

ヴェルガディオスとの戦いの次の日、六課で兄ちゃんにパンデモニウムの後から1年経っていると言うと、凄く驚いている兄ちゃんに

 

「どれくらい経ってると思ってたん?」

 

そう尋ねると兄ちゃんは髪を掻きながら

 

「1ヵ月くらいかと・・そういえば・・皆大分変わってるよな・・」

 

兄ちゃんが皆を見ながら、髪型や背・・服装など皆1年前と大分違う・・兄ちゃんは1人納得したという素振りを見せながら

 

「そうか・・そうか・・1年もか・・」

 

こくこくと頷く兄ちゃんにスカリエッティさんが

 

「義手だが・・新調しないと駄目そうか?」

 

そう尋ねられた兄ちゃんは申し訳無さそうに

 

「すまん・・左肩からごっそり持って行かれてるから、今までのじゃ駄目だ・・」

 

前までは肩から接続していたが、今は肩もない・・つまり新調する必要性があるのだ、兄ちゃんが申し訳無さそうに言うと

 

「かまわんさ、どうせ暇だしね・・最高の義手を作ってやるさ」

 

気にするなというスカリエッティさんに兄ちゃんは

 

「すまん、面倒を掛けさせる」

 

そう謝る兄ちゃんにスカリエッティさんは

 

「気にしなくて言いと言っているだろう?親友の間でそう言うのは無しだよ」

 

にっこりと微笑むスカリエッティさんはそう言うと部屋を後にした、このままだと兄ちゃんが義手の事を気にし続けてしまうと思ったのだろう・・こういう所で2人は親友なんだと私は思った・・

 

「所で何時までユニゾンしてるんですか?」

 

なのはちゃんがそう尋ねる、兄ちゃんの髪は銀髪、その瞳は蒼銀・・ユニゾンしている証だ・・だからユニゾンを解除したらどうだと言うと、兄ちゃんは少し寂しそうな素振りを見せ

 

「ユニゾンは・・解除できない」

 

そう呟く兄ちゃんにフェイトちゃんが

 

「解除できない?・・どういう事?」

 

そう尋ねられた兄ちゃんは理由を説明し始めた・・

 

「私はあの時パンデモニウムの中で1度死んだ・・これは間違いのない事だ・・だが・・それを良しとしなかったセレスは私の身体に取り込まれる形でユニゾンをして、私を蘇生させた・・つまり・・このユニゾンは2度と解除できない・・」

 

そこまでしてまで兄ちゃんに生きていて欲しかったのか・・セレスさんは・・もしかするとセレスさんは兄ちゃんのことが好きだったのかもしれない・・だからそこまで出来たのかもしれない・・私がそんな事を考えていると

 

「取り込み中だったか?」

 

クロノ君が部屋に入ってくるなりそう尋ねてくる、私が

 

「ううん、今話が終わったところ・・何のよう?」

 

そう尋ねるとクロノ君は

 

「レジアス中将と3提督が龍也を呼んでる、だから僕が迎えに来たんだ」

 

そう言うクロノ君に兄ちゃんが頷き

 

「判った、直ぐに準備する」

 

「そんなに急がなくてもいいぞ?」

 

立ち上がりながら言う兄ちゃんにクロノ君がそう言うと兄ちゃんは

 

「待たせるのは好きじゃないんだよ」

 

そう言って部屋を出て行く2人を見ながら私は

 

「さてと話は終わりや、皆書類整理とか仕事があるやろ、早速取り掛かってや」

 

「「了解」」

 

そう言って出て行く皆を見ながら私は懐から辞表を取り出し

 

「こんなもんは・・もう必要ないな・・」

 

辞表をビリビリに破いてゴミ箱に入れ

 

「さーて!仕事仕事!」

 

私はそう言うと書類整理を始めた・・兄ちゃんが居るのだから、管理局を辞める理由は無くなった・・今まで通り頑張って行こうと思いながら・・

 

 

 

「とりあえず、一発殴らせてもらっても良いか?」

 

本局に向かいながら言うと龍也は

 

「構わんが・・自然体で反撃してしまうかもしれない」

 

そう言われ僕は

 

「・・止めて置こう・・龍也の拳を喰らってはもう僕は立ってられないだろう・・」

 

身体能力が違いすぎる為、ここは我慢しよう・・まぁ僕も色々我侭を龍也に聞いて貰っているし・・パンデモニウムの時の事は許してやるか・・そんな事を考えながら車を運転していると

 

「あ、ちょっと停まってくれ」

 

龍也が車を停めてくれと言う、それに頷き車を停めるとそこは有名な洋菓子店の前だった

 

「どうしたんだ?こんな所で?」

 

そう尋ねると龍也は

 

「手ぶらでいくのもなんだろう・・時間があったら何か作ったんだが・・今回はこれで我慢して貰おう・・」

 

そう言って車を降りていく龍也、暫く待っていると

 

「待たせた・・」

 

龍也がケーキの箱を持って戻ってくる、後部座席にその箱を置いて助手席に座る龍也に

 

「何を買ったんだ?」

 

そう尋ねると龍也は

 

「季節のケーキだそうだ、イチゴとほんのり甘いチョコレートのデコレーションの奴だ・・やはり御歳を召しているからな・・あんまり甘いのは良くないと思ったんだ」

 

・・3提督の前ではいえない事だな・・と僕は思いながら本局に向かって車を走らせた・・

 

「龍也、待ってたわよ」

 

執務室に入るなり笑顔で言うミゼット提督に龍也は

 

「お待たせしてすいません、これを買っていたので」

 

ケーキの箱をレオーネ提督に手渡しながら龍也が言うと

 

「ほっほ・・流石龍也気がきくのう・・さっそく頂こうか」

 

にこにこと笑うレオーネ提督をラルゴ提督が制し

 

「食べるのは後だ・・龍也・・いや・・神王・・八神龍也・・お前はこれからどうするつもりだ?」

 

負の神・・ヴェルガディオスが言うには龍也はこの時代の人間ではなく・・過去の人間でヴェルガディオスを倒す為に己の父によりこの時代に送られた人間で、ベルカの直系の王族・・本来なら管理局に居る人間ではない・・だからどうするつもりなのか?と尋ねられた龍也ははっきりと言い切った・・

 

「神王ですか・・確かにそうかもしれません・・でも私はそれ以前に・・「夜天の守護者」であり、家族と大切な仲間の為の盾であり、剣です・・私の進む道は変わりませんよ・・自分の生まれがどうであれね」

 

龍也がそう言うとレオーネ提督は楽しそうに

 

「やはり龍也じゃの、自分の生まれなどに揺らぎはせんか・・わしの見込んだ通りじゃ」

 

「何言ってるの?龍也が管理局を辞めるんじゃ?とか言い出したのはレオーネでしょう?」

 

そう言われたレオーネ提督が苦笑していると、ラルゴ提督が

 

「そうか・・わしらの予想とおりの答えで安心した・・八神龍也大将」

 

そう言われた龍也は一瞬硬直してから

 

「大将・・?・・私は中将ですが?」

 

龍也がそう尋ねるとミゼット提督が

 

「パンデモニウムでの活躍、そしてこの世界を救った功績・・何時までも中将にはしておけないでしょう?・・本当なら私達のうち誰かが引退して、提督の座を譲っても良いのよ?」

 

龍也はとんでもないと肩を竦め

 

「まさか、私などの若輩者に提督の座は重いですよ・・やはり・・貴方方でないと・・ですが・・大将の話は確かに引き受けました、これからも管理局の一員として頑張らせていただきます」

 

そう頭を下げる龍也をレオーネ提督が

 

「うむ、今度盛大に発表しよう・・「夜天の守護者」八神龍也が大将に昇格したとな」

 

「そうね・・パレードなんかやるのもいいわね」

 

愉しそうに話す、三提督から離れた龍也は青い顔をして壁に手を突く、慌てて近寄り

 

「どうしたんだ?」

 

「何・・少し目眩がな・・悪いが私は六課に戻らせてもらうよ・・三提督に宜しく言っておいてくれ・・」

 

フラフラとした足取りで歩いて行く龍也の後姿を見ながら、僕は三提督の話が終わるのを待った・・

 

 

 

 

「ベルカの王族・・私が・・似合わないね全く・・」

 

自嘲気味にそう呟いた。・・この戦いで知った自分という存在・・だがそんな物は私には何の関係も無い・・私は「夜天の守護者」だ・・これは決して変わりようの無い事だ・・必要とされなくなるその時まで・・私は私の護りたい者を者を護り続ける・・唯それだけだ・・そんな事を考えながら自室に戻ると

 

「すぅ・・すぅ・・」

 

私の寝室から、穏やかな寝息が聞こえてくる・・だがはやて達ではなく、子供の物だ・・

 

「ヴィヴィオか・・」

 

寝室に入りベッドで寝ているヴィヴィオの顔を見ながら呟く・・はやてに聞いた所、今はヒルデ魔法学園に通っているらしい・・そして私が絶対帰ってくると言って聞かず、基本1人でこの部屋で待ち続けていたらしい・・私はベッドに腰掛け、ヴィヴィオの髪を撫でながら

 

「すこし・・痩せたな・・」

 

少しだけ痩せているヴィヴィオ・・私が居ない事が大きかったのかもしれない・・そんな事を考えながら頭を撫でていると

 

「う・・ううん・・パ・・パ・・?」

 

ヴィヴィオがうっすらと目を開けぼんやりとした様子で

 

「夢だと・・帰って来てくれてるのに・・何時になったら・・帰ってきてくれるの・・?・・ヴィヴィオ・・寂しいよ・・」

 

夢だと思っているのかそう呟くヴィヴィオ・・私はヴィヴィオの頭を撫でながら

 

「寂しくさせてごめんな・・でも・・私はちゃんと戻ってきたよヴィヴィオ」

 

そう言うとぼんやりとしていたヴィヴィオが

 

「パパ・・?・・本当に本当にパパ・・?夢・・じゃない?」

 

ペタペタと私の顔に手を当てながら言うヴィヴィオを抱え

 

「夢じゃないよ、ただいま・・ヴィヴィオ」

 

抱えながら言うとヴィヴィオはぽろぽろと涙を流しながら

 

「えぐっ・・えぐっ・・お・・おかえり・・なさい・・ヴィヴィオ・・ヴィヴィオ・・いい子で待ってたよ?」

 

涙を流しながらも笑顔で言うヴィヴィオをしっかりと抱きしめ

 

「もう大丈夫・・ヴィヴィオに寂しい思いはもうさせないからな・・さぁ・・おやすみ・・明日一杯お話しよう」

 

私が言い聞かせるようにそう言うとヴィヴィオは私の腕の中に頷き、そのまま眠りに落ちた・・私も疲れていたのでヴィヴィオが苦しくないように気をつけて抱き直し、眠りに落ちた・・

 

 

第141話に続く

 

 


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