第15話
龍也が配属されてから。2日たったが前の食堂での黒化現象は起きていない。どうやら基本的には黒くはならないようだ
「さてと、今日もいい日になるか」
伸びをしてから、いつもの黒コートを着込み。間早自分の部屋になった。管理人の部屋をあとにする。最初のほうこそ女子寮に男が居るなんてと文句を言っていた者が居たが、今ではそれも無く馴染まれている。基本龍也は寝る時と休みの日しか此処に居ないのが信用を取るに至った理由だろう、
「今日は訓練を見に行く約束をしていたな」
昨夜寝る前になのはから明日訓練を見に来てくれ。と言われていたのを思い出し、演習場に向かって行った
朝練とは思えないハードな訓練をしている、フォワード陣となのは達
「朝から頑張るな」
6人に見つからぬ様に気配を殺しながら訓練を見学していると
「兄上、こんな所に居たのですか」
シグナムが隠れるように訓練を見ていた、龍也に気付き歩いてきながら尋ねてくる
「ああ、前にな、私が見に来たからといって。必要以上に張り切って訓練をしたヴィータが居たからな」
苦笑しながら言う、そのときの訓練はフォワード陣の足腰が立たなくなるほどきつい物だった
「それも・・そうですね」
その時の様子を思い出したのか、同じく苦笑するシグナム
「しかし、まだ若いな」
手に何かの本を持ちながら呟く龍也に
「兄上?それはなんの本ですか?」
「うん?これか。まぁ聞くより見たほうがいいな」
その本を手渡され見ると、そこにはフォワード陣の姿と魔力効率と描かれグラフが変動していた
「これは一体何なのですか?」
一回も安定せずに変化し続ける、グラフに疑問を感じ尋ねると
「それは、ベレンの力でな。個々のステータスを見れるんだ」
『ケケ、本来ならスリーサイズとかも判るんだけどな、旦那が切れてその能力を封印しっちまった』
とんでもない事を言うベレン
「兄上。まさかその様な事見てないですよね」
ジト目で龍也を見ると
「シグナムが私をどんな目で見てるか判ったよ」
悲しげに呟く兄上に
「冗談ですから、気にしないでください。」
フォローしてから、本を返すと
「冗談なら良いが。まぁ此れを見てる理由は飛行魔法の効率を見るためだ」
本来陸戦魔導師は飛行魔法は余り得意ではない、シグナム達やはやて達なら問題ないが元から陸戦のフォワード陣は魔力に偏りがあるのだ飛行魔法を発動する時は全身に魔力を張り巡らせ。全身でバランスを取る。それのバランスが悪いと飛行魔法を構築するのに必要以上に魔力を消費する事になる。ならばそれの最適化は必要項目だ。
「何回かそのことを指摘したが・・やはり、そう簡単には行かんな」
そのグラフは殆ど安定していない、エリオは中々安定して来ているが、スバルは酷い殆ど同じ位置で止まっていない、まぁスバルにはウィングロードが有るからと言えばそれまでだが、矢張り飛行魔法は上手いほうがいい
「ティアナは素晴らしいな、グラフが一番安定している」
本のティアナのグラフは中と言ったレベルだが、グラフのブレは殆ど無い。キャロはグラフは安定しているが、飛行魔法の構築に意識が行き過ぎて、他の魔法の構築が可也甘い
「なに、まだ4人は若い、伸びしろはあるから大丈夫だろう」
解説をうけ渋い。顔をしているシグナムにフォローを入れる
「うん?どうやら一息つくようだな。私は行くが、シグナムは?」
「私の分の訓練はもう終わってますから、書類整理でもして来ます」
そうかと頷き龍也はシグナムとは逆に歩き出した
「ああ~疲れたぁ~」
疲れ果てて倒れこむスバル
「スバルは特に鍛えるように言われてるからね」
なのはが微笑むがその笑顔は少し黒い。龍也の指摘によって飛行魔法の構築が甘いスバルは、特に厳しい訓練を受けている
「でも、なのはさん、スバルは本当に飛行魔法上手く出来るように成りますか?」
スバルとコンビを組んでいた。ティアナはスバルの飛行魔法が下手なのは良く知っている。何度か指摘したがウィングロードが有るからと言って練習をしなかったツケが今出てきている。なのはが口を開こうとする前に
「確実に上手くなると思うが?」
突然聞こえた龍也の声に驚き、振り返るとそこにはいつの間にか現れた龍也の姿があった。寝転んでいたスバルはパッと飛び起きている
流石に龍也が居るのに、だらしなく寝転んでいるは嫌だったのだろう
「おはよう皆、朝から訓練ご苦労様」
穏やかな笑みを浮かべている龍也その手には本が納められている
「「「「「「おはようございます」」」」」」
返事を返し、整列すようとするが
「いや、そのままで良い、見ていたが大分きつい訓練だったみたいだからな」
苦笑を浮かべながら、本を開く
「龍也さん、その本は一体なんですか?龍也さんが訓練のときにいつも持ってますけど」
本が気になると言う表情を浮かべるなのはに
「これは、単純に言えば能力を分析するものだな。ベレンの能力の一つだ」
本を開きなのはのページを見せる、そこには事細かく能力が描かれていた。使える魔法、戦闘スタイル、魔力の最大保持などだ
「へ~凄いですね」
次々とページが捲られる中でスバルとティアナのページを見た瞬間、なのははその目を見開いた
使える魔法の欄にあった一文、ヘブンズナックルとストライクバレットは龍也の欄にも描かれていた
「龍也さん、スバルとティアナの欄にある。ヘブンズナックルとストライクバレットって言う魔法龍也さんの欄にもあるんですが?」
えっ!!とヴィータが覗き込みその欄を見て驚く
「ん?ああそれか。それは私が二人に教えたものだからな。あって当然だろう」
何事も無い様に言うが
「へ~、二人は龍也さんの技が使えるんだ、なんか羨ましいな」
辺りを黒い空気が包む、2日ぶりの黒化現象だ、その様子に息を呑む最年少コンビとスバル。ティアナはケロッとしている。どうやら耐性を身に着けたらしい
「何が羨ましいんだ?なのはにはスターライトブレイカーがあるだろう。私はそれの代用として教えたのだが・・」
威力としてはスターライト・ブレイカーの方が上だが、ヘブンズ・ナックルとストライク・バレットも又高威力の技には違いは無い
「いえ、ただどんな技なのかと言うのが気になるんですよ」
嘘だ、絶対嘘だ、龍也の技が使えると言うのが気に入らないんだ、ヴィータ達はそう思った
「そうなのか?なら見せるだけなら見せるが?」
その言葉に驚く、フォワード陣龍也は今まで一度もデバイスを使ってないからだ
「そうですね、じゃあ見せて貰ってもいいですか?」
なのはもどんな技なのか気になっていたので、見せてくれる様に頼む
「了解。ベレンセットアップだ」
『久しぶりだねぇ~。バリアジャケット展開するの』
楽しげに呟き。バリアジャケットを展開する。黒のライダースーツは変わってないが、背中には満月に交差するように黒と白の翼が描かれており、腕に巻いてあったバンダナの色が蒼くなっている
「余り変わってないな」
確認しながら呟くと
『当たり前だ、黒は俺のトレンドそう簡単に変えれるか』
ベレンと話していると、なのは達の顔が赤い
「どうした?顔が赤いが」
龍也は何の気なしに言うが、龍也の風貌とその黒いライダースーツは実に合っており、モデルのような印象を受ける
「・・いえ。何でもないです。それよりその龍也さんの魔法をお願いします」
「そうか・・それじゃあ。やるとするか・・」
拳を作り、魔力を溜めていく。するとほんの数秒ほどで辺りを金色の魔力が包み込む。スバルとは比べ可也早い。
「はあああああっ!!」
徐々に金色の魔力が強くなり、眩いばかりに輝いている。後ろから見ると金色の魔力が翼の形を模っているように見える
「天使みたい・・・」
キャロがぼそりと呟く、その光は闇を切り開く天使に見える
「ヘブンズ・・・
ナックル!!!」
右手から眩い光と共に金色の魔力波が放たれる。それはシュミレーションのビルのほぼ全てなぎ払い消滅させていた
「・・・・・・・」
言葉も無い、30近くあったビルを立った一撃で全て消し飛ばしたその威力に、だが龍也の言葉に凍りつく
「おかしいな。全て消し飛ばすつもりだったが・・加減を間違えたか?」
『旦那、次はカートリッジ有りでやろうぜ。その方が面白い』
「良し、ではカート・・・「ストーップ!!龍也さんカートリッジ有りでやられたら。この部屋が崩壊します」・・そうかでは止めて置こう」
カートリッジを使おうとした龍也を止める、あれで手加減しているらしいが、其れでもこの部屋がギシギシと悲鳴を上げている。これでカートリッジを使われれば冗談抜きでこの部屋は崩壊するだろう
「では、次だな。ベレン。シュータモード」
『見ていろ、俺の大活躍ってか』
相変わらず軽口を叩いてから。両手に二丁のショットガンが現れる
「すまんが標的か何か頼む、流石に銃だからな、的が無いとな・・」
なのは達が端末を操作し、龍也の周りにガジェットが現れるが
「なのは、これでは少ない後60は出してくれ」
まだ動き出さないガジェットを見て少ないと呟く、それでも数は軽く30はあるのだが。
「判りました、後60ですね、でも見ていて危険だと思ったら止めますよ」
その言葉の後から追加でガジェットが現れる。龍也は拳を握りながら
「それでは、始めるとするか」
呟き駆け出した
「嘘でしょ・・」
見ながらティアナが呟く、その気持ちにはあたしも賛成だった。兄貴は縦横無尽に駆け回りターゲットを粉砕している
「ダーククロー!!」
両手が黒い光を帯びたと思うと両手から、三日月の衝撃波が飛び出し。ガジェットを切り裂く
「ベレン、ショット。行くぞ」
『了解』
ショットガンからは様々な弾丸が次々放たれる。散弾、マシンガン、撃ったと思ったら既に命中しているもの。その弾丸は実に様々だ
「危ねぇぞ」
後ろからガジェットが迫るが。攻撃範囲に入るといった所で爆散した。兄貴はニヤリと笑い
「jackpod(大当たり)」
『気をつけな、そっからは地雷原だぜ』
後ろから近づいたガジェットが次々爆発して、兄貴の姿を一瞬隠すが、次の瞬間、黒い翼をその背に生やした兄貴が爆炎から飛び出す
「込める弾丸は」
『願いの欠片』
ガチャン!!シリンダーが回り。蒼い魔力が兄貴を包み込む
「響け!!シューティグソニック!!」
蒼い彗星がガジェットを飲み込み、爆発させる
「綺麗・・」
キャロが呟く、それは流星の様にとても美しかった
「まだ・・大分残ってるな」
かなり消し飛ばしたがまだ大分残っている。ギブアップをするのかと思ったら
「此れだけ残ってるんだ。ベレン。カートリッジロード」
『おっ!アレやるんだな。へへ行くぜ、カートリッジロード!!』
ショットガンから薬莢が飛び出し、龍也の足元にミッドの魔法陣が浮かぶ
「虚空の扉よ、我が前にその姿を見せよ」
龍也の前に漆黒の穴が出現する
「次元を超え、破壊の嵐を巻き起こさん、ワームスマッシャー!!!」
漆黒の穴に次々弾丸を撃ち込む。
「何してるんだろう?」
打ち込まれた弾丸は何処かに消えている。その間もガジェットは龍也に迫っていたが
ズガン!!
「えっ!?」
突然ガジェットが弾丸に貫かれ、爆発する、一体だけではない次々ガジェットの前に黒い穴が広がり、そこから弾丸が飛び出す
ズガン!!ズガガガン!!!
凄まじい速さで打ち込まれる弾丸、その全てがなのはのディバイン・バスターと同等かそれ以上だ
「さて、チェックメイトだ」
パチン!!
指を鳴らす、全てのガジェットを包み込むように黒い穴が展開される
「この技の前に逃げ道など無い、早々に消えろ」
呟きと共に全ての穴から弾丸が飛び出し。全てのガジェットを貫いた
「・・・・・・・」
見ていた者全てが押し黙る、
「なのはさん。龍也さんって本当にBランクですか?」
信じられなくてスバルが尋ねると
「シャマルがね、簡易魔力測定したら、機械の方が壊れたって」
「「・・・・・・・」」
なのは達は本当に龍也が何者なのか気になった
「龍也さん、最後に使った。ワームスマッシャーって何ですか?」
訓練を終え、食事を取っているなのはが尋ねる
「あれかね。あれはシャマルの旅の鏡の術式を解読して、独自に組上げたら何故かああなった」
パンを齧りながら答える
「・・あのよ。兄貴、シャマルの旅の鏡はあんな事出来ないぞ」
「そうなんだ、どうしてああなったのか。私にも判らん」
本当に判らない様子で食事を続けていたが
「なのは、何故か殺気に似た感覚があるのだが?」
スープを飲んでいた手を休め、なのはの方を向く。龍也の殺気に似た感覚は言うまでも無く嫉妬なのだが
「そうですか?私は特に感じませんよ」
笑顔で食事を続けるが、一瞬だけ殺気を飛ばし。龍也を睨んでいた局員に恐怖を与えているなのは、龍也はそれに気付いていない
「・・・それより、龍也さん。何か僕にも技を教えてくれませんか?」
なのはの殺気を耐え切り、エリオが言う。徐々にだがエリオにも耐性が付いて来た様だ
「技・・かね」
コーヒーを啜りながら考え込む
(スバルは接近戦だったから、ヘブンズナックルを教えた。ティアナにはストライクバレットをプレゼントしたしな・・・)
エリオのスタイルは槍を使う、自身が使える槍の技は少ない。グラムには槍の形態があるが、龍也は剣の方が得意で槍はそれ程でもない
「そうだな、デモンズディザスターかロイヤルセイバーくらいだな」
他のではエリオには扱いきれないだろうと推測し、二つの技を提案する
「どんな技なんですか」
目を輝かせるエリオ、龍也の技はどれも必殺だ。その威力に憧れるのも判る
「まあ、聞くより見ろだな。グラム映像を出してやれ」
『了解しました、主』
グラムのコアから映像が映し出される
「昔の映像で悪いがこれを見てくれ」
どこかの森の中だろう、騎士甲冑を身に着けていない龍也が佇んでいる。すると木の間からネクロが現れるが、その手に持った槍を構え
「デモンズディザスター!!」
黒い閃光が走り次々とネクロを貫く、その映像を信じられないという表情で見るエリオ
「これは、魔力で斬撃を飛ばすと言う物なのだが。兎に角素早く連続で繰り出し続ける。と簡単な理屈だな」
口で簡単等言うが、言うよりも此れは難しいだろう
「あの・・これ本当にエリオ君が出来ますか?」
映像を見ていたキャロが尋ねると
「槍というのは連続で攻撃を繰り出すように出来ている。だから問題ないと思うが?」
「龍也さんはどれくらい出来る様になりました?」
「私は一ヶ月だな、結構大変だったと思う」
たった一ヶ月でこれだけの事が出来るようになった、龍也のことを規格外じゃないかと思ったのは、スバルだけではないだろう
「取り合えず連続で槍を振り回せるようになってからだな」
エリオは映像から一度も目を離さず、モニターを見ている
「次いくぞ。これは直ぐに出来る様になるな。そこはエリオの魔力変換素質に感謝だな」
逃げたネクロに槍を向けると、槍が淡い光を帯び
「ロイヤルセイバー!!」
槍から魔力弾が放たれた
「これは槍を媒介にした射撃魔法と思えばいい。此れの利点は魔力変換素質の力をプラスできる点とゼロ距離で突き刺した後に魔力弾を放てる所だな」
電気を帯びた魔力弾、氷。炎、と次々映像が変わり、中には直接槍を突き刺しネクロを消滅させているものもある
「龍也さんも魔力変換素質持ちなんですか?」
映像を見ていた、ティアナが尋ねると
「いや、8年前は使えなかったんだが、襲われて死に掛けて。次に起きたときは使えるようになってたな・・」
昔を思い出した様に呟くが、
「・・・・・・・」
死に掛けたときに何があったんだ?となのは達はそう思った
「まぁ、長い人生なにがどうなるか、判らないから面白いな」
笑っているが、龍也ほど濃厚な人生を送っているものも居ないだろう
「八神中将。高町一等空尉。八神二等陸佐がお呼びです。至急部隊長室までお願いします」
呼び出しのアナウンスが入り、飲んでいたコーヒーを置く龍也
「どうやら、はやてがお呼びらしい。なのは行くぞ」
立ち上がる龍也に返事を返し同じく立ち上がるなのは
「その映像はエリオにあげよう、偶に見て参考にすると良い。それと無茶な訓練は止めて置けよ、後に痛い思いをするからな」
それだけ言い残し食堂を後にする、龍也となのは
「なんか、龍也さんって、お父さんって感じがしますね」
エリオが呟く、優しくて、強くて、相談にも乗ってくれる。龍也は言われてみればお父さんという感じがするだろう
「うん、そうだね、私もそう思う」
キャロは同意するが
「そうかな?私は頼れるお兄ちゃんって感じかな」
スバルが先程の映像をコピーしながら呟く、既にティアナはコピーを終えている。
「私もかな?龍也さんはお兄さんって感じがするかな」
暫くの間、龍也がお父さんかお兄さんかと言う話題で盛り上がっていた、ティアナ達だった
第16話に続く