第16話
はやての部屋に向かい歩いているが
「・・・一つ聞こう」
「何ですか?」
疲れた様子の龍也とは逆に嬉しそうななのは
「何故。腕を組む必要が?こういうのは普通。恋人同士でやるものでは無いのか?」
龍也が疲れている理由それは、食堂を出て直ぐなのはに腕を掴まれそのまま腕を組んでいる
「別に良いじゃないですか?それくらい減るものじゃないんですし」
喜色満面のなのは、確かに減るものでは無いだが
(また、殺気を感じる。何が原因だ?)
今まで浮いた話が無かった、なのは、はやて、フェイトの三人が何かと付けて龍也の傍に居ようとする。しかも聞けば龍也は蒼天の守護者で3人の想い人となれば、龍也に嫉妬する者も居るだろう
(早く、はやての所に行こう)
龍也はその歩幅を早めた
「兄ちゃん?どうしたんや。なんか疲れとる見たいやけど?」
部隊長室に入る前になのはは龍也の腕を放している、
「何、気にするな。大した問題じゃない」
心底疲れた様子で言う龍也、それと半比例して楽しそうな、なのはの笑顔に
「ああ~判った、また兄ちゃんなのはちゃんに何かやられたんやね」
はやての纏う空気が黒くなる。龍也は又か・・と呟いた
「なのはちゃんな、兄ちゃんは私のやって言うとるやろ」
「はやてちゃん、いい加減兄離れしたら?」
「「アハハハハ」」
フェイトとヴィータが居ないのがせめてもの救いだ
「はやて、何か用が合って、呼んだんだろう?」
纏っていた空気が消え。笑みを浮かべるはやて
「いやな、レジアス中将と聖王教会から、依頼があってな、派遣任務が来たんや」
ニコニコのはやて
「それなら、何故フェイトたちが居ない?その話は通ってないのか?」
「それなら、大丈夫やで、いまフェイトちゃん達はフォワード陣に連絡をしに行ったから」
「それで?何処に派遣されるんだ?」
笑みを浮かべながら
「何と、派遣先は・・・第97管理外世界「地球」日本地区海鳴市でーす!」
「本当か!」
「え!?本当に地球の海鳴市なの!?」
「そうやで~、んでその任務やけどロストギアの回収や!!」
「ロストギア・・レリックか?」
「そのロストロギアはレリックの可能性もあるらしいから、一概に管轄外とは言えんねそう、今回の任務は管理外世界へ出張し、正体不明のロストロギアを保護するという内容だ。どこも人手不足で人員を割けんらしいねん。で、そのお鉢が回ってきたっちゅうわけや」
「そうか・・では準備をして来るか・・」
部屋から出ようとすると
「ちょい待ち、んーと、ああやっぱりや、兄ちゃんなのはちゃんに無理やり腕組まされとるね」
机のディスプレイにはなのはが無理やり私の腕を掴んでるシーンが写されている。
「ん、なのはちゃん、ちょーと私とお話しするか。今すぐ部屋から出て行くか好きなほう選び」
凄まじい威圧感を放ち始めたはやてに
「じゃあ、私準備してくるね」
なのはは顔を青ざめ凄まじい速さで消えた
「兄ちゃんにはそうやな・・これでもやってもらおうかな~」
立ち上がり龍也の耳に耳打ちし、にこやかに笑いながら離れるはやて
「・・・了解」
私ははやての要求を呑んだ
「龍也さん、如何したんですか?」
「エリオ、気にするな」
背中にはやてを背負い、集合場所に現れた龍也は非常に消耗していた。
「良いなぁ、はやて兄貴におんぶして貰えて」
ヴィータがおんぶされている、はやてを見て羨ましそうに言うと
「ヴィータは兄ちゃんと手繋げばいいやん」
「・・・それもそうだな」
嬉しそうに龍也の手を握る、ヴィータの後ろで
「龍也、なんでそうなったの?」
若干黒い笑みで話しかけてくるフェイトに
「なのはにでも聞いてくれ」
疲れた声で言うしかなかった
機動六課の前線メンバー達とシャマルは転送ポートへ行くために、ヘリに乗って移動している。移動中、ティアナ達四人は地球について調べていた。
「第97管理外世界文化レベルB・・・」
キャロはモニタを見ながら呟く。
「魔法文化無し、次元移動手段無し・・・って、魔法文化無いの!?」
ティアナは魔法文化が無いことに驚いている。
「無いよ。うちのお父さんも魔力ゼロだし」
スバルは当然のように答える。
スバルの御先祖は地球人だったらしい。
「スバルさん、お母さん似なんですよね?」
「うん!」
「いや・・・なんでそんな世界から、なのはさんや八神部隊長みたいなオーバーSランク魔導士が・・・」
「突然変異というか、たまたま・・・な感じかな?」
ティアナは突然の声に振り向くと、そこにははやてがいた。
「へ、あ、すみません!」
「ええよ、別に」
はやてに続き、なのはも話の輪に入ってきて、
「私も、はやて隊長も魔法と出会ったのも偶然だしね」
「な?」
「へ?」
楽しげに話す、はやて達を見ていると自然と笑みになる
「龍也さんも、地球生まれなんですよね」
突然スバルに話を振られる
「ああ、私も地球生まれだな」
「へ~、龍也さんも地球生まれなんですか・・まぁはやて部隊長のお兄さんなら当然ですよね。それにとても仲が良いですね。地球ではそんな感じなんですか」
ティアナの言葉には、何か含みがある
「ん?そうかティアナ達は知らないのか・・私とはやては兄弟ではないよ」
「えっ?」
驚きの声を上げるフォワード陣。てっきり龍也とはやてが本当の兄弟だと。思っていたのだ
「どういう意味ですか?」
スバルが尋ねてくる
「私の両親は既に他界していてな。孤児院を転々として私の父の弟である。はやての両親に引き取られたんだ」
「その時の兄ちゃんは酷かったで、まるで生きとる人形みたいやった。何も話さない笑わない、涙も流さない、感情一つ見たことが無かったで」
龍也の話に割り込む形ではやてが話す、はやての言うとおりだ、あの時の私は世界の全てに絶望していた、何故両親が死なねば活けなかったのか答えの出ない問答を永遠と繰り返していた
「それで、そんな兄ちゃんを見るのが嫌で。私は毎日話し掛けた」
あの頃を思い出しながら話しているのだろう。懐かしい目をしながらはやてが話す。なのは達も静かに話を聞いていた。龍也は余り過去のことを話さないので、こういう話は貴重なのだ
「そんで。一ヶ月位、話しかけとったら、ようやく兄ちゃんから反応があったんや」
「確か・・どうして僕は生きている・・だったか?」
龍也は覚えていた、母が自分を庇った事を、しかしそれの所為で父と母が死んだのも理解していた
「そうそう、んで初めて兄ちゃんが泣いてるのを見た。丸一日泣いっとたな、自分の所為でって繰り返し呟いて、ずっと泣いてた。でも次ぎの日から今みたいな、兄ちゃんになってたで」
そうだ、泣いて泣いて答えが出た、私は生かされている。ならば父さんと母さんの分まで生きないといけないと
一気に空気が重くなった。
皆がしまったという顔をしている。
「あ、あの、すいません・・・」
ティアナが謝罪をしてくるが
「何を謝る事がある、私が話すと決めそれを話した。もし謝るなら私の方だな。折角の楽しい雰囲気を台無しにしてしまった」
「龍也さんは寂しくないのですか?」
キャロがおずおずと話しかけてくるが
「寂しい?私が?ククッハハハハハハッ!!面白い冗談だ。私は確かに一人になったさ、でもな新しい家族が出来たならそれで良いじゃないか。ほら何処に悲しむ必要がある?」
この時真に龍也のことを理解出来ただろう。龍也は悲しみも苦しみを全部乗り越えて今ここに居るのだ。龍也は強い。体が強いじゃない心が、信念が強いのだ、だから人を惹きつける不思議な魅力があるのだ、ヘリの中をさっきまでと違い暖かい空気が包む
(そうか・・だから私は龍也さんが好きになったんだ)
ティアナはどうして、自分が龍也のことが好きなったのか。判った最初は助けてもらったからだと思った。でもそれは違った龍也もまた悲しみの中に落ち。それを乗り越え此処に居る、それは同じく悲しみの中にいたティアナには光っているように見えた。だから好きになったのだ。
(そうか・・そうだったんだ)
どうして、龍也の事を好きになったのか判った。ティアナは微笑んでいた
穏やかな空気の中ヘリは転送ポートに着き、機動六課フォワード陣は第97管理外世界へと向かうのだった。
第17話に続く