夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第33話

第33話

 

龍也達がヴィヴィオと遊んでいる同時刻、なのは、フェイト、はやて各隊長はベルカ自治領聖王教会本部にいた。

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

ドアをノックする音に返事をする女性の声は聖王教会騎士カリム・グラシアである。返事を聞くと、ドアが開きノックをした人物達が部屋に入る。

 

「失礼します。高町なのは一等空尉であります」

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です」

 

二人はいつもより凛々しい表情で敬礼をする。

はやてはそんな二人の横でニコニコしながら見ていた。

 

3人が部屋に入室するとカリムはゆっくり歩き近づき、微笑みながら労をねぎらう。

 

「いらっしゃい。はじめまして、聖王教会教会騎士団騎士カリム・グラシアと申します。どうぞ、こちらへ」

 

挨拶もそこそこにカリムは3人を席へ案内する。白い丸テーブルにイスは6つ、そのうちのひとつの席にはすでに時空管理局本局次元航行部隊クロノ・ハラオウン提督が座って待っていた。

 

カリムはクロノの右隣に座り、はやてはそのカリムの隣に座った。なのはとフェイトは未だ座らず、イスの横で起立していた。

 

「失礼します」

 

なのはは3人が座るのを確認すると一礼し、クロノの横の席、左隣へと座った。フェイトはその隣で敬礼し、

 

「クロノ提督、少し、お久しぶりです」

 

挨拶されたクロノはフェイトの挨拶を生真面目に笑いもせず、目だけをフェイトに向け仕事での挨拶をした。

 

「ああ、フェイト執務官」

 

そんな真面目な兄妹二人のやりとりを横で見ていたカリムはクスリと笑う。

 

「うふふ、お二人とも、そう硬くならないで。私達は個人的にも友人だから、いつも通りで平気ですよ」

 

「と、騎士カリムが仰せだ。普段と同じで」

 

「平気や」

 

カリムの一言に、クロノは柔和な顔になり、口調も固さがなくなった。はやては終始やわらかい。

 

「じゃあ、クロノ君久しぶり」

 

なのはも堅い表情を崩し、気さくに話しかける。

 

「お兄ちゃん、元気だった?」

 

フェイトも義理の兄であるクロノに普段の挨拶をした。すると、クロノはうっと小さく呻き、恥ずかしそうに顔を少し赤くする。

 

「・・・それはよせ。お互い、もういい歳だぞ」

 

「兄弟関係に年齢は関係ないよ、クロノ?」

 

どうやらこういうやり取りはフェイトのほうが一枚上手のようである。クロノは顔を赤くしながらうつむいてしまった。そんな兄妹のやり取りを他の3人はクスクス笑いながら見ていた。そしてその和やかな空気の中カリムが首を傾げながら

 

「所ではやて、八神中将はどうしたんです?一応来るように連絡を入れておいたんですが?」

 

「う~ん、そんな話は聞いてへんけど、カリムとシャッハが苦手やから来ないって言ってたで」

 

その言葉に眉を顰めるカリム

 

「そうですか・・・出来れば話に同席にして貰いたかったんですけど・・・」

 

「アイツそういう奴だから気にしないほうが良い。僕は最初からアイツは来ないと言っていたんだ」

 

不機嫌にクロノが口を開く、龍也とクロノは仲が悪い訳ではないだが、クロノはシスコンであり、義妹が想いを寄せる人間が嫌いなのだ。だが忘れてはいけない此処にははやてが居るのだ

 

「クロノく~ん?人の兄ちゃんをアイツ呼ばわりかそれは許容できんなぁ」

 

フフフフと黒い射抜く様な目で睨んでいるはやてにしまったと言う顔をする、

 

「いや・・違うんだ。話せば判る・・・だから落ち着け・・フェイト?」

 

立ち上がろうとするクロノ腕をフェイトががっちりと掴んでいる。髪が垂れて目が見えない

 

「ふふふふふふふ」

 

と不気味な笑い声と黒い空気が発生している。やばい・・・誰か助けをと辺りを見る、

 

「・・・・・・・」

 

無言だが凄まじい威圧感を放つなのはが居る。カリムは目を閉じて、十字を切っている

 

「すまない・・・謝るから許してくれないか?」

 

許してもらおうと謝罪を口にするが

 

「駄目やね」

 

「少し頭を冷やして、お兄ちゃん」

 

「お話で良いよ」

 

黒い笑みで立ち上がった三人に冷や汗を流す、デバイスは無いだろうだが三人は龍也に護身術を教わっている。素手でも十分強い

 

今日の教訓・・・・人の想い人の悪口はやめましょう。

 

血がついたまま咳払いをし何事も無かったように話を切り出したはやて

 

「・・・さて、昨日の動きについてのまとめと、改めて機動六課設立の裏表について、それから、今後についてや」

 

「あの・・・はやて?クロノ提督がやばい具合に痙攣してるんですが?」

 

「大丈夫。お兄ちゃんはこの程度じゃ死なないから」

 

部屋の隅で額から血を流し痙攣している。クロノを冷めた視線でそれを見るフェイト

 

「う~ん、五分くらいで復活するよ・・多分・・・もしそうじゃなかったら葬儀屋を呼ぼう」

 

酷いことをさらっと言うなのはに恐怖しながら、カリムはクロノに治癒魔法を施した

 

 

「死ぬかと思った」

 

それから五分間治癒を受け何とか持ち直したクロノだが、顔は青い血を流しすぎたようだ

 

「さっきの100%クロノ君が悪いから、謝らんで」

 

その言葉にコクコクと頷く。なのはとフェイト。味方はどうやら居ないようだ

 

「判ってる、僕が全て悪いと認める。だから話の続きを頼む」

 

「判ってるって、じゃ昨日の動きについてのまとめと、改めて機動六課設立の裏表について、それから、今後についてや」

 

5人のいる部屋のカーテンが閉じ、外から視認できなくなった。途端、部屋は暗くなり、圧迫されたような感覚に包まれる。

それに呼応して、空間もどこか外とは切り離されたような別空間を錯覚させる。そんな空気の中、クロノが重々しく口を開いた。

 

「六課設立の表向きの理由は、ロストロギア『レリック』の対策と、独立性の高い少数部隊の実験例」

 

クロノはなのは達から視線を外し、誰もいない空間を見つめた。そして、そこにモニタが展開し、クロノとカリム、続いてリンディの画像が映し出された。

 

「知っての通り、六課の後見人は僕と騎士カリム、それと僕とフェイトの母親で上官のリンディ・ハラオウンだ」

 

一度言葉を区切ると、3人の画像が消え、代わりに三提督の画像が映された。

 

「それに加えて非公式ではあるが、かの三提督も設立を認め、協力を約束してくれている。僕も信じられないんだが・・地上のレジアスゲイズ中将も極秘裏の協力者だ」

 

なのはとフェイトは目を見開いた。二人ともコレには驚いたようだ。自分達の協力者に、あのレジアスゲイズ中将に、伝説の三提督がいるとは

 

「その理由は、私の能力と関係があります」

 

そう言い、カリムはイスから立ち上がり、皆の見つめているモニタの後ろに回った。展開されていたモニタが消え、皆が見る位置へとゆっくり歩き出したカリムは、紐で括られた紙の束を持っていた。ちょうどタロットカード程の大きさの紙の束である。カリムはその紐をゆっくりと解くと紙の束は光りだした。

 

「私の能力、プロフェーティン・シュリフテン(預言者の著書)」

 

そう言うと、紙の束はカリムの周りを囲むように一枚一枚浮き上がった。

 

「これは最短で半年、最長で数年先の未来、それを詩文形式で書き出した預言書の作成を行うことができます」

 

カリムの周りに浮いている紙は光り続け、カリムを中心にゆっくりと回っている。

 

「二つの月の魔力がうまく揃わないと発動できませんから、ページの作成は年に一度しかできません」

 

そう言うと、カリムの前の二枚の紙がなのはとフェイトの前まで飛んでいき、彼女達の前で止まった。

 

「預言の中身も古代ベルカ語で、しかも解釈によって意味が変わることもある難解な文章。

世界に起こる事件をランダムに書き出すだけで、解釈ミスも含めれば的中率や実用性は割とよく当たる占い程度、つまりは、あまり便利な能力ではないんですが」

 

なのはとフェイトの前に浮いている紙にもなにやら文字が書いていあるが、二人にはさっぱりわからないようで、顔を見合わせて困った顔をし、首を横に振る紙はカリムの元へ戻り、輪の中をカリムを中心にくるくる回っている。

 

「聖王教会は勿論、次元航行部隊のトップもこの予言には目を通す。信用するかどうかは別にして、有識者による予想情報の一つとしてな」

 

「ちなみに昔はレジアス中将も嫌いやったみたいやけど・・其処は兄ちゃんに感謝やな」

 

その言葉に首を傾げるクロノ達に

 

「ああ、そうやったな、クロノ君達は知らへんな。兄ちゃんがレジアス中将を説得して味方に変えたんやで。今は何か友達らしいけど」

 

自分たちが知らない間、龍也がどれ程働いていたかを知る者は少ない

 

「それに兄ちゃんの中将の地位やけど。推薦したのはリンディさんに三提督、後レジアス中将やで?知らんかったやろ?」

 

にこやかに笑うはやての言葉を信じるなら。今龍也のバックにはとんでもない大物たちが居ることになる。

 

「まぁ。それは置いといて、カリムの予言能力に数年前から少しずつ、ある事件が書き出されているんや」

 

旧い結晶と黒い亡者達が集い交わる地

 

邪悪なる王の元、死地より暗黒なる城が蘇る

 

亡者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち

 

それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる

 

なのはとフェイトはその予言を聞いてハッとなった。

 

「それって・・・」

 

「まさか・・・」

 

「ロストロギアをきっかけに始まる、管理局地上本部の壊滅と、そして管理局システムの崩壊」

 

カリムの言葉になのはとフェイトは言葉が出ない。おもわず息をのんでしまう。あまりにも非現実的であまりにも荒唐無稽で、とても信じられるものではない予言だからだ。いや、信じたくない、というのが本音だろうか。

 

「情報源が不確定と言うこともありますが、管理局崩壊ということ自体が、現状ではありえない話ですから」

 

カリム自身、この予言の危険性と信憑性を鑑みて、現状の管理局システムの強固さや高い完成度が崩壊するとは考えにくいと言う。

 

「そもそも、地上本部がテロやクーデターにあったとして、それがきっかけで本局まで崩壊・・・いうんは考えづらいしな・・・」

 

はやても顎に指を添え、予言に対しての脅威を思案する。現状、時空管理局に対抗脅威となる組織は一つしか存在しないネクロ達だ。

だがそれについて詳しく知るものは永い間一人でネクロと戦っていた龍也のみ・・だがその事に関しては口を開こうとしないのだ。言う言葉は唯一つ時を待てだけだ

 

「龍也に命令して話させる事は出来ないか?」

 

クロノが尤もな事を言うが

 

「それは無理や、その事に関する事は、兄ちゃんが権限を使って聞くことを禁じとるから」

 

龍也の権限それはあらゆる部隊に干渉できることそれとあらゆる部隊からの不干渉である。この権限を使われたら三提督でないと命令することは出来ない

 

「そうか・・龍也は何を考えてるんだ?時・・・まさか地上本部が落ちるのを待てというのか?」

 

幾ら考えても出て来ない。龍也は昔からそういうことを口にしない。真意を測れるのは長年共に居たはやてくらいだろう。だがそのはやてが判らないと言うのだから手のつけようが無いのだ。皆で考えている時カリムが驚くべき事を言った。

 

「・・・実ははやてやクロノにも言っていないのだけれど、つい先日、また新たな予言が出たの」

 

「え!?ほんまか!?」

 

これにははやてとクロノも驚いていた。

 

「ええ、翻訳も本当につい先程終わったところなのよ」

 

 

暗黒なる城蘇るとき。神なる王もまた蘇る

 

神なる王と邪悪の王。最強なる二人の王

 

暗黒なる城にて相打つ

 

滅び行く暗黒なる城の中、神なる王は唯一人炎と共に時限の海へと消えてゆく

 

彼の者は王にして最強の守護者なり

 

その命を賭して世界を救わん

 

短い文ではあるが、「暗黒なる城」という文面からして、先程の予言の続きに当たるのだろう。だが、ある単語が気になった。それは

 

「王にして最強の守護者?」

 

王にして最強の守護者・・・?

 

「まさか・・・兄ちゃんか?」

 

守護者というイメージが在るのは龍也だけだ

 

「龍也さんが死ぬって言う予言なの?」

 

予言を信じるなら龍也は魔王と相打ちになり、一人死ぬことに成る

 

「そんなこと無い。龍也が死ぬ訳無いんだ!!」

 

フェイトが声を荒げ立ち上がろうとするが、

 

「落ち着いてください。何も八神中将が神なる王と決まった訳では無いのですから」

 

カリムがそれを手で制し、諭すように言う

 

「そうですね・・御免なさい。ついカッとなっちゃって」

 

謝罪しながら座りなおしたフェイトを見てから

 

「・・・実は、『王』というキーワードに疑問を持ちまして、私は古代ベルカ時代の書物や文献を調べました。そこでわかったことがあります」

 

カリムの予言の中で三つのキーワードに注目したそれは「黒い亡者」と「邪悪の王」に「暗黒なる城」というキーワードだ

確かに、古代ベルカ時代には多くの「王」が存在したと聞く。詳しい所は判らないが様々な分野に特化にした王が聖王の名を冠したのではないかと言われている、その中には悪に目覚めた王も居たかもしれない

歴史に埋もれ、表立っては語られない「王」も存在するなかで、もしかしたら「邪悪の王」も存在したのかもしれない。聖王教会にはベルカの歴史に関する資料や文献などが多数ある。禁書扱いのものも保管されている。そんな期待を込めて皆カリムの次の言葉を待った。

 

「「黒い亡者」というのはかつてベルカが生み出した禁呪「ネクロマンシー」で生み出された兵士の事だと推測できます」

 

「ネクロマンシー?」

 

聞き覚えの無い言葉にクロノが首を傾げながら尋ねると

 

「はい、かつてベルカで争いが起きた時に作られた物で、魔力で死んだ騎士の魂を縛りつけ忠実な兵士にするという魔法らしいですが・・・詳しい所は判りません」

 

調べてみたが其処のところだけ黒く塗り潰されており、どういった魔法なのかというのが判らない

 

「次の邪悪の王ですが、かつて聖王に反旗を翻し、反乱を起こした王でネクロマンシーを開発したのもその王だそうです、此れは名前が記されていまして名をジオガディス。文献では剣と呪術に優れ、聖王を圧倒する魔力を持っていたそうです、ですが聖王の中で唯一神の名を持つ、神王に破れ体を封印されたそうですが・・ですがその際にこんな言葉を残してるんです、我は消して滅びることなく生き続ける、遠い未来にて再び蘇ると・・・恐らく既に復活していると思います」

 

ネクロが現れている点からそれは間違いない

 

「私多分見たことあるよ・・・龍也さんの目と腕を奪った騎士、それが多分ジオガディスだと思う」

 

ジオガディスはこの時代と言っていた多分蘇って直ぐ現れたんだと推測される

 

「当時の龍也を圧倒し、行方不明にした正体不明の騎士探していたが見つからない筈だな」

 

クロノ達が広域次元犯罪者として指名手配していたが、情報が一切入らなかったのも納得できる。恐らくジオガディスを見つけた者は殺されネクロにされていたのだろう

 

「最後に暗黒なる城ですが、これはジオガディスが使っていた要塞だと思います。聖王のゆりかごと言う兵器に対応策としてジオガディスが製作したのでしょうが。これ以上は判りませんでした」

 

「いや。こんだけ判れば、対応策も出来るんちゃうかな?」

 

朗らかに言うが実際詳しい所は殆ど判らずじまいだ、だが判ったことも多い

 

 

「所で龍也は元気なのか?」

 

話し終え世間話になっていた頃、クロノが思い出したように尋ねる

 

「うん、元気や。FW陣に訓練をつけたりしとるで」

 

訓練とい言う言葉に顔を青褪めるクロノ

 

「・・・付いて行けてるのか?龍也の訓練は厳しいぞ?」

 

かつてクロノが龍也に訓練を頼んだ際は、足腰が立たなくなるまで打ちのめされていた

 

「大丈夫だよ、龍也さんちゃんと個々のステータスに合わして訓練してるから。どうせなら教導隊に入ってくれれば良いけど」

 

紅茶を飲みながら言うが

 

「なのは、そんな事をしてみろ。きっと殆どの隊員が局を辞めるぞ」

 

龍也の訓練を頼む部隊は数多く存在する、だが龍也訓練は凄まじく厳しい。耐える事が出来れば間違いなく強くなる。だが恐らく挫折者が多く出るだろう

 

「はは・・そうだね、私達も死ぬかと思ったよ・・・」

 

フェイトが乾いた声で言う。隊長陣も訓練受けたが本気で死ぬかと思うほどきつい物だった

 

「なにをやったんだ?」

 

その乾いた声に何があったんだろう?とクロノが尋ねるが

 

「兄ちゃんの攻撃を回避か防御、全員リタイアするまで。兄ちゃん手加減してたけど300のスフィアは多すぎや。私でもあかんと思った。プロテクション打ち抜いて迫ってくるんやで?むっちゃ怖いわ。そうやクロノ君もまた訓練してもらえば?」

 

「・・・遠慮しておく・・・折角閉じたトラウマを再び開く気は無い・・」

 

俯いたクロノどうやら、思い出してはいけない記憶を思い出してしまったようだ。そして穏やかに時間は流れた、機動六課の待遇についての事に触れた。

 

「勿論、皆さんに任務外のご迷惑はおかけしません」

 

カリムのそんな言葉にフェイトとなのはは相槌を打ち答える。

 

「ああ、それは大丈夫です」

 

「部隊員達の配慮は八神二佐からも確約はいただいていますし」

 

なのはがちらりとはやてを見ると、はやては頷いた。

そして、カリムは改めてなのは、はやて、フェイトの顔を見ると頭を下げた。

 

「改めて、聖王教会教会騎士団騎士カリム・グラシアがお願い致します。華々しくもなく、危険も伴う任務ですが、協力をしていただけますか?」

 

平和を願うため、安寧を願うため、その力を正しく使うために。なのはとフェイトは力強く頷いた。

 

「非才の身ですが、全力にて」

 

「承ります」

 

 

隊長達3人が聖王教会から帰って来ると、副隊長が呼び出され、聖王教会での事を話した。

 

カリムの預言のこと、管理局崩壊の危険性、そして王にして最強の守護者という単語

 

「王にして最強の守護者・・・やはり兄上なのか?」

 

腕組みをしてシグナムが言う、やはり王にして最強の守護者に当てはまるのは龍也しか居ない。だが

 

「シグナム!馬鹿なこと言うな!!兄貴が死ぬ?そんな訳在るか!!」

 

その言葉にヴィータが詰め寄り言うが

 

「だが可能性として兄上だけだ、今居る騎士・魔導師の中で最強といえば兄上しか居ない。私だって信じたくないが!それしかないだろう!!」

 

シグナムとヴィータが怒鳴りあう、二人だって信じたくないのだ、神なる王は唯一人炎と共に時限の海へと消えてゆくの一文を

 

「二人とも落ち着き。兄ちゃんがまだ王にして最強の守護者って決まった訳や無いんやからな」

 

私が仲裁に入ると二人共落ち着きを取り戻し

 

「すまん、ついカッとなった」

 

「いや、こっちも御免・・」

 

二人が謝罪した所で

 

「今日は皆解散。明日も早いでもう休んでや」

 

皆に解散するように言い、一人部屋の中に残った私は

 

「兄ちゃんが死ぬ・・・そんな訳ない・・そんな訳はないんや」

 

繰り返し自分に言い聞かせるように呟く

 

「大丈夫。大丈夫に決まっとる。兄ちゃんが死ぬわけない」

 

繰り返し言うがその最悪の予想は中々頭から消えてくれない

 

「嫌や・・・そんな事考えたくない」

 

頭を振りその考えを飛ばそうとする、だが振り飛ばそうとする度にその予想が強く頭に残る、その考えに押し潰されそうになった時

 

コンコン

 

ノックの音がし、その考えから引き戻される

 

「誰か知らんけど感謝やな」

 

頭を強く振った為ぼさぼさになった髪を整えてから

 

「どうぞ」

 

中から呼びかけた

 

「すまん、今良いか?」

 

頭を下げたから入ってきたのは、兄ちゃんだった

 

「大丈夫や、んで何のようや」

 

慌てて笑顔の仮面を被るが

 

「どうしたんだ?泣いていたのか?」

 

兄ちゃんにはその仮面は呆気なく見抜かれた

 

「泣いてへんけど・・・ちょっと悩み事があって・・な」

 

俯きながら言うと、優しく頭に手が置かれる

 

「大丈夫か?悩みなら私が聞くが?」

 

易しく諭すように言うが。この悩みだけは言うわけにはいかないのだ

 

「ううん、大丈夫や、自分で解決できるから。で兄ちゃんは何の用や?」

 

強引に話を摩り替える、このままでは言ってしまいそうになったから、兄ちゃんは一瞬鋭い視線を浮かべるが直ぐにそれを消し

 

「ああ・・ちょっと頼みがあってな」

 

「頼み?なんや結婚して欲しいとかか?」

 

からかう様に笑うと兄ちゃんは困ったような笑みを浮かべ

 

「まだそんなことを言ってるのか?いい加減彼氏でも作ったら如何だ?」

 

「はなら、兄ちゃんが彼氏に成ってくれたらええんや」

 

再び笑みを浮かべ言うと兄ちゃんは困った顔をする、私はこの顔が好きだった、巧妙に隠しているがこの顔は照れてるときや恥ずかしい時に浮かべる顔だ。だから兄ちゃんは照れてるか恥ずかしいと思っている、そう思うと自然に笑みが零れてくる

 

「・・・・もう良いこの話は終わりだ、それで頼みなんだが良いか?」

 

「うん、ええで」

 

からかうのは此れくらいにして置こう、私は今の妹と言う心地よい場所をまだ手放す気は無いのだから

 

「あのだな、明日スバルの訓練を免除にして欲しいのだが?」

 

眉が上に上がったのを私は感じた

 

「スバルの?どうしてや?新人は訓練せないかんのやで?」

 

私は今たぶん黒い笑みを浮かべてるだろう、でも我慢は出来ないのだから仕方ない

 

「ああ、それは十分理解している。だが明日ゲンヤさんに会いに行くと言ったものの。私はゲンヤさんに余り面識が無い、だからスバルに仲介を頼もうと思ってな」

 

困ったように言う兄ちゃん・・嘘は言ってないと判る。付き合いが長いのだ、なのはちゃん達では判らない微妙な変化が私には判る

 

「判ったで、明日のスバルの訓練は免除にするようになのはちゃんに言うとく。何で急にゲンヤさんに会いに行こう思ったんや?」

 

其処が腑に落ちない。兄ちゃんはゲンヤさんに余り面識が無いはずだが・・・それを何故会いに行くと言い始めたのか気になった

 

「昔世話になったからな・・・一度挨拶に行こうと思っていたんだ」

 

確かに兄ちゃんは余り面識が無い。だが若く才のある兄ちゃんをゲンヤさんは気に掛けていたし。行方不明という通達が各部署に入った時も。自分の部下を派遣し兄ちゃんを必死に探してくれていた。そして何より私が落ち込んでいるとき

 

「譲ちゃんよぉ、妹のお前さんが兄貴の事を信じずに如何するんだ?信じろよ。誰が何と言おうと自分の兄貴は生きてるってよ」

 

不器用な微笑を浮かべながらそう言ってくれたゲンヤさんが居たから。私は兄ちゃんが生きてるって信じてこれた

 

「判った、そういう事ならもう聞かへんよ。ゲンヤさんに宜しく言う取ってくれる?」

 

「ちゃんと伝えておくよ。はやてが宜しくと言っていたとな」

 

微笑み左手を頭に置き撫でてから

 

「私はもう寝るからな。おやすみはやて」

 

「うん。おやすみ、兄ちゃん」

 

片手を振り兄ちゃんを見送り、再び一人に成った部屋の中で

 

「そうや、兄ちゃんが死ぬ訳ない。そうやこれからも兄ちゃんはずっと私の傍に居てくれる。そう決まってるんやから」

 

そう思うと自分の考えが馬鹿らしく思えてくる、そう思っていると急に眠くなった

 

「ふぁああ。う~ん私もそろそろ寝ようか」

 

眼を擦りながらロングアーチの部隊長室を後にし、自分の部屋に向かいながら

 

(そうや、私はずっと兄ちゃんと一緒に居るんや。絶対に・・・)

 

ずっと好きだったのだ、幼い頃からずっとずっと傍に居てくれた。ずっと一緒に居てくれた兄ちゃん。私は絶対兄ちゃんを振り向かせて見せる。私と兄ちゃんは従兄弟・・・本当の兄弟じゃなくて本当に良かったと思う。兄弟だったらこの恋は決して叶うことは無い。だが従兄弟なら話は別なのだから

 

「兄ちゃんは誰にも渡さへん。兄ちゃんは私の兄ちゃんなんだから」

 

そう呟き私は部屋に帰って行った、今日は良い夢が見れそうだと微笑みながら眠りに付いた。

 

第34話に続く

 

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