夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第36話

第36話

 

お母さんと一緒にスカリエッティさんの部屋に戻ると

 

「うん?お帰り」

 

「はっはっは、すまないが助けてくれない・・・がふ」

 

物凄くイイエガオでスカリエッティさんを殴りつけている龍也さんが居た

 

「何をしてるんだ?」

 

お父さんが驚きながら尋ねると

 

「何、簡単ですよ、この馬鹿の頭の中を親友として矯正してやろうと思いまして」

 

その隙にスカリエッティさん逃げようとするが。ガンッ!!目の前に足が振り下ろされる、それは固い金属の床を突き破り地面にめり込んでいる。それを見て顔が真っ青になるスカリエッティさんに

 

「何処に行くのかな~?話はまだ終わって無いぞ?」

 

この角度からが見えないがきっと素晴らしいエガオをしているだろう

 

「龍也・・謝るから許してくれないか?」

 

「駄目だ。一度死ね!!」

 

左フックで壁まで殴り飛ばされ

 

「がふっ」

 

うめき声を上げ気絶するスカリエッティさんに駆け寄る、茶髪のメイド服の服の少女。私と同じか少し下くらいだろうか?

 

「お父さん?大丈夫?」

 

何度か声を掛ける呻き声を上げながら目を覚まし、その少女に笑いながら

 

「はは、大丈夫だ。次は猫耳でも・・「フン!」がっ・・・」

 

最後まで言うことなく、龍也さんの投げた本が頭にめり込み再び気絶した。スカリエッティさんを無視して

 

「オットー、この馬鹿は無視して着替えてきなさい」

 

「似合わないかな?兄様」

 

メイド服の少女が首を傾げる、なんだろう物凄く小動物のような感じがする

 

「そういう服は着るものじゃないんだ、ちゃんとした奴を着てきなさい」

 

年上のお兄さんが諭すように言うと

 

「でもこれなら、兄様も落ちるってお父さんが・・・」

 

その言葉に顔を顰めながら気絶したスカリエッティさんを持ち上げ

 

「本気で・・一度死んで来い!」

 

窓の外へ投げ捨てた

 

「おおおおおおおおおっ!?」

 

絶叫しながら落下していき、暫くするとボグッ!と言う凄まじく鈍い音があたりに広がった

 

「良し、悪は滅びた。オットー早く着替えてきなさい」

 

「あっうん。判った」

 

トテテと言う感じで歩き去ったオットーを見送ってから

 

「お茶でもしましょうか?」

 

何事も無い様に言うが

 

「あの・・スカリエッティ死んだんじゃ」

 

顔を青くしてギン姉が言うと、頭を振りながら

 

「・・残念だがアイツはあの程度じゃ死なない。私の砲撃をゼロ距離で喰らってもピンピンしてる、化け物だぞ?」

 

「親友なんじゃないのか?」

 

その余りの言い方にお父さんが尋ねると

 

「親友ですよ。ですがそれはアイツが馬鹿をやったとき意外です。何処の世界に自分の娘に夜這いを進める親がいますか?」

 

「良し。判った。色々苦労させられてんだな」

 

その言葉に何が言いたいのか理解した、お父さんが慰めるとブツブツと文句を言い出した龍也さん。此れも見たことが無い様子だ

 

「龍也は弱さを見せない様にしてるの、自分が弱気になれば不安がる人が居るでしょ。だけど龍也も人間なのよ、弱気になることも泣きたくなる時もあるわ。そういう龍也の弱さを支えられないと龍也の傍に入られないわよ。スバル」

 

そう呟くように言うお母さんに

 

「うん」

 

と小さな声で返事を返した、その話の間も龍也さんはどんどん暗いオーラを発生させてる、よほど嫌な思い出なのだろうか?だが考えてみようスカリエッティさんの子供は皆女性、さっきも見たが皆美人だった・・・なんだろうこのモヤモヤとした感じは?そんな風に始めて感じる気持ちに戸惑っている間も龍也さんはブツブツとお父さんに愚痴を零してる。僅かだがその呟きが聞こえてくる

 

「判りますか・ゲンヤさん・・私だって男なんですよ?美人に抱きつかれたりすれば、緊張するんですよ、それが妹のはやてだって判ってても動揺してしまうんですよ・・・」

 

「判るな、譲ちゃんはお前にえらくご執着だからな。昔からだよな」

 

「それだけじゃ無いんです。最近何故かヴィータが大きくなって。以前にも増してべったりなんです。私は如何すれば?」

 

「とりあえず、止めてくれって言うのは如何だ?」

 

「涙目であたしが嫌いなのか?なんて言われればそんな事言えません」

 

物凄く消耗した声だ

 

「それは言えないな、うん、判る泣く女は無敵だからな」

 

肩をポンポンと叩いてる

 

「私は判りません、私は義手で隻眼ですよ?どうしてこんな男を好きになる人物が居るんです?」

 

「きっと。それはお前が優しいからだ、そうに違いない」

 

完全鬱モードで呟き続けている、なんだろう?物凄く可愛い?何時もは格好良いと言葉がピッタリな龍也さんだが、今は何か保護欲をいい具合に刺激してくる不思議な可愛さを持っていた

 

「あっそうだ、写真撮ろう」

 

お母さんと一緒に写真を撮ろうと思い、持ってきていたカメラで落ち込む龍也さんを写真に収める。だが此れが後に悲劇の引き金になる事をこの時の私は知らなかった

 

 

鬱モードが解除されると目の前に消耗したゲンヤさんが居た

 

「気にすんな・・・偶には・・愚痴りたいこともあるだろうし・・・」

 

相当長い間愚痴に付き合ってくれてのだろう、酷く消耗している

 

「あれ?兄様何してたの?」

 

グッドタイミングと言うべきか着替え終えたオットーが帰ってくるが

 

「・・・何だそれは・・」

 

「えっ!変かな?」

 

自分の服を見て首を傾げるオットー、似合ってはいる、似合って入るが

 

「何でゴスロリだ?」

 

「ウーノ姉が縫ってくれた、似合うからって」

 

上機嫌で笑っている、オットーは小柄だから怖いくらい似合っている

 

「一度ウーノと話してみるか・・・」

 

ウーノが一番ジェイルと付き合いが長い為、一番毒されている、つまり発想がジェイルと同じなのだ

 

「龍也さん、座ったら如何ですか?」

 

背後から底冷えする声が聞こえる、間違いなくスバルの声だ・・だが

 

(一瞬はやてに言われてるような気がした・・・)

 

席に付く私の隣にスバルとオットーが座っている。向かいには笑っている、クイントさんとゲンヤさんにギンガが居る

 

「貴方が僕達と違う戦闘機人?」

 

興味津々と言う感じだ

 

「まぁ・・そういう言い方は嫌いだけどね・・」

 

「僕も嫌いだよ、貴方とは気が合いそうだね」

 

にこやかに笑うオットーに

 

「私は貴方じゃなくて、スバルだよ」

 

「僕はオットー、宜しく」

 

お互いに微笑みながら自己紹介をしていると

 

「久しぶりだな、龍也」

 

上機嫌で赤い髪の少女がジェイルの部屋に入ってくる

 

「ノーヴェかお前も元気そうだな」

 

「はっ!当然だろ。所で父さんは何処だ」

 

居るはずのジェイルの姿が見えないので、辺りをキョロキョロ見回すノーヴェに

 

「あの馬鹿は窓の下だ」

 

割れた窓を指差し言うと

 

「成る程・・・また龍也を怒らせたわけね・・・所でこいつらは誰だ?」

 

スバル達を見て、好戦的な声で言うと

 

「こら!ノーヴェちゃん、そういう言葉使いは駄目だって、何度言えば判るの」

 

クイントさんに怒られ

 

「う・・・判ったよ。この人たちは誰ですか?此れで良いか?」

 

不機嫌に言う、どうやら間だノーヴェはクイントさんが苦手なようだ

 

「宜しい、この人達は私の娘のスバルとギンガと旦那のゲンヤさんよ」

 

「・・へ~、宜しくとは言っとくよ」

 

見定めるように言う、ノーヴェに

 

「えっと、ノーヴェだよね?宜しく私はスバルだよ

 

手を出し握手しようとすると

 

「ニヤ・・・ああ宜しく、スバル」

 

力一杯握り締めるノーヴェに負けじと握り返す、スバル暫くお互いに我慢比べをしていると

 

「くく、良いね、スバル気に入ったよ」

 

手を離し、肩をバンバンと叩き上機嫌なノーヴェに

 

「なんか仲良くできそうだね。私達」

 

同じく肩を叩き微笑むスバル。なにか妙な友情が芽生えたのだろう

 

「龍也、折角きたんだ、久しぶりに飯でも作ってくれよ」

 

何をしに来たのか思い出したようにノーヴェが言う

 

「うん?もうそんな時間か?」

 

時計を見ると12時を過ぎている

 

「そうですね。私もお腹空きました」

 

スバルも空腹を訴える

 

「なら、皆呼んできてから何か作ろう?何が良い」

 

ノーヴェに尋ねると

 

「何でも良いぜ。龍也の料理はどれも美味いからな」

 

そういうのが一番難しいのだが。と思いつつ他のメンバーを呼びに行く為に訓練場に向かった・・・その様子を見てゲンヤさん達が笑っていた

 

 

訓練場に行くと、チンクとディードにセッテが居た、他のメンバーは休憩中の様で二人の訓練を見ている

 

「おし。早速呼びに行こうぜ」

 

訓練場に行こうとする、ノーヴェの服を掴み動きを止める

 

「なんだよ、早く行こうぜ」

 

「まぁ。待て私が居るのをチンク達は知らないのか?」

 

「知らないはずだ、知ってるならセッテがアンタに抱きついて離れないはずだ」

 

「・・・そんな人が居るの?」

 

セッテの事を知らないスバルが尋ねると

 

「ああ。一人居る、究極的な龍也至上主義者が、なんでも自分の気持ちを自覚したら止まらなくなったそうだ」

 

射抜くような黒い瞳で睨むスバル、何だろうフェイトに睨まれてるような気がする

 

「私は知らんぞ、そんな話」

 

私が首を傾げていると。コソコソと後ろの方で

 

「龍也さんって、本当に鈍感だね」

 

「全くだぜ、好きだって言ったことあるけど。冗談は止してくれって言われた」

 

「ノーヴェも好きなの?」

 

「当然だろ、優しくて強くて、あんないい男、他に居ないぜ」

 

「うん、そうだよね、頑張ろう、龍也さんは凄い鈍感だから」

 

「おう、お互いに頑張ろうぜ」

 

と何故か凄く意気投合していた。お互いにがっしりと握手をしていた、仲良くなるとは思っていたが、まさか此処まで早く仲良くなるとはと思いながらコートから以前使った仮面を取り出し、装着する

 

「これで模擬戦に乱入したら、驚くと思うか?」

 

その仮面を見て、スバルとノーヴェは

 

「・・龍也その仮面は無いぜ」

 

「・・・同感です」

 

辛口な評価だ、割と気に入ってるんだが・・・この仮面

 

「そうか?じゃあ如何すれば驚かせることが出来る?」

 

仮面を外し問いかける

 

「そうだな・・・アイツに頼んで後ろから・・・」

 

ぼそぼそと作戦会議をする。

 

「じゃあ、後ろからこれで・・・」

 

スバルが取り出したのはよく冷えたジュースの缶

 

「何処にあった?」

 

さっきまで持ってなかった、スバルに驚きながら尋ねると

 

「あそこですよ、ほら」

 

指差す方には自販機がある

 

「ノーヴェ、あんなのあったか?」

 

「つい最近設置したんだ、訓練すると喉が渇くからな」

 

そんな話をしていると。下のほうから

 

「あ~喉が渇いたよ・・・龍也?如何して・・モガモガ」

 

呼ぼうと思っていた少女がゆっくりと歩いてきて。私を見つけ同様し、大声を上げる前にノーヴェが口を押さえる

 

「セイン、良い所に来た。静かにこっちに来い」

 

「うん」

 

静かに隠れてる場所に来た、セインが隠れていたスバルを見つけ

 

「誰?」

 

見たことの無いスバルに驚きながら問いかけると

 

「あ、始めまして、スバルです」

 

「私はセイン宜しく」

 

お互い自己紹介を終えると、作戦を説明すると

 

「良いね、良いね、私のISで龍也を地面に連れ込んで後ろからジュースの缶で驚かす良いね」

 

物凄く乗り気のセイン、元よりこういう悪戯が大好きなのだ、必ず乗ると計算していた

 

「じゃあ、やろうか」

 

皆が休憩に入り座り込んだところで計画を実行するが。ここで予想外の出来事があった

 

「そんな顔で睨まないで、お願い、怖いから」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

セインのISディープダイバーは密接しないと使えないつまり私が抱きつくか抱きつかれる必要性がある。その事に気付いたノーヴェがセインを睨み、説明を受けたスバルも睨んでる、ぶっちゃけ超怖い

 

「もう駄目、怖い、IS発動」

 

その無言のプレッシャーに堪えれず、セインは私に抱きつき、地面の中に引きずり込んだ

 

「ふう、疲れました」

 

座り込み息を整える、ディードとセッテに

 

「腕を上げたな、姉は嬉しいぞ」

 

チンクが微笑みながら言う。その姿を見て笑っている。向かい側のイスに座っていたトーレ、ディエチの顔が一瞬驚きに染まる。しーとジャスチャーで口を押さえながら地面から私が姿を見せる。その背後には消耗したセインが居る、スバルとノーヴェからプレッシャーで精神が磨り減ったらしい。ゆっくりと気配を殺し手に持ったジュースの缶を三人の首に押し当てる

 

「「「きゃあああっ!」」」

 

その余りの冷たさに悲鳴を上げる、チンク、セッテ、ディード。そして怒りながら振り返る、おそらくセインの悪戯だと思ってるだろう

 

「セイン・・・八神?」

 

「セイン姉様・・・龍也様?」

 

「セインお姉様・・龍也兄様?」

 

驚き目が点の三人に

 

「クク、ずいぶん可愛らしい悲鳴だったな」

 

その言葉に真っ赤になりながら

 

「違うぞ!」

 

「違いますからね」

 

「びっくりしました・・・」

 

立ち上がり文句を言うが

 

「ははは、気にしなくても良いじゃないか。クク、きゃああああっか。はははは」

 

我慢していた笑いが遂に我慢出来ず声に出る

 

「笑うな!」

 

「笑わないでください」

 

「・・・・・///////」

 

真っ赤で笑うなと言うチンクとセッテに恥ずかしくて声も出ないディード。

 

「クックック、久しぶりだな、チンク、セッテ、ディード」

 

笑いながら言うと怒るかと思えば

 

「ああ、そうだな、八神も元気そうだな、今日は如何したんだ?」

 

「龍也様、会いに来て下さったのですか?」

 

夢見る乙女のような表情でセッテが言う、記憶の中のセッテとは大分違う

 

「龍也兄様?どうして此処に・・・もしかして義手の調整ですか?」

 

三者三様の私が如何して此処に居るのかの予想を言うが

 

「残念だが、どれも外れだ、今日此処に来たのは・・・スバル来い」

 

上に居るスバルを呼び寄せる。軽やかに結構な高さから飛び降りすたっと着地する。大分運動神経が強化されたようだ

 

「誰だ?」

 

「女・・・龍也様の傍に・・・女が・・・」

 

「誰ですか?」

 

チンクとディードが誰かと尋ねてくる中。セッテだけは怖すぎる黒いオーラを発生させていた

 

「スバルと言ってな、クイントさんの娘さんだ。今日はちょっとクイントさんに会いに来たんだ」

 

「始めまして、スバルです」

 

自己紹介するスバルを見て

 

「成る程・・似ているな。私はチンクだ」

 

「同じ戦闘機人・・・良いですね、仲良く出来そうです。私はセッテです」

 

「始めまして、ディードです」

 

チンクはスバルを見て似ていると言い。セッテはオーラを解除し微笑み。ディードは手を出し握手をしようとしてる

 

「ふむ。良かった馴染んでくれたようだ。そうそう、今から昼飯にしようと思うのだが何か食べたいものは?」

 

自己紹介をしてるスバル達を見ながら言う、結局自分ではメニューが浮かばなかったのが理由だ

 

「スパゲティが良いな」

 

「私はムニエルが食べたいですね」

 

「シチューかな?」

 

見事にバラバラなリクエストだが、全部作ればコース料理のようになる、あとデザートを付ければ完璧だ

 

「良し、決定だな」

 

メニューが決まり、皆で食堂に移動を始めた、スバルはどうやら完全に打ち明けた様で皆で仲良さげに話している、どうやら上手く馴染めたようだ。その様子に一安心しつつ食堂に向かって行った

 

第37話に続く

 


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