夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第39話

第39話

 

「うん?何時の間に眠っていたんだ?」

 

寝た記憶が無い、その前に何をやっていたかが丸々抜けている

 

「あれ?起きたんですか?」

 

キッチンから料理を運びながら紅いエプロンのティアナがやってくる

 

「ティアナ?どうして・・・いや思いだした、はやてが世話係がどうとか言っていたな」

 

「覚えてないんですか?」

 

少し残念という表情でティアナが言うが

 

「何か忘れてるか?」

 

思い出せないので首を傾げるしか出来ないが

 

「・・・少し残念ですけど良いです、私は楽しかったですし・・・」

 

ぼそりと呟いているがよく聞こえない、辺りを見るともう真っ暗だ

 

「もう夜だと!私は何時間寝てたんだ?」

 

私は昼少し前に部屋に戻って居た筈なのだが・・

 

「疲れてたんじゃないんですか。よく眠ってましたから。それよりご飯作ったんで、一緒に食べましょうよ」

 

「ああ、貰うとするよ」

 

立ち上がり、席に着き並べられた料理を見る、良く煮てあるであろうロールキャベツにスープにパンだが、ティアナは地球の料理を知らない筈だがと思っていると

 

「これを見つけまして」

 

そう言って差し出されたのは。私が書いていたレシピの冊子だ

 

「細かく書いてありますね」

 

ビッシリと細かく分量やポイントが書かれている

 

「そうか・・それを見たのなら納得だな。それより折角の料理だ冷める前に頂こう」

 

ロールキャベツを一口分斬り、口に運ぶ

 

「うん、美味い」

 

確り味が染みており実に美味い

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

ティアナが若干顔を赤らめながら、食事を進めている

 

「うん、とても美味しいよ」

 

誰かに作って貰った、料理と言うのはとても美味しいと思える、

 

「美味しかったよ、ありがとう」

 

美味しいのとこういうのが久しぶりで。思っていたより早く食べ終わってしまった

 

「いえ・・・初めて作ったので其処まで喜んで貰えて嬉しいですよ」

 

食器の片づけを終え部屋に戻ると言うティアナに

 

「良かったら、持って行くといい」

 

レシピの本を手渡す

 

「えっでもこれは龍也さんがいるんじゃ」

 

「私はもう全部覚えているからな。持って行ってくれて構わないよ」

 

「それじゃあ、貰っておきます、ありがとうございます」

 

レシピの本を持ったティアナを見送ると急に眠くなり

 

「・・・眠るとするか・・・」

 

今日は何だか寝てばっかりだと思いながらも眠りに落ちた

 

 

「変じゃないよね?」

 

朝の訓練を終えてから、龍也に会いに行く為。鏡の前で何度も髪型を確認する

 

「龍也?起きてる?」

 

扉越しに声を掛ける

 

「フェイトか?鍵は空いてるから、入って来てくれて構わないぞ」

 

扉を開き初めて龍也の部屋に入る

 

「何の様だ?」

 

天雷の書を開きながら問いかけてくる

 

「いや・・・ほら・・あの世話係だから」

 

「ああそれか・・別にそんなことしなくても良いのだがな、とりあえず座るといい」

 

一瞬難しい顔をするが、それを直ぐに消し、微笑みながら席に座るように促されたので、向かい合う様に座る

 

「王、お客人ですか?」

 

トレーにカップを乗せセレスが姿を見せる

 

「ああ、フェイトが来てるんだ、悪いがもう一つ頼んでも良いか?」

 

「お任せを」

 

微笑み再びキッチンに戻る、セレスを見ながら

 

「何してたの?」

 

「守護騎士の状態を見てたんだが・・・多分修復は間に合わないだろうな」

 

難しい顔で天雷の書を見せられる、修復率は40%弱と記されている

 

「時間が掛かるんだね」

 

「そうだな、大分破損が酷い様だな」

 

自分の方に戻しながら笑っていると

 

「どうぞ、お待たせしました」

 

カップに入った紅茶を置き、龍也の隣の席に座るセレス

 

「どうですか?守護騎士達は」

 

「難しい所だな・・・アイギナなら間に合うと思うが」

 

守護騎士の事で話し込んでいるので若干蚊帳の外だ

 

「っと・・すまない、折角尋ねて来てくれてのに。話し込んでいては失礼だな」

 

天雷の書を閉じ謝る龍也

 

「あっ、ううん気にしないで、連絡も無しに尋ねてきた、私が悪いから」

 

慌てて言うと、ふと気付く

 

「そうだ。龍也まだご飯食べてないよね、私が作るから」

 

なんとなく気不味くなり。キッチンに逃げるように駆け込んだ

 

「何なんだ?」

 

慌ててキッチンに行った、フェイトに訳が判らずセレスを見ると

 

「私も存じかねますね」

 

案外この二人は似ているのかも知れない。天然と言う嫌な所で

 

 

「ご馳走様でした」

 

食べ終わり、食べ物に感謝して手を合わせる。セレスは食事の必要は無いのでと、無限書庫に行って来ると言い消えた

 

「フェイト料理上手になったな」

 

本当にそう思う、昔料理を教えてと言われ教えた事があったが、酷い結果だった

 

「・・昔のことは言わないで、お願いだから・・」

 

結構なトラウマになっているようだ、アルフが食べて痙攣したしなぁ

 

「だから・・思い出せないで」

 

私の考えを読んだ!?思っていたよりフェイトは鋭くなっていたらしい。昔は天然という感じだったが・・・

 

「もう昔の話はいいから!!」

 

真っ赤で怒鳴るフェイト、予想以上に鋭い・・

 

「判った。それで如何するんだ?」

 

休暇扱いでやることが無い。昨日何かあった気がするが、思い出せないので保留(思い出せばきっと良くない事になる)

 

「そうだよね・・私も休暇扱いだし」

 

どうやら世話係になった者も、強制的に休暇状態らしい。お互い頭を抱え込む

 

「そうだっ!今本局にお兄ちゃんが居るから。会いに行こう」

 

その提案について考える、クロノはいい奴だが、下手をすれば凶暴化の危険性がある(シスコン化)だがまだ直接会ってないと考えると

 

「そうだな、クロノにはまだ顔を見せてなかったしな、行くとしよう」

 

クロノに会いに行く事にし、フェイトの車で本局へ向かった

 

「・・疲れた・・・」

 

「ははは」

 

「大丈夫か?」

 

本局の用意された部屋で深くソファーに座り込み、私はそう呟いた。本局に付いた途端若い魔導師からの質問攻めに会ったのが理由だ

 

「・・久しぶりだな、クロノ。元気だったか?」

 

「その台詞は、もう少し自分が元気な時に言うべきだな。今にも死にそうな顔をしているぞ?」

 

そう苦笑するクロノ、事実で精神的にも体力的にも可也消耗している

 

「龍也、はい紅茶」

 

手渡された紅茶を飲み一息つく

 

「ありがとう。フェイト、落ち着いた」

 

礼を言うと俯いてしまう。フェイトに首を傾げると

 

「クク、本当に相変わらずだな」

 

その様子を見て、楽しそうに笑っているクロノ初めて見る表情だ

 

「お兄ちゃん、楽しそうだね」

 

フェイトも初めて見るのか驚きと言う感じで言うが

 

「そうかな。自分では判らないが」

 

他愛の無い世間話をしていると

 

「そう言えば龍也は僕が結婚したのを知ってるか?」

 

思い出した様にクロノが結婚したと言うが

 

「知ってるさ・・とういうか私も居たからな式場に、良い結婚式だったよ」

 

その言葉に驚きと言う表情のフェイト、式場にははやて達も居たが、気付かれなかったし

 

「何処に居たんだ?」

 

式場に居たと言う言葉に、驚きの表情を浮かべ問いかけて来る

 

「バルコニーの影だな、それに控え室の前に花束があっただろう?それは私が置いた物だ」

 

気付かれないように慎重に気配を殺しながら、控え室の前に花を置いたしな。

 

「あの花は君か、驚いたぞ。差出人の名前も無い花束だったからな」

 

思い出したように笑うクロノに

 

「クク、真っ赤だったなぁ。実に面白い顔をしていたな」

 

真っ赤だったが、エィミィの手を絶対に放すものかという決意が見て取れた。それだけでも見に行った価値があった

 

「龍也、じゃあブーケトスの時も居た?」

 

「ブーケトス?・・いや居なかったな。郊外のネクロの気配を感じたからな。倒しに行ったしな」

 

「・・そうなんだ。良かったよ・・・」

 

ほーっと息を吐くフェイトの姿に、興味が沸き

 

「クロノ、ブーケトスはどんな有様だったんだ?」

 

顔を引き攣らせながら

 

「はやて、なのは、フェイト、ヴィータの乱戦。全員デバイスまで取り出し大騒ぎになった。結果で言えばはやてが取ったよ。その時に兄ちゃんは生きてるに違いない。だからこれで・・・ふふふふと笑っていた」

 

聞かなければよかったと思った。そして見つからなくて良かったと思った

 

「・・・クロノ。どうやったらはやては兄離れしてくれると思う?」

 

そう問題は其処なのだ、どうやらはやては可也本気のようだ

 

「かなり難しいじゃないのか?はやてのブラコンはそう簡単には治らないと思う」

 

「奇遇だな。私もそう思う」

 

クロノと話し合うが具体的な解決策は出ない・・・いや出てこない、出て来る筈は無い。シスコン馬鹿+天然では同ひっくり返ろうがプラスにはならない。マイナスの二条が良いとこだろう

 

「真っ直ぐに兄離れしたらどうだって言うのは?」

 

フェイトも考えていたのか提案を出すが

 

「無理だ、一度言った。そしたら女として迫ると言われたので。逆効果だ」

 

あの時のはやては凄く怖かった、本気で身の危険を感じた

 

「・・・・考えても出ないな。時を待とう。それしかない」

 

結果論で言えば諦めて再び、世間話に戻る事にした

 

「所で龍也」

 

「うん?何だ」

 

フェイトと話していたら、クロノに話しかけられ。クロノの方を見る

 

「君をハラオウン家に迎える話があるといったら如何する?フェイトの夫として」

 

ぶふぅ。紅茶を吐き出すフェイト。可也動揺したようだ

 

「ごほっ、ごほっ。お兄ちゃん何言ってるの?」

 

「フェイトは龍也が嫌いか?」

 

「嫌いじゃないけど・・でも・・・」

 

真っ赤なフェイトを見て言う。その顔は真剣で嘘や冗談ではないようだが

 

「何で急にそんな話になったのか聞きたいのだが?」

 

真っ赤で俯き、指をちょんちょんとしているフェイトは無視の方向で行くことにした

 

「良く考えてみて欲しい、フェイトは美人だな。それで寄って来る男は多い訳だが」

 

此処で一旦話を切り、紅茶を口に含むクロノ。フェイトはまだ思考停止中である

 

「信頼に値する男はそうは居ない。だが龍也お前なら信頼に値すると思うが?」

 

「信頼に値する?私が、とんでもないよ、私は臆病ではやて達から逃げた男だぞ?とても信頼には値しないな」

 

自信を嘲るように笑うが

 

「確かにそれも一つの事実だが、もう一つの真実があるだろう?」

 

知っているという訳か

 

「もう一つの真実って何?お兄ちゃん?」

 

思考停止から復帰したフェイトが尋ねると

 

「龍也はフェイト達をネクロから護っていたんだ。思い出してみろ、黒騎士の出現場所と仕事でフェイト達が出かける場所。その全てが一致しているんだ。つまりフェイト達を襲撃しようとしていた、ネクロを龍也が先回りして倒していたんだよ」

 

フェイトも気付いたようだった

 

「やれやれだ」

 

肩を竦める出来ればこの事は知られたくなかったのだが

 

「その事を踏まえて君を信頼すると言うのだが・・如何だろう?」

 

意地の悪い笑みを浮かべているクロノに

 

「残念だが無いな。フェイトには私よりもっと相応しい男が現れるさ」

 

その言葉に顔を顰めるクロノ

 

「僕は君ならフェイトを任せれると言っているのだが?」

 

射抜くような視線で、言うクロノだが・・・

 

「これ以上何も言うことは無いな・・そろそろ失礼させてもらう。フェイト行くぞ」

 

「えっ、うん。お兄ちゃん又ね」

 

黙り込んでいた、フェイトを連れ部屋から出ていく

 

「ふぅ、損な役回りだよ。本当に・・・」

 

クロノの最後の呟きは私の耳には届かなかった

 

 

少し悲しかったかもしれない、あの時頷いて欲しかったと思う私がいる。車を運転させながらそう思った。龍也が先程から黙り込んで流れ行く景色を見ている、私も少し暗い気持ちだから

 

「あの・・・龍也少し行きたい所があるんだけど良いかな?」

 

「好きにすれば良い」

 

それだけ言い再び黙り込んだ龍也は怖い、何か苛々している感じがする。そんな事を感じながら私はあの場所へ車を走らせた

 

「着いたよ」

 

着いたのは私が良く来る、小さな丘の上。迷ったり悲しい時に良く来ていた場所だ

 

「綺麗な場所だ」

 

夕日が差し込み、その場所は幻想的な美しさを持っている

 

「私のお気に入りの場所なんだ」

 

ベンチに座り

 

「ほら、龍也も座ったら?」

 

笑顔で座るように促す、すると無言で座る龍也、暫くお互い無言で時が流れる

 

「・・・私は別にフェイトが、嫌いな訳じゃない」

 

静かに口を開いた龍也

 

「えっ・・・」

 

聞いた事のない龍也の気持ちに驚く

 

「だがそれはやはり恋愛感情ではない、あくまで友達としての物だから、クロノの話を受け入れる事は出来なかった」

 

「そう・・何だ」

 

私は間違いなく龍也の事を一人の男性として好きだろう、だが龍也は違うと言う私はずっと好きだった、だから龍也が生きていると信じてこれたの。だが龍也は違うと言うでもそれは仕方ないと思う、はやてと私達は同い年だ。だから妹して見ていると言うのは判っていた

 

「すまない、だが此れが私の気持ちであることには間違いは無い」

 

「ううん、良いよ別に、判ってた事だから。それより遅くなるから帰ろうか?」

 

再び車に乗り隊舎に向かう。その間お互いに無言だった

 

(どうすれば、この気持ちは伝わるだろう)

 

私は車を走らせながらそう思う。だけど答えは出てこない

 

(お兄ちゃんの馬鹿。折角楽しい時間だと思えたのに)

 

大好きな兄と龍也と一緒に居る時間は、とても楽しい物の筈だったのだが・・ここでふと気付く何故突然お兄ちゃんがそんな話をしたかだ

 

(どうしてお兄ちゃんは急にそんな話をしたんだ?)

 

クロノは慎重な人物だ、何の考えも無しにあんな話を切り出す理由が無い

 

(考えろ、お兄ちゃんは何を言いたかったんだ?)

 

運転しながら必死にクロノの真意を考える

 

(言ってくれないと、判らないよ・・・はっ!そうか。そういう事か)

 

クロノが言いたかった事を理解する。理解した頃には隊舎はもう目と鼻の先だった

 

「今日はすまなかったな、不快な気持ちにさせてしまった」

 

隊舎裏の駐車場でそう言い部屋に帰ろうとする、龍也に

 

「待って、私は貴方に言わないといけない事がある」

 

ここでこのまま龍也を部屋に返してしまえば、二度と私の恋が叶うことは無くなる。それは嫌だ・・だから

 

「私はあなたのことが好きです」

 

その言葉に顔を顰める龍也

 

「私はずっと好きだった、それはずっと変わることはありません。貴方が私の事を妹としてみるなら。私は其処から出て貴方を振り向かせるまでです。私フェイトTハラオウンは八神龍也が好きなんです」

 

その言葉に同様を見せる龍也に

 

「今は返事は良いです。だけどいつか貴方を振り向かせて見せますよ」」

 

龍也の横を通り直ぎざまに軽く抱きつき、直ぐに離れる

 

「何を・・・」

 

真っ赤になって動揺する、龍也を見て微笑む

 

「クスクス、私からの決意の証と言うことで、それじゃあ」

 

恥ずかしくてその場から逃げるように駆け出した。そうだ諦めない私は龍也が好き、お兄ちゃんは素直に気持ちを伝えないと判らないと教えてくれたんだ。最初からそう言ってくれれば良かったのに。私はそう思いながら部屋に戻った

 

「私は如何すれば良いんだろうな?」

 

駐車場に一人残された、龍也の呟きに答える者は居なかった

 

第40話に続く

 


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