夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第44話

第44話

 

新しい義手が届いてから、数日たったある日、食堂でのはやての一声で全てが始まった

 

「TVの取材?」

 

食事中突然はやてがそう切り出した

 

「そうや。何かなレジアス中将が言うとるんよ。今度六課にTVの取材があるんやて」

 

向かい側に座って皆に説明している

 

「パパTVに出るの?」

 

膝の上でヴィヴィオが首を傾げている。食事の際は必ずヴィヴィオは私の膝の上に座っている

 

「そうみたいだな。でも何でだ?」

 

突然六課に何故取材の話しが来たのか、気になり尋ねると

 

「これ見て」

 

はやてが取り出したのか一冊の本、見た感じ週刊誌の様だが

 

「あれ?はやてちゃんもそれ見てるの?」

 

なのはも見ているようだが、私はそういう週刊誌の類は殆ど見ないので始めてみる

 

「見たことが無いな・・・一体何なんだ?」

 

見たことの無い週刊誌に首を傾げると

 

「龍也さん、見たこと無いんですか?」

 

スバルもどうやらその週刊誌を見ているようだった

 

「ああ、こういうのは余り見ないな」

 

パラパラとページを捲っていると

 

「兄ちゃん、最後の方のページや、其処に乗ってる記事を見てくれへん?」

 

はやてに言われて最後のページを見る

 

「・・・・なんだこれは?」

 

乗っていた記事は『第18回 謎に包まれた管理局最強の魔導師、蒼天の守護者に迫る!!』とデカデカと書かれその下には、隊員のコメントが掲載されている、幾つか読んで見る

 

『あの人は優しくて気さくな人物です GL准陸尉』

 

『強くて、優しいし、尚且つ相談にも乗ってくれますね  SF一等陸士』

 

『鈍感な人ですね、でも良い人ですよ? RR二等陸士』

 

『旦那?最高の男だぜ! 本人の希望により本名で掲載します、ヴァイスグランセニック 陸曹』

 

『ぜひとも、教会の騎士へ! KGさん』

 

六課に所属する隊員に今回はコメントを聞くことが出来ました。次回は何と!六課に突撃取材をしたいと考え。現在アポイトメントを取ろうと努力しています、それでは次回の特集をお楽しみに!!

 

「・・・・17回もあったのか?」

 

17回もこんな感じで特集記事が組まれていたのかと思うと、軽く頭痛がした

 

「そうやで?毎回楽しみに見てるわ」

 

はやてこんなの見なくても直接聞けるだろうに

 

「龍也、近くでいると判らない事もあるけど。こういう記事は客観的に見れるから好きなんだよ」

 

フェイトは私の考えている事を呼んだのか答えてくれる。

 

「・・それでその週刊誌とTVの撮影と何の関係があるんだ?」

 

週刊誌を捲りながらとTV撮影の関係を尋ねると

 

「管理局のイメージアップに繋がるからって、レジアス中将とリンディさんがその週刊誌の編集部にな、許可を出したんやって」

 

軽く頭痛がした、あの二人は一体何を考えているんだろう?

 

「それで今度、六課の仕事と兄ちゃんにインタビューをして。それをTVで放送するんやて。ごっつ楽しみやろ!」

 

ものすごいハイテンションだ、なにがそんなに楽しいのだろう?

 

「何時あるんだ?」

 

気になったのは其処だが

 

「う~ん、もう少ししたらやな。TVに出るのか~楽しみやな~」

 

はやて達は可也テンションが高い。こうして今日もまた忙しい一日が幕を開けた、

 

食堂での話しを終え、一人自室に戻り。紅茶を片手に天雷の書を開く

 

「・・・やはりな・・」

 

デバイスが記録されているページから二つのデバイスの情報が消えていた

 

「王、やはりこれは答えを得たと言う事でしょうか?」

 

「判らないな、だがそれに近い状態か。それとももう一押し何か足りないのかもな」

 

スバルとティアナが持つ。アクサセリーは実は一種のデバイスなのだ。天雷の書とリンクしており。ある条件を満たすとデバイスに変化するのだ。(ノーヴェ達が持つデバイスもこれが変化したものだ)。また消えてはいるが暫くすると復活し召還することが出来る

 

「確かめてみるか・・」

 

情報が消えていたページには鋼鉄の孤狼、白銀の鷹とデバイス名が記されていた

 

「最強クラスのデバイス・・・王の身近な女性は皆お強いですね」

 

からかうようにセレスが笑う

 

「まったくだ。ノーヴェ達もだがな」

 

天雷の書から消えたデバイスは今まで計6個、所持しているのは、ノーヴェ、ディード、チンク、ウェンディ、オットー、セッテだ皆SSSクラスのデバイスを得た、そして今またSSSクラスのデバイスが2つ消えようとしている。それは喜ぶべきか否か悩む所だ

 

「しかし、少々手荒い方法になるしかないのが欠点だな」

 

戦闘中にしか変化しないという変わった特徴を持つ為、模擬戦の中で答えに辿り着かねばならない

 

「ふー、女性に手を上げるのは趣味じゃないんだがな」

 

その事で若干気落ちするが

 

「これからの戦いに備えるには。早く目覚めさせる必要があるな」

 

強力だが癖のあるデバイスだ。使い始めて2日、3日で使いこなせる物ではない

 

「仕方ない、今から模擬戦に行くとするか」

 

紅茶を一息で飲み干し、演習場に向かった

 

 

 

「はい、今日の訓練は此処までだよ」

 

「「ありがとうございました」

 

演習場でなのはさんが笑顔で言う。

 

「皆大分慣れきたみたいだね、皆平気そうだし」

 

最初はなのはさんの訓練に付いて行けず、へばってしまったが今はそれほどでもない

 

「このリストの御蔭だと思いますよ?」

 

スバルが身に着けていたリストを持ち上げながら笑う、以前龍也さんに貰った物だがこれを着け始めて、早一ヶ月魔力も順調に増加している

 

「はは、そのリストね、私も着けてみたけど。結構きついからね」

 

なのはさん達は私達のと違い更に強力なリストを渡された。らしく結構苦戦していたようだった

 

「兄貴らしいけどな、皆が怪我しないように考えてるんだろうよ」

 

最近ネクロは全く現れない、龍也さんが言うには何かに備えてるんだろうと言うが、龍也さんも判らないようだ

 

「それじゃあ、訓練の終わりに模擬戦をしようか?」

 

訓練の締めになのはさんと模擬戦をやることになったが

 

「待て・・それは私がやる」

 

何時の間にか現れていた、龍也さんに止められる

 

「龍也さん・・如何したんです?急に」

 

歩いて来る龍也さんはどこかピリピリしている

 

「少し確かめたい事があってな、悪いがなのは達は下がってくれ」

 

「判りました。設定はどうしますか?」

 

なのはさんとヴィータさんがデバイスを待機状態に戻し、尋ねる

 

「市街戦で頼む。それと・・普段の結界より一ランク上の物にセットしてくれ

 

「判ったけどよ、どうしてだ?」

 

一ランク上の結界にする理由が判らず、ヴィータさんが尋ねると

 

「必要だからな。それより頼んだぞ」

 

なのはさんとヴィータさんが操作室に行き、演習場が市街に変わる

 

「さて・・スバル、ティアナ。言って置くが今回私は本気だ。一瞬たりとも気を抜くな」

 

圧倒的な威圧感が放たれる。それだけでも本気と理解できる

 

「スバル、気を抜いちゃ駄目よ」

 

隣に立つスバルに声をかける

 

「判ってる、龍也さん、本気だ」

 

スバルも理解しているのか、鋭い視線だ

 

「セットアップ・・・」

 

目の前の龍也さんが静かにデバイスを起動させる。ノーヴェと模擬戦の時の騎士甲冑になる

 

「準備は良いですか?それでは始めっ!」

 

なのはさんと合図と共に模擬戦が開始された

 

「行きます!」

 

スバルが駆け出そうとするが、その動きは強制的に止められる

 

「遅い・・」

 

既にスバルの目の前に立っている。そんな・・早すぎる

 

「ふんッ!」

 

ドゴッ!鈍い音を立ててスバルの腹に龍也さんの膝蹴りがめり込む

 

「かっは・・・」

 

予想外の衝撃に動きが止まるスバルに

 

「消えろ・・」

 

即座にスバルの顔に拳を叩き込み殴り飛ばす

 

バキィ!鈍い音を立ててスバルがビルに叩きつけられる。今まで顔や腹を狙わなかった龍也さんが、いきなり顔を狙った。その事が信じられず動きが止まる

 

「私は言わなかったか?一瞬たりとも気を抜くなと!」

 

ドスッ!

 

「かは・・・」

 

龍也さんの拳が腹に突き刺さり。肺から強制的に息が吐き出される

 

「言っただろう?私は本気だと」

 

そのまま鋭い龍也さんの蹴りを喰らい、私もスバル同様ビルに叩き付けられた

 

「ティア、大丈夫?」

 

スバルが苦しそうに言う。たった二撃それだけで私達は戦闘不能寸前だ

 

「だ・・大丈夫よ。このくらい如何って事無いわ」

 

立ち上がり、クロスミラージュを構える。

 

「私が撹乱するよ。ティアはサポートお願い」

 

「了解。龍也さんは本気、接近戦に気をつけてね」

 

今日の龍也は何処かおかしい。普段は狙わない腹や顔を狙った事が気になる、何か目的があるはずだ

 

「判ってるよ。それより援護任せたよ」

 

スバルがウィングロードに乗り駆け出す

 

「てええぃ!!」

 

加速してからの拳を放つが

 

「何処を狙っている?」

 

軽いサイドステップで回避し、再び顔目掛け拳が振るわれそうになる

 

「させない!」

 

即座に魔力弾を放ち龍也さんとスバルを引き離させる

 

「ちぃ!」

 

舌打ちをし、後方に跳躍しスバルから距離を取る

 

「でええええいっ!」

 

スバルが加速し、龍也さんに蹴りを放つが

 

「甘いと言っている」

 

その足を掴みそのまま持ち上げる

 

「わっ!わっ!」

 

スバルが何も出来ず持ち上げられそのまま、私目掛け投げつけられる

 

「スバル!」

 

飛び出し受け止めようとするが、思ったより勢いがあり、私は受け止めた物のビルに叩きつけられ意識を失った

 

 

「痛たた、ティア大丈夫?」

 

ビルに叩き付けられる瞬間、ティアが受け止めてくれた御蔭でダメージは少ない、

 

「ティア?」

 

無反応のティア、どうやら気絶しているようだった、

 

「ビクッ!なんだこの魔力は!」

 

異常な魔力を感じ前を見る、龍也さんが魔方陣を展開し、今にも砲撃が放たれる寸前だ

 

「スバル、お前の答えを見せてみろ」

 

そう言うと龍也さんは

 

「ヘルズ・・キャノン!!」

 

砲撃を放った

 

「くっ!」

 

その場を離れようとするが駄目だ、ティアを置いてはいけない、ここで避ければティアは間違いなく重症を負う。私に出来ることは唯

一つ

 

「相棒!カートリッジロード!!」

 

『カートリッジロード!!」

 

マッハキャリバーから空の薬莢が飛び出し、魔力を増加させるそして

 

「プロテクション!!!」

 

全力で龍也さんの攻撃を受け止めるだけだ!

 

「くっ・・・」

 

思ったより、砲撃の威力は低いがこうやって受け止めるのが限界だ

 

『相棒!頑張ってください!』

 

マッハキャリバーが頑張れという

 

「判ってるよ!大丈夫!」

 

そうは言うが徐々にプロテクションに皹が入る

 

(駄目だ!これ以上は持たない)

 

放射時間が予想以上に永い。これ以上耐えることは・・・

 

「うぅ・」

 

ティアの声が聞こえる、そうだ!守るんだ!さっきティアが私を守ってくれたように、今度は私が守る!!消えかけた闘志に再び火が灯る、その瞬間

 

(汝・・答えを見つけたり・・)

 

その声と共に世界が停止した

 

「これは・・・」

 

(汝が示し心は守ること・・)

 

お守りとして持っていた鍵が宙に浮かび、その姿を変える。

 

「狼?」

 

その場にいたのは機械で出来た赤と黒の鋭利なフォルムを持つ、機械の狼だった

 

「汝。我が主たる資格を持ちし者・・我が名は鋼鉄の孤狼・・ベオウルフ。我・・汝と共に覇道を駆けん!!」

 

大きく叫びを上げ赤い球体になり、マッハキャリバーにその光は飛び込んだ

 

『わっ!なんですか・・』

 

マッハキャリバーは驚きの声を上げると

 

『お前の体を取ろうと言う訳ではない。お前が主を支えるのだ』

 

静かに諭すようにベオウルフが語る

 

『王は強い、だが今王は一人、セレスもアイギナ達も居ない。ならば主とお前が協力すれば王を打倒できる。そして王の望む答えを示せ!』

 

マッハキャリバーが待機状態に戻るが、その色は赤い。そのクリスタルはゆっくりと点滅し、点滅が終るとベオウルフの気配は完全に消えた

 

『相棒・・行きましょう。龍也様に答えを示しましょう』

 

点滅するマッハキャリバーを確りと握り締める

 

「うん、行こうマッハキャリバー・・セットアップ・・」

 

バリアジャケットが展開されるがそれは少し今までの物と違っていた。白のバリアジャケットは真紅に染まり、胸部と肩と足には鎧が展開されている。ベルカの騎士甲冑とミッドのバリアジャケットが少しずつ融合した感じだ

 

「あれ?左手にもリボルバーナックルがある」

 

左手にはリボルバーナックルに似ているが、少しデザインの違う紅い篭手が装着されていた

 

『相棒、バリアジャケットの性能が大幅に上昇しています』

 

能力を確認している間に、停止した時間が徐々に動き始める

 

「相棒!プロテクション!!」

 

『了解!!』

 

全力でプロテクションを展開した、瞬間爆発が巻き起こった

 

 

「遣り過ぎたか?」

 

大分手加減したが・・・着弾時の爆発でスバルとティアナの姿は完全に消え、見る事が出来ない。

 

『龍也さん!!遣り過ぎですよ!!」

 

なのはの怒鳴り声が聞こえ、一瞬ビルから視線をずらした、瞬間

 

「ウィングロード!」

 

青い光の道が走り。その上をスバルが駆け抜けてくるが、バリアジャケットが多少変化している

 

「リボルバーブレイク!!」

 

左手の篭手に青い魔力光が集まり、そのまま殴りつけてくる

 

「はあっ!」

 

迎撃の為に拳を繰り出すが

 

(お、重い)

 

予想以上の攻撃の重さに耐えることが出来ず、後方に殴り飛ばされる

 

「まだですよ!」

 

ウィングロードの上を駆けてくるが

 

(速いっ!)

 

その速さは先程よりも遥かに速く、殴り飛ばされた私に追いつき

 

「てぇぇいっ!」

 

上空に蹴り上げる

 

「ぐっ」

 

空中で体制を立て直すが

 

「スフィアクラスターッ!!」

 

「!」

 

スバルの肩の鎧から、散弾の様なスフィアが次々打ち出された。反射的にプロテクションを使うが、貫通し幾つかは体に直撃する

 

「くぅっ」

 

ダメージは其処まで大きくは無いが膝を付く。すると私の目の前にスバルが立ち

 

「私が得た答えは守る力!この力で貴方を倒します!!」

 

答えを得たか・・だが私もそう簡単に負ける訳には行かないな・・立ち上がり拳を再び構え

 

「そう簡単に私を倒せるなどと思うな!」

 

私とスバルの拳が交差する。まだ戦いは始まったばかりだ

 

 

第45話に続く

 


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