夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第46話

第46話

 

「うっ・・・ここは・・・医務室か?」」

 

目を開くと同時に軽い頭痛がした

 

「王よ、お目覚めになりましたか?」

 

ベッドの横にはセレスが腰掛けていた

 

「セレス・・ああ大丈夫だが・・しかしスバルとティアナに負けるとは思わなかったな」

 

セレスの手を借りて上半身を起こす。思ったよりダメージが大きく出ているようだ

 

「・・・なんでスバルとティアナも寝てるんだ?」

 

私が寝ていたベッドの隣ではスバルとティアナが眠っていた

 

「魔力の消費で気絶したようです・・それより立てますか?」

 

「問題ない」

 

少々体がだるいが大して気になる事ではない

 

「はやて様達が聞きたいことがあるそうですよ」

 

「・・デバイスの事か?」

 

思い当たるのはそれだけだが、私にも判らないことがある

 

「まさか・・融合するとは思わなかったのだが・・・」

 

今まで天雷の書からデバイスを得たのは。チンク達のみそれは天雷の書に記されたままの形だった。恐らくスバル達も同じだろうと思っていたのだが。まさかマッハキャリバーとクロスミラージュに融合するとは思っても居なかった事だ

 

「私もですね・・」

 

セレスも判らない様だ

 

「まぁ・・此処で話していても変わらんから、はやての部屋に行くか・・」

 

枕元の机に置かれたコートを着ようとするが

 

「王、今の貴方は疲労しています。そのコートを着るのはオススメできません」

 

と言われてコートを取り上げられてしまった

 

「判った・・・」

 

何時も来ているコートが無く、少し違和感を感じるが、セレスの言う通りなので着る事を諦め。私とセレスははやての部屋に向かった

 

「・・・帰っても良いか?」

 

はやての部屋の前で私は隣のセレスに尋ねたその理由は

 

『シャマル!そこ退いて!!スバルとティアナにお話出来ないでしょ!!』

 

『シャマル・・邪魔しないで・・・』

 

『いやー!!デバイスを振り回さないでー!!!!』

 

ドタドタッ!と暴れまわる音がし、更にはシャマルの悲鳴が断続的に聞こえてくる

 

『くすんっ・・兄貴がスバルとティアナに取られるなんて嫌だ・・・』

 

『こうなったら・・もう兄ちゃんを押し倒すしか・・・』

 

『ヴィータも主はやても落ち着いてください!』

 

シグナムの絶叫が扉越しにもしっかり聞こえてくる

 

「・・・駄目です・・」

 

セレスも不安げで言う。今この扉を開けば待っているのは混沌(カオス)だけだ

 

「大丈夫ではないでしょうか?王が行けば事態は収拾されるでしょう」

 

不安を感じながらはやての部屋の扉を開いた

 

「二人とも落ち着いてー!!」

 

シャマルが必死にレイジングハートとバルディシュを押さえ込んでいるが

 

「先にシャマルからお話しようか・・?」

 

「邪魔するなら消す・・・」

 

なのはとフェイトの怒りの矛先がシャマルに向き始めている・・と言ってもなんで怒っているのか判らない

 

「もう薬でもなんでも使ってまうか?でもそれは私が嫌やな・・・」

 

「兄貴っー!!!!!」

 

「二人とも落ち着いてください!!」

 

シグナムが物凄く消耗した様子で私の方を見る

 

「・・・・・」

 

見なかった事にし部屋から出て行こうとする私と目が合う

 

「兄上!!何処へ行くのです!!!」

 

ザッ!!はやて達が一斉に此方を見る

 

「兄ちゃん!」

 

「兄貴!」

 

「龍也!」

 

「龍也さん!」

 

「お兄さん、助けてください!!」

 

どうやら逃げ道は完全に絶たれたようだった・・観念し私は

 

「何があったんだ?」

 

と問いかけ話を聞き始めた。支離滅裂で何を言っているか良く判らなかったが、幾つかキーワードを聞く事に成功した。負けたのか

スバルとティアナの顔に傷、汚されてないか等だ。最初の二つは判るが最後は意味不明だった、言いたい事が言い終わったのか落ち着きを取り戻したなのは達に一安心し

 

「シャマル・・・大丈夫か?」

 

燃え尽きたという感じでソファーに座り込んだ、シャマルは

 

「お兄さん・・・私は疲れました・・・・ガクッ」

 

そう言い残し意識を手放した

 

「シャマル?・・・おい大丈夫か?」

 

揺すって見るが全くの無反応、どうやら完全に落ちたらしい

 

「所で兄上、如何してスバルとティアナのデバイスが変化したのです?」

 

気絶したシャマルはソファーに横にしている。今回最も被害を受けたのは間違いなくシャマルだろう

 

「私も判らんな・・チンク達は普通にデバイスとして手にしてたしな」

 

私も判らなくて首を傾げるが

 

「・・兄ちゃん・・チンクさん達も同じようなデバイスを持ってるん?」

 

はやてが向かい側に座り尋ねてくる

 

「まあ・・そうだな、・・・所でヴィータ離れてくれ」

 

先程から私にしがみついて離れないヴィータに離れるように言うが

 

「やだ・・・・・」

 

離れる気は無いようだ・・そんな事を思っていると

 

「龍也さん・・私も座って良いですか?」

 

「龍也・・・ごめんなさい」

 

デバイスを取り出し暴れた二人は現在正座中だ

 

「話し終わるまでそのままで我慢していろ、・・まったくデバイスまで取り出して何が原因なんだ」

 

二人からデバイスを取り上げ、レイジングハートに話しかけると

 

『龍也様・・そのマスターはスバルとティアナの顔に怪我があると聞いたら、暴れだし始めまして』

 

言いにくそうにレイジングハートが言った

 

「・・・・顔に怪我か・・不味いことをしたな・・・」

 

あの時は気付かなかったが、どうやらスバルとティアナは顔に怪我をした様だ

 

「兄ちゃん・・責任取るとか無いよな・・?」

 

「何のことだ?そんなに深くないんだろう?それなら私が治せるが・・・何か埋め合わせをしないとな」

 

そこまで深くないなら私が怪我は治せるから問題ないだろうと言う。それより倒されてしまったので何か言うことを聞かないと、

と私は考えていた・・二人とも常識人だから無茶な要求はないと思うが・・・そんな事を考えていると

 

「ほー良かったわ」

 

物凄く安堵した表情で呟くはやてを見ていると立っていたセレスが

 

「王、話がずれています、デバイスの件はどうなったのです?」

 

セレスの言葉で思い出した、そう今の問題はスバルとティアナのデバイスの件だ

 

「そうやったな・・・」

 

はやても完全に忘れていたようだった

 

「兄貴ー♪」

 

しがみついているヴィータは笑顔のままだ、いい加減離れてくれるとありがたい

 

「「足が・・・痺れました」」

 

なのはとフェイトは足が痺れダウンしている、

 

「それで兄ちゃん何か判ってることは?」

 

はやてが身を乗り出しながら尋ねてくるが

 

「まぁ・・私が言えることは一つだな・・使う分には何も問題がないそれだけだ」

 

事実それ以上言えることも判っている事も無いので、この話は此処で終了となり解散となった。ただシャマルだけはスバルとティアナが心配だからと医務室に戻っていった。私は自室に戻りながら

 

(顔に傷か・・・治せれば良いけどな)

 

スバルとティアナの顔の傷が気になっていた

 

 

「ここは?」

 

目を覚ますと白い天井が目に入った

 

「あっ!ティアも起きた?」

 

隣のベッドからスバルの声が聞こえ隣を見る、左の頬にガーゼを張ったスバルが笑っていた

 

「スバル、ほっぺ如何したのよ?」

 

「・・・ティア、自分の右の頬見てみなよ?」

 

呆れた感じのスバルに言われ鏡を見ると私の頬にもガーゼが張られていた

 

「シャマル先生が言うには浅いけど切り傷があるんだって」

 

スバルと話をしていると

 

「あら?ティアナも起きた?」

 

シャマル先生がカルテを見ながら

 

「怪我は大したことないわ、ちょっと顔に切り傷があるけどこれも問題なし。時間が経てば治るから心配ないわ」

 

体の状態を丁寧に説明してくれるが

 

「あの・・龍也さんは?」

 

私達と同じで気絶した筈の龍也さんの姿が見えないので尋ねてみると

 

「お兄さんはもう自分の部屋で休んでるから大丈夫よ。・・・それより食欲はある?」

 

そういえば空腹感があると感じた。どうやらもう夜のようだ

 

「シャマル先生、私は食欲あります!!」

 

スバルが右手を上げながら言うと

 

「判ったわ、じゃあ今から何か持ってくるから待っててね?ティアナも食べるわよね?」

 

「はい、お願いします」

 

シャマル先生に食べると言うと微笑み、医務室を出て行った。暫くしてサンドイッチをトレーにを乗せたシャマル先生が戻ってきた。

サンドイッチを食べ終わるともう部屋に戻っても良いと言われ、二人で自室に戻った

 

「ティア・・私達龍也さんに勝ったんだよ」

 

スバルがポツリと語り始める

 

「そうね・・私達は龍也さんに勝ったわ」

 

ゆっくりと返事を返した

 

「・・・一撃入れたら、言うことを聞いて貰えるんだよね?」

 

スバルが思い出したように言う

 

「そうね・・・その筈よ」

 

私も忘れていたがその約束の筈だ

 

「何お願いしようか?」

 

スバルが何を頼む?と尋ねてくるが、私が頼むことは既に決まっている

 

「・・・・スバル・・・今から龍也さんの部屋に行くわよ」

 

「へっ?もう夜だよ、迷惑になるんじゃ」

 

スバルが聞き返してくるが

 

「嫌なら良いわ、私だけで行くから・・じゃあね」

 

「ちょっと待って、私も行くよ」

 

二人で龍也さんの部屋に向かった

 

「ねぇ・・ティア・・なに頼むの・・・」

 

不安げに言う、もし此処でなのはさん達に見つかれば確実にお話し、ヴィータさんや部隊長なら間違い無く死が待っている

 

「行けば判るわ。それより大きな声出せないで見つかるから」

 

私達は無事に龍也さんの部屋の前に到着した

 

コンコン!ノックをすると

 

「誰だ?用があるなら入ってきてくれ」

 

と声がしたので龍也さんの部屋の中に入る。

 

「スバルとティアナか、怪我はどうだ?」

 

本を片手に怪我の事を聞かれた

 

「大丈夫ですよ?直ぐに治るみたいですから」

 

そうかと頷き再び本のページを捲る龍也さんに

 

「私とスバル、龍也さんに一撃入れましよね?」

 

「そうだな・・それで来たのか?」

 

頷き紅茶を飲みながら本を読む龍也さんに

 

「ええ、一撃入れたから言うことを聞いて貰えるのかの確認に」

 

「言ったことは守るよ?正し無茶な物意外だぞ・・」

 

穏やかに笑う龍也さんだが、私達の顔のガーゼを見て

 

「顔の怪我はどうだ・・・」

 

心配そうに言う龍也さんに

 

「平気ですよ、でも顔は少し酷いんじゃないですか」

 

「そうだな・・・それは悪いと思っている。何か出来る事ならするが?」

 

この言葉を待っていた

 

「それじゃあ、一撃入れたのとは別に、一つ言うことを聞いてくれませんか?」

 

スバルは何を頼むのかと首を傾げている

 

「別に構わないが?」

 

良し、言質取った!

 

「それじゃあ、聞いて貰えます?私達のお願いを」

 

「だから構わないと言っているだろう?」

 

と笑う龍也さんに

 

「それじゃあ、今日一緒に寝ても良いですか?」

 

「「ぶふぉっ!!!」」

 

スバルと龍也さんが同時に噴出す、紅茶を口に含んでないのがせめてもの救いだろう

 

「何を言っている!」

 

「ティアー!何言ってるの!!」

 

二人が同時に言うが

 

「別に深い意味がある訳じゃないですよ?唯一緒に寝たいと思っただけですから」

 

そう深い意味はないから問題ないのだ、

 

「いや・・だが・・その・・何だ」

 

龍也さんがしどろもどろで何とか止めさせようとするが

 

「何ですか?龍也さんは私達に変なことをする気ですか?」

 

スバルは完全に脳の処理を超えたのか真っ赤でぶつぶつ言っている

 

「するかっ!!!」

 

即座に切り返してくる、龍也さんがそんな事をしない人とは私達が十分理解している

 

「じゃあ問題ないじゃないですか」

 

何も言えなくなった龍也さんに

 

「さっき言ったじゃないですか?言うことを聞いてくれるってそれとも嘘を付くんですか?」

 

龍也さんの逃げ道は完全に絶った

 

「・・・判った・・正し一つだけ条件がある」

 

龍也さんが妥協案を出した

 

 

「少し計画がずれたわね」

 

ティアが隣でブツブツ呟いている。龍也さんが出した案それは、一緒の布団で寝るのは駄目だ。正し同じ部屋なら良いという物だったティアは不満そうだが私はこれで良い、幾ら龍也さんが好きでも恥ずかしいからだ、普段龍也さんが使っているベッドで私とティアが眠り、龍也さんは床に直接布団を引いて既に眠っている

 

「ねぇ・・ティアは何でこんな事を頼んだの?」

 

気になっていた事を問いかけると

 

「そうね、どうしてかな?・・・・今思うと凄く恥ずかしいわ」

 

ティアも冷静になったのか真っ赤だ

 

「でもこういうのも良いかもしれない・・」

 

既に眠っている龍也さんを見ながらティアが呟く

 

「もう寝ちゃってる龍也さんが凄いと思うけど」

 

私達が龍也さんと一緒の部屋と言うだけで緊張して眠れないのに、・・もしかすると私達は女として見て貰えてないのかも知れない

そう思うと少し寂しい気もするが、今は此れで良いそんな風に思っている

 

「スバル。私達のデバイスどうしたんだろうね・・」

 

ティアが待機状態のクロスミラージュを持ち上げ呟く、

 

「そうだね・・」

 

私達のデバイスは全く別物になってしまっている。説明では太古のデバイスと融合したと聞いてるが。それ以上の事は龍也さんでも判らないらしい・・・でも一つだけ判ってることがあるそれは・・・

 

「でも・・マッハキャリバーはマッハキャリバーだよね!!」

 

どれだけ姿が変わろうとそれだけは変わらない

 

『相棒・・はい、その通りです』

 

待機状態のマッハキャリバーが光る

 

「そういう事よね、クロスミラージュもそれは同じでしょう?」

 

ティアも同じ様にクロスミラージュに問いかけている

 

『はい。その通りです・・』

 

クロスミラージュが返事を返す、その様子を見ながら

 

「「それに此れは私達が答えを得た証」」

 

デバイスの変化は私達が答えを得た証なのだ、そう思うと自然に笑みが零れた

 

「「これからも宜しくね、マッハキャリバー(クロスミラージュ)」」

 

『『此方こそ、宜しくお願いします』』

 

力強く返事をする己デバイスに笑みを零しながら、私達は眠りに付いた・・

 

きっとこれからも私は歩いていけるだろう。出来ればその時龍也さんが隣を歩いてくれたら良いなと思った。

 

第47話に続く

 


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