第50話
今日の機動六課はすこし浮足立っていた。局員の大半がソワソワしていた。なぜなら今日はテレビが撮影にくるからだ。
主に取材やインタビュー等は前線メンバー、隊長陣が担当するので他の局員は気にすることはないのだが、機動六課はなぜか女性の比率が高い。だから少しでも映ることを考えてか、皆身嗜みやメイクに余念がない。もちろんそれは隊長やフォワード達にも言えた。
今前線メンバーは部隊長室に集まりミーティングを行っていた。シグナムやヴィータまでもが気合いの入った化粧をしていた。
「今日はテレビの取材が来る。これは管理局のイメージアップにも繋がる大事な任務や。みっともないところは見せられへん」
いつになくはやてが皆に真剣に語りだす、フォワード達も些か緊張した面持ちではやての言葉を聞いている。するとはやてはフッと顔を笑みに変えた。
「・・・と、固い事は終わりにして。ま、普段通りやったらええよ。飾り立てることのない、本当の私達の仕事を見てもらおう」
「はい!」
はやての言葉に皆が元気よく返事する中、私は若干憂鬱だった
「なんや兄ちゃん、そんな暗い顔してどうしたんや?」
私の気持ちを感じ取ったのかはやてが尋ねて来るが
「それは憂鬱にもなる。こんな服は着たくなかった・・」
今着てる服は管理局でも上位の隊員だけが着る事が出来る制服で、私はこの堅苦しい感じが嫌いで普段は、一般の男性局員が着る制服の上から黒のコートを羽織っている。だが今回は中将としてTVに出る事に成ったので嫌々この制服を着たが、やはりこの服は好かん
「なに言うとるんや、無茶苦茶似合ってとるやん。なぁ?」
はやてが皆を見ながら言うと
「そうですよ、お父さん。凄く格好良いですよ」
そうは言うがな・・・
「お兄様、普段からそれを着れば良いです」
リィン・・私は余りこう言うのは・・・
「お父さん。それで買い物に連れってくれませんか?」
もう良い・・我慢すれば良いのだろう・・
半分諦めの境地で幼少組み(リィン、エリオ、キャロから視線をずらす)
「うん、やっぱ良いわ・・」
振り返ると、直ぐ目に入る怪しい目のはやて
「写真撮られないかな?」
「カメラ持ってるよ?」
写真撮れないかとなのはが言うと、即座に懐からカメラを取り出すフェイト
「・・・・昨日の服も良かったけど・・やっぱりこっちの方が・・・」
もう嫌だな・・どうしてこうなったんだろう?
「ヴィータさん、写真撮ってましたよね?これと交換でどうです?」
「!?これは・・・良いぜ換えてやる」
お互いに何かの写真を取り替える、スバル、ヴィータの姿を見て
「こんなので大丈夫なのか?」
胸の中に去来する不安に押しつぶされそうだった
「えー、今私は機動六課前に居ます」
私の名前はクリス・アンダーソン、週間管理局の編集長であり。レポーターでもある
「何度もアポイトメントをとり。漸く取材の許可が下りました」
歩きながら思う、この取材の為に何度管理局の上層部にアポイトメントを取った事か・・・
「それではいざ、取材に行きたいと思います」
そんな事を考えながら六課の中に入って行った
「始めまして、機動六課部隊長、八神はやてです」
ロビーでは部隊長のはやてさんが待っていた
「此方こそ始めまして、クリス・アンダーソンです。今日の取材宜しくお願いします」
握手をしながら思う
(確か・・情報では・・可也危険域のブラコンって聞いてるけど・・痛い!)
私が今までの取材で聞いたことを思い返していると。突然握手していた手が凄まじい力で握り込まれる。その力はまるで万力の様だ
そんな事を思いながら恐る恐る、はやてさんを見る笑ってる。笑ってるけど目が笑ってない
「如何しましたか?」
笑い掛けてくるが正直言って恐ろしい。私はどうやら地雷を踏んだようだ
「いえ、何でもありません(すいません。もう考えません)
なんでも無いと言いつつ頭の中で謝罪の言葉を言う。すると手の力は緩まった
「それでは行きましょうか?(次は無いで?」
穏やかな言葉等裏腹に、底冷えする声が聞こえた気がした
「はやて部隊長は仕事が無いんですか?」
施設内を案内して貰いながら気になったことを尋ねると
「そんな訳無いですよ。取材が来るんで早めに自分の仕事を終らせただけですよ」
流石僅か19歳で部隊を立ち上げた才女だ。
「まずは朝の訓練の方を見学してもらいますので。此方へ」
演習場へと案内された
「これが最新鋭のシュミレーターですか・・・」
演習場は使用中だけあって、市街地になっていた
「六課が誇る最新鋭の装置ですよ。それより此方へどうぞ」
案内されたのは演習場を見渡せる場所だった
「凄いですね・・」
目の前ではエースオブエース、高町なのはと金色の戦乙女、フェイトTハラオウンに、ベルカの騎士の八神ヴィータ、八神シグナムに訓練を付けて貰っている。4人の新人の魔導師の姿がある
「そうですか?これは何時もの訓練より大分軽いですよ?」
信じられない。ミッド式の高町さんとテスタロッサさんに、ベルカの騎士のシグナムさんとヴィータさん、如何見ても可也厳しい物だ
「もう終わりみたいですね・・もう少し早く来れば良かったですか?」
高町さん達が離れていくので、これで訓練は終わりかと尋ねると
「違いますよ、ここからが午前の訓練の本番ですよ」
そうはやてさんが笑うと一人の男が姿を見せた
「・・蒼天の守護者。八神中将・・」
管理局最強にして、伝説とも言える最強の魔導師、八神中将。かなり離れているが存在感というか威圧感は凄まじい物がある
「今から何が始まるんです?」
訓練とはいえランクが違いすぎる、模擬戦とかで無いだろうと思いながら尋ねると
「見てれば判りますよ、兄ちゃんの訓練は厳しいけど可也プラスになりますからね」
と言われたので演習場を見ると、八神中将の回りにとんでもない数のスフィアが浮かんでいた
「すいません、あれ幾つくらいあるんですか?」
軽く見ても100はあると思うが・・
「250ですよ。ちなみに隊長陣は450です」
笑顔で言うがそれは到底笑顔で言える数ではない
(これ絶対出来るわけ無いよ・・)
そう思いながら演習場を見ると
「嘘・・・」
4人とも回避しながら八神中将に接近している。その動きは無駄が全く無かった
「この訓練は3分の間に兄ちゃんに接触できれば終わりです。勿論出来なくても良いですが」
恐らく出来はするが、そう簡単には出来ないように設定されているんだろう
「さて・・後30秒・・皆出来るかな?」
もうカウントダウンだ。
25秒・・・龍の隣の少女・・キャロだったかな?が頭を低くした
15秒・・・そのまま走り出す
5秒・・・体に当たり掛けるスフィアを回避しながら大きく前に跳ぶ
2秒・・・体当たり気味に八神中将に突撃する。八神中将は微笑みながら抱き止める
「お~、キャロがやったか~」
パチパチと手を叩きながらはやてさんが笑う
「凄かったですね」
軽くトラウマになる、スフィアの雨を回避しながら八神中将に突撃したキャロちゃんは本当に凄いと思う
「さてと行きましょうか?次は食堂に行くので、そこでインタビューをすると良いですよ」
はやてさんに連れられ演習場から食堂に向かった、暫くそこで他の隊員にインタビューをしていると
「あ~お腹すいた~」
先程演習場で見た青い髪の少女・・確かスバルさんと
「スバル。TV来てるのよ馬鹿じゃない?」
辛口のツインテールの少女・・ティアナさんが入ってくる
「次はあの二人にインタビューしてみたいと思います。行きましょう」
カメラマンとスバルさんとティアナさんの所に向かった
「すいません、少し良いですか?」
二人が座っている席に座りながら尋ねる
「何ですか?」
尋ね返してくるティアナさんに
「少しインタビューをしたいんですが宜しいですか?」
メモ帳を取り出しながら訪ねると
「良いですよ。何をお答えすれば良いですか?」
笑みを浮かべるティアナさんにインタビューを開始した
「まずは何時もあんなにきつい訓練何ですか?」
「今日はまだ優しいほうですね。普段は龍也さんとの模擬戦がありますから」
メモしながら次の質問をする
「龍也さん・・八神中将の事ですね。そんな呼び方をして怒られませんか?」
ティアナさんが口を開く前に
「龍也さんは中将って呼ばれるのが好きじゃないんですよ」
スバルさんが答えてくれる
「そうなんですか・・それじゃあ八神中将のデバイスはどんな物ですか?」
さっきはデバイスを起動していなかったのでどんなデバイスか尋ねると
「すいません。それは余り他言して良い事じゃないので答えれません」
申し訳なそうに言うティアナさんとスバルさんにインタビューをしていると
「お父さんは暖かいです」
「リィン曹長の気持ちが判ります・・凄く安心します」
「そういう物なのか?」
背中にキャロちゃんとエリオ君を背負った八神中将が姿を見せた
「えっと・・なんであの二人をおんぶしてるんですか?」
疑問に感じながらスバルさんに尋ねると
「龍也さんに一撃入れるか。タッチ出来ると言う事を聞いて貰えるんですよ」
なるほど・・そう言うご褒美があるのかと思いメモをする
「うん?この人がレポーターの人か?」
背中に二人を乗せたまま此方に歩いてくる。私は慌てて立ち上がり
「今日は取材の許可を頂きありがとうございます。クリス・アンダーソンです」
手を出しながら自己紹介すると
「始めまして、八神龍也です」
手を握り返してくる八神中将に
「感激です。生きる伝説に握手してもらえるなんて」
握手しながら二言三言話していると、背中の二人を降ろしながら
「やる事があるので失礼しますね」
そう言い食堂から消えた、八神中将に首を傾げると
「お父さんはレジアス中将に呼ばれてるんですよ」
エリオ君が説明してくれるが、1つ気になった事があった
「どうして八神中将の事をお父さんって呼んでるの?」
「その・・お父さんって呼んで良いですか?って聞いたら好きに呼んで良いと言ってくれたので。お父さんと呼んでるのですが・・」
少し話しただけだが、八神中将は包み込むような優しさを持っていたので、その呼び名は納得だと思いまたインタビューをしていると
「クリスさん、もう直ぐお昼なんで収録止めて貰っても良いですか?」
八神さん達が食堂に来たので一度収録を中断した
「ふー、緊張しますね」
カメラマンが言う、確かにその通りだ。私達が座っている机は隊長陣と六課の主要メンバーで固められている。此れで緊張しない方がおかしい。そんな事を考えていると
「クリスさん達も昼食にすると良いですよ」
八神さんに促され一緒に昼食を摂る事にした。他愛無い世間話をしながら食事をしていると
「私もお邪魔して良いかね?」
トレーを持った八神中将に声を掛けられる
「兄ちゃん遅かったなぁ。何してたんや?」
「レジアスと私の部隊についての話をしていた。・・・所で私は何処に座れば良い?」
私が座ってる机で空いてるのは、八神さんとヴィータさんの間。高町さんとテスタロッサさんの間とスバルさんとティアナさんの間だ
「兄ちゃんここ座れば良いやん」
「龍也さんここ空いてますよ」
「龍也、こっちだよ」
3方向からお呼びが掛かる。その瞬間穏やかな空気は消えた
「いい加減、人の兄ちゃんにちょっかい出すの止めてくれへん?」
「ちょっかいじゃないですよ。私はここが空いてると言っただけですよ?」
「はやて、いい加減に兄離れしたらどう?」
・・・怖っ!なにこの空気いるだけで凄いプレッシャーなんだけど
「・・ああ。また始まりましたね。お父さん争奪戦」
何事も無いようにエリオ君が言うので
「エリオ君こんな事が良くあるの?」
「良くありますよ?お父さんはモテますからね」
そういうエリオ君の視線は言い争う6人の美女達を見ている
「何で喧嘩するんだろうな?」
トレーを持ったまま首を傾げる八神中将
(この人何て鈍感なの。普通判らない?)
と思っていると痺れを切らしたのか
「勝手に座るぞ?」
そう言うと八神中将は、高町さん達の間に座った
「なっ・・くっ!兄ちゃんの性格を考慮すべきやった」
立ち位置的に一番近い所に腰掛けた八神中将見て、残念そうな八神さん達と違って勝ち誇った顔をする高町さん達を見ながら
(成るほど・・この人達は八神中将が好きなのね)
僅かな時間の攻防だったが、それだけで六課の内部が少し判った気がした
「八神中将。インタビュー良いですか?」
八神中将が食事を終えた所で尋ねると
「別に構わない」
笑う八神中将に一安心しインタビューを開始した
「独立遊撃部隊、アサルトフォースの隊員の目処は付いてるんですか?」
八神中将は独立部隊の隊長なのだが、隊員が居ないのでまだ部隊は発足されていない
「目処は付いてるが、それは此処で話す事ではないな」
流石にガードが固いわね
「それでは。聖王教会にスカウトされていると聞いた事がありますが。それはどうですか」
「ノーコメント。唯一つ言えるのは騎士の称号に興味は無いそれだけだ」
八神さん達も真剣な顔で話を聞いている
「今日の訓練を見せて貰いましたが、少し厳しいんじゃないですか?」
「各々の能力をちゃんと計算している、厳しい物だが出来ない物ではない。現にキャロがクリアしている」
確かにクリアしてる人が居るしね・・メモをしながら
「今日はデバイスを使っていませんでしたが、どんなデバイスを使用してるんですか?」
「ノーコメント。悪いが極秘事項だ、ただ種類は教えてやる・・アームドとユニゾンデバイスだ」
これはいい情報だ。使用しているデバイスの事を聞けたのはプラスだ。噂ではインテリジェンスだ、アームド。ストレージいろんな噂があるが、どれも確証は無かった。でもこれで次の記事が決まったわ
「それでは次の質問をしても宜しいですか?」
「悪いがここまでにして貰おう、そろそろ次スケジュールに移りたいからな」
私達の取材スケジュールは。午前の訓練。昼食。デスクワークで終わりになっている。
「そうですね・・少し残念ですが、次のスケジュールに向かいましょう」
食堂を後にし、各部署のデスクワークを見学し。取材の終わりの時間になった
「今日は本当にありがとうございました」
六課の前で八神中将に頭を下げる
「いや此れで少しは管理局の仕事が、いかに大変か判って貰えれば良いのだが」
と笑う八神中将にもう一度頭を下げ、六課の敷地内を後にした
「中々大変だったな・・・」
クリスさんを見送り、自室に戻ると
『龍也、待っていたぞ』
仮想モニターが展開されジェイルが笑っていた
「何してるんだ馬鹿、まだ通達は通ってないんだぞ?」
無実の通達が入るのは今日の夜、まだこの時点ではジェイルは犯罪者だ
『そんな事は判ってる、だが話さずには居られないんだ』
楽しげに笑うその顔はまるで子供のようだ
『明日から晴れて私は日の本を歩く事ができる。何度夢見たことか・・・』
子供の様にキラキラした目で笑うジェイルの気持ちは判る
「少し位は話に付き合おう、友よ」
『それはありがたいね』
二人では他愛無い世間話をしていると
「来たぞ。三提督からの通達が」
私の元にもその通達は届いた
【犯罪者、ジェイル・スカリエッティは捜査により、ネクロによって脅されていたことが判明した。よって罪を無効とし。明日より機動六課の協力者として向かい入れる事をここに発表する 三提督及びレジアスゲイズ中将】
この通達は全ての部署に通達されてる
『ははは、素晴らしい自由に乾杯だ、龍也』
机の上に赤ワインを置き笑うジェイルに
「では私も付き合おう」
同じようにワインを入れるが私は白ワインだ
『素晴らしい自由と』
「これからの未来に」
『乾杯!!』
画面越しにグラスを合わせ。一気に飲む
「どうせなら向かい合って飲みたいものだな」
画面越しでは少々味気ない
『くく、それもそうだ。ウーノにでも注いで貰いながらな』
違いない。再びグラスワインを注ぎ
「明日また共に飲もう、ジェイル」
明日からはジェイルも管理局の隊員だ。いつでも共に飲める
『そうだな、それでは今日はこれ位にしておくか・・』
グラスを空にして笑い、モニターの電源は切れた。
「私も寝るか・・」
グラスを片付けベッドに横になる
明日運命の歯車が大きく音を立てて回り始める
第51話に続く