夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第51話

第51話

 

「何故私達は一緒に行ってはいけないのですか!」

 

アジトの入り口でチンクが言う

 

「すまないね、まだこれから君たちの話をしないといけないから。連れて行けるのはウーノだけなんだ」

 

本当なら全員連れて行きたいところだが、三提督に許可されたのはウーノだけだ

 

「ごめんなさいね」

 

ウーノが申し訳なそうに頭を下げる。ウーノも出来るなら全員で行きたいのだ

 

「・・もう良いです、八神に宜しく言っておいてください」

 

まだ納得してない表情だが、頷き戻っていくチンクを見ていると

 

「よお、チンク達は納得してくれたのか?」

 

態々迎えに来てくれたゲンヤさんが笑う

 

「いやいや、納得させるのに大分苦労したよ・・」

 

セッテは酷かった、この世の終わりと言いたげに俯き泣いていた

 

「やれやれですよ・・セッテの龍也至上主義は」

 

セッテは命の恩人である、龍也の言う事なら無条件で聞いてしまう

 

「私も何回か言ったのですが・・セッテの考えは変わりませんでした・・・」

 

姉妹間でもセッテの事は重大な問題になりつつある

 

「龍也は罪作りだな・・」

 

12人に言い寄られているのに、それを冗談と思う龍也の鈍感さ加減は凄い

 

「でも・・きっと家のスバルが龍也を落とす。だってよアネモネのブローチを貰ったそうだぜ」

 

!?何てことだ・・龍也の事だからアネモネの花言葉を知らないで送ったのだろう

 

「くっ・・早急に手を打たねば、このままでは龍也を義息子に出来なくなる」

 

龍也の事は友だと思っているが、それと同時に娘の婿にとも思っている

 

「ふん、諦めな。龍也はナカジマ家の物だ」

 

「まだだ!龍也の鈍感スキルがある限り、まだ娘にも勝利の目はある」

 

「いえ・・龍也様の妹のはやて達は如何するつもりです?」

 

はっ!?最凶の敵を忘れていた・・いやまだなのは君とフェイト君も居る

 

「くっ・・どうすれば良いのだ」

 

龍也の事で頭を抱えていると

 

「早く行かないと、龍也様が怒りますよ?」

 

それは不味い。龍也は時間にうるさいからな

 

「そうだな、行ってから考えれば良いか」

 

ポケットから鍵を取り出し投げゲートにし。私達はそれを潜り転移した

 

 

六課の中は妙にピリピリした空気に満たされていた。昨夜の通達は全部署に通ってるが、納得していない者も多い

 

そんな空気の中ロビーで待ってると

 

「来たか・・」

 

ゲンヤさんに先導されている。ジェイルとウーノの姿が見える

 

「本当に大丈夫なの龍也?」

 

フェイトとエリオは落ち着きが無い

 

(プロジェクトFを考案したのはジェイルだしな・・無理も無いか)

 

二人は純粋な人間じゃないことにコンプレックスを持ってるからな・・

 

(こればかりは私が何を言っても変わるものではないからな・・)

 

そんな事を思ってるとゲンヤさん達がロビーに入ってくる。私とジェイルの目が合いお互いに歩き出す

 

「ちょ、兄ちゃん何考えとるんや」

 

「龍也さん!?」

 

はやてとなのはの慌てる声がするが関係ない。ゆっくり歩きジェイルの前に立つ

 

「・・・・」

 

緊迫した空気が包む、私とジェイルの関係を知るスバルとゲンヤさんは笑いを堪えている

 

「遅いんじゃないのか?」

 

「くく、すまないね。少々ハプニングがあったんだ」

 

お互いに笑いながら拳を持ち上げる。六課の隊員が慌て出すのを尻目に

 

「「友よ!待っていたぞ!」」

 

お互いに拳をぶつけながら言う

 

「・・・・・友?」

 

辺りを沈黙が包み込み、次の瞬間

 

「ええええええええっ!!!!!!」

 

はやて達の大絶叫が木霊した

 

「中々賑やかな所ですね」

 

ウーノは一人冷静に呟いていた

 

「兄ちゃん、どういう事か説明して欲しいやけど」

 

「説明も何もジェイルは友だが?」

 

これには間違い無いだろう、ジェイルの方を見ながら言うと

 

「おお、君がはやて君か龍也に聞いてるよ。ジェイルスカリエッティだ」

 

手を出しながらジェイルが笑う

 

「あっ、これはご丁寧に・・じゃなくて!!何で兄ちゃんとスカリエッティが知り合いやねん!!!」

 

はやてが爆発した、そんなに怒る事だろうか?

 

「はは、譲ちゃんそんなに怒るなって。話してみれば良い奴だぜ?」

 

ゲンヤさんも笑いながら言うが

 

「犯罪者ですよ!?何でそんなフレンドリー何ですか!?」

 

なのはが詰め寄りながら言う

 

「はっはっは、どうやら私の評判は予想以上に悪いようだな。龍也」

 

外笑い、中半泣きでジェイルが笑う

 

「大丈夫、話せば皆判ってくれるさ。だからウーノその握り拳を下げろ」

 

顔に青筋を浮かべながら・・拳を振り上げるウーノに言うが

 

「いえ・・これは無理ですね。幾ら温厚な私でも、ドクターを犯罪者呼ばわりされるのは不快です」

 

殴りかかる寸前のウーノを見て

 

「なのは謝れ!、ウーノが爆発する」

 

ここでウーノが暴れれば大変な事になる

 

「すいません。ウーノさん!!」

 

なのはも、その危険なウーノの素振りに頭を下げる

 

「・・今回は初犯なので許します。ですが次は無いです」

 

拳を下げジェイルの右斜め後ろに立つウーノを見ながら

 

「まぁ、とりあえずブリーフィングルームに行くか?」

 

はやて達とブリーフィングルームに向かう中

 

「「・・・・・」」

 

エリオとフェイトは鋭い視線でジェイルを見ていた

 

「さて・・何が聞きたい?」

 

ブリーフィングルームの映像は館内放送で映し出されている

 

「まず龍也さんとスカリエッティの関係を」

 

なのはがジェイルを見ながら尋ねる

 

「ふむ・・簡単に言えば。私の義手の製作者だ」

 

「龍也、アルベルンさんとか言ってなかった?」

 

フェイトが言うと

 

「それは私の偽名だ!!!」

 

胸を張りながらジェイルが言う

 

「・・まぁそういう訳だ、ちなみにチンク達もジェイルの娘な」

 

隠さずにチンク達もジェイルの娘だと教える

 

「!?!?!?」

 

同様するはやて達を見ているとシグナムが

 

「兄上。スカリエッティは犯罪者の筈です。何処で知り合ったのですか?」

 

犯罪者の言葉に、ウーノの額に再び青筋が浮かび上がる

 

「ウーノ、落ち着け。それとシグナム、ジェイルを犯罪者と呼ぶな」

 

シグナムを軽く睨みながら言う

 

「すいません、兄上」

 

頭を下げるシグナムを見て。落ち着きを取り戻すウーノに一安心しながら

 

「何処で知り合ったかと言うと・「龍也様、私が説明します」・・判った、ウーノに任せる」

 

自分で説明すると言うウーノに任せ、はやての隣に腰を下ろす

 

「まず私達と龍也様が会ったのはネクロの基地でした。ネクロはドクターの優れた化学力に目を付け私達を誘拐し。私達の命が惜しければ従えと脅迫されていました」

 

ゆっくりと語るウーノの話を真剣な表情で聞くはやて達

 

「その間に犯罪者として指名手配を受けましたが、ネクロの指示の為ドクターに罪はありません、そして今から6年前私達は龍也様に救助されました。もっともその時はダークネスと名乗って居られましたが・・」

 

ちらりと此方を見るウーノに苦笑してると

 

「体は何とも無いんだろう?兄貴に助けてもらったんだから」

 

ヴィータが言うと、ウーノは何かを考える素振りを見せ

 

「・・そうでもないのですが・・私達は「言うなっ!それは此処で言うことではない!!!」・・いえ・・言わせていただきます」

 

怒鳴る私の一瞬硬直するがウーノはゆっくりと

 

「私は戦闘機人。後天的にネクロによって体を改造されました」

 

「!?!?!?」

 

聞いていた者達の顔が驚愕に染まる中私は

 

「ウーノ!何故言った!それは言わなくて良いと言った筈だ!!!」

 

立ち上がりウーノを怒鳴る

 

「判ってますよそんな事は、ですが私はこの人達を信じてみたい。貴方の妹達を・・貴方が信じる者を私も信じてみたいのです」

 

穏やかに言うウーノの声は私の心を大きく乱す

 

「・・勝手にしろ!!」

 

私はウーノを怒鳴りつけ、ブリーフィグルームを出ようとすると

 

「龍也、あれは君の所為じゃない、私達は君を恨んではいない」

 

ジェイルの声がするが、私は振り返らずその場を後にした

 

 

兄ちゃんどうしたんや、あんなに苦しそうな顔して私は不思議に思い、ウーノさんに尋ねると

 

「ネクロは龍也様が人を傷つけない事を利用しようとしたのです」

 

・・そういう事か・・ウーノさんが言おうとした事を理解した。

 

「龍也は自分の所為で、ウーノ達が人の体で無くなった事を気にしてるんだ」

 

兄ちゃんの性格だとそれは当たり前だと思う

 

「その・・すまねぇ、無神経だった」

 

ヴィータが沈んだ顔で言う、他の面々も同様だ

 

「私は別に気にして無いんですよ、だけど優しい人ほど心を痛めてしまった」

 

ウーノさんは悲しそうに笑いながら

 

「何度も謝られました。私の所為だと私がもう少し早ければと」

 

兄ちゃん・・だからあんな苦しそうな顔してたんや・・・

 

「他の妹達、チンク達は龍也様の役に立てると言っていましたが、それさえも龍也様には重い十字架になっていたのかもしれません」

 

暗い空気の中でウーノさんの話を聞いてると

 

「部隊長!大変だ!旦那が何処にも居ねぇ!!」

 

慌てた様子でヴァイス君から連絡が入る

 

「龍也さん、本当に何処にも居ないの?」

 

なのはちゃんが尋ねると

 

「探したんですけど、何処にも居ないんですよ!それに部屋にこれが」

 

ヴァイス君の手には中将のバッジがあった

 

「・・嫌な予感がする。皆兄ちゃん探しに行くで」

 

皆も同じ嫌な予感がしたのか頷き部屋から出て行く

 

「私も行こうか?」

 

スカリエッティさんが言うが

 

「いえ、貴方達はここに居て下さい。それと犯罪者呼ばわりした事を謝罪します。すいませんでした」

 

頭を下げると、スカリエッティさんは笑いながら

 

「気にしなくて良いよ、それより早く龍也を見つけた方が良い。龍也は思い悩むタイプだからな」

 

その通りだ早く見つけた方が良い

 

「それじゃあ探してきますね」

 

部屋から出ようとすると

 

「待ってください、龍也様なら多分あそこに居ると思います」

 

ウーノさんに兄ちゃんが居るであろう場所を聞き

 

「ありがとうございます、ウーノさん。それじゃあ行ってきますね」

 

私はその場所に向かって行った

 

「・・此処か・・」

 

規則違反だがそんな事は言って居れず、騎士甲冑を展開して上空から兄ちゃんの姿を探す

 

「こんな所に居るんやろか?」

 

ウーノさんの話し通りならこの森の外れに居る筈だが

 

「・・・居った・・」

 

森の外れの小高い丘の上に兄ちゃんの姿を見つけた

 

「・・・はやてか・・」

 

丘の上の木に腰掛け兄ちゃんは居た

 

「兄ちゃん、皆探しとるではよ帰ろう?」

 

兄ちゃんに近寄りながら言うと

 

「・・ウーノに聞いたろ?何が最強の魔道士だ」

 

自嘲の笑いを浮かべるその姿は小さく見えた

 

「私が早ければ良かったんだ、そうすればウーノ達は人として幸せに生きる事が出来たんだ」

 

俯きながら言う兄ちゃんに近寄ると

 

「来ないで欲しい・・」

 

と言う兄ちゃんに

 

「嫌や、そんな悩んでる兄ちゃんを見てられへん」

 

近づき兄ちゃんの前に座る

 

「少しは私を頼って欲しいで」

 

笑うと兄ちゃんはその顔を歪め

 

「・・私にはそんな資格は無い・・・」

 

視線をずらす、兄ちゃんに腹が立って

 

「少しは私を頼って!何で兄ちゃんは何時もそうなんや!そんなに私は頼りないか!兄ちゃんの悩みすら聞くことが出来んのか!」

 

涙ながら怒鳴ると兄ちゃんは力なく笑い

 

「すまない・・・泣かないで欲しい」

 

兄ちゃんがハンカチを取り出し、私の涙を拭う

 

「私は馬鹿だな・・悩みこんで・・偶には誰かに悩みを聞いて貰えば良いんだ・・」

 

ぽつりぽつりと語る兄ちゃんの悩みを静かに聞く

 

「私は辛い・・どうせなら恨んで貰った方が良かった。私の罪を忘れずに居られるから」

 

兄ちゃんの姿は儚くて今にも消えてしまいそうだった

 

「そんなこと無いで。兄ちゃんはウーノさん達を助けたんや。胸張らな」

 

励ます為に肩を叩きながら言うと

 

「その言葉・・ゲンヤさんにも言われたよ。ありがとう少し楽になったよ」

 

と微笑み立ち上がる。兄ちゃんの姿は何時もと同じく大きく見えた

 

「皆探しとるで、はよ帰ろう?」

 

「そうだな・・」

 

兄ちゃんの手を引きながら六課に帰った、私達が帰ると皆六課の前で待っていた

 

「兄貴・・心配させないでくれよ」

 

「龍也・・お帰り」

 

「お父さん・心配しましたよ」

 

皆が次々兄ちゃんに声を掛ける中、スカリエッティさんが兄ちゃんの前に立ち

 

「龍也、歯を食いしばりたまえっ!!!」

 

ドガッ!!

 

鈍い音を立ててスカリエッティさんの拳が兄ちゃんに当たり、兄ちゃんが殴り倒される

 

スカリエッティさんは、倒れた兄ちゃんの服を掴み。無理やり立ち上がらせ

 

「私達が何時君を憎いと言った!君は私の大切な娘を助けてくれたんだ!胸を張れ!!八神龍也!!!」

 

兄ちゃんの服を掴み怒鳴ると

 

「・・・ああ、そうだな。はやてにもゲンヤさんにも言われたよ。胸を張れって」

 

兄ちゃんと肩を組みながら

 

「まったく、心配を掛けさせないでくれ。今日は一緒に飲むのだろう?」

 

子供みたいに笑うスカリエッティさんに

 

「ああ、そうだったな・・」

 

子供みたいに笑う兄ちゃん達と食堂に向かった

 

「旦那っ!たっく心配させないでくださいよ」

 

ヴァイス君達が笑いながら待っていた

 

「何なんだそれは?」

 

食堂に掛けられた垂れ幕には、スカリエッティ歓迎パーティと書かれていた

 

「いや~どうせなら盛大にパーティしようと思いまして」

 

机には大量の料理と酒が並べられていた

 

「おい、スカリエッティ、龍也こっち来いよ」

 

ゲンヤさんが手を振りスカリエッティさんと兄ちゃんを呼ぶ

 

「辛気臭いのは此処までだ!龍也今日は飲むぞっ!」

 

「程ほどにしておけよ?」

 

二人でゲンヤさんの席に行く姿を見て

 

(良かった兄ちゃん、元気になったみたいや)

 

と思い私達も席に着く

 

「おっしゃあ、それじゃ歓迎パーティの始まりだ!!」

 

ヴァイス君の乾杯の音頭でパーティが始まった

 

第52話に続く

 


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