夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第67話

第67話

 

 

「LV3位と言いましたか・・くっくっくっ・・甘く見られた物ですね?私は貴方にとっては最悪の敵ですよ?」

 

最悪の敵・・確かにその通りだ・・こいつには射撃魔法も砲撃も効果が薄い・・多分それがこいつの能力なんだろう

 

「そうかもしれないね、だけど私は貴方を倒す!アクセルシューターッ!!」

 

7発の桜色の光球を放つが

 

「くっくっくっ・・貴方も物分りが悪いですね?」

 

鎌の一振りで全て消滅した

 

「この際ですから、教えて差し上げましょう。私の能力は魔法吸収・・貴方が魔法を使うほど私は強くなるのですよ!」

 

シュンッ!

 

そう言うと、ファントムの姿が消える

 

!?何処?何処に居る?辺りを見回す

 

「くく・・死神の一撃・・喰らえ!デスサイズ!!」

 

!?後ろ!直感を信じて頭を下げる

 

ブンッ!

 

鎌が頭の上を通過するのが判る、

 

「なっ!?」

 

攻撃が回避された事に、驚くファントムの

 

「ディバイン・・・バスターッ!!!!」

 

胴体目掛け、砲撃を放つ

 

「なっ・・くそッ!!」

 

慌てて回避するファントム・・

 

「魔力吸収も絶対じゃないみたいですね?」

 

本当にどんな魔法でも吸収できるなら、今の砲撃を回避する必要は無い・・・

 

「カートリッジロード!!」

 

『イエスマスター』

 

レイジングハートから空の薬莢が飛び出し、魔力を増加させる

 

「アクセル・・シューターッ!!!」

 

カートリッジを使い魔力を増加させ、威力の上昇したアクセルシューターを4発。胴体と手足に狙いを定め放つ

 

「ちぃっ!!」

 

悪態を付きながら回避をする、ファントム・・やっぱり吸収出切る場所は限られているみたいだ

 

「くそッ!!」

 

マントを身に纏う、ファントム。マントにアクセルシューターが当たると、構成が崩されマントに吸収されるが

 

「がああああッ!!」

 

マントに入り切らなかった、胴体の一部にアクセルシューターが命中し、鎧を破損させる

 

「やっぱり・・魔力を吸収出来るのは、マントと鎌だけ・・上手く狙えば勝てる!」

 

私は勝ちを確信した、幾ら魔力を吸収出来ても、吸収出来ない場所があるなら勝てる

 

「・・いえいえ・・そう簡単に勝ちを確信されたら、困りますね・・」

 

!?誰・・突然聞こえた声に驚き、振り返ると

 

「くっくっくっ・・始めまして・・エースオブエース」

 

黒いスマートな紳士の様な服に、顔の上半分を隠す独特な仮面を被り、赤マントを風に靡かせた。ネクロが上空に佇んでいた

 

「貴方は何者ですか!」

 

レイジングハートを向けながら言うと

 

「私の名はヴェノム・・ダークマスターズの一人です」

 

ダークマスターズ!?・・確かネクロの幹部!

 

「アクセルシューターッ!!」

 

反射的に魔法を放つと

 

「・・やれやれ・・行き成りですか?私はまだ貴方と戦うつもりはないんですがね」

 

笑いながら片手で魔法を殴り飛ばす・・そんな素手で!?

 

「今は邪魔しないで下さい・・エースオブエース」

 

黒い瞳に睨まれ動きが硬直する・・これはバインド!?体がバインドに掛かったように動かない

 

「そうそう・・貴方の相手は私ではないのですから・・」

 

と笑いゆっくりファントムに歩いて行き、ファントムの頭を掴み、無理やり立ち上がらせる

 

「ヴェ・・ヴェノム様・・何をなさるのです?」

 

震える声で尋ねるファントムに

 

「くすくす・・貴方に初のLV3からのデクスになって貰いましょう・・・」

 

デクス?・・聞き覚えの無い言葉に疑問を感じていると

 

「嫌だ!あんな者になるのは嫌だ!」

 

暴れヴェノムの手から逃れようとする、ファントム・・一体何が起こるというの?

 

「くっくっく・・恐れる事はありません・・・貴方に最強の力を与えましょう」

 

バリバリッ!!

 

電撃がファントムを襲う

 

「ぎゃああああああっ!!!!!」

 

凄まじい絶叫に顔を背けると

 

「くすくす・・これで良い・・さぁ・・こいつと戦って貰いましょうか?」

 

その言葉と共にファントムの体が変化する・・黒の鎧に髑髏の文様が浮かび・・足は消え魔力で体を浮上させる・・・その手には魔力で出来た強大な鎖鎌・・・ファントムの体の変化が終ると同時に、私の体も動くようになった

 

「くっくっくっ・・デクスファントム・・初のLV3からのデクス化・・一対どれ程の力があるでしょうか?」

 

楽しげに笑いマントで体を隠す

 

「くっくっくっ・・では次に会う時を楽しみにしていますよ・・エースオブエース・・まぁ・・次があれば良いですけどね?くくっ・・はっはっはっ!!!」

 

笑いながらヴェノムの姿は消えた、それと同時にファントムの目に光が灯る

 

「・・・エース・・オブ・・エース・・・殺す・・・殺すッ!!!・・殺すッ!!!!・・がああああああッ!!!!」

 

!?先程までとは比べられない速さで突撃してくる、ファントム

 

「死ねええええッ!!!」

 

反射的にプロテクションを張るが・・

 

バリ-ン!!簡単に砕かれる

 

「なっ!!・・死ねえええッ!!・・きゃあああッ!!」

 

鎌の持ちで殴られ、吹っ飛ばされる・・・

 

「くっ・・・なんてパワーなの・・」

 

龍也さんよりかは見劣りすが・・今までのネクロとは比べられない程強い・・だけど・・

 

「負けられない・・・私は足手纏いには成りたくない・・」

 

向かって来るファントムの胴目掛け

 

「アクセルシューターッ!!」

 

12発のアクセルシューターを放つ

 

「クオオオオオオッ!!!」

 

その叫びと共にアクセルシューターの構築が砕かれる・・そんな魔法吸収もパワーアップしてると言うの!?

 

「死ねえええッ!!!!ソウル・・ブレイカーッ!!!」

 

魔力で出来た鎖鎌が高速回転しながら迫ってくる

 

「くっ・・プロテクション!!」

 

全力で障壁を発生させるが

 

ピキ・・ピキ・・

 

「耐えられない・・・っ・・きゃあああッ!!」

 

鎌の直撃を喰らい・・私は意識を失い落下していった・・

 

私じゃ勝てない・・・薄れていく意識の中で私はそう感じていた・・

 

少し戦っただけだが判る・・あのネクロには私では勝てない・・

 

「諦めるのですか・・情けない事ですね」

 

誰!?聞いた事の無い女性の声に驚き、声のほうを見る。そこには緑の髪に翡翠色の瞳を持った、女性が冷めた目で私を睨んでいた

 

「情けない・・王を護る・・足手纏いにならない・・大層な事を言っていた割には、直ぐ諦める・・なんと情けない事か・・」

 

その女性は王と呼んだ・・まさか・・

 

「貴方は・・天雷の騎士ですか?」

 

王・・つまり天雷の書の主・・龍也さんを指す筈だと思い尋ねると

 

「その通り・・私は天雷の騎士が一人・・氷のシャルナ」

 

鋭く冷めた視線で私を睨み続ける。シャルナだったが・・

 

「貴方は諦めるのですか?・・王を護ると言ったのは、唯の思い付きなのですか?」

 

「違います!私は・・私は龍也さんを護りたい!護られるだけじゃなくて!隣を歩いて行きたい!だけど・・私には力が無い・・・隣を歩けるだけの力が無いんです!」

 

思いつきなのか?と尋ねられた瞬間、私は大声でそれを否定した、思い付きなんかじゃない・・私は龍也さんを護れるだけの力が欲しい・・だけど・・私には力が無い・・護るだけの力が無い・・俯きながら言うと

 

「その思いに揺らぎはありませんか?どんなに険しい道でも、王と共に歩きたいと言いますか?」

 

優しく問いかけてくるシャルナに

 

「はい・・・私はどんな険しい道でも龍也さんと共に歩いて行きたいです・・でも私にはそれだけの力がありません・・」

 

そう答えるとシャルナは

 

「合格です。貴方に私の力を・・王を護る為の力をお貸ししましょう」

 

「えっ・・?」

 

驚きながら、顔を上げるとシャルナは微笑みながら

 

「貴方の想いは判りました・・だから私の力をお貸ししますよ」

 

シャルナの手から、翠の球体が浮かびレイジングハートの中に入る

 

「ふふ・・これで貴方のデバイスは更なる力を発揮するでしょう・・」

 

その声と共に私の意識は浮上していった、

 

 

 

 

「なのはがっ!」

 

ヴィータの指差す方を見ると。なのはがビルの間を落下していた

 

「があああああッ!!」

 

そのなのはを追うように、ファントムが落下していく

 

「ティアナ!ここから狙えるか!?」

 

ティアナにここからファントムを狙えるか、と尋ねると

 

「・・・くっ・・・無理です!遮蔽物の所為で射角が取れません!」

 

無理か!くそっ!立ち上がり駆け出そうとするが・・

 

「うぐっ・・」

 

激痛が走りその場に膝を着いてしまう

 

「兄貴!?」

 

ヴィータが慌てて、私を支える

 

「私は良い・・それよりなのはを!!」

 

ファントムがなのはに追いつき、その手に持った鎌を振りかぶる

 

「死ねぇ!エースオブエースッ!!」

 

鎌がなのは目掛け振るわれる

 

「「「「なのはー(さん)ッ!!!!」」」」

 

私達が思わず、最悪の結果を予測し思わず大声を上げるが

 

ガキーンッ!!!

 

金属と金属がぶつかる、甲高い音がする

 

「なんだ!!あれはッ!?」

 

鎌の一撃を防いでいたのは、クリスタルだった・・桜色の4つのクリスタルがなのはを守るように集まり、鎌の一撃を防いでいた

 

「何っ!?」

 

ファントムが驚き硬直する、その隙を突いてクリスタルがファントムに体当たりを仕掛け、弾き飛ばす

 

「バリアジャケットが・・」

 

なのはの回りをクリスタルが回る度に、バリアジャケットが姿を変えていく・・

 

白のバリアジャケットは青く染まり・・その背には魔力で構成された6枚の翼・・

 

手に持ったレイジングハートも姿を変え・・一回り大きくなっていた

 

体勢を立て直し、目を閉じ宙に佇むなのはの回りに、4つのクリスタルが集まり。なのはを護るように浮かぶ、その姿は幻想的な美しさを持っていた・・

 

「・・・綺麗・・」

 

ティアナが呟く・・背中の翼が羽ばたく度に魔力の粒子が空を舞う・・その姿は天使・・いや・・女神だった・・

 

「・・・」

 

なのはがゆっくり目を開いた瞬間・・

 

「何これーーッ!!!」

 

なのはが絶叫した

 

「はっ!?」

 

その突然の絶叫に私達も驚いた・・えッ・・レイジングハートの新しいモードとかじゃないのか?

 

「嘘ッ!何これ!?えっ・・翼ぁッ!?何で!?何で!?」

 

かなり動揺している様で・・自分の姿を見てうろたえている・・

 

「ソウルブレイカーッ!!!」

 

うろたえている・・なのは目掛け鎌が迫るが・・ガキーンッ!!

 

その巨大な鎌をレイジングハートで軽く受け止めていた

 

「そうだった・・今は戦闘中だね・・」

 

思い出したように呟くなのはに、私達は

 

(忘れてたのかッ・・・)

 

そう思った・・動揺しすぎだろう・・なのは・・

 

「取りあえず・・今はアイツを倒すのが先決だね、レイジングハート?」

 

『イエス、マスター行きましょう』

 

手に持ったレイジングハートに話しかけてから

 

「アクセル・・・シューターッ!!!」

 

レイジングハートとクリスタルから、嵐の様な魔力弾が放たれる

 

「なっ!・・・クオオオオッ!!」

 

ファントムが叫び声を上げ、魔力弾の構成を砕くが・・半分も破壊出来ず・・

 

「がああああッ!!!」

 

ファントムの胴体に次々命中して行き・・ダメージを与えている

 

「・・・すげぇ・・」

 

ヴィータがその嵐の様なアクセルシューターを見て呟くと、ファントムが

 

「調子に乗るなっ!!」

 

鎌を振り回し・・アクセルシューターを切り払うが・・次の瞬間桜色のバインドがファントムを捕らえる

 

「なっ!?・・こんな物・・・」

 

暴れて、バインドから逃れようとするファントムだが、その拘束が砕ける気配は無い

 

「闇を晴らす・・黄金の輝き・・」

 

なのはが詠唱に入り、魔力がクリスタルとレイジングハートに収束されていく

 

「全てを照らす・・黄金の輝きは・・全ての悪を薙ぎ払う・・・

 

クリスタルに収束された、魔力は眩いばかりに輝く

 

「これが私の新しい・・切り札・・・エクストリーム・・・」

 

クリスタルが全てファントムの方を向く

 

「ヒィッ・・・」

 

ここからでもファントムが引き攣った悲鳴を上げたのが聞こえた

 

「ジハードッ!!!!」

 

4つのクリスタルと、レイジングハートから放たれる砲撃がファントムを飲み込み・・消滅させた・・・

 

 

 

 

 

「凄い威力・・・」

 

私は自分の放った砲撃の威力に驚いた・・スターライトの強化で考えた砲撃だが・・・スターライトを遥かに超える威力だ・・私がその威力に驚いていると・・

 

『フォトンモード・・解除・・通常モードに戻ります・・』

 

バリアジャケットが元に戻る・・・

 

「レイジングハート・・今のは?」

 

レイジングハートに今のは何と尋ねると

 

『恐らく・・ブラスターモードの進化形だと思います・・正し魔力の消耗が激しい為・・強制的にモードが解除されました』

 

確かにかなり魔力が減少している・・リミッター有りではさっきの形態は長く維持できないだろう

 

『マスター、早く龍也様の元に戻りましょう・・龍也様の怪我が心配です』

 

「そうだね・・戻ろうか・・」

 

頷き・・私は龍也さん達の所へ戻った・・

 

「龍也さん。怪我は大丈夫ですか?」

 

龍也さん達が居た所に戻ると、そこには騎士甲冑を解除して、瓦礫に腰掛けている龍也さんの姿があった

 

「大丈夫だ・・ティアナの回復魔法の御蔭で大分楽だ」

 

と微笑む龍也さんの隣に腰掛ける

 

「あの・・ヴィータちゃん達は?」

 

姿の見えない、ヴィータちゃん達は何処かと尋ねると

 

「ヘリを呼びに行った・・私は大丈夫だと言ったんだがな・・・」

 

と苦笑する龍也さんだったが・・

 

「所でさっきのバリアジャケットは?」

 

思い出した様に尋ねて来る、龍也さんに

 

「なんか、強制解除されちゃいまして・・良く判りません」

 

よく判らないと言うと

 

「そうか・・シャーリーにでも解析して貰うと良いな」

 

暫く龍也さんと話をしていると

 

「兄貴~!!迎えに来たぜ~ッ!!!」

 

ヘリからヴィータちゃんの声がする

 

「どうやら迎えが来たようだな・・行こうか?」

 

立ち上がり笑う、龍也さんと一緒にヘリに乗り込んだ

 

「兄貴・・横になった方が良い」

 

ヴィータちゃんが横になった方が良いと、言うと龍也さんは手を振りながら

 

「いやいや、私は大丈夫だ・・・「良いから!横になれ兄貴!!」・・・判った・・」

 

凄い剣幕でヴィータちゃんに言われ、渋々と言った様子で横になる。龍也さんの傍にヴィータちゃんが座り込む

 

「なぁ・・兄貴あんまり心配させないでくれ。兄貴が強いのはわかってる・・でもな・・怪我してまで戦わないでくれよ」

 

俯きながら言う、ヴィータちゃんの隣に腰掛け

 

「そうですよ。龍也さん・・あんまり心配させないで下さい・・これは私達だけじゃなくて皆も一緒ですよ?」

 

スバルとティアナを見ながら言うと

 

「むっ・・判った。もう少し気をつけるとしよう」

 

バツが悪そうな顔をして笑う、龍也さんを乗せたヘリは、ゆっくりと六課に戻って行った

 

「兄ちゃん!大丈夫か!!」

 

ヘリポートでは、はやてちゃんとチンクさん達が待っていた

 

「大丈夫だ、回復魔法も掛けて貰ったからな・・っと」

 

笑う龍也さんだが、ふらつき倒れかける

 

「ああ・・兄ちゃんやっぱ、無茶しとるな」

 

はやてちゃんが慌てて駆け寄り、龍也さんを支える

 

「もう、あんま無茶して心配させへんでな?・・セッテ肩貸して。一人じゃ支えられん」

 

珍しくセッテに声を掛けるはやてちゃん、

 

「判りました、はやて。私も協力します」

 

はやてちゃんとセッテに支えられ、龍也さんは医務室に向かって行った

 

「さてと・・私は報告書でもやってくるよ」

 

隊長室に向かって歩き出そうとすると

 

「待つっす、なのは。あんたも怪我してんじゃ無いっすか?」

 

ウェンディに呼び止められるが

 

「大丈夫、こんなの龍也さんと比べたら掠り傷だよ」

 

確かに私も怪我をしているが、本当に龍也さんと比べれば、この程度掠り傷だ。と笑い隊長室に向かって行った

 

 

 

「お兄さん・・また無茶して。あんまり無茶したら駄目ですよ?」

 

シャマルが手当てをしながら言う

 

「判ってはいるんだがな」

 

と苦笑すると

 

「判ってるだけじゃ駄目です。・・はい・・手当ては終りました・・それと部屋に戻っても良いですが・・ちゃんと大人しくしてくださいよ?」

 

シャマルに念を押され、医務室を出ると

 

「龍也様、怪我の具合はどうですか?」

 

セッテが医務室の前の椅子に座り待っていた

 

「・・はやては?」

 

はやても居るだろうと思っていたが、姿の見えないはやての事を尋ねると

 

「仕事があると言い、部屋に戻りました」

 

「そうか・・所でどうしてセッテは私を待っていたんだ?」

 

どうして待っていたのかが、気になり尋ねると

 

「いえ・・特に理由はありませんが。怪我をなさっていた。龍也様が心配になりまして」

 

と言い微笑むセッテに

 

「心配してくれてありがとう」

 

と笑い礼を言うと

 

「御気になさらず。部屋の前までお送りします」

 

セッテと話をしながら自室に戻った

 

「龍也様。私はこれで、失礼します」

 

部屋の前でセッテと別れ、自室に入る

 

「さてと・・本でも読んでるか・・」

 

大人しくしていろと言われたので、大人しく本を開き読んでいると

 

コンコン

 

「兄貴?入るぜ」

 

ヴィータが部屋に入ってくる

 

「どうした?ヴィータ」

 

突然尋ねて来たヴィータに首を傾げながら、尋ねると

 

「いや・・兄貴の怪我の具合が心配で見に来たんだけど・・どうだ?」

 

私の前に座り尋ねて来るヴィータに

 

「心配ない、ありがとうヴィータ」

 

本を閉じながら言うと

 

「へへ。気にすんなよ兄貴」

 

気にすんなと言う、ヴィータの頭を撫でると

 

「んっ・・へへ・・兄貴の手は暖かいな」

 

気持ち良さそうに目を細め、私の手が暖かいと言うヴィータに

 

「そうか?私は良く判らないが・・」

 

首を傾げながら尋ねると

 

「兄貴の手は暖かいぜ・・太陽みたいでな・・」

 

笑いながらヴィータはそう答え、立ち上がり

 

「私は仕事があるから戻るな。兄貴も無茶しちゃ駄目だぜ?」

 

私に念を押してから、ヴィータは私の部屋から出て行った

 

「やれやれ・・あんまり妹達に心配を掛けさせてはいかんな・・・」

 

私はそう呟き、淹れて置いた紅茶を口に含み、本を開いた

 

 

 

 

「レイジングハートの新しいモード・・フォトン・・」

 

シャーリーに調べて貰った、レイジングハートの詳細を見ながら、コーヒーを口に運んだ

 

「出力、防御力、機動性・・どれもブラスターモードより上」

 

想定されていたレイジングハートの最終形態である、ブラスターより遥か上回るスペック

 

「でもその所為か・・ブラスターモードは無しか・・」

 

フォトンのスペックは、非常に高く・・シャーリーが言うには従来のデバイスを遥かに上回る能力。何故この様な変化が起きたのかが判らない・・だけどこの力があれば・・龍也さんを護れる・・共に歩いていく事が出来る

 

「私は護られるだけなんて嫌だ・・私は龍也さんの隣を歩いて行きたい」

 

護られるだけじゃ意味が無い。龍也さんの背を護り共に歩いて行く・・その事に意味がある・・・多分この考えは皆同じだと思う

 

「護られる姫・・って言うのは柄じゃないからね・・」

 

自分で言っておいて赤面するが。その通りだ護られる姫ではなく・・共に歩いて行く姫・・それが私が思い描く姫だ

 

「今度こそ・・龍也さんを護ってみせる・・」

 

私は決意を固め・・フォトンモードの詳細書を片付け。眠りに着いた・・

 

 

 

なのはが眠りに落ちた頃、演習場では

 

「はあッ・・はぁ・・こんなんじゃ駄目だ・・」

 

人気の無い演習場で、額から大粒の汗を流しながらアイゼンを振るう。ヴィータの姿があった

 

「はぁ・・はぁ・・まだまだ・・私は強くなれる・・」

 

汗を拭いながら再びアイゼンを握り直した所で

 

「ヴィータ?・・こんな時間に何をしている?」

 

シグナムが演習場に姿を見せる

 

「見りゃ・・判るだろうが・・自主連だ・・お前は?」

 

判っているが、敢えて尋ねる

 

「私もだ・・所で・・ヴィータ、お前はいつから演習場に居たんだ?」

 

何時から居たのかと尋ねて来る、シグナムに

 

「夕飯を食ってから直ぐだ・・っと・・何だ・・」

 

そう言ってから、再びアイゼンを振ろうとすると、シグナムがペットボトルを投げて寄こす

 

「無茶をしては何にもならん・・少しは休め」

 

私の横に腰掛けながら言う、シグナムに頷きペットボトルの中を口にする

 

「そうだな・・貰うぜ・・・・はぁ・・美味い・・・」

 

ペットボトルの中を飲み干し、持って来ていたタオルで汗を拭いながら

 

「・・シグナム・・あの時・・私とお前とで約束した事・・覚えてるか?」

 

シグナムは直ぐに頷き

 

「もう一人の主である・・兄上を護るという誓いのことだな」

 

私達の主は・・はやてだ、だけど兄貴も間違いなく。もう一人の主だ

 

「そうだ、私は兄貴とはやてを護る・・騎士の・・鉄槌の騎士の名に賭けて・・だから私はこんな所で立ち止っていられないんだ!」

 

気合を入れて、再びアイゼンを振ろうとすると

 

「待て、一人でやるより、二人の方が効率が良い・・判るだろう?」

 

騎士甲冑を展開し、私の前に立ち笑うシグナム

 

「へっ・・ありがとうよ・・シグナム。・・遠慮なく行かせて貰うぜッ!!」

 

「ふっ・・当然だ・・遠慮なく全力で掛かって来いッ!!」

 

アイゼンとレヴァンティンがぶつかり、火花を散らす・・そうだ私はこんな所で立ち止っている暇は無い・・今度こそ私は兄貴を護る、二度と失ってたまるか・・あの暖かい場所を!!私は決意を固めアイゼンを振るった・・シグナムとヴィータの戦う姿は、その日の夜遅くまで消える事は無かった

 

第68話に続く

 


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