第5話
その日私は懐かしい夢を見ていたそれは、初めてあの人に会ったことのある日のことだった。・・あの火事の時に私を助けてくれたあの人は黒いライダースーツに漆黒の翼を持った悪魔の様な姿だったが、私には光り輝く天使に見えた
少女は助けを待つしかできない自分と決別したかった。優しい母を亡くして数年間。父と姉、2人の家族と支えあいこれまで幸せに過ごしてきた。今日はその姉とともに第8空港まで遊びにきていたのだ。それなのに。
「お姉・・・ちゃん・・」
突如起こった爆発、そして火災。
阿鼻叫喚。恐慌と混乱の中、少女は姉とはぐれ、人気の無い施設に取り残されてしまっていた。
始めは己を奮い立たせ、懸命に姉の名を呼び続けていた。 だがいつまでも姉と合流することは叶わず、ただ立ち尽くしていた。時折瞳に移る哀れな屍に、少女の心は完全に折られていたのだ。いつの間にか双眸には溢れんばかりの涙が溜まり、ただ、消え入るようにか細く助けを求めるのみ。
「あう!」
そしてついには躓き、転んでしまった。膝は擦り剥け、血が滲み出す・・もう、限界だった。少女の目から大粒の涙が零れ落ち、絶望に心が砕かれてしまった・・
出口は崩落し、外に出ようともそれは高い高い塀の向こう・・少女の心によぎるのは死の一文字・・助けも来ない・・脱出する手もない・・その事実は幼い少女の心を砕くには充分すぎた・・
少女が泣き崩れていると、ガラと更なる倒壊を予知させる音が少女の耳に届く・・泣きながら音のしたほうを見る少女・・一瞬泣くことも止め、ただ乾いた声をポツリと洩らした・・
「ゃ、いやあ・・」
十数メートルはあろうかという、ゆっくりと自分に向かって倒れる巨大な天使の像があった・・普段慈愛に満ちた笑みを浮かべる天使の姿が少女には、この時ばかりは少女の薄幸を嘲笑う悪魔のように見えた
「お父さん・・」
答える者も・・助けてくれる者も居ない・・天使像の倒壊に伴い、それを支えていた地盤が盛り上がる・・
「お姉ちゃん・・」
天使像が壁を砕きながら、少女を叩き潰そうと迫った・・もう間に合わない・・少女は絶望に打ちひしがれながらも必死に叫んだ・・
「誰か・・誰か・・助けてよぉぉぉ!!」
その叫びに呼応するかのように・・生きようと願った少女の叫びが奇跡を起こした・・
「獣王拳!!!」
後ろから声が聞こえたと思ったと同時に顔の横を通り過ぎる鮮やかなオレンジ色の光は、今まさに少女を押しつぶそうとしていた天使を粉々に砕いた・・その直後、降り立った漆黒の翼を持つ悪魔の様な姿の男・・その力強い姿は・・幼い少女には光り輝く天使に見えた
「大丈夫か?」
その声は優しく心に響いていった。そして胸に広がるのは安心感、まだ火の中にいるのに少女は助かったという気持ちに満たされた
「名前は?」
「あっ!スバル、スバルナカジマです」
「ナカジマ・・そうかあの人の・・」
自分の名前に聞き覚えがあるよな素振りを一瞬だけ見せたが、それは直ぐに消えた
「スバル、いいか今から脱出するからな。しっかり捕まっていろ」
そう言って抱き上げる人に
「待って!!お姉ちゃんが居るの、お姉ちゃんも助けて!」
辺りは火に包まれており、このままでは自分達が危険なのは判っていたがお姉ちゃんを見捨てて逃げることは出来ず、必死にお姉ちゃんを助けてくるように頼む
「・・判った、少し苦しいと思うが我慢できるか?」
黒い男は一瞬考える素振りを見せたが頷き、助けてくれると言った。それがすごく嬉しかった
「うん!!」
「ではしっかり捕まっていろ」
胸の中に確りと抱きしめられ少し苦しかったが、それとは別に胸が高鳴るのを感じていた
(何だろう?胸がドキドキする)
その背に生えた翼で崩れた空港の中を飛んでいると
『旦那!!そっから30M先に人の反応があるぜ。でも少し弱ってきてる急いだ方がいいぜ』
「判った、少し急ぐぞスバル」
そう言うと男は飛ぶ速度を上げた、さっきの声の通りの場所にお姉ちゃんが倒れていた
「お姉ちゃん!!」
男の腕から降り、駆け寄るが煙を吸ったのかぐったりしていた
「お姉ちゃん、しっかり」
揺さぶろうとするが男に止められる
「大丈夫だ、煙は吸っているが大事はない。此処から出れば意識を取り戻すだろう」
私とお姉ちゃんを抱き上げ空港から出る為に来た方向に引き返していると。
ガラガラッ!!
瓦礫が崩れてきて道を塞ぐ
「そんな、あと少しなのに」
出口はあと少しなのに道が塞がれてしまった・・もう駄目だ・・私がまたそんな事を考えた直後・・
「大丈夫だ、絶対私がお前達を助ける」
その男の声は力強く安心できた・・この人が居れば大丈夫・・助かると・・私はそう感じた・・
「少し離れていてくれ。下手をすると巻き込みかねん」
少し離れたところに私とお姉ちゃんを降ろして、崩れていた瓦礫の前に立つ
「べレン、フルドライブいけるな?」
『当たり前だ。俺を誰だと思ってるんだ」
ベレンの頼もしい言葉に笑みを零す。この状態で居るのはベレンに取って辛いはず、それなのに力を貸してくれる相棒が頼もしく見える
「行くぞ!!カートリッジロード」
『カートリッジロード!!』
右手に魔力が集中していく。腰を落とし構えを取る。余分な魔力が体から放出されて辺りを金色の光が満たす、そして右手がまるで太陽のような光を帯び始める。そして凄まじい速さで前に踏み込むと同時に右腕に溜まっていた魔力を一気に放出する
「ヘブンズ・・・
ナックルッ!!!!」
ゴウッ!!
突き出された右腕から金色の光が放たれ。瓦礫を木っ端微塵に吹き飛ばした
「凄い!!」
私はその光景に驚いた、あれ程あった瓦礫を一撃で吹き飛ばした、この男に
「此処までくれば、大丈夫だ。後は管理局が上手くやってくれるだろう・・」
そう呟くと私とお姉ちゃんの前に立ち
「良いか、スバルここで待っていれば管理局の者が助けてくれるだろう。だから動かずここに居るんだ。判ったか」
「お兄ちゃんは如何するの?」
「私は此処から消える。私は見つかる訳には行かないからな」
歩き去ろうとする男の腕を掴む
「嫌だ・・行っちゃ嫌だ!!」
腕を掴まれた男は困った顔をしていたがしゃがみ込み、そのとき初めて気付いたがこの男の右目は何かに斬られた後と共に固く閉じられていた
「今は離してくれないか?私には行かねばならん理由があるんだ」
諭すように言う男に妥協案として
「・・判った。じゃあ名前を教えて。」
「私の名はダークネスだ。スバル」
名前を教えてくれた事で納得して手を離す。そして歩き去ろうとしたダークネスだが何かを思い出したように振り返り何かを投げて寄越した。それは鍵が付いた小さなアクセサリーだった
「それは私の家に通じる鍵だ。大きくなったら来るといい。少しくらいだったら魔法を教えてやるからな」
そういうとダークネスがポケットから同じものを取り出し、投げると扉が現れダークネスが潜るとそれは消えた。
「助けてくれて有難う。ダークネス」
そう呟いてダークネスが風穴を開けた場所から外を見ると、白い服の魔導師が飛んでくるのが見えた。そして其処で私は目を覚ました
その日私は懐かしい夢を見ていた。これは兄さんが死んで少し自暴自棄になっていた時に出会った男の人との夢だった
「はあっ!!はあっ!!」
荒れた息を整える。兄さんが死んでから我武者羅に魔法の練習をしていた
「私は証明するんだ・・ランスターの弾丸に打ち抜けない物がないって事を」
兄さんが死んでからもう二月経った。家の中は伽藍としてとても寂しくなってしまった。それからは余り家に帰らず此処でこうして一人で魔法の特訓をしていた
「もう一度、やろう・・ッ!!」
デバイスを構えて魔法を使おうとした時、胸に激痛が走り私は意識を失った
夢を見ていた兄さんと一緒に居る夢をだが、兄さんが私を置いて歩き去ってしまう私は兄さんを止めようと手を伸ばした
「兄さんッ!!」
慌てて飛び起きるとそこには黒い服を着た隻眼の男が居た。飛び起きた私に一瞬驚いた顔をしていたが直ぐに元に戻り
「目が覚めたかね。驚いたぞ、ここに来たら君が倒れていたからな」
男の声は穏やかでとても優しい物だった。そこで気付いたが私はベンチに横になっており、額には塗れたハンカチが載せられていたこの男が看病してくれていたのが判る
「貴方は?」
目の前に居る男に尋ねると
「私かね?私はただの通りすがりだよ」
そういって笑う男だったが、直ぐに鋭い目付きになり
「君は何故あんな無茶をしたんだ、かなりリンカーコアが弱っていたが・・」
「・・・・・」
私はそれに答えることが出来なかった
「答えることが出来ないか・・まぁそれはそれで良いが。良かったら話くらいは聞こう何を悩んでいるのか、話せば楽になるかも知れないよ」
そういって笑う男の笑顔に安心したのか私は全てを話し始めた、兄さんが死んだこと、兄さんを侮辱した男の事、そして兄さんが無能じゃない事を証明する為に執行官になるんだと言う事を話した。そして気が付けば私は涙を流していた。それは兄さんが死んでから始めて流す涙だった。男はその話を黙って聞いてくれたそして話し終わると
「辛かったね、でも一つだけ聞きたいことがあるんだ。君は執行官になって如何するんだい?」
「えっ?どういう意味ですか」
私が涙を拭いながら聞き返すと
「君が兄さんの意思を継いで執行官に成りたいというのは判る、ではその後は?」
判らない、私は執行官になって如何したい?兄さんを侮辱したヤツを見返したい?
「判りません」
私は判らなかった、執行官なって如何したいのか私にはなった後が判らなかった
「そうか・・・判らないか。ではこれは私の勝手な想像だが聞いてくれるかね?」
私は頷いた
「そうか、では聞いてくれるかな、君の兄さんは自分の意思を継いで執行官なって欲しいんじゃなく。君に幸せになって欲しいじゃないのかな?」
それは考えたことが無い事だった。私は兄さんが自分の無念を晴らして欲しいと思っていると思っていたからだ
「それは・・」
男は話を続ける
「君は若い、そんな内からあんな無茶をしていれば何時か体を壊す。そんな事になったら君の兄さんは悲しむと思うよ」
「・・・・・」
私は何も答えられない、この人の言っている通りだ、最近胸が痛いとずっと思っていた
「そして、君には才能がある、焦らずじっくり地力を付ければきっと素晴らしい魔導師になれる」
そう言って立ち上がった、男の手には銃型のデバイスが握られていた
「モード。シューター、スタンバイ」
『オウ、モードシューター起動』
「込める弾丸は・・」
『願いの欠片』
ガチャン
シリンダーが回る
「レインボーブラスト!!」
ズガンッ!!
銃口から放たれたのは七色の光そしてそれは巨大な虹になった
「綺麗」
私はそれを見て呟いた、魔法にこんな使い方が在るなんて知らなかった
「魔法とは戦うだけの物ではない、人を救うものだそれを忘れるなよ?。私が言いたい事はそれだけだ、ではなまた会おう」
歩き去ろうとする男に
「私はティアナ・ランスターって言います。話を聞いてくれて有難うございます」
男は振り返ると人のいい笑顔を浮かべ
「私はダークネスだ。では無茶をせずにゆっくり地力を付けると良い。君は良い魔導師になれるさ」
歩き去っていった男を見送るとベンチの上に
「あれ?これは」
ベンチに乗せられていたハンカチには鍵の飾りが付いたペンダントと手紙が置かれていた
『これは私の家に通じる鍵のようなものだ。もしまた何か悩んだら来るといい、話し相手くらいには成ろう』
「ダークネスさん、有難うございます」
置いてあったペンダントを掴んだ所で目を覚ました
「良い夢。見たな。そうだ今日は休みの日だから。行ってみようかな~」
その日お互いに同じ夢を見ていた事を二人は知らない
第6話に続く
とりあえず、今はここまでで。夜にもしかするともう一回更新するかもしれないのでよろしくお願いします
それとリクエストが早速きていてとても嬉しいです!!早くスランプから脱して皆様に楽しんでいただける作品を書きたいと思います!!それでは失礼致します