夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第68話

第68話

 

「ヴェノム・・貴方・・ファントムをデクス化しましたね?」

 

研究室にヘルズが姿を見せ、不機嫌そうに言う

 

「ええ・・デクス化しましたよ?・・それが何か?」

 

研究の手を休めそう言うと

 

「別にどうこう言おうと言う訳ではありませんが・・せめて一声掛けて欲しかったですよ・・ファントムをデクス化すると」

 

声に非難の色が混じるヘルズ

 

「それはすいませんでした・・ですがあのままではエースオブエースに勝てないと判断したので、私の独断でデクス化しました」

 

素直に頭を下げ謝ると

 

「別に構わないですが・・今度からはちゃんと声を掛けてくださいね・・所で今何をしてるのです?」

 

ヘルズが大き目のポッドを指差しながら言う

 

「ふふ・・あれは・・私の新しい作品・・デクス・・キメイラです」

 

培養液の中のネクロははっきり言って異形だった・・体のパーツが全てバラバラのネクロのパーツで構成されており。かなり不気味な姿をしていた

 

「キメイラ・・合成獣ですか・・一体何体のネクロを使ったんです?」

 

「15ですよ・・それももう直ぐでLV4の到達しそうな、ネクロを使いましたよ・・まぁ・・決してLV4に成れない出来損ないですが・・」

 

LV4に成れるのは限られた者だけだ。LV4は選ばれた者しか到達できぬ・・高み・・そう簡単に進化できる物では無いのだ

 

「ほう・・LV3を15体・・どれほどの力があるのですか?」

 

楽しげに笑うヘルズに

 

「そうですね・・LV4に近いと思いますよ・・まだ調整中ですがね」

 

培養液の入ったポッドを見上げると。真紅に輝く瞳と目が合う

 

「ええ・・判っていますとも・・キメイラ・・もう少し待ってください」

 

私にはキメイラの声が聞こえた・・早く戦いたい・・敵を殺したいと言う・・叫びが

 

「デクス・・ネクロとは違う・・新たな存在・・か」

 

!?この声は・・

 

「「ジオガディス様!!」」

 

慌ててヘルズと共に膝を着き、頭を下げる

 

「ふっふっふっ・・ヴェノム・・お前は素晴らしいネクロだ・・この様な者を生み出す等と」

 

培養液を見上げるジオガディス様に

 

「私等には勿体無いお言葉でございます」

 

「ふっふっふっ・・謙遜する事は無い・・俺はお前の事を高く評価している・・此処に来てデクスについて説明してくれ」

 

立ち上がりジオガディス様の傍に立つ

 

「ではデクスとは何だ?・・俺のネクロマンシーの産物では無いようだが?」

 

「はっ!我らネクロには魔力を吸収し進化すると言う特徴があります・・ですがLV3・LV4に到達できる者は僅かです」

 

「確かに・・限られた者しか高いLVになることは出来んな」

 

「そこで私は進化の特徴を無くし、知性も限界まで削り、身体能力と再生能力を極限まで高めた、存在デクスを作りました」

 

我らには限界がある。ならばその限界を取り払えば良い・・自我を無くし・・知性を無くし・・唯敵を倒す事を考える、不死の兵士・・それがデクスだ

 

「ほほう・・確かにお前の言うとおりだな・・ヴェノム・・所でこいつはまだ動けないのか?」

 

キメイラを指差すジオガディス様に

 

「まだ無理なのです・・魔力がまだ全身に行き渡ってないので・・ならこうすれば良かろう?・・なっ何を」

 

ジオガディス様の手から漆黒の魔力が放たれ、キメイラの中に入る

 

ドクンッ!ドクンッ!!ドクンッ!!!

 

キメイラの体が大きく動き始める

 

「おおっ・・キメイラが目覚める」

 

ドゴン!ドゴン!!ドゴン!!!

 

キメイラの4本の腕から放たれる、拳が何度もガラスに叩き付けられ、遂に

 

ガッシャアアアンッ!!!

 

凄まじい音を立てて、ガラスが崩壊する

 

「グルルルルっ・・・」

 

ポッドから現れたキメイラの姿を見て私は震えた

 

「素晴らしい・・これぞ私の求めた究極の力・・」

 

龍の様な頭部に力強い4本の腕に・・バラバラの4枚の翼と・・獰猛な猛禽類の様な鋭い瞳は、血の様な真紅に輝がやいていた・・その姿は悪魔その者だった

 

「グルルル・・グオオオオオオオオッ!!!!」

 

キメイラは歓喜の雄たけびを上げた・・それは誕生の喜びか、敵を待ち望むデクスとしての本能の叫びなのか・・私に判らなかった

 

 

 

演習場で戦う龍也とエリオの姿があった・・龍也は金色の騎士甲冑に、身の丈ほどの大剣を片手で軽々振り回している。エリオは赤のマントを靡かせてストラーダを振るっていた

 

「ドラモン・・ブレイカーッ!!」

 

巨大なバスターソードが迫る

 

「でええいッ!!」

 

ストラーダの鎌の部分で受け止め受け流し

 

「紫電一閃!!」

 

踏み込みお父さんの胴目掛け拳を放つ

 

「甘いッ・・」

 

即座に後方に飛び僕の拳を回避し

 

「ツインスラッシャーッ!」

 

大剣が二つに別れ、お父さんの両手に装着されると同時に、跳躍し

 

「ブレイブ・・・トルネードッ!!」

 

魔力の竜巻と共に体当たりを仕掛けてくる

 

「!!ええいッ!!」

 

ストラーダを手放し。両手で受け止める

 

ギャリギャリッ!!

 

篭手と魔力の竜巻がぶつかり、凄まじい火花を散らすが・・徐々に竜巻の回転が落ちてくる・・チャンスだと思ったが

 

『駄目です!早く離れてください!!』

 

ストラーダの声にえっ?と思いながらお父さんを見ると、両手に魔力が溜まってるのが見える

 

「!!」

 

慌てて後方に飛ぶと同時に、お父さんの手から巨大な炎弾が打ち出された

 

「ガイア・・フォースッ!!!」

 

巨大な火の玉が僕を飲み込もうと迫ってくる

 

「くっ・・早すぎる!」

 

スピードには自信があるが。迫ってくる炎弾の方が早い。交わし切れない事を悟った僕はストラーダを構え、大きく振りながら

 

「クレセント・・ミラージュッ!!」

 

大きな三日月状の衝撃波を放った。この技は本来ならデュナスフォルムの物だが・・エグザフォルムでも使えない事は無い。放たれた三日月は炎弾を真っ二つに切り裂いた、それと同時にストラーダを後方に振るう

 

ガキーン!!

 

ストラーダとお父さんの両手に装着された刃が追突する

 

「ほう・・これに反応するか・・」

 

驚きと言う感じで笑い掛けて来るお父さんに

 

「僕だって・・そう何度も負けていられません!!・・クレセント・・ミラージュッ!!」

 

空いている手から小型のクレセントミラージュッを放つ

 

「むっ・・」

 

首を傾げて回避する・・だけどそれが目的だ

 

「はあッ!!」

 

全力で胴に蹴りを放つ

 

「ぐうッ・・」

 

不意打ちに近い形の一撃によろめく、お父さんの隙を突いて後方に大きく跳び

 

「ストラーダ。カートリッジロード!」

 

ストラーダから薬莢が飛び出し、魔力を増加させる

 

「・・最後の一撃という所か・・では私も・・」

 

お父さんの両手に膨大な魔力が溜まって行くのが判る・・だけど・・僕の方が早い!!

 

「これが・・僕の最大魔法です!!」

 

マントで上空に飛び上がり、ストラーダをお父さんに向ける

 

「ペンドラゴンズ・・・」

 

全力の魔力を一つの形に纏め上げる

 

「トライデント・・・」

 

僕が砲撃の準備に入ると同時に、お父さんも魔力を放つ段階に入っていた・・速い・・僕なんかとは比べられない速さだ。だけど負けるつもりは無い!全力勝負!!

 

「グローリーッ!!!」

 

「ガイアッ!!!」

 

同時に放たれた魔力が追突し大爆発を起こした

 

 

 

「・・・演習場が物凄い事になってる・・・」

 

フェイトちゃんが隣でボソリと呟く・・確かにその通りだ。二人の魔法の衝突でクレーターが出来ている

 

「あっ・・煙が晴れて来たで・・・」

 

二人の魔法の激突で発生した煙が晴れ・・見えて来たのは

 

「・・兄ちゃんの勝ちみたいやな・・」

 

黄金色の騎士甲冑を身に纏った、兄ちゃんはまだ余裕の表情でエリオを見ている。それとは対照的に

 

「はぁ・・はぁ・・」

 

肩で大きく息をする、エリオの表情はかなり辛そうで、今にも墜落しそうだ

 

「うっ・・」

 

エリオが意識を失ったのか・・頭を下にして落下していく・・だが地面に落下する前に兄ちゃんがエリオを抱き止める

 

「訓練も終ったみたいやし・・兄ちゃんの所行こうか?」

 

頷く、なのはちゃんとフェイトちゃんと共に演習場に向かう

 

「うん?はやて達か・・どうした?」

 

エリオの手当てをしていた兄ちゃんが笑いながら尋ねて来る

 

「どうした?じゃないよ!・・龍也・・・最近にエリオに無茶な訓練してるでしょっ!!私知ってるんだよっ!!」

 

フェイトちゃんが無茶な訓練をしてると言い、兄ちゃんに怒鳴るが

 

「・・エリオが望んだ事だ・・強くなりたいと・・キャロを護る力が欲しいと・・だから私はエリオに協力しているだけだ」

 

エリオの髪を撫でながら言う兄ちゃんに

 

「でも無茶しすぎじゃないですか?龍也さん?」

 

鬼教官と言われるなのはちゃんでも、そう思ったみたいだ。私でもそう思ったけど・・兄ちゃんと一対一での模擬戦?・正気の沙汰じゃない・・リミッター無しでも兄ちゃんと戦うなんて御免や・・勝てる訳が無い・・

 

「無茶では無い・・昔私も同じような事をしていたからな・・ザフィーラとか・・シグナムとかとな・・100の訓練より1の実践・・これが一番早く強くなれるんだ」

 

その通りやな・・それに兄ちゃんの事やし。そんな無茶な事はしてないだろうと思い頷く

 

「でも・・エリオはまだ子供だよ?・・無茶な事はして欲しくないんだけど・・」

 

まだ納得して無い様でフェイトちゃんが言うと

 

「私もそう思うよ・・だけど強くなりたいと言う、エリオの気持ちも理解してやれ・・フェイト」

 

諭すように言う兄ちゃんに、渋々と言う感じで頷くフェイトちゃんを見て

 

「さてと・・私はシャワーにでも行って来るか・・」

 

立ち上がり・・シャワーに向かい歩き出した兄ちゃんを見ながら

 

「さーて・・・エリオをシャマルとこ連れて行こか?」

 

気絶しているエリオを背中に背負い。私達は医務室に向かった

 

 

 

 

「ふー・・すっきりした」

 

着替えてからシャワー室を後にする・・流石に長い黒髪は完全に乾いてないのでまだ湿っているが・・仕方ない。そう思いながら食堂に向かっていると

 

「あっ・・龍也兄っす・・か・・・」

 

ウェンディに会うが顔が真っ赤だ

 

「どうした?ウェンディ?顔が赤いが・・風邪か?」

 

顔を覗き込むと

 

「なななな・・何でも無いっすッ!!」

 

真っ赤なまま走り出し、ウェンディの姿はあっというまに消えた

 

「なんだったんだ?一体?」

 

首を傾げながら再び歩き出すと

 

「あ・・龍也・・さん・・」

 

スバルに会ったがウェンディ同様、真っ赤になり俯く

 

「スバルも風邪か?」

 

風邪かと思い近付くと、ぶつぶつと呟いているのが聞こえる

 

「・・なんで男の人なのに・・こんな色っぽいの・・恥かしくて見れない・・」

 

色っぽい?私は男なんだがな・・と思いながら

 

「今食堂に行くのだが・・スバルも一緒に行くか?」

 

食堂に行くかと尋ねると

 

「はははは・・はい・・いいい行きます!!」

 

噛みながら頷くスバルと一緒に食堂に向かうが

 

「・・何故か視線を感じるのだが・・何でだと思う?」

 

隣をギクシャクを歩くスバルに尋ねると

 

「・・本当に判らないんですか?」

 

判らないから尋ねてるんだがな。と思い頷くと

 

「龍也さんが格好良いからですよ」

 

私が格好良い?一体なんの冗談だろう?と思った・・自分の評価は余り高くない龍也は気付いてないが。スラリとした長身に・・長い黒髪・・目の傷・・それが相まって・・どこか野性的でワイルドな印象がある。龍也は正直かなり格好良いのだ

 

「さてと・・何処か空いてないか?」

 

トレーを持ちながら空いてる席を探してると

 

「お父さ~んっ!!ここ空いてますよ!!」

 

奥の方でキャロが手を振って呼んでくれる

 

「スバル、あそこで食べるとしようか?」

 

「そうですね」

 

頷くスバルと共にキャロの呼ぶ方に行くと

 

「お兄様~」

 

「兄~」

 

どうやらリィンとアギトも居たようで、手を振りながら笑っているので二人の間に腰掛けると。自然な流れで私の膝の上に座る、リィンとアギトに一瞬驚くが別に良いかと思い、食事を食べ終え、書類を纏めていると

 

ビーッ!ビーッ!

 

警報が鳴る、どうやらネクロかデクスが出た様だ。書類仕事を一時中断してブリーフィングルームに向かう

 

「兄ちゃんも来たか・・良し・・じゃあ状況を説明するで」

 

私がブリーフィングルームに着くと同時にはやてが状況を説明する

 

「良いか?街中でデクスが暴れとる、数は20・・武装隊では押さえられん・・しかも逆方向にはネクロ達が現れてる」

 

分断か・・どちらかに強力な者が居るはず・・LV3・・いや4の可能性もある

 

「という訳やから、部隊を二つに分けるで。デクスの方はライトニングと兄ちゃん、ネクロの方は・・スターズとアサルトや。それじゃあ皆、頼むでッ!!」

 

はやての言葉に頷き頷き、私はフェイト達と同じヘリに乗り込み現場に向かった

 

「お父さん・・デクスはどんな感じの敵ですか?」

 

まだデクスと対峙した事の無い、エリオが不安そうに尋ねて来る

 

「デクスはネクロより回復速度が速くて、耐久力もあるが・・エリオなら問題ない・・それより問題なのはキャロの方だ」

 

急に名指しされたキャロが驚きながら

 

「私ですか?・・どうしてですか?」

 

不安げに尋ねて来るキャロに

 

「デクスは獣そのものだ・・フルバックのキャロでは少々きつい・・フリードも同じ事だ・・キャロが居ないとフリードも力を発揮出来ないだろう?」

 

キャロとフリードを見ながら言うと

 

「きゅく~・・・」

 

フリードは悲しげに鳴き、キャロは

 

「じゃあ・・私はどうすれば・・良いんですか?」

 

泣きそうな声のキャロの頭を撫でながら

 

「キャロはキャロの出来る事をすれば良い・・つまり・・エリオのサポートだ。エリオも余りキャロから離れすぎない様に、気を付けろ・・キャロとフリードを護るのはお前だからな?」

 

「「はい!!」」

 

元気良く返事を返す二人を見ていると

 

「八神中将、現場に着きましたよ」

 

パイロットが現場に着いたと言う。降下の準備をしながら

 

「良いか?もし危険だと思ったら直ぐに後退しろ。判ったな」

 

エリオとキャロに念を押してから私は降下した。

 

「大分数が多い・・」

 

降下しながら戦況を見る・・かなりの数のデクスが暴れている

 

「龍也・・私と龍也で大半を押さえよう・・エリオとキャロは数の少ないほうに回って貰おう」

 

フェイトの提案に頷き、私はデバイスを起動させる・・数が多いので高速戦闘の為のブレイカーモードだ。着地地同時に

 

「玄武・・剛弾ッ!!」

 

魔力を込めた正拳突きでデクスを二体消滅させる、それと同時に

 

「ハーケン・・セイバーッ!!」

 

ハーケンフォームのバルディッシュを振るい、デクスを消滅させ背中を合わせ周りを見る

 

「「「ぐるるるる・・・」」」

 

大量のデクスが私達に迫って来ている。やはり狙いは私か・・」

 

近付いてくる者に蹴りを放つが・・ネクロと違い一発で消滅しない

 

「厄介だね・・デクスって言うのは・・プラズマランサーッ!!」

 

ハーケンフォルムからアサルトフォームに戻した、バルディッシュから雷撃を放ちながらフェイトが言う

 

「確かにな・・だが・・勝てない相手ではない!・・白虎咬ッ!!」

 

魔力を込めた拳でデクスを打ち上げ

 

「沈めッ!!」

 

体を反転させ強烈な踵落としで消滅させ、フェイトに

 

「出来るだけ派手な魔法を使え!・・エリオ達の方のデクスもこっちに集めるぞ!」

 

デクスは強力な魔力に集まる習性がある。だから出来るだけ派手な魔法を使えば、エリオ達のデクスもこっちに寄って来る筈そう思い言うと

 

「了解・・少しの間お願いするよ」

 

フェイトが目を瞑り意識を集中させる、その強大な魔力に反応してデクス達がフェイトに近寄るが

 

「おっと・・悪いな・・ここから先は通行止めだ!!・・円月蹴り!!」

 

倒すまでもない・・私の役割はデクス達を一箇所に集める事・・適度なダメージを与えながらデクスを一箇所に集める

 

「・・・龍也!!・・離れてッ!!」

 

フェイトの指示に従い後方に跳ぶと同時に

 

「サンダー・・フォールッ!!!!」

 

限界まで集中した事により限界まで威力を高めた、その一撃は

 

「「「ぎゃあああああッ・・・・・」」」

 

一箇所に集められていたデクス達を纏めて焼き払った

 

「やるな・・フェイト・・デクスの気配は無いな・・・エリオ達と合流しよう・・そうはさせません!!守護者ッ!!ナイトレイドッ!!・・!プロテクションッ!!!」

 

エリオ達と合流しようと言った瞬間、突然後方から放たれた黒い魔力の闇に、反射的にプロテクションを使い防ぐ

 

「・・今ので少しは手傷を負わせるつもりだしたが・・そう簡単には行きませんね?」

 

赤いマントのネクロ・・両手を振りながら言う、その目はギラギラと輝き私とフェイトを睨んでいる・・・確かこいつはなのはが遭遇したと言っていた

 

「貴様・・ヴェノムかッ!!」

 

瞬間的にブレイクから・・ブレイドに切り替え剣を向けながら言うと

 

「おやおや・・私の名を知っているとは・・私も少しは有名になったという事でしょうかね?」

 

ふざけた素振りのヴェノムにフェイトが

 

「プラズマランサーッ!!」

 

ヴェノム目掛け魔法を放つが・・ガシッ!!ヴェノムはその魔力の塊を掴み

 

「おやおや・・話している間に攻撃するとは・・とんだ正義の味方が居たものですね?」

 

簡単に握りつぶしながら

 

「まぁ・・その方が判り易くて・・私が楽ですがね?・・ほら・・来ましたよ・・悪魔が・・」

 

バサ・・バサ・・バサ・・

 

翼が羽ばたく音が聞こえ上空を見る

 

「!何だあれはッ!!」

 

つぎはぎの体に4本の腕と翼を持った異形が・・私達の頭上を跳び越して行く・・あっちの方角はッ!!

 

「クックック・・そうですよ・・キメイラが向かっているのは・・ブリッズを倒した子供がいる方向ですよ・・クックック・・」

 

頭を抑え可笑しそうに笑い声を上げるヴェノムに剣を振るい

 

「フェイト!!こいつは私が抑える・・お前はエリオ達の所へ向かえ!!」

 

「判った・・龍也も気をつけて!!」

 

エリオ達の所に飛んで行くフェイトを攻撃させない為に、ヴェノムに攻撃を仕掛けようとするがヴェノムの上げられた手に止められる

 

「なんのつもりだ!」

 

突然の行動に不信感を抱きながら、剣を向けると

 

「クックックッ・・これで私の目的の半分は成功しました・・私の目的は守護者・・貴方を足止めする事ですから」

 

!!しまった・・こいつは・・慌ててフェイトの後を追おうとするが

 

「おっと・・そうは行きません・・貴方はキメイラがあの魔導師達を殺すまでの間・・ここに居て貰わなくてはいけませんからね!ヘル・・ストライクッ!!」

 

足から黒い魔力弾が放たれる

 

「!!」

 

剣で受け止め魔力弾を受け流し、斬りかかる

 

「おっと・・危ない・・危ない・・」

 

マントを翻しながら斬撃を回避し

 

「ブラッデイ・・クロスッ!!」

 

長い足から放たれた魔力奔流に体の動きを止められると同時に、凄まじい速度で蹴り抜かれた足から黒い十字架が迫ってくる

 

「くっ・・・」

 

拘束は一瞬だったので、跳躍してそれを回避すると

 

「少し焦り過ぎですね・・ブラッディ・・ストリームッ!!」

 

左手から放たれた赤い電撃の鞭が迫ってくる

 

「くっ・・がああッ!!!」

 

回避しきれず直撃を喰らい、体が痺れて思うように動けないが・・何とか体勢を立て直し着地する

 

「流石は守護者・・中々やりますね・・ですが・・私はそう簡単には倒せませんよ!!」

 

向かって来るヴェノムの突撃を回避し剣を振るうが

 

「なっ!!」

 

マントが形を変え剣を防ぐ

 

「クス・・隙ありですね・・マーヴェリックッ!!」

 

「うぐっ・・」

 

強烈な回し蹴りを喰らい吹っ飛ばされながら、私はこいつの戦闘スタイルを分析していた

 

(マントや鞭の遠隔攻撃にトリッキーな足技・・こいつは厄介だな)

 

破壊力は低いだが・・攻撃が読みにくい・・これは長くなりそうだ・・フェイト・・無事でいてくれよ・・私は剣を構え駆け出した・・戦いはまだ始まったばかりだ

 

 

 

「ドラゴンズ・・ラッシュッ!!」

 

手が分裂したように錯覚するほどの高速の連続突きで、デクスを消滅させる

 

「ふぅ・・モードエグザ・・」

 

消滅させると同時にデュナスフォルムを解除する。デュナスフォルムは確かに強力だが魔力の消耗が激しいのが欠点だ。

 

「エリオ君・・とりあえず今の所デクスの反応は無いよ」

 

キャロの言葉に頷き座り込む・・お父さんとの訓練で大分疲れていたから・・少しきつい

 

「大丈夫?」

 

心配そうにキャロが尋ねて来るので慌てて

 

「全然大丈夫!!それよりキャロの方が心配だよ」

 

デュナスフォルムはキャロの魔力も消費する・・僕とキャロの合計の魔力が使えるが・・先に消費していくのはキャロの魔力だ。だから心配だよと言うと、キャロは笑いながら

 

「私も大丈夫だよ・・エリオ君が護ってくれたから」

 

と笑うキャロに思わず赤面してしまい目を逸らす

 

「どうしたの?」

 

キャロが首を傾げながら尋ねて来る。言えない・・恥かしくて顔を見れないなんて言えない・・そう思いながら空を見上げると。上空に異形が浮いており口から炎を吐き出そうとしたのが見えた

 

「!!キャロ!!!」

 

慌ててキャロを抱き抱え後方に跳ぶ、その瞬間赤黒い炎がキャロが居た場所を焼く

 

「あ・・ありがとう・・エリオ君」

 

お礼を言うキャロを降ろすと同時に

 

バサ・・バサ・・ズズーン

 

地響きを立てて異形が着地する。改めてみると化け物と言うのが一番しっくり来る。複数の獣のパーツを持ち・・腕は4本で翼も4枚ある。その瞳は真紅に染まり・・ただ立っているだけなのにとんでもないプレッシャーがある

 

「グルルル・・グオオオオッ!!!!」

 

僕達を見つけて雄たけびを上げる、異形・・その目は僕とキャロを捉えている

 

「キャロ!」

 

「うん」

 

即座にデュナスフォルムに切り替え

 

「カートリッジロード!」

 

篭手から2発の薬莢が飛び出し魔力を増加させ、腕を組み照準を合わせ

 

「ブレス・・オブ・・ワイバーンッ!!!」

 

僕は異形目掛けて全力で砲撃を放った

 

グオオッ!!魔力で出来た飛竜は異形を完全に捉え・・爆発する・・どうだ・・ダメージはあるか?

 

煙が晴れるとそこには無傷の異形が立っていた

 

「そんな・・全力の攻撃が効いてない?」

 

僕が驚き目を見開くと同時に

 

「グルルルルッ・・・」

 

異形が唸り声を上げながら向かって来た。異形はその巨体の割りに素早く僕たちに迫ってくる

 

「キャロ!」

 

僕はキャロを抱き抱え宙に逃げた

 

「ガアアアッ!!」

 

その瞬間僕達が居た場所に拳が振り下ろされる

 

ドゴンッ!!

 

拳の形にクレーターが出来る・・信じられないパワーだ

 

「グルルル・・」

 

僕とキャロを真紅の瞳が捉え続けている

 

「ガアアアアッ!!」

 

上下左右から豪腕が僕とキャロを捉えようと迫ってくる。僕は必死でその攻撃を回避する

 

「グルルルッ・・・」

 

隙が全然無い・・4本の腕と口から吐き出される炎・・その全てが計算された物で的確に僕とキャロに迫ってくる

 

「ガアアアアッ!!」

 

ちょこまかと逃げる僕に痺れを切らしたのか口を大きく開き

 

「グルルルル・・ガアアアアアアッ!!!!」

 

とんでもない大声上げる・・クラッ・・何だ?・・目が回・・る・・

 

その声の所為なのか僕はバランスを崩し地に着地した

 

「グルルルッ!!」

 

異形が僕とキャロを見る・・そうか・・さっきの叫び声は・・僕とキャロのバランス感覚を崩す為の・・何度か立ち上がろうとするが・・足が震え立ち上がる事が出来ない

 

「ガアアアアッ!!!」

 

僕とキャロの方を向いて、大きく口を広げるその中に巨大な火の玉が見えた・・回避も出来ない・・防御も出来ない・・僕とキャロは思わず目を閉じた

 

 

 

 

「エリオとキャロがッ!!」

 

私がようやく二人の姿を見つけた時は、二人の前に異形・・確かキメイラが口を開き二人に炎を吐き出そうとしていた時だった・・慌てて更に加速するが・・間に合わない・・炎の方が速い・・それでも私は全速力で二人の元に向かう・・だがそれより速く灼熱の炎が二人に向け吐き出された・・私はそれでも止まらず二人の元に向かおうとした時

 

「汝・・何故護れなかった?」

 

突然背後から声を掛けられる。慌てて振り返るとそこには

 

「!!」

 

巨大な赤い鳥が私の方を見ていた・・いや・・それだけじゃない・・時が停止している?空間が硬直したように何も動いていない

 

「汝は・・護りたい者を護る事が出来なかった弱者・・・そんな者にそれは必要ない・・」

 

!!!私の手からバルディッシュが消える

 

「何をしたの!!」

 

理屈は判らないが多分この鳥がバルディッシュを消したのだと思い怒鳴ると

 

「何を?・・弱者に武器は必要ない・・ただそれだけの事」

 

私を4つの目が見つめる

 

「私のデバイス・・バルディッシュを返して!!!」

 

「返す・・どれの事だ?」

 

鳥の回りに数百・・うううん・・もっとある・・沢山のバルディッシュが浮かび上がり。地に落下する

 

「さて・・どれがお前の物だ?」

 

その沢山のバルディッシュを見る・・全部同じでどれが私の物かわからない

 

「おっと・・言っておくが・・声を掛ける事は出来んぞ・・さぁ・・探せ・・お前のデバイスを・・時が終る前に」

 

鳥の背後に巨大な砂時計が現れる

 

「これが落ちきれば・・止まっている時は動き出す・・そしてあの幼子達は死ぬ・・それが嫌なら見つけるのだな・・お前のデバイスを」

 

そう言うと鳥は姿を消した

 

「この中から・・本物を見つけるの?」

 

視界を埋め尽くすほどのバルディッシュを見る・・その間も砂時計の時は減っている

 

「考えてる時間は無い・・早く見つけよう」

 

私は一つずつ待機状態のバルディッシュを拾い。セットアップする・・それと同時に砂になり消える

 

「偽者は消えるんだね・・」

 

どんどんセットアップしていくが・・全部消えていく・・

 

「時間が無い・・早く早くしないと・・」

 

砂時計の砂は消えて行く・・それがどんどん私を焦らせる

 

「判らない・・判らないよ・・バルディッシュ・・どこ?」

 

慌てて探すが判らない・・ずっと一緒に居たのに・・なんで判らないの

 

私は思わず膝を着くと、鳥の声が聞こえてきた

 

「お前はパートナーだ相棒だと、言っておきながら本物は判らない・・お前はバルディッシュを唯の道具としか思ってなかったのだろう?」

 

「違う!バルディッシュは・・私の大切なパートナーだ!!」

 

「なら何故判らない!!お前を呼ぶバルディッシュの声がッ!!」

 

声?・・目を閉じると聞こえてくる

 

『マスタ・・・マスター・・私はここです・・早く・・』

 

聞こえる・・バルディッシュの声が!!私はその声を頼りに走り出した

 

「バルディッシュ・・ごめんね・・少し待たせちゃったね」

 

足元のバルディッシュを拾い上げると、偽者のバルディッシュが全て消え代わりにあの大きな鳥が姿を見せる

 

「汝・・我が試練を乗り越えたり・・我が試すは真実の絆・・汝真実の絆を示したり」

 

その鳥から赤い球体が飛び出し、バルディッシュの中に入る

 

「何をしたの?」

 

何をしたのかと尋ねると

 

「何もだ・・我はきっかけを与えたに過ぎない・・後はお前次第・・我が与えた力を使えるかはお前次第だ」

 

さっきまでは気付かなかったがこの鳥からは、神々しいまでの魔力を放っていた

 

「さぁ・・行け・・そして護るのだ・・」

 

その声と共に時が再び動き出した、それと同時に加速する・・速い・・今までの速さとは比べられない。私は炎がエリオとキャロに当たる前に二人を抱え上げ。宙に逃れた

 

「「フェイト・・さん?」」

 

二人がぼんやりと尋ねて来る

 

「ごめんね・・少し遅れちゃったけど助けに来たよ」

 

二人を降ろしキメイラを見ていると

 

「ガアアアアッ!!」

 

私も敵と判断したのか、放校と共に炎を吐き出してくると、同時に私は炎に向かい飛んだ

 

(バルディッシュ・・私に力を貸して・・二人を護る為の力を・・)

 

(マスター、私は何時だって貴女の味方です・・さぁ・・行きましょう)

 

その声と共にバリアジャケットが金色の光に包まれた

 

 

 

「フェイトさんッ!!」

 

突然炎の向かい飛んで行ったフェイトさんの名を呼ぶ。このままだとフェイトさんが炎に呑まれる。そう思った瞬間

 

ズパンッ!!

 

炎が真っ二つに斬られ爆発する。一瞬何が起こったのか判らなかった・・煙でフェイトさんの姿が見えなくなった

 

バサッ!!

 

力強い羽ばたく音と共に炎が消え・・フェイトさんの姿が見えた

 

「あれは・・一体・・」

 

フェイトさんが纏うバリアジャケットは以前の物と違った。美しい青い軽鎧に赤のマント・・それに美しい装飾が施された二つのブレスレットに、魔力が閃光の様に輝きフェイトさんの周りを包み込んでいた

 

「エリオとキャロは私が護るッ!!」

 

その言葉と共に右手のブレスレットから金色の輝く魔力の刃が現れ異形に向かっていくその姿は・・間違いなく騎士だった

 

 

第69話に続く

 


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