夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第69話

第69話

 

軽い・・体が羽みたいに軽い、私は魔力刃を振るいながらそう感じていた。今までの速さは何だったと思うくらい体が軽い

 

「ガアアアアッ!!」

 

唸り声と共に迫る豪腕も酷く遅く見える、軽く回避し右手の魔力刃を振るう

 

ズバッ!!

 

鋭い音と共にキメイラの腕を深く傷つける

 

「ギャアアアアアッ!!!」

 

悲鳴の様な声を上げ、倒れるキメイラだが次の瞬間、口から炎が吐き出される。咄嗟の事で回避が間に合わないと思った瞬間

 

フォンッ!!

 

左手のブレスレットから魔力の盾が発生し、その炎を防ぐ、私はその炎を防ぎながら

 

「ソニックミラージュ・・・」

 

強烈な加速により4体の分身を発生させ、キメイラを囲むように配置する

 

「ガアアアアッ!!!」

 

雄たけびを上げながら分身を殴りつけるがそれは当たる事は無く、空振りに終る

 

「プラズマ・・ランサーッ!!!」

 

本体である私と分身から同時に魔力の槍が放たれる

 

「ガアアアアアアッ・・・」

 

バチ!バチ!!

 

稲妻が落ちたような轟音と共にキメイラの叫び声が響き渡り

 

ズズーンッ!!

 

地響きの様な音を立てて・・その巨体が地に沈む・・だがまだ消滅する気配は無い・・とんでもない体力だ

 

「グルルルッ!!!」

 

怒りの声を上げながら立ち上がるキメイラの目は私を睨みつけている

 

「大分頭に来てるみたいだね」

 

多分こいつの知能は低い・・優れた身体能力の代わりに知能が低い、獣そのものだ

 

「ガアアアアッ!!」

 

4本の腕が私の方を向く、それと同時に赤黒い魔力が溜まって行く

 

「大技かな?・・!!知能が低いって訳じゃないみたいだね・・」

 

ふと後ろを見る・・私の背後にはエリオとキャロが居る、多分こいつは攻撃を喰らいながら、私が絶対回避出来ない位置に誘導したんだ

 

「ガアアアアッ・・・・ヒート・・バイパーッ!!!!」

 

初めて言葉を発したキメイラの腕から4つの魔力波が放たれる、回避は出来ない・・もし避ければエリオ達に当たる・・じゃあどうすれば・・

 

『マスター!風です・・風を呼ぶんです!!!』

 

バルディッシュの声に従い、マントで風を呼ぶ

 

「大いなる風の守護・・ウィンド・・ガーディアンッ!!」

 

マントを振ると、それに従う様に風が動き、私達を護る様に流れ・・風で出来た壁を発生させる

 

ズドーンッ!!!

 

「グルルルッ!!・・グオッ!?」

 

勝ち誇ったような唸り声を出していたキメイラだが、無傷の私達の姿を見つけ困惑したような声を上げるキメイラに

 

「風は・・私達の味方になった」

 

凄まじい暴風がキメイラに吹き付け。その動きを封じる

 

「今度は私の番・・バルディッシュ!!カートリッジロードッ!!」

 

『イエス、サーッ!!」

 

ブレスレットから薬莢が飛び出し魔力を増加させる

 

「エルン・・・」

 

バチバチと音を立てて、魔力刃に稲妻が走る

 

「ストンウェルッ!!!」

 

高速で魔力刃を振り抜く、それと同時に魔力が巨大な衝撃波になりキメイラに迫る

 

「ガアアアアッ!!!」

 

雄たけびと共に風の拘束を振り解き、4本の腕でその衝撃波を受け止めるが・・やはり簡単に勢いを止める事は出来ないのか、後ろに下がって行くが、ダメージは殆ど無さそうだ・・でもそれだけ下がらせる事が出来たなら!

 

「・・・・」

 

目を閉じ意識を集中させながら、思い出すのは龍也のガイアフォースだ、あれは変換素質と膨大な魔力を同時に使用し。強大な威力を持つ広域殲滅の魔法・・前の私では使う事が出来なかった、だけど今の私なら使える筈!

 

バチバチ!!音を立てて両手に魔力が溜まって行くのが判る・・私は炎は使えない・・だけど雷なら!必要な分魔力が溜まったのを感じ、閉じていた目を開く

 

「ライトニング・・・」

 

両手の魔力が纏まり一つの球体になる、そのまま両手を頭上に掲げると

 

バチッ!!バチッ!!!

 

凄まじい音を立てながら、巨大な球体になる

 

「フォースッ!!!!」

 

キメイラ目掛け、その球体を投げつける

 

「ガアアアアッ!!!!」

 

エルンストウェルを砕き、そのままその雷も受け止めるが、止める事は出来ず徐々に雷に包まれて行き

 

ズガーンッ!!!バチバチバチッ!!!!

 

「ギャアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

稲妻の落ちた様な音と共に、キメイラの咆哮が響き渡り、キメイラの巨体は今度こそ完全に沈黙した

 

 

 

ズドーンッ!!凄まじい轟音が響き渡る、まさかフェイトがあいつを倒したのか

 

「キメイラ!!まさか・・くッ!守護者!!勝負は預けて置きますッ!!」

 

ヴェノムも同じ事を考えたのかマントを翻し飛び去っていく

 

「待て!!」

 

私もヴェノムの後を追い飛んで行った、暫く飛んでいるとビルの上にフェイト達の姿を見つけ合流する

 

「怪我は無いかッ!!」

 

フェイトの前に着地しながら訪ねると

 

「私達は大丈夫・・それよりキメイラを!!」

 

フェイトが指差す方を見ると黒こげで地に沈む込む、キメイラの巨体とその傍に佇むヴェノムの姿があった

 

「キメイラ・・なんという事です・・まさか・・貴方が負けるとは」

 

嘆くヴェノムだが私達の方を向き

 

「少々貴女の事を甘く見ていたようです!!ですが・・詰めが甘い!!キメイラはまだ生きています!!」

 

その言葉の通りでキメイラがよろよろと立ち上がる

 

「クックックッ・・まだ生きているなら何とでも出来ます・・では御機嫌よう・・」

 

その言葉と共にヴェノムとキメイラの姿は消えた

 

「くっ・・逃がしたか・・」

 

ヴェノムは良いとしても、せめてキメイラは倒したかった

 

「ごめん・・龍也・・私じゃ・・キメイラは倒せなかったよ・・・」

 

私の方を見ながら謝るフェイトに

 

「いや・・謝るのは私の方だ・・すまなかった・・幾らLV4とは言え時間を掛けすぎた」

 

フェイト達を見ながら謝ると

 

「お父さんの方が怪我が酷いじゃないですか・・大丈夫ですか?」

 

キャロが私の騎士甲冑を見ながら言う。私の騎士甲冑は所々砕け素肌が見えてる場所もある

 

「この程度・・怪我の内に入らない・・フェイト?どうした顔色が悪いぞ」

 

ここで気付いたフェイトの顔色は真っ青で今にも倒れそうだ

 

「ごめん・・龍也・・私・・もう限界・・」

 

ふらっ・・意識を失い崩れ落ちるフェイトを抱き抱える

 

「フェイト!!大丈夫か・・気絶してるのか・・」

 

抱き抱えたフェイトは眠りに落ちている・・どうやら魔力の消費しすぎで気絶したようだ

 

「お父さん・・フェイトさんは大丈夫ですか?」

 

エリオが不安げに尋ねて来る

 

「大丈夫だ・・魔力の消費しすぎで気絶しているだけだ」

 

エリオの頭を撫でてからフェイトを背中に背負いエリオ達も抱き抱える

 

「お父さん!?・・!」

 

キャロが急に抱き抱えられた事に驚き大声を出す

 

「フェイトが心配だ・・悪いがこのままヘリの所まで飛んでいく」

 

私はそう言うとエリオ達を抱き抱えたまま、ヘリに戻り六課へ戻って行った

 

「これで良いか・・」

 

気絶しているフェイトをフェイトの部屋のベッドに横にしてから、私は医務室に向かい、その後にはやての部屋に向かった

 

「兄ちゃん・・お疲れ様・・その様子やと・・大分シャマルに絞られたようやな?」

 

にこやかに笑うはやてに

 

「むっ・・無茶をするなと言われた・・唯の打撲なんだがな・・」

 

ヴェノムとの戦闘で体のあちこちが痛いが・・大した問題があるわけで無い

 

「あんな・・普通の人なら骨が折れてても、おかしくないんやで?あんま無茶して心配させへんでね?」

 

はやてに頷きソファーに座り込む

 

「そんで・・ヴェノム言うネクロはどうやった?」

 

各部署に通達する為の書類を作成する為に、はやてが尋ねて来る

 

「やっかいだな・・優れた体術に遠隔攻撃の手段も豊富・・せめてもの救いは攻撃力が低い所だな」

 

「あんな・・それは兄ちゃん限定やろ・・普通の魔導師なら一発で戦闘不能やない?」

 

呆れたように言うはやてに

 

「いや・・本当に攻撃力は低い・・唯一威力があるのは鞭だけだな」

 

「んじゃ・・交戦した時は鞭に注意やね・・・ほんでフェイトちゃんが戦闘した言うキメイラは?」

 

「私が交戦した訳じゃないが・・暫くは出て来ないだろう・・かなりのダメージを喰らっていたみたいだからな」

 

はやては書類を作りながら

 

「ほいほい・・でも一応出て来るかもしれへんって事やね・・・良しっと書類はこれで終わりっと」

 

椅子に腰掛け背伸びをするはやてに

 

「それで他に用が無いなら私は部屋に戻っても良いか?」

 

部屋に戻って良いかと尋ねると

 

「んーいや・・もうちょいここ居ってえな」

 

もうちょっとここに居てと言うはやてに頷くと

 

「ちょい・・疲れた・・兄ちゃん・・膝枕して・・」

 

机の椅子から立ち上がり言うはやてに

 

「男の膝枕なんて固いだけだと思うが?」

 

「良いの!兄ちゃんの膝枕が私は好きなんやから!!」

 

そう言うはやてに苦笑しながら膝枕をしてやると

 

「んふふ~~やっぱり気持ち良いわ」

 

目を細めるはやての髪を撫でると

 

「んっ・・気持ち良いわ・・」

 

と笑うはやての髪を撫でながら、感じる穏やかな時間に私は目を細め笑っていた

 

 

 

「ううん・・ここは私の部屋?」

 

私が意識を取り戻すとそこは私の部屋だった

 

「・・確か・・魔力の消費しすぎで気絶したんだよね・・・」

 

立ち上がり意識を失う前に何があったのか思い出す

 

「そうだ・・・私・・龍也に抱えられたんだ・・・恥ずかしいな」

 

意識を失いかけていたが確かに龍也に抱き抱えられたのは感じていた

 

「ううう・・恥かしい・・・あっ・・でも嬉しかったかも・・」

 

龍也は非常に恋愛には疎い・・その龍也が抱き抱えてくれたという事が私は嬉しかった

 

コンコン

 

「フェイトちゃん?起きてる?」

 

扉の外からなのはの声が聞こえたので、扉を開く

 

「あっ・・良かった起きてたんだ・・夕ご飯持って来たけど・・食べれる?」

 

と笑いかけてくるなのはに

 

「うん、大丈夫、食べれるよ入って」

 

部屋の中になのはを招き入れる

 

「凄いね・・これ本当に食堂のメニュー?」

 

なのはが持って来てくれたトレーには、凄く美味しそうな料理が並んでいた・・とても食堂のメニューに見えず尋ねると

 

「ううん・・違うよ・・龍也さんが作ってくれたんだよ」

 

龍也が・・本当に優しいね・・・これでもう少し人の好意に敏感だと良いのにね

 

「ほら・・・食べないと冷めちゃうよ?」

 

なのはの言葉に頷き、ハンバーグを口に運ぶ

 

「もぐ・・・相変わらず美味しい」

 

久しぶりに食べたがやはり龍也の料理は美味しい

 

「だよね・・女の私より料理が上手って・・なんか自信無くしちゃうよね」

 

なのはが笑いながら尋ねて来る

 

「本当だよ、どうして龍也はこんなに料理が上手なんだろうね?」

 

コーンスープを口に運びながら言うと

 

「んー多分あれじゃない?はやてちゃんとかに美味しい料理を食べさせたかったんじゃない?」

 

はやてか・・・やっぱり・・龍也に一番近いのは妹として育ったはやて、次にヴィータだよね・・

 

「そういえば・・なのはは食べたの?」

 

半分ほど食べた所でなのはに尋ねると

 

「うん、私達も皆食べたよ・・スバルとエリオとセッテはお代わりしてたよ」

 

ふふ・・しょうがないよね・・龍也の料理は美味しいから。そう思いながらデザートのゼリーを食べ終え

 

「ごちそうさまでした・・所で何か用があるの?なのは」

 

食事中ずっと待っていたなのはに用があるのか?と尋ねると

 

「うん・・ちょっとね・・えっと・・はい」

 

なのはが差し出して来たのは

 

「新しい形態の纏め?」

 

かなり厚めの書類の束を見ながら言うと

 

「私のレイジングハートと同じ様に、バルディッシュにも新しい形態が出来たみたいだから、シャーリーに見て貰ったんだ」

 

頷きながらその書類を見る

 

「・・・本当・・凄いスペックだよね・・」

 

自分で使っていたから判るが・・化け物のような性能だ。想定されていた真・ソニックフォームを遥かに上回る性能だ

 

「本当だよ・・私のレイジングハートも凄いパワーアップしたからね」

 

頷きながら書類を読み進める

 

「真ソニックフォームより、防御・・加速・・攻撃力は上・・更に広域殲滅の魔法の行使が可能な、アルフォースモード・・・とんでもないよ」

 

最後に使った広域殲滅の魔法はかなりの威力があった、多分気絶したのはリミッターの所為だと思いながら、読んでいた書類を閉じる

 

「でもさ・・フェイトちゃん。私達のデバイスがパワーアップしたのは、やっぱりこれからもっと大変な戦いになるって事かな」

 

やっぱり・・なのはも感じたのかな

 

「うん・・私もそんな気がする・・だけど大丈夫だよ。私達も強くなった・・龍也だけに負担を掛けなくて澄む」

 

私達が弱いから龍也が無茶をする、だけど私達が強ければ龍也は無茶をしなくても良い

 

「そうだね・・もう私達は足手纏いじゃないよね」

 

暫くなのはと話をしていると

 

「じゃあ・・トレーは私が持って行くから。フェイトちゃんはちゃんと休んでてね」

 

トレーを持ってなのはが私の部屋を後にし、一人になった部屋で

 

「そうだよね・・私はもう足手纏いじゃない・・龍也を護る事が出来る」

 

昔は何度も龍也に助けられた・・でも今は違うバルディッシュと一緒に龍也を護る事が出来る

 

「バルディッシュ・・・これからも宜しくね」

 

ベッドに横になり、枕元のバルディッシュを持ち上げながら言うと

 

『はい・・私は何時だってマスター、貴女の味方です』

 

その言葉に笑みを零しながら、私はもう一度眠りに付いた

 

 

 

 

「キメイラが敗れるとは・・少々魔導師の事を甘く見ていたようですね」

 

いらいらとしながら、キメイラの入ったポッドの調整をしていると

 

「ふん!だからそんな物が守護者を倒せる訳が無いんだ」

 

この声は・・

 

「やれやれ・・久しぶりに声を聞いたと思ったら皮肉ですか・・ゴレラ」

 

シャッ!!!

 

ゴレラと言った瞬間、剣を構え一瞬で私の前に立ち、剣を首筋に当てながら

 

「俺はハーティーンだ!!そのふざけた名で俺を呼ぶな!!」

 

怒鳴るハーティーンに

 

「いや・・すいませんね・・ハーティーン・・つい口が滑ってしまいまして」

 

素直に謝る事にする・・ハーティーンは私より強い、私を倒す事など容易い事だからだ

 

「ふん・・次は無いぞ」

 

剣を鞘に戻すハーティーンに礼を言ってから、ポッドの調整を再開すると

 

「まだそんな物を弄くっているのか?一度負けた物に用は無いだろうに」

 

呆れたと言いたげなハーティーンに

 

「くす・・そうでしたね・・ハーティーンは知らないのですね・・キメイラはこれで完成では無いのです」

 

まだ重要な部分が無いキメイラは未完成品・・言うなら失敗作なのだ

 

「完成ではない?何を言っている・・どうみてもこれで完成だろうが」

 

キメイラを見ながら言うハーティーンに

 

「くす・・気付きませんか・・キメイラが何の姿をしているか?」

 

笑いながら言うと

 

「姿?・・・んッ!!こいつの姿は・・馬鹿なっ!!何故」

 

気付いた様で慌てるハーティーンに

 

「その様子なら気付いた様ですね・・そうです!キメイラのベースはカーズです」

 

カーズは特殊なネクロで、様々のタイプのネクロの優れたパーツを持つ・・いわば合成獣・・まぁ・・本人の前で言えば怒るの判っていますがね

 

「私はカーズを分析して・・キメイラを作りました・・つまり足りない物とは・・」

 

「カーズか・・」

 

中々頭が切れる見たいですね・・キメイラに足りない物・・それはカーズだ!!

 

「キメイラはカーズの残骸を取り込んだ時。真の完成を迎えるのです」

 

キメイラを見ながら言うと

 

「馬鹿か!カーズが簡単にやられる訳無いだろうが!」

 

怒鳴るハーティーンに

 

「いや・・カーズは負けますよ・・その時こそ私の最高傑作は完成するのです」

 

そう・・負けて貰わないと困るのだ・・私の最高傑作の為に!!

 

「ちっ・・こんな所に来るんじゃなかった」

 

私の研究室を後にする、ハーティーンの姿を見ながら

 

「クク・・ハハハ・・・ハッハッハッハ!!!!完成が待ち遠しいですよ!!キメイラ!!!」

 

パンデモニウムにヴェノムの狂ったような笑い声が響いていた

 

 

 

 

「シャマル・・兄ちゃんの調子はどうや?」

 

頼みがあると言って来た、シャマルに兄ちゃんの調子を尋ねると

 

「正直に言いますよ、お兄さんの体の調子は最悪です」

 

最悪か・・何が原因なんやろか?

 

「原因はファントムとの戦闘でなのはちゃんを庇ったのと、今日の戦闘ですね・・まぁ、疲労が蓄積しているのが一番の原因ですが」

 

疲労か・・兄ちゃんを休ませるのはかなり難しい問題やな

 

「どれくらい休ませれば良いんや?」

 

「2日ですね・・その間魔法の行使は絶対にさせてはいけません」

 

「絶対か・・・どうするかな・・監禁とかか?」

 

「・・監禁は駄目ですよ・・」

 

シャマルが呆れた様に言う

 

「嫌やな・・3割り冗談や」

 

「それ殆ど本気じゃないですか!駄目ですよ!!監禁なんかしたら休みにならないじゃないですか!!」

 

怒鳴るシャマルに

 

「嫌やな・・兄ちゃんを独占したいと思うのは自然の事やろ?」

 

肩を竦めながら言うと

 

「それは判りますが・・犯罪は駄目ですよ」

 

犯罪や無かったら良いのか・・

 

「んじゃ・・軟禁は?」

 

監禁が駄目なら・・軟禁なら良いだろうと思い言うと

 

「駄目です!!!監禁する方向から離れてください!!」

 

文句が多いなぁ・・兄ちゃんを休ませたいからアイデアを出してくれ言うたのはシャマルやのに

 

「あのですね・・文句とかじゃなくて・・もっと常識的な事を言ってください」

 

「極めて常識的な事やったで?」

 

言うとシャマルは頭を抱えながら

 

「あのですね・・はやてちゃんがお兄さんが好きなのは判ります・・ですがもっと常識の中で行動してください」

 

別に良いやん・・兄ちゃんは誰にも渡すつもりがないんやから

 

「はぁ・・じゃあ・・私のアイデアを聞いてください・・良いですか・・なのはちゃんとフェイトちゃんも体の調子が良くありません・・却下!!兄ちゃんが襲われるやろが!!」

 

理解した・・シャマルは兄ちゃんとなのはちゃん達をデートさせる気や!そんなこと私は許さへん!!

 

「ですが!!監禁とか軟禁と比べれば!!100倍ましです!!スバルとティアナの時みたいに条件を出せば良いでしょう!!」

 

「嫌や!!兄ちゃんが気の迷いで好きになってしまう可能性があるやろがッ!!!」

 

暫くシャマルと言い合いをし、肩で息を整えながら

 

「はぁ・・はぁ・・10000歩譲って、デートの許可は出しても良え・・だけど兄ちゃんがなのはちゃん達に靡く可能性があるやろ」

 

そうなったら最悪だ・・私とヴィータは大切な人を永遠に失う事になる、そんなのは御免だ

 

「はぁ・・はぁ・・その可能性は低いです・・あの鈍感なお兄さんがそう簡単に人を好きになる筈がありません」

 

正論やな・・兄ちゃんは究極的な鈍感やしな

 

「はぁ・・判った・・二人のデートの許可出す・・今からメール送るわ」

 

メールの内容はこうだ

 

二人に2日の休暇を与えます・・その間兄ちゃんとデートをしてもかまわへん、だけど条件がある

 

1 兄ちゃんに迫らない

 

2 キス禁止

 

3 腕組み禁止

 

4 暗くなる前に帰る事

 

5 露出のある服を着ない事

 

6 兄ちゃんを襲わない事

 

以下の条件を守るなら兄ちゃんとデートしてもええ。でもデートをする場合は、兄ちゃんに絶対魔法を使わせん様に見張る事が条件や

 

「これで良いか?」

 

メールをシャマルに見せながら言うと

 

「良いんじゃないですか」

 

シャマルの了承が出たのでメールを送り

 

「私はもう寝るわ・・おやすみシャマル」

 

「おやすみなさい、はやてちゃん」

 

シャマルに見送れながら自室に戻ったが

 

「むう・・兄ちゃんとなのはちゃん達がデートか・・もやもやする・・」

 

スバルやチンクさん達と違い、二人は兄ちゃんとの付き合いが長い分だけ危険だと思う

 

「ああ・・なんであんな許可出してもうたんやっ!!!」

 

自作の兄ちゃん抱き枕を抱えながら私はメールを出した事を後悔していた

 

「うう・・兄ちゃんが二人を好きになりませんように」

 

私はそう祈ってから眠りに付いた

 

第70話に続く

 


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