第71話
「ああああ~っ!!どうしてメール送っちゃったんだろう!!」
私は部屋の中で頭を抱えた、明日どうするかどうかも何も決まっていないのに
「あうあうあう・・ピローン!!・・はうっ!!・・何だメールか・・」
私が頭を抱えているとメールの着信音が響き、一瞬かなり驚き変な声を出してしまったが、落ち着いてメールを見る
「あう・・龍也さんからだ・・・」
差出人は龍也さん・・つまり明日の事の返答だよね?・・もしかしたら断られるかな?・・内心ビクビクしながらメールを見る
「あっ・・良いんだ・・よかっ・・って良くないッ!!!」
返信のメールで明日一緒に出かけることになったが・・不味い、何も決まっていない・・服は大丈夫だ・・だが予定が無い
「ああああ・・・どうすれば良いの?」
こういう経験がまるで無い私はどうすれば良いのか判らない。
「と・・取りあえず・・週刊誌でも見ながら考えよう・・」
週刊誌のデートの特集記事を見ながら、私は明日の予定を考え始めてから、二時間後
「良し・・これで行こう・・」
どうするかの予定を決め、龍也さんにメールを送ると同時に私は眠りに落ちた
「ふむ・・どうしたのだろうか?」
待ち合わせの時間になっても、なのはが姿が見せないことに私は首を傾げた
「こういう時は早く来る物なんだよな?」
待ち合わせの30分前には待ち合わせ時間に居たほうが良いと聞いたので、早く来たが・・既に1時間待っている
「寝過ごしたのか・・それともからかわれただけか・・どっちだろうか?」
そもそも・なのはが私を誘う事自体、不思議だ・・美人で人気のあるなのはと、隻眼の私・・どう見ても吊り合う者では無いだろう・・そんな事を考えていると
「寝過ごしたああああああッ!!!」
なのはの絶叫と共に走ってくる音が聞こえた
「・・どうやら・・寝過ごしたのが正解の様だな・・」
私は走ってくる音の方を見る、なのはが慌てて走って来る、暫くその姿を見ていると
「はぁ・・はぁ・・すいません・・寝過ごしちゃって・・」
私の目の前で息を整えながら謝ってくるなのはに
「いや・・別に大して待ってないから気にしなくて良い」
笑いながら言うと
「本当すいません・・私から誘っておいて寝過ごすなんて・・」
まだ気にしているのか謝ってくるなのはに
「だから気にしなくて良いと言っているだろう?・・それより何処に行くんだ?」
何処に行くのかと尋ねると
「えっと・・取りあえず・・映画館でも行きましょうか?」
映画・・か悪くないな・・
「そうだな・・それでは行こうか?」
「はいっ!」
元気良く返事を返すなのはと共に私達は映画館に向かって行った
「大人二人ですね・・■■■になります」
映画館の受付でチケットの支払いをしようとすると
「龍也さん悪いですよ・・ここは私が・・」
気まずそうにいうなのはに
「気にするな・・大して金の使い道があるわけじゃないからな」
と笑い支払いを済まし、映画館の中に入って行った
「ふむ・・悪くないな」
今日上映されている物はホラーだった。私はそんなにホラーが嫌いという訳ではないので、中々楽しんで見ていると
「あうううう・・怖い・・」
なのははかなり怖いようで、私の服を確りと掴んでいる
「きゃあっ・・・ううう・・失敗だった」
なのはが涙目で失敗だったと言うので
「怖いなら出るか?」
余りの怖がりの様に、映画館を出るか?と尋ねると
「いいい良いです、自分で見るって言ったんだから最後まで見ます」
最後まで見ると言うなのはに苦笑しながら、私はスクリーンに視線を戻した
あうあう・・失敗だったよぉ・・何で今日に限ってやってる映画がホラーなの・・
「があああああっ!!」
スクリーンでゾンビが雄たけびを上げる
「きゃあっ・・あうあう・・怖いよぉ・・」
怖くて龍也さんの服を掴みながら映画を見続けた
「大丈夫か?」
映画が終わり、二人で映画館を出ると龍也さんが尋ねて来る
「だ・・大丈夫ですよ・・私は全然平気です・・」
そう返事を返すと
「あのな・・あれだけ怖い怖い騒ぎながら、大丈夫は無いぞ?」
呆れたという感じで笑う龍也さんが私の手を握り
「まぁ・・良いがな・・さてと・・そろそろ昼時だからレストランにでも行こうか?」
私の手を握りながら歩いて行く龍也さん
(あうううう・・行き成り手を繋ぐのは反則じゃないかな?)
私は赤面しながら、龍也さんに手を引かれながらレストランに向かって行った
「しかし・・最近はミッドでも地球の料理が多いんだな?」
レストランのある通りを歩きながら龍也さんが、私に尋ねて来る
「そうですね・・最近良く見ますよね・・地球の料理・・やっぱりあれじゃないですか?龍也さんの影響とか?」
SSS+であり、管理局最強の魔導師の龍也さん、その知名度は非常に高い、しかも余りメディアに顔を出さないので、素顔を知る者は非常に少ない。それに前の取材のTVもまだ放送されてないので、こうして街中を歩いていても騒がれる事は無い
「私の影響?・・どういう意味だ?」
首を傾げる龍也さんに
「正最強無敵の騎士・・・蒼天の守護者、いろんな噂があるんですよ?それに龍也さんは地球生まれじゃないですか・・まぁ・・私達もですけど・・多分それで最近地球に注目が集まってるそうですよ?」
管理局の高ランクの魔導師・・まぁ・・私やはやてちゃん達に龍也さん・・全員が地球生まれ。それが原因か最近地球に旅行に行く人が多いそうだ、
「そんな物なのか・・」
初めて知ったと言う感じの龍也さんと歩いていると一軒の店が目に止まる
「龍也さん、ここにしましょうよ」
「ほう・・こんな物であるのか」
龍也さんは感心という感じで笑った、あった店は洋食専門店と書かれていた
「ほら、龍也行きましょう!」
龍也さんと一緒にそのレストランに入って行った
「ごゆっくりどうぞ」
メニューを渡され、二人でメニューを見ながら
「何にします?」
龍也さんに尋ねると
「そうだな・・私は・・ドリアにでもするよ。なのははどうするんだ?」
笑いながら尋ねて来る龍也さんに
「私は・・スパゲッティにでもしますよ」
メニューが決まった所で、ウェイターさんを呼び注文をし、料理が来るのを話していると
「お待たせしました」
ウェイターさんが、私達のテーブルにドリアとスパゲッティを置き
「それでは失礼します」
ウェイターさんが下がった所で
「それでは食べるとしようか?」
笑う龍也さんに頷き、目の前に置かれた料理を口に運んだ
「美味しいですね」
これはかなり地球の味付けに近い、多分かなり試行錯誤を繰り返したのだろうと一口で判る
「確かに・・これは美味しいな」
龍也さんは上機嫌で答える、二人で話しながら食べた食事はとても和やかで楽しかった
「またのお越しをお待ちして居ます」
ウェイターさんに見送られ、レストランを後にした
「それにしても、良い感じの店でしたね」
感じの良い店だったと龍也さんに言うと
「確かに良い店だったと思うよ、・・所で次はどうするんだ?」
次はどうするのかと尋ねて来る龍也さんに
「そうですね・・特に予定も無いですし・・暫く歩きながら考えましょうよ」
折角のデートだが、はっきり言って何をすれば良いのか判らないのでそう言うと
「悪くないな・・それでは行くとしよう」
龍也となのはが話しながら街中を歩いている頃・・
「部隊長・・少し落ち着いてもらえませんか?」
グリフィス君がそう言う
「私は落ちついとるよ・・グリフィス君の気のせいやろ?」
私がグリフィス君を見て言うと
「そそそ・・そうですね!!すいません!!僕の気のせいです」
コクコクと頷くグリフィス君を横目に、書類整理をするが
(いかん・・イライラする・・兄ちゃんの要素が足りん)
昨日と今日兄ちゃんと一緒に居た時間が無かった為、酷くイライラとする
(ああ~!!もう嫌や!!はよ兄ちゃん帰ってこんかな)
イライラとしながら時計を見る、まだ昼を少し過ぎたばかり、少なくとも後4時間は帰ってこない
「八神中将・・早く・・早く帰ってきてください」
グリフィス・・多分六課の中で一番苦労している人物である。龍也が居ない事でイライラとし、機嫌が悪くなるはやての補佐を出来るのは恐らく彼だけであろう。
「ああ!!グリフィス君!!私は一人で大丈夫やから!!暫く一人にして!!」
グリフィス君に部屋から出て行くように言うと
「はっ?しかし・・」
渋るグリフィス君に
シャッ!!ドガガッ!!
懐からダガーを5本取り出し投げつける
ツツー・・掠めた左頬から血を流す、グリフィス君に
「私は一人で大丈夫・・オッケー?」
ダガーを指で挟み投擲準備を取りながら、グリフィス君に問いかける
「はいいいいいっ!!!失礼します!!!」
グリフィス君が部屋から血相変えて出て行くのを確認してから、机の引き出しから兄ちゃん人形を引っ張り出し抱きしめる
「うう・・兄ちゃんに会いたい」
暫くそのまま人形を抱きしめていると
「段々落ち着いてきた・・よいしょと」
人形を仕舞い、書類整理を再開しようとすると、ディスプレイに映像が映っていたのでそれを見る
『離してください!!!私はあの女を殺します!!!』
デバイスを構えジタバタと暴れるセッテと
『落ち着け!!』
『不味いわね~、八神兄様が帰るにはもう少し時間が掛かりますし~』
チンクさんとクアットロがセッテを両サイドから抑えながら、落ち着かせようとし
『ウェンディ!!おい確りしろ!!』
『私最近・・こんなん・ばっかっす・・』
気絶しているウェンディの頬を叩くノーヴェの姿が映っていた
「・・セッテかぁ・・私とそっくりや・・でも嫌いやな」
私はその映像を見ながらそう呟いた、多分これが同属嫌悪という奴だろうと思いながら、書類整理を始めた
「うーん・・偶にはこういうのも良いですね~」
背伸びをしながら隣の龍也さんに言うと
「確かに、偶には悪くない」
龍也さんは木に背中を預け、空を見上げながら返事を返した、今私達は街外れの丘の上に居る
「風が気持ち良いですね~」
柔らかく吹き付ける風はとても優しい物だ
「まったくだ、今度ヴィヴィオでも連れて来るとしよう、ハイキングになるからな」
ハイキング・・確かにその通りだね、ここは緩やかな傾斜の山だ、これくらいならヴィヴィオでも上ってこれるだろう
「ヴィヴィオとも遊んでやりたいからな」
龍也さんは穏やかな笑みで笑っている
「そうですね・・ヴィヴィオもきっと喜びますよ」
そう言うと龍也さんは
「そうだな・・きっとヴィヴィオも喜んでくれるだろうな・・」
笑う龍也さんの顔には、父親の様な優しさが見えた、多分これがヴィヴィオやエリオ達が龍也さんを父親の様に慕う理由だろう
そんな事を思いながら龍也さんを見ていたが
「龍也さん?どうしたんですか?」
龍也さんが黙り込んだのでどうしたのだろうか?と思い顔を覗き込むと
「すぅ・・すぅ・・」
穏やかな寝息が聞こえてくる
「寝てるのか・・やっぱり龍也さんも疲れてるんだよね」
龍也さんの隣の腰掛けながら私はそう呟いた
「皆の訓練見て・・ネクロが出たら前線で戦う・・本当龍也さんは無茶するよ」
穏やかな寝息を立てる龍也さんの髪を撫でる
「本当無茶ばっかして・・はやてちゃん達や私達を心配させてばっかで、もう少し皆を頼ってくれれば良いのにね」
お父さんが言っていた、龍也さんは誰かを頼る事を忘れてしまったのだと・・何時だって龍也さんは頼られる側だったから・・
「偶には私達を頼ってくれると良いのにね・・ドサッ・・きゃっ・・」
龍也さんの寝顔を見ていると突然龍也さんの体が傾き、私の膝の上に乗る
「・・膝枕か・・恥かしいけど・・これも良いかもね」
一瞬かなり驚いたが別に気にする事じゃない、私はそう思いながら龍也さんの髪を撫でた、暫く無言で居たが
「・・はっ!もしかして凄いチャンスじゃない?」
現状を把握しよう、龍也さん・・膝の上で寝てる・・回り・・人が居ない=邪魔者は居ない
「今ならキスしてもばれないかも・・ああっでも駄目だ・・キスは禁止だったよね・・」
良く考えればこれは酷い生殺し状態だ、膝の上では龍也さんが無防備で寝てるのに何も出来ないのは非常に辛い
「待って!・・キスは唇の事だ・・なら他の場所なら良いはずだ・・そう例えばほっぺとかなら無問題の筈だ」
そうだ・・問題は無い・・唇ではないのだから、はやてちゃんの条件も護っている
「初めてじゃないんだ・・一回したから問題ない・・落ち着け私」
そうだ前に一回したから問題ない筈だ
「すいません・・寝込み襲うみたいですけど・・唇じゃないんでそれだけ言っておきます」
私はそう言うと龍也さんの右頬に唇を当てた
「何時か・・龍也さんが私の想いに気付いてくれますように・・」
私はそう呟き、もう一度龍也さんの頭を撫でながら空を見上げた
「起きましたか?」
目を開くとなのはの顔が目の前に広がる・・いやそれどころか私はなのはに膝枕されている?
「・・はっ!!・・バッ!!・・すまん」
慌てて頭を退かし、なのはに謝ると
「くすくす・・別に良いですよ気にしてないですから」
おかしそうに笑うなのはに
「何時からだ?・・何時から私はなのはの膝の上で寝ていた?」
何時から寝ていたのか気になり尋ねると
「えっと・・二時間前くらいからでしょうか?」
二時間も・・私は・・なんという事だ・・寝ていた事より膝枕をして貰ったという事が気になってしょうがない
「そろそろ暗くなるから帰りましょうか?」
私が苦悶していると、なのはは何もない様に帰りましょうと言う
「いや・・なんでそんなに普通なんだ?」
その余りの自然体に尋ねると
「くす・・好きな人を膝枕するのは女の子の憧れですから」
と笑うなのはに完全に思考が停止した
「ほら早く行きますよ?」
なのはに手を引かれる様に私は六課に戻っていた
「はぁ~最近好きと言われることが多いような気がするなぁ・・私なんかをからかって楽しいのだろうか?」
そもそも、フェイト達やスバル達の様な、美女と美少女が私を好きと言うこと自体が冗談だろう(鈍感スキル・・遺憾なく発揮中)
はやてはブラコンという奴だろう・・多分ヴィータも・・それは判るが・・なのは達は私をからかっているとしか思えない
そんな事を考えながら、風呂から上がり着替えてからリビングに向かう
「あっ!兄ちゃんお風呂から出たんか?丁度良かったな~今ご飯が出来たところやで?」
!!はやてが居る!!鍵を掛けていた筈なのにッ!!
「パパ~ご飯食べよう」
ヴィヴィオかっ!!ヴィヴィオが鍵を開けたんだな!!
「ほらご飯冷めるではよ食べよう?」
・・まぁ・・別に良いか
「そうだな、折角だから冷めない内に頂くとしようか」
はやてと向かい合うように腰掛ける
「ヴィヴィオはパパの膝の上~」
何時もの様に私の膝の上に腰掛けるヴィヴィオの頭を撫でる
「んっ・・えへへ~パパ~」
膝の上で笑うヴィヴィオに笑みを零しながら、はやての用意してくれた料理を口に運ぶ
「もぐ・・うん美味いな」
どれも私の舌に合わせてある所為か、どれもとても美味い
「当然!兄ちゃんの好きな味付けは完璧に覚えてるで」
笑いながら自分の頭を叩く、はやてを見ていると
「パパ~、あ~んして」
口を開くヴィヴィオに
「良いとも、はいあ~ん」
おかずをヴィヴィオの口に運ぶ
「ん~もぐもぐ。美味しい~」
美味しい~と笑うヴィヴィオを見て笑ってると
「兄ちゃん~私も~」
口を開くはやてに苦笑しながら、おかずを箸で掴みはやての口に運ぶ
「ん~、最高や~」
もぐもぐと口を動かすはやてを見ながら、自分の分の食事を再開した
「「「ご馳走様でした」」」
三人で手を合わせると、はやてが皿の片付けをしている間私はヴィヴィオと遊んでいた
「んふふ~パパ~」
私の胸に額を押し付け笑うヴィヴィオの頭を撫でていると
「兄ちゃん、お皿の片付け終わったで、私は部屋に戻る・・嫌だ!はやてねね行っちゃ嫌だ!!・・う~んしょうがないなぁ~兄ちゃん、今日私も兄ちゃんの部屋で寝て良い?」
はやてが部屋の戻るというと、ヴィヴィオが嫌だと言いながらはやての服を掴む。はやては苦笑しながら私の部屋で寝て良いかと尋ねて来るはやてに
「そうだな・・別に構わないぞ」
少し考えたが別に良いかと思い、はやてに良いと言うとはやては笑いながらヴィヴィオを抱き上げ
「良し、兄ちゃんの許可も出たし、今日は一緒に寝ようかヴィヴィオ?」
「うん!!パパとはやてねねと一緒~っ!!」
えへへ~と笑うヴィヴィオとはやてと一緒に寝室に向かった
「う~ん・・こうやって寝るのも良いなぁ」
今私達はヴィヴィオを挟む様に川の字でベッドに横になっていた
「パパとはやてねねと一緒~」
私達の間でヴィヴィオが楽しそうに笑いながら言う
「パパ~大好き・・」
直ぐに眠ってしまったヴィヴィオの頭を撫でていると
「なぁ・・兄ちゃんは何でそこまでヴィヴィオを大切にするんや?・・こんな言い方は嫌やけど・・言うなら兄ちゃんとヴィヴィオは赤の他人やで?」
確かにその通りだが・・
「確かにな・・だがな・・そんな物は些細な事だ。ヴィヴィオが私を父と呼ぶなら私はヴィヴィオの父親だ、そこに血縁関係等は必要ない、事実より今だよ・・はやてが私の事を兄と呼ぶのと同じ事だ」
そう返事を返すと
「そっか・・そやな・・兄ちゃんの言いたい事は判るわ」
はやても私の言いたい事を理解したのか頷く
「さっ・・もう寝よう・・明日も忙しいからな」
「そやね・・兄ちゃんおやすみ・・」
はやてにおやすみと言ってから私は眠りに落ちた
龍也達が眠りに落ちた頃、天雷の遺跡に居るジェイルは
「・・大いなる呪の力を持つ王は・・ものを失い悲しみに耐えることが出来なかった・・か」
遺跡の古代文字を解読している・・判った事は余り多くない・・壁の字も所々欠けてるし・・何より古代文字だ翻訳が間違っている可能性もある・・私には立ち止まってる暇は無い、だから翻訳を続ける
「・・彼の者は大いなる・意思・・その魂を・・渡し・・邪悪の王となる・・邪悪の王は・・・・死者を操る禁術・・・・・・を生み出す、だがそれは彼の者の望む物ではない・・その事実は・・彼の者・・さ・・る・・き・・・きの・・駄目だこれ以上は翻訳出来ない・・」
今私が調べていたのはジオガディスに関する事だが・・肝心な所が欠けている
「ジオガディスが・・失った物?・・それは一体何なんだ・・?」
ジオガディスも最初から悪の王ではないのだ・・彼は元は聖魔王と呼ばれた、聖と魔の力を併せ持つ優しい王だったそうだ・・
「何かが原因で彼は完全な魔に堕ちた・・それが何なんだ」
ジオガディスの目的・・多分奴が何を失ったのかが判れば判るはずだが・・如何せん情報が少なすぎる、私が頭を抱えていると
「ドクター・・まだ翻訳をしていたのですか?そろそろ休んではくれませんか?」
ウーノが心配そうに話しかけてくる
「ああ・・判ってるよ・・丁度一区切りついた所だ・・そろそろ休ませて貰おう」
翻訳用のツールの電源を切り、ウーノの隣に立つと
「あんまり無茶をしてはいけませんよ?ドクターが体を壊しては意味が無いですからね?」
気遣ってくれるウーノに
「ああ・・判ってるよ・・ウーノ・・私が無茶をしては意味が無い事は私も判ってるよ」
「判っているなら、早く休みましょう?まだ戦いは始まったばかりなのですからね?」
ウーノに連れられ私はテントに戻って行くなか
(龍也・・私は必ず・・奴を倒すヒントを見付けてみせる・・だからそれまであんまり無茶をしないでくれよ・・)
唯一無二の親友である、龍也の事を私は考えていた・・カリムの予言は知っているだが私はそれを信じない・・いや信じたくない・・彼の・・龍也の死の予言など信じて堪るか・・私はそう思いながらテントの戻り眠りに落ちた・・その頃遺跡の外では
「科学者・・漸く見つけたぞ・・」
遺跡を鋭い視線で睨みつけるネクロの姿があった・・スカリエッティ達にも確実にジオガディスの魔手が迫っていた・・
第72話に続く