第72話
「うう・・中々疲れが取れないものだ・・」
テントの中で私はそう呟いた・・やはり熟睡とは行かないようだ
「ドクター?朝ごはんの準備が出来ましたよ?」
テントの外からウーノが声を掛けてくる
「ああ・・判ったよ・・今行くよ・・」
寝袋から抜け出し、何時もの白衣を着込んでからテントを出る
「ドクター、おはようございます・・少し顔色が悪いですが・・大丈夫ですか?」
心配そうに顔を覗き込んでくるウーノに
「大丈夫、少し疲れてるだけだよ」
笑いながら言い、歩いて行くと
「スカリエッティか・・おはよう・・良く眠れたか?」
既にゼストが席に腰掛け待っていた
「良く眠れたよ・・ゼスト・・所でルーテシアは?」
早起きであるルーテシアの姿が見えない事を尋ねると
「機動六課のエリオとか言う小僧にメールを送っている」
ほールーテシアにも春という所かな?彼女は大分エリオを気に入っているようだし・・そう思いながら席に着くと
「お父さん・・おはよう・・」
寝ぼけ眼でオットーとディードが歩いてくる
「ああ、おはよう二人とも・・まだ眠いなら顔を洗ってきたらどうだい?」
まだ眠そうな二人に言うと頷き、顔を洗いに行ったオットーとディードを見ていると、突然背後から
「わっ!!」
大声でわっ!と言われるが、私は驚かず笑いながら
「セインか・・おはよう」
振り向き言うとセインは笑いながら
「えへへ~父さんおはよう」
目を細め笑いながら、セインが席に着くと
「・・父さん・・おはよう・・」
「ああ、ディエチおはよう、良く眠れたか?」
と尋ねるとディエチは
「良く寝れたから・・お腹すいた・・」
と小さく返事を返し椅子に腰掛けると同時に、顔を洗ってきたオットーとディードも腰掛ける
「皆来たか・・もう少し待ってくれ・・今運ぶから・・」
トーレとメガーヌがトレーを持って歩いて来る
「はは、メガーヌのおかげでトーレも料理が出来るようになった、これは喜ばしい事だな」
と笑っているとトーレが怒りながら
「そんな風に言わなくても良いじゃないですか!!」
と私の前にドンと皿を置くトーレに
「いや・・すまない・・つい・・」
と謝るとトーレは素直に許してくれ、席に着いた
「ドクター、おはよう」
とてとてとルーテシアが歩いて来てゼストの隣に腰掛ける
「うん、おはよう・・さっ皆揃った事だしご飯にしようか?・・頂きます!」
「「「頂きます!!」」」
流石に質素な食事だが、こうして大勢で食べると美味しく感じる物だ・・私はそんな事を考えながら食事を進めた
「さてと・・私は遺跡の調査に行ってくるよ」
食事を終休憩しているところでそう言うと
「駄目です、ドクター今日は休んでください」
ウーノに止められる
「休むとはどういうことかな?」
首を傾げながら尋ねるとウーノは
「ドクターは最近遺跡に篭りっきりです、偶には休んでください」
回りを見ると皆こくこくと頷いている・・やれやれ・・ここは言う通りにするしかないか・・私はそう判断し
「判ったよ・・今日は遺跡に行かないよ、ウーノの言うとおり休む事にするよ」
「そうですよ、余り無茶をしてドクターまで倒れたら大変ですからね」
と笑うウーノに見送れ、私は暇つぶしの為の本を取りに行った
「偶には休んで貰わないと・・ドクターにも」
歩いて行くドクターを見ながらそう呟くと
「確かにスカリエッティにも休んでもらわないとな」
ゼストが私の隣の立ちに言い
「騎士ゼストもそう思いますか?」
尋ねるとゼストは頷き
「まったくだ・・スカリエッティも龍也も自分の体を気にしないタイプの人間だからな」
ゼストはそう笑い歩いて行った、私はドクターと龍也様の事を考えた・・二人は良く似てる・・家族を大切にする所も・・自分の体も気にしない所もそっくりだ・・私はそう思いながら空を見上げた
「ウーノ、エリオがこれ送ってくれた」
空を見上げているとルーテシアが何かを持って歩いてくる
「何ですか?・・ああこれは・・」
ルーテシアが持って来たものそれは・・
「ふふふ・・龍也様の人形ですか・・良かったですね」
可愛らしくデフォルメされた、龍也様の人形だった
「うん・・エリオがプレゼントだって・・さっき送ってくれたの・・」
そのぬいぐるみを抱きしめながら笑う、ルーテシアの頭を撫でながら
「本当、良いお友達が出来ましたね」
そう言うとルーテシアは笑いながら
「うん!エリオもキャロも大事な大事な友達だよ!」
と笑いルーテシアは
「ゼストにも見せてくる!!」
ゼストが歩いて行った方向に走って行った、私はその後姿を見ながら
「ふふふ・・エリオも龍也様に似ているのかもしれませんね・・無自覚な所とかが・・」
多分まだ恋心にはなっていないが・・近いうちに代わるかも知れない・・もしそうなったら
「キャロに強力なライバルと言ったところかしら?」
エリオの事を好きな少女の事を思いながら散歩をし始めた・・散歩をするウーノの姿を遥か上空から見る漆黒の影
「きき・・まだだな・・まだ早い・・じっくり策を練らせて貰うか・・」
灰色の鎧に大きな黒い翼を持ったLV3のネクロ・・ディルグの姿があった
「ふむ・・まだ出力が不安定だな・・」
私は自分専用のデバイスの調整をしていた・・チンクから送られてきた、龍也とリィンとアギトのユニゾン状態の映像・・それを見た時・・私のデバイスの姿がうっすらとだが思いついた
「二人の融合騎とのユニゾン・・ふむ・・相変わらず規格外の男だ・・」
いくら適合率が高いからと言っても、同時にユニゾン・・体に掛かる負担が半端じゃ無い筈なんだが・・私は映像を見ながら自分のデバイスの調整をしていた
「しかし・・オメガとはよく言った物だ・・隙が全く無い・・」
アギトの炎を充分に発揮する為の、龍の頭を模した篭手は剣を武器にし、リィンの氷の特徴は狼の篭手で武器は銃・・しかも騎士甲冑の防御も尋常じゃないほど強固な物だ・・
「ふむ・・だが再現できるはずだ・・」
私には龍也の様なダブルユニゾンは無理だ、だが二つのデバイスを融合させれば・・同じような事が出来るはずだ
「しかし・・瓜二つというのも詰まらない・・そうだ・・私のは龍の方を銃に・・狼・・いや・・ライオンだ・・ライオンの方に剣と
装甲は・・黒と白の混合・・名前は・・カオスだな・・」
調整を進め、七割完成しているカオスを二つに分ける
「こっちが・・ギガスティックランス・・」
置かれた指輪の上にディスプレイには、展開された状態の騎士甲冑の映像が映し出されていた
「うーん・・良いね・・中々格好良いじゃないか・・」
青の騎士甲冑に大型の槍に、背中には魔力を噴出させ具現化した翼・・全体的に見るとイメージ通り龍その物だ
「まぁ・・悪者ぽいが・・別に良いだろう・・私の趣味だし・・」
ギガスティックランスの調整を終え、次に
「次はライオンハートだな・・」
金色の指輪の上の映像を見る
黒のバリアジャケットに赤い帽子・・それと腰に剣が収められた鞘が見える・・ライオン・・確かにライオンだが・・
「これは・・番長とか言う奴か?」
地球に昔居たと言うあれかもしれない・・そう思うと中々良いかもしれない
「ふーむ・・確かに強そうだし・・良いかもな・・」
ライオンハートの調整も終え
「さて・・・ここからが問題だ・・ギガスティックランス、ライオンハート・・ジョグレス!」
映像で二つのデバイスが融合し、更に展開された騎士甲冑が表示されるが
「ふーむ・・ますます悪者という感じだな・・」
見た感想は悪者だ、白と黒の混合の騎士甲冑に、龍の頭とライオンを模した篭手からはそれぞれ、剣と大砲が姿を見せ、その背には翡翠色マント・・強そうだが・・悪者と言う印象が強いが
「だが・・龍也と並べば様になるんじゃないか?」
映像で龍也と並べてみる
「!!おお良いじゃないか・・素晴らしい私のイメージ通りだ」
私は暫くカオスの能力を確認していた、飛行も可能で遠近両方に充分な戦闘力
「ふむふむ・・だがオメガと比べるとやはり見劣りするか・・」
性能は高いだが、オメガと比べると見劣りするなと思い、出力のグラフを見ると
「むっ!・・・出力が安定しない?」
さっき、50だと思ったら今は150・・
「また代わった?」
150の次は45・・出力のグラフは全く安定しない
「ふむ・・何かが足りないのか・・それとも・・無茶なのか・・いや無茶ではない筈だ・・多分何か足りないのだな・・」
何せ二つのデバイスの融合というのは長い歴史の中始めての試みだ・・まだ何かが足りないのだろう
「とにかく・・カオスはまだ実用段階ではないという事か・・」
操作しジョグレスを解除して、ギガスティックランスを右手にライオンハートを左手に嵌めた
「カオスは無理でも、ギガスティックランスとライオンハートは使える・・これで娘に負担を掛けなくても済む・・」
幾ら戦闘機人とは言え、怪我をすれば血が出るし・・下手をすれば死ぬ・・私はそんなのは御免だ
「チンク達は大丈夫、龍也が居るんだ・・だが不安なのは私達の方か・・」
今遺跡の周りには結界が張られている、だからネクロの襲撃を受けていないが・・万が一という事もある・・
「早めに調べ終えて・・龍也達と合流したい物だ・・」
報告では最近LV3、LV4が動き始めたそうだ・・トーレ達は強いだが・・LV3になると少々苦戦する・・LV4になれば・・下手をすれば死んでしまう・・だから早めに調査を終えたい所だが・・今大事な部分の為・・ここで帰る訳には行かないのだ
「出来れば奴らが動く前に六課に帰りたい物だな・・」
私はそう呟き、空を見上げた
「今日も襲撃は無いか・・ザザッ!!・・いや違うな・・襲撃のようだ・・」
遺跡の入り口の方で姿を隠しながら、ネクロの襲撃が無いか見張っていたが・・どうやら・・襲撃のようだ・・
「キキ・・ミツケタ・・ミツケタ!!」
LV1が25・・
「騒ぐナ・・・敵がこいつだケの内に倒すのダ!!」
LV2が10体・・・少し少ないか・・多分偵察組みなのだろう、俺はそんな事を考えながら待機状態のアンブロジウスを取り出し
「俺一人の内にか・・甘く見られた物だ・・貴様ら如き・・俺一人で充分だ・・セットアップ」
騎士甲冑が展開される、左腕を覆い隠すように鎧と槍が一体化した、篭手が展開され・・それに続くように赤の騎士甲冑が展開されていく、それはかなり重さのある強固な物だ・・そして最後に赤のマントが展開される
「行くぞ・・亡者ども・・元居た場所に逝くが良い!!」
俺はアンブロジウスを力任せに振るう
「ギャアッ!!!」
かなり大型のアンブロジウスは、槍の分類とすれば城壁破壊用の大型の槍・・その大型の槍の一振りは簡単にLV1を10体、消滅させた・・俺はアンブロジウスを見ながら
(漸くここまで使いこなせるようになったか・・最初は酷い有様だったからな・・)
渡された直後はまともに扱う事も出来ず、少し動けば息が切れる・・そんな有様だった・・だが今は違う・・
「キキ!!」
飛び掛ってくるLV1に横薙ぎの一撃を叩き込み消滅させる
この力で・・今度こそ全てを護ってみせる!最高評議会の罠で俺の部隊はほぼ全滅・・生き残ったのは俺とクイントにメガーヌだけ・・最初の方は恨みだけ戦おうとした・・だが今は違う・・仲間を・・家族を・・娘を護る為に俺は戦う、俺はアンブロジウスを振るい
LV1を殆ど一瞬で消滅させた所で、唖然とするLV2に、接近しアンブロジウスを振るったが
「甘イ・・その槍でハ、ここまで接近されたラ・・振れないだろウ死ネ!!!」
少々踏み込みが甘かったのか、攻撃を回避し1体のLV2が迫ってくるが
「確かに槍は無理だが・・俺の武器は槍だけではない」
右腰の柄だけの剣を抜き放ち、魔力を込めるそれと同時に
フォンッ!!鈍い音を立てて魔力刃が展開され、俺はそれを振りながら
「アウスターベンッ!!」
接近してきたLV2を両断する、アンブロジウスの最大の武器はその巨大な姿だ、だがそれは欠点でもある・・懐に入られればそこで終り、だがアウスターベンと組み合わせればその弱点は消える、俺はアンブロジウスとアウスターベンを巧みに操り、次々消滅させて行く・・そして最後に残ったLV2に歩み寄ると
「ヒイイイッ!!!」
慌てて背を向け逃げようとするLV2に
「敵の近くで背を向ける等・・馬鹿のすることだっ!!」
素早く回り込み、アンブロジウスを突き刺す
「ギャアアッ!!!」
悲鳴を上げるLV2を持ち上げ
「消えろ・・そして元居た場所に逝け・・アヴァロンズゲートッ!!」
ズガンズガンッ!!
二発のカートリッジがLV2に打ち込まれる、ネクロは魔力を吸収するだがアンブロジウスは別だ・・アンブロジウスの魔力はネクロに取っては猛毒・・それは一瞬でネクロの体を駆け巡り消滅させた
「・・あるべき場所で穏やかな眠りを・・」
俺は十字を切ってから、ネクロと戦闘をしたと報告する為にスカリエッティのテントに向かった
「くくく・・良いぜ・・これでデータは集まった・・」
歩き去るゼストを見るネクロ・・ディルグだ
「きき・・俺にはお前の戦闘データが無かった・・だがこれで判った・・もうすぐ・・お前達に終わりの時が来る・・ジオガディス様に逆らった罪その命で償え・・きき・・」
ディルグの後ろには5体のデクスの姿があった・・
スカリエッティ達に近付くジオガディスの魔手は、ゆっくりとだが確実に迫っていた
第73話に続く