第74話
「どうだ?何か掴めたか?」
私の訓練に付き合ってくれていた、シグナムが尋ねて来るが
「駄目だ・・もう少し・・もう少しで何か判りそうなんだけどよ・・」
あと少し、あと少しで何か掴めそうなんだけど・・何か足りない・・だがそれが判らない・・
「ええい!シグナム!もう一回だ!もう一回模擬戦してくれ!」
シグナムにアイゼンを向けながら言うと、シグナムは
「駄目だ、これ以上は体に負担が掛かりすぎる、だから今日は休め」
休めというシグナムに
「待ってくれ!私は大丈夫だ!まだ・・うっ・・」
大丈夫だと言いかけると目の前がふらつき、倒れかける
「言っただろう?体が休みを欲してるんだ・・これ以上は模擬戦をしても何にもならないぞ」
諭すように言うシグナムに
「だけど・・今のままじゃ・・兄貴を護れないんだよ・・力が足りないんだよ・・私には兄貴を護るだけの力が無いんだ・・」
俯きながら言うと
「それは私も同じだ・・今の私達は高町よりもテスタロッサより弱い・・だが私達は一人じゃない、皆が仲間がいる・・焦る気持ちも判るが、余り無茶をして兄上を心配させては意味が無いぞ?」
・・シグナムの言うとおりだ・・焦っても何にも変わらないか・・
「判った・・今日はもう寝るよ・・おやすみ・・シグナム・・」
私はシグナムにそう言い残し、演習場から自室に戻り眠りに落ちた・・
ジリリリリッ!!
「う・・朝か・・」
目覚ましの音で目を覚まし、起き上がる
「ううん・・良く寝た・・」
起きて体をほぐす、昨日は少し早めに寝たから体の調子が良い
「さてと・・顔でも洗ってくるか・・」
顔を洗ってから髪を三つ編みにする、この時髪を止めるのに使うのは、兄貴に買ってもらった三日月の髪飾りだ
「へへ・・やっぱりこれが一番だな・・」
兄貴に貰った髪飾り・・それだけで心がポカポカして来る・・
「さてと・・行くか・・」
制服に着替えてから自室を後にし食堂に向かっている、黒のコートが視界に入る・・兄貴だ嬉しくて追いつき後ろから抱きつく
「うん?何だヴィータか・・どうしたんだ?」
兄貴は穏やかに笑いながらどうした?と尋ねて来る
「んー何でもねぇ・・ただ兄貴を見つけたからかな?」
抱きつきながら言うと
「そうか・・まぁそれは良いが・・離れてくれるとありがたいな」
笑っているように見える兄貴だが・・実は凄く動揺してるのが判る・・と言ってもはやてに教えて貰ったから判るようになったんだけどな・・これ以上抱きついてるのもおかしいから離れると、兄貴が
「今から私は食堂に行くのだが・・お前も一緒に来るか?」
笑いながら尋ねて来る兄貴に頷き、私と兄貴は食堂に向かって行った・・
「ぬう・・戦いに行けぬとは何と暇な事だ・・」
戦いに出ることが出来ない・・それは俺にストレスを溜めていく・・
「戦ってこそ俺だ・・戦えなければ意味が無いか・・」
そう呟いていると
「おやおや・・カーズずいぶん暇そうですね?」
ニヤニヤと笑いながらヴェノムが姿を見せる
「ちっ!貴様か何のようだ?」
俺はこいつが嫌いだ、だから若干威圧的に返事を返すと
「やれやれ・・折角貴方に良い知らせを持って来たのに・・随分な反応ですね?」
からからと笑うヴェノムに
「言いたい事があるならさっさと言え!」
その態度に更に苛付き、怒鳴りながら言うと
「はいはい・・私が言いたいのは貴方に出撃許可が出たという事ですよ・・」
出撃許可・・それを待っていたんだ・・
「くっくっくっ・・それを早く言えヴェノム・・まぁ良い・・俺は出撃するぞ・・」
立ち上がりヴェノムの横を通り過ぎようとすると
「カーズ、私のデクスを何体か連れて行きますか?」
笑いながら尋ねて来るヴェノムに
「いらん・・あんな獣同然の物など必要ない・・」
俺はデクスが嫌いだ、あんな獣同然の物よりネクロの方がよっぽど使える・・いちいち面倒な指示を出す必要があるデクスなど・・所詮紛い物だ・・
「あんな物ですか・・まぁいらないなら良いですよ、それではお気をつけて」
ニヤニヤと笑うヴェノムに見送られながら、俺はLV2とLV1をそれぞれ30体ずつ連れ、パンデモニウムを後にした
「くっくっくっ・・上手く行きましたね・・」
飛び去ったカーズを見ながらヴェノムは押し殺した笑い声を上げていた
「これでカーズが守護者達に敗れれば・・キメイラは更なる力を得る事が出来る・・」
押し殺した声を上げながらヴェノムは暗い通路を歩いて行き、一つの部屋の中に入る
「ぐるるるる・・」
その部屋の中では、フェイトに致命傷を与えられた筈のキメイラが無傷の姿で居た・・そしてキメイラの回りには消滅し始めている、ネクロとデクスの姿があった・・ヴェノムはそのネクロ達を見て
「ははは・・良いですね・・出来損ないが大量に居たおかげで、キメイラの傷が治ったみたいですね」
大ダメージを受けていたキメイラを回復させるには、大量の魔力が必要になる・・だから出来損ないのネクロとデクスを喰わせたのだ
「くっくっくっ・・待っててくださいねキメイラ・・もう少しで極上の餌が食べれる筈ですから・・」
狂気の色を瞳に写し、ヴェノムは狂ったように笑い声を上げていた・・
「・・・・なんという事だ・・遺跡が破壊されたのか・・」
ヴィータと食事を終え、自室で書類整理をしているとジェイルからメールが来ている事に気付き、それを見て私は驚いた・・メールの内容はネクロとデクスの襲撃を受け、なんとか撃退したが・・代わりに遺跡を破壊された・・神王の部分は大丈夫なので・・神王について調べると書かれていた
「よほど・・遺跡には調べられたくない事があったのか・・」
態々ダークマスターズが動いたという事は、相当調べられたくない事があったようだなと思っていると
ビーッ!!ビーッ!!
警報が響き渡る・・どうやらネクロかデクスが出たようだ・・私は書類整理を止めブリーフィングルームに向かった・・
「すまん・・少し遅れた・・」
ブリーフィングルームでは既に全員集合していたので、遅れたと謝ると
「ううん・・龍也の部屋はブリーフィングルームから一番遠いから気にしないで」
と笑うフェイトに礼を言ってから、ブリーフィングルームの椅子に腰掛ける
「うし・・じゃあ状況を説明するで?」
私達の顔を見ながらはやては状況を説明し始めた
「まずクラナガランの市街にネクロの反応が現れたんや・・LV2とLV1がそれぞれ30体ずつ、バラバラに行動してる・・南側と北側に東側・・必然的に三チームに分ける必要性がある・・しかもデクスの反応が無い・・多分罠やと私は思うけど、出撃しない訳にはいかん・・でも罠の可能性が高いから皆気をつけてな」
気をつけろと言うはやてに頷き、私達はブリーフィングルームを後にした・・
「八神と一緒か・・」
チンクがルナエッジを持ちながら言う・・考えてみれば私はチンク達の隊長になるのだが・・あまり隊長らしい事をしてない様な気がした・・チンク達は大分鍛えているから、どうしてもスバル達の訓練を見てしまうしな・・そんな事を考えながらヘリの椅子に腰掛け
「とりあえず、クアットロが居ないからな・・二人二人に分けるぞ?」
クアットロは指揮タイプだから、はやてと共に戦況を見ながら指揮を出す為に六課に残っている
「それなら、私とノーヴェとチンク姉様とウェンディで分けたらどうでしょう?」
セッテがそう提案する・・近接と援護の出来るセッテとノーヴェに・・万能のウェンディと戦闘経験の多いチンク・・良い組み合わせだ・・
「そうだな・・それで行こう・・チンクとウェンディは逃げ遅れた民間人の保護に回ってくれ、私はセッテとノーヴェと一緒にネクロの方に行く」
万能タイプだが・・戦闘経験の低いウェンディを前線に出すのは少々不安がある、だからここはチンクと共に民間人の保護に回って貰う方が良い・・私はそう判断し言うと
「ぶー龍也兄と一緒の方が良いっす・・セッテとノーヴェずるいっす・・」
不貞腐れるウェンディに
「お前は戦闘経験が余り多くない・・だから今回は保護の方に回ってくれチンク、ウェンディを頼む」
諭すように言うと不貞腐れながら頷いたウェンディを見ながら、チンクに頼むと言うと
「任せておけ、八神はネクロの方に専念してくれれば良い」
頼もしい返事を返すチンクに頷いていると
「現場に到着しました、降下し始めてください」
ヘリのパイロットの指示に従って私達は降下した
「さーて・・どこから倒していく?」
デバイスを起動させ、どうするか尋ねて来る、ノーヴェに
「LV2を先に仕留める・・後は状況に応じてだな・・」
目の前に居る十体のLV2を見ながらノーヴェに返事を返す、
「それでは私は援護で良いですね・・」
セッテは私の魔力光と同じ色のバリアジャケットを身に纏い、両手にブーメランの様な形をしたデバイスを持ちながら、私とノーヴェの後ろに立つ
「ああ・・援護は任せる・・ノーヴェ行くぞ!」
「おう!」
ブレイカーモードの騎士甲冑を身に纏い、ノーヴェと共にLV2の群れに向かって行った・・
「玄武・・剛弾ッ!!」
「氷狼撃!」
私とノーヴェの魔力の篭った拳がLV2を貫き・・
「私の目の前で龍也様を攻撃しようとは・・身の程を知りなさい・・」
単色の目で私とノーヴェを攻撃しようとした、LV1にブーメランを投げつけ消滅させるセッテに
「私はどうでも良いのかよ・・」
ノーヴェが少し寂しそうにそう呟いた・・私はどう反応すれば良いのか判らないので無言でLV2を貫いた
「ああ・・もうどうでも良いぜ!敵はぶっ潰す!それに限る!!」
ノーヴェの拳がLV1を貫く・・だが
「キキーッ!!」
二体のLV1がノーヴェの影から飛び出し、爪を振ろうとすると
ザンッ!!
セッテの投げつけたブーメランがネクロを切り裂き消滅させる
「ノーヴェ、突っ込み過ぎですよ・・龍也様と連携を組んで下さい・・好き勝手やられると援護がしにくいです」
戻ってきたブーメランを握り締めながらセッテが言う
「おお・・すまねぇ・・少し突っ込みすぎたぜ・・」
謝りながら私の隣に立つノーヴェを見ていると
「「キキ・・」」
「「守護者・・殺ス・・」」
LV1とLV2が更に現れる・・
「ちっ・・まだ現れるのか・・何か目的があって動いてるのか?」
統率の取れたネクロ達の動きを見ていると、何か目的があって動いているように見える・・なら一気に片付けるとするか・・
「ノーヴェ・・一気に決めるぞ・・」
「・・了解・・」
同時にカートリッジを使用し魔力を増加させる
「はああああッ・・氷幻演舞撃!!」
氷で出来た分身と共に突撃しLV1を消滅させていくノーヴェ
「私も負ける訳にはいかないか・・コード・・麒麟!・・参るっ!!」
LV2目掛け、魔力弾を放ちそれと同時に突っ込んで行き、次々と魔力の篭った拳で貫いて行き消滅させていく
「「これで・・決まりだっ!!!」」
最後にお互いに魔力で出来た刃を振るい残ったネクロを両断する
「お疲れ様です、龍也様・・ノーヴェ・・」
後方で援護していたセッテが労いの言葉を掛けて来る
「この程度は問題無い・・」
LV2程度なら幾ら出てこようと私の敵ではない・・LV2は黒騎士の時からこれでもかと戦っているのだから・・
「・・!」
念の為にフェイト達となのは達が向かった方の気配を探る・・するとヴィータの方に今までと比べられない負の気配を感じた・・
「ちぃッ!!・・ノーヴェ、セッテ、お前達はチンク達と合流してフェイト達の所に行け!良いな!」
突然の事に驚き硬直する二人を無視して、私はヴィータの方に向かった
「ふう~これで一息ついたか?」
最後に残ったLV2を消滅させ、私はそう呟いた・・
「・・!!・・」
突然背後から強烈な殺気を感じ、後ろに飛びのくすると
ドガッ!!ジャラララッ!!
私が立っていた場所に巨大な爪が突き刺り・・その爪と繋がっている鎖が音を立ててビルの上に戻って行く、私は爪が戻って行く方を見上げた
「ぐはははッ!!良いぞ!!戦いとはこうでなくては!!」
爪が戻ったビルの上には、漆黒の龍を思わす鎧に巨大な二本の砲塔を背負ったネクロの姿があった
(何て威圧感だよ・・こいつまさかLV4か?)
兄貴と比べると大した事は無いが・・今まで戦ったどのネクロよりも強い負の気配にLV4かと思っていると
「守護者では無いが・・まぁ良い・・我らに逆らう魔道士どもは皆殺しだ!!」
皆殺しと叫び、ネクロは私目掛け突撃して来た
「!!」
反射的に横に跳んで回避する
「良い反応だ・・だがその程度で俺の攻撃を回避出来たと思うな!!!・・ブースタークローッ!!!」
その叫びと共に左手の爪が私目掛けて飛んでくる
「プロテクション!!」
タイミング的に回避は無理だったのでプロテクションで防ぐ
「良い判断と言いたいが・・それでは防げんぞ!!ぬうんっ!!」
弾かれた爪と繋がっている左腕を振り回し、連続で爪をプロテクションに叩き付けて来る
(こいつなんて力だ・・力だけなら兄貴にも負けてないぞ)
全力でプロテクションを張る、
「ぬう・・硬い・・こんな子供騙しでは駄目か・・」
爪が戻って行く・・今だ!
「雷帝降臨!!」
アイゼンと私を強烈な電気が包み込む、前使ったときは模擬戦だったから手加減したが・・今回は全力だ!
「トール・・ハンマーッ!!」
ズドーンッ!!
全力でアイゼンを振り下ろした、それと同時に稲妻がネクロの姿を包み込んだ
「はぁ・・はぁ・・どうだ?・・やったか?」
手応えはあった・・正真正銘私が持てる最高の一撃だが・・
「それで終わりか?」
アイゼンはネクロの右腕で受け止められていた、私がその事に驚いていると腹部に強烈な膝蹴りが叩き込まれる
「がっ・・」
突然の攻撃に反応できず直撃を喰らい吹っ飛ばされる
「げほっ・・げほっ・・なんて威力なんだよ・・」
余りの威力に咳き込んでいると、ネクロが私を鋭い冷めた目で睨みながら
「ふん・・お前の最強の一撃がこの程度・・まぁ良い・・今度はこっちの番だ・・」
ネクロに凄まじい魔力が収束していく・・
「さぁ!消し飛べ!∞キャノンッ!!!」
背中の砲塔から漆黒の砲撃が放たれ・・私は思わず目を閉じた
ズガーンッ!!!
痛くない?・・どうして・・?
痛みが無い事に驚きながら目を開く・・そして私は目を見開いた
「がふっ・・・」
兄貴が私を庇うように立っていた・・兄貴が咳き込むと同時に大量の血が吐き出され、兄貴は膝から崩れ落ちた
「くっくっくっ・・まさか・・守護者がこんな事で倒せたとは・・俺はついてるぜ・・」
ネクロがゆっくりと私と兄貴に近付いてくる、私は反射的に兄貴を抱き抱えた
「くっくっくっ・・そうか・・守護者と共に死にたいと言うのだな・・良いだろう!望みどおりにしてやる!!消え失せろ!!∞キャノンッ!!!」
漆黒の砲撃に呑まれると同時に、意識が何処かに落ちていくのを感じていた・・
「ここは・・どこだ・・」
気が付いたら私は何も無い白い世界に立っていた・・この世界には見覚えがあった・・ここはクレアの世界・・そう思っていると
「ヴィータ・・」
後ろから聞こえた声に振り返る、そこには私に力をくれたクレアが居た・・
「クレア・・どうしてここ・・ブンッ!!!・・何するんだ!!」
突然槍を振るって来た、クレアに怒鳴りながら尋ねると
「何を?・・簡単ですよ・・私の信頼を裏切ってくれた貴女を倒すんですよ・・」
殺気の篭った目で私を睨むクレア・・判る・・クレアは本気で私を殺すつもりだ・・私は足元に落ちていたアイゼンを拾い握り締める
「・・さっきのは挨拶代わり・・騎士として丸腰の相手を攻撃するのは気が引けますからね・・ですが・・武器を持った以上・・私は本気で貴方を倒す!・・ユニティ・・リミッター解除・・」
持っていた槍が光り輝き、私の視界を奪う・・そして光が消えた瞬間、強烈な殺気を感じ後ろに飛びのく
ブンッ!!
何かが通過する音が聞こえ、それと同時に
「今のは避けたんじゃないですよ・・避けさせて上げたんです・・さぁ・・ここからが本番です!!」
クレアの騎士甲冑は姿を変え、紺色の騎士甲冑に月を思わせる盾と、槍が変形したと思う斧を振りかざし向かって来た
「くっ!」
アイゼンで斧を受け止めるが・・
「その程度で止めたつもりですか!」
下から抉り込む様な蹴りが叩き込まれる
「がっ・・」
息が止まる・・とんでもない威力だ・・私が戦っていたネクロより遥かに痛烈な一撃だ
「止まっているとは余裕ですね!ルナティックハーケン!!」
魔力で刃を巨大化させ、私目掛けて振るってくる
「くらってたまるかっ!!」
アイゼンを下から振り抜き斧を上に弾くが・・
「甘い・・甘すぎます・・ふんっ!!」
クレアの拳が鳩尾に叩き込まれる
「ごふっ・・」
余りの威力に咳き込みながら蹲ると
「貴女は王を護るといった・・だが結果は貴女は王に庇われ・・王は重傷を負った・・貴女には王を護る力など持ってはいない!!」
私を睨み怒鳴るクレア
「貴女を信じ・・私は力を貸した・・だが貴女は負けた・・その程度の強さでは王と共に歩くなど不可能・・なら・ここで私の代わりに眠るが良い・・」
兄貴の傍に居られない?・・嫌だ・・私は決めたんだ・・兄貴の傍に居るって・・兄貴を護るって・・決めたんだっ!!
ゆっくりと立ち上がり、アイゼンをクレアに向ける
「まだ立ち上がるのですか?・・貴女では・・私には勝てない・・ブンッ!!バキャッ!!・・!!」
勝てないと言い掛けたクレアの騎士甲冑にアイゼンを叩き付け、甲冑を破壊する
「勝てない?・・ふざけんな・・私は決めたんだ・・絶対兄貴を護ってみせるって・・だから・・決めたんだ!!・・私は誰にも負けねぇってっ!!!」
一気に肉薄しクレアにアイゼンを次々叩き付ける、クレアは盾で防ぐが
「重い・・さっきとは比べれない重さ・・」
苦しそうに呟くクレア・・勝てる!・・私はクレアに勝てる!!
「行くぜっ!カートリッジロード!」
ハンマーヘッドの片方が推進剤噴射口に、その反対側がスパイクに変形する
「行くぜ!ラケーテンハンマーッ!!!」
高速回転しながらクレアにスパイクを叩き付ける
「ぐっ・・私が押し負ける・・なんて・・」
まさかという感じで呟くクレアに
「こいつで決める!雷帝・・降臨ッ!!!」
稲妻が私とアイゼンを包み込む・・
「行くぜ・・トール・・ハンマーッ!!」
全力で稲妻と共にアイゼンをクレアに振り下ろす
「!!!」
持っていた盾で防ごうとするが・・
「無駄だぁっ!!鉄槌の騎士に・・砕けねぇ・・物はねぇっ!!!」
その叫びと共に稲妻がクレアを包み込んだ・・
「ぐっ・・まさか負けるとは・・予想外でした・・私は答えを聞ければ良かったのですが・・」
ボロボロの騎士甲冑で蹲りながら呟くクレアに
「答え?・・どういう意味だっ!!」
意味が判らず怒鳴ると
「やれやれ・・少し落ち着いてください・・まずは話をしましょう・・全てはそれからです・・」
パチンッ!
クレアが指を鳴らすと机と椅子が現れる・・クレアはゆっくりと立ち上がり椅子に腰掛け
「どうぞ・・貴女も座ってください」
にこやかに笑うクレアに敵意は無いので、警戒を解き椅子に腰掛ける
「私は別に本気で王から貴女を遠ざけるつもりはありません・・ただ貴女の想いを確かめたかっただけ・・そして今の貴女ならこの力を使える筈・・」
クレアの手から紅色の球体が浮かび上がる
「それは何だ・・」
私の魔力光と同じ球体に首を傾げながら尋ねると・・
「私は本来・・雷の騎士でした・・ですがかつてジオガディスとの戦いの際で風が死に・・死んだ風のリンカーコアを引き継ぎ・・私は嵐の騎士となった・・そして今・・風は貴女の力となる事を望んでいます・・しかし風の騎士の力は強すぎる・・だから私と戦って風の力を扱えるかどうか・・確かめさせてもらいました・・そして貴女の力なら扱えるはず・・受け取ってください・・」
その球体を私に手渡そうとするが・・私は躊躇った・・話の内容からすれば・・これを受け取ればクレアは弱体化するのでは・・と
「大丈夫ですよ・・風の力は完全に私と同化してますから、貴女にこの力を渡しても私の力が弱まる事はありませんよ」
と笑うクレアに頷き、私がその球体を受け取ると同時に、その球体は粒子となり私の体の中に入って行った・・
「特に変わった様子は無いけどなぁ?」
魔力の増加も感じられず・・これと言って変わった様子が無いので首を傾げると
「ここでは力の変化は判らないでしょう・・ですが此処から元の世界に戻れば直ぐに変化が判りますよ・・さっ・・行って下さい・・そして・・王を今度こそ護ってください・・お願いします・・」
私はその言葉に頷くと同時に私の意識は浮上していった・・
「くっくっくっ・・死んだか・・」
俺は砲撃の直撃と共に舞い上がった煙が消えるのを待っていたが・・
「誰が死んだって?」
煙の中から女の魔導師の声が聞こえた・・馬鹿な・・俺の∞キャノンの直撃を受けて耐えれる筈が・・俺が混乱していると
ブオンッ!!
空気の切る音と共に煙が消え・・そこには先程までとは違う騎士甲冑を纏った女の姿があった・・さっきまでの騎士甲冑は赤を基調にした物だったが・・今女の体を覆っているのはまったく別物だった・・赤の騎士甲冑は蒼い騎士甲冑に変化し・・その背には魔力で構成された、半透明の2枚の翼・・その手に握られていた槌はその姿を変え、三日月を思わせる巨大な姿に変化し・・その姿は力強さに満たされていた・・
「てめえは許さねぇ・・私の兄貴を傷つけた・・てめぇだけは・・私のこの手でぶっ潰す!!」
女はそう言うと・・俺目掛けて槌は振りかざし突撃して来た
「舐めるなよ・・貴様如きに俺が負ける者かぁっ!!」
俺は爪でその一撃を防ごうとしたが・・
ガンッ!!
「ぐあっ・・馬鹿な・・」
俺は簡単に吹っ飛ばされ、ビルに背中から追突した・・俺が力負けだと?・・ありなえない・・
「ぶっ飛びやがれっ!!ラケーテン・・ブレイカーッ!!」
槌を頭の上で振り回す女・・回す度に魔力が槌を包み込んでいき、元の大きさの三倍になった所で俺目掛けて槌を振るう
「ぐがっ・・」
バキャンッ!!
槌が甲冑にめり込んだ・・俺はその凄まじい衝撃に耐える事が出来ず吹っ飛ばされ、瓦礫の山に背中から突っ込んだ
「力が漲って来る・・」
私は吹っ飛んで行ったネクロの方を見ながらそう呟いた・・私が意識を取り戻すと同時にアイゼンと騎士甲冑が姿を変えた・・
「そうだ・・兄貴は」
少し離れた所に倒れている兄貴の所に行く
「・・・」
兄貴は完全に意識を失っている様で、ぐったりとしていた・・顔色も悪くて・・見た感じ死人の様に見えた・・
「良かった・・生きてる・・」
私は慌てて兄貴の胸に手を置く・・トクン・・トクン・・と弱弱しいが心臓はちゃんと動いていた
「判る・・今まで回復魔法なんて判らなかったのに・・でも今なら判る・・傷ついた旅人に月の祝福を・・ムーン・・ヒール・・」
私の手から紅色の魔力があふれ出し・・兄貴を包み込む・・これで一安心の筈・・これで私は・・
「魔導師ーッ!!!」
瓦礫の山を弾き飛ばしネクロが姿を見せる・・判っていた・・あの程度であのネクロが死ぬ筈が無いと・・
「兄貴・・少し待っててくれよ・・直ぐにあいつを倒して・・シャマルの所に連れて行ってやるからな・・」
私はアイゼンを握り締めネクロに向かって行った・・
第75話に続く