夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第76話

第76話

 

「ううーん・・良く寝たぜ・・うおっ・・」

 

殆どゼロ距離に兄貴の顔があって、驚き・・一気に意識が覚醒した

 

「そうだった・・昨日兄貴と一緒に寝たんだ・・」

 

顔が近いし・・抱きしめられているから少し恥かしい・・でも嬉しい気持ちもある

 

「んー幸せ・・」

 

兄貴に抱きしめられる幸せを感じる事が出来るのは・・多分私かはやてにヴィヴィオ位だろう・・そう思いながら兄貴の胸に顔を埋めていると

 

「ヴィータちゃん?・・何してるの?」

 

ビクッ!ゆっくりと振り返る・・そこにはシャマルが頭を抱えて立っていた

 

「えっと・・幸せを感じてた?」

 

私が疑問系で返事をすると

 

「どうして疑問系なんですか?・・それよりお兄さんの胸に顔を埋めると幸せなんですか?」

 

首を傾げながら尋ねて来るシャマルに

 

「うん・・凄い幸せ・・多分シャマルもやれば判る」

 

と言うとシャマルは

 

「・・止めて置きます・・それよりヴィータちゃんお兄さんから離れてくれます?お兄さんの体の様子を見たいんで」

 

カルテを持ちながら言うシャマルに頷き、名残惜しいが兄貴から離れ、シャマルの隣に立つ

 

「んーやっぱお兄さんの回復力は尋常じゃ無いですね・・昨日のダメージが大分回復してますね」

 

呆れた様子で兄貴の様子を見ていると、兄貴がゆっくり目を開く

 

「お兄さん・・体の調子はどうですか?」

 

シャマルが兄貴に尋ねると兄貴は

 

「・・体が重い・・それに腕に力が入らない・・」

 

兄貴は布団から手を出しそう言う

 

「魔力ダメージで体の神経が麻痺してるかも知れないですね・・」

 

シャマルは首を傾げながら呟く

 

「兄貴・・大丈夫か・・」

 

私は心配に成って兄貴の顔を覗き込むと

 

「大丈夫だ・・少し体の反応が鈍いだけだ・・だからそんなに心配そうな顔をするな」

 

兄貴が優しく頭を撫でてくれる・・暫く兄貴と話をしているとシャマルが

 

「ヴィータちゃん、ほらお兄さんに肩を貸してあげて・・多分今のお兄さんは一人じゃ歩けないから・・一応杖は用意してるけど・・やっぱり誰かついてる方が良いと思うから」

 

兄貴に杖を手渡し、私に肩を貸すように言うシャマルに頷き、私は兄貴に肩を貸しながら医務室を後にした

 

「大丈夫か?」

 

ゆっくりと歩く兄貴に大丈夫かと声を掛けると

 

「大丈夫だが・・まるで老人の様だな・・」

 

ゆっくりとしか歩けない兄貴に

 

「大丈夫だぜ・・兄貴の体の調子が良くなるまでは、私とはやてが兄貴の身の回りの事は手伝うからよ」

 

と言うと兄貴は

 

「はは・・ありがとう・・ヴィータ」

 

穏やかに微笑む兄貴と一緒と食堂に向かっていると

 

「あっ・・お兄様もう大丈夫なんですか?」

 

「兄・・体の調子はもう良いのか?」

 

リィンとアギトに会い、二人が兄貴に近寄りながら大丈夫なのかと尋ねると

 

「大丈夫だ・・少し体の調子が悪いが・・問題無いよ」

 

兄貴が笑いながら言うと

 

「そうですか・・でも無茶しないで下さいね?」

 

「そうだぜ、兄が怪我したら私だけじゃない・・皆心配するんだからな?」

 

と言うリィンとアギトと共に再び食堂に移動を再開した・・

 

「「おはようございます、龍也さん大丈夫ですか?」」

 

食堂で食事をしていると、スバルとティアナが現れ、兄貴に大丈夫かと尋ねると

 

「特に問題ないぞ?老人の様だがな・・」

 

現在兄貴は手に力が入らないので・・

 

「はい、お兄様あーんです」

 

リィンとアギトにあーんをして貰いながら食べている、

 

「・・・本当ですね・・おじいさんみたいですね・・」

 

スバルが言うと、兄貴は

 

「ははは、仕方ない体が動かないのだからな」

 

となんら気にした素振りを見せず笑っていた・・その笑い顔につられ私も笑ってしまった、その時私は気が付かなかったが、食堂から気配を殺しながら出て行くシグナムの姿があったそうだ・・

 

 

 

「部隊長、郊外にネクロの反応が1あります・・どうしますか?警報を鳴らしますか?」

 

アルトの報告に首を振りながら

 

「いや良いで、警報鳴らしたら兄ちゃんも来てまうやろ?今兄ちゃんには休息が必要や・・悪いけどスバル達を呼んで来てくれる?兄ちゃんに見付からないようにな?」

 

近くに居た隊員に頼むと、直ぐに頷きスバル達を呼びに行った隊員が戻るのを待っていると

 

「部隊長、何があったんですか?」

 

スバル達とエリオとキャロが姿を見せる、流石になのはちゃん達が動けば兄ちゃんも気付く・・だからスバル達だけを呼んだのだ

 

「うん今な、郊外にネクロの反応が1つあるんや・・多分偵察組みかやと思う・・・悪いけどスバル達だけで見て来てくれるか?もしやばいと思ったら直ぐに戻ってきて構わんでな」

 

スバル達に指示を出し、出て行ったスバル達の姿を見おくり、モニターに視線を戻した・・

 

 

 

 

「えっと・・ここら辺だと思うんだけど・・」

 

スバルが辺りを見回しながら言う

 

「そうね・・ここら辺だと思うんだけど・・隠れてるのかしら・・!!そういう訳じゃないみたいね・・」

 

ふと開けた場所を見て驚いた、そこには腕を組み仁王立ちしている、1体の騎士の姿・・確かこいつは・・

 

「エリオ・・あいつってハーティーン?」

 

確認の為に尋ねるとエリオは頷きながら

 

「はい・・間違いありません・・ハーティーンです・・」

 

まずいわね・・龍也さんの話では相当ヤバイ相手の筈・・私達じゃ勝ち目が無いわ・・

 

「皆・・ここは一度退くわよ・・」

 

見付からぬ様に後退を開始したが・・

 

「何処へ行く?」

 

!!!

 

ハーティーンが何時の間にか私達を見下ろしていた・・そんな早すぎる・・

 

「悪いが逃がす訳にはいかんな・・俺の求める物を見つける為に俺と戦ってもらおう・・」

 

剣を構えるハーティーン・・どうやら逃げるのは無理みたいね・・覚悟を決めデバイスを向けると

 

「そうだ!それで良い!!俺と戦え!!」

 

そう笑い向かって来るハーティーンに

 

「ハウリングブラスター!!」

 

牽制を兼ねて砲撃を放つが・・

 

「無駄だ!!俺にそんな物が通用すると思っているのか!!」

 

剣を振るい、簡単に弾き飛ばす・・そんな・・結構本気で撃ったんだけど・・余りに簡単に弾かれ驚いていると

 

「ティア!!退いて!!ヘブンズナックル!!!」

 

チャージをしていたスバルが魔力波を放つ・・するとハーティーンは剣を鞘に戻し、拳に黒の魔力が収束し

 

「デモンズ・・・フィスト!!!」

 

黒の魔力波が放たれる・・そんなヘブンズナックルにそっくりなんて・・私がそれに驚いた瞬間、スバルの魔力波は簡単に砕かれハーティーンの魔力波が私達に迫ってくる

 

「スバル!!」

 

私はスバルの腕を掴み上空に逃れ

 

「キャロ!!」

 

エリオはキャロを抱え上げ私と同じ様に上空に逃れるが

 

「無駄だ・・そんな回避では間に合わんぞ」

 

黒の魔力波が私達が居た場所に着弾し、大爆発が起き

 

「「きゃあああっ!!!」」

 

私達はその爆発に飲み込まれ、吹っ飛ばされた・・・

 

「うぐ・・強すぎる・・」

 

一撃・・たった一撃で戦闘不能寸前・・強すぎる・・龍也さんと同じくらい・・ううんもっと上かもしれない、ハーティーンの強さに驚いていると、ハーティーンは無言で、気絶しているキャロの頭を鷲掴みにし持ち上げる、するとハーティーンの手に魔力が収束していく・・!!やばい!!あんな距離で砲撃を喰らったら・・キャロは死んでしまう!!立ち上がろうとするが足が言う事を聞かない・・見ているしか出来ないの!!と思った瞬間

 

「クレセント・・ミラージュッ!!」

 

エリオが立ち上がり三日月の衝撃波を放つ

 

「ぬっ・・」

 

それはキャロを鷲掴みしていたハーティーンの腕を直撃し、キャロが落下していく・・それより早くエリオが回り込みキャロを抱きとめる・・早い・・今までのエリオの早さと違う・・その早さに驚いているとハーティーンが大声で

 

「それだ!!!俺はそれが見たかったのだ!!!護る為に強くなるお前達!!!お前達と戦えば判るんだ!!俺が求める答えが!!見せてみろ!!貴様の力を!!!」

 

ハーティーンは私とスバルを無視して、エリオに向かっていく

 

ガキーン!!

 

剣とストラーダが追突して、凄まじい火花を散らす・・だがエリオは力負けし飛ばされる

 

「ふっ!!」

 

吹っ飛ばされた先の木の幹に着地し、凄まじい勢いでハーティーンに肉薄し、ストラーダを振るう

 

「ぬっ・・鋭い・・これだ!!これが見たかったんだ!!もっとだ!!もっと見せてみろ!!!」

 

紙一重で回避し、凄まじい勢いで剣を振るう、ハーティーンの攻撃をエリオはピンポイントで回避していく

 

「ふっ!」

 

サイドステップ、バックステップで軽やかに回避し反撃をするが・・それはダメージを与えている様子は無い・・硬すぎるのだ・・奴が着ている鎧が・・はっ・・何冷静に分析してるのよ・・私より小さい子があんなに戦ってるのに・・足が動かないとか・・泣き言は言ってられない!!!震える足を殴りつけ立ち上がると

 

「へへ・・ティアも立てたみたいだね・・」

 

スバルもフラフラと立ち上がる笑う

 

「当たり前よ・・エリオが戦ってるのに見ているだけなんて、情けない真似は出来ないわ」

 

と言うとスバルは笑いながら拳を構え

 

「最大攻撃行けるよね?」

 

と尋ねて来る

 

「当たり前よ、何発だって行けるわよ」

 

と言うとスバルは笑い

 

「やせ我慢して・・でもそれは私も同じかな・・」

 

先程の攻撃で私とスバルは爆風の直撃を受けた、つまりエリオよりダメージは大きいのだ・・そう何度も攻撃は出来ない・・なら私達が切る札はただ1つ

 

「私達の最大攻撃で行くわよ」

 

龍也さんを撃破したあの技しかないと思い言うと

 

「そうだね・・それで一気に決めよう!!!」

 

ゆっくりと呼吸を合わせ・・タイミングを計る・・まだだ・・まだ早い・エリオに当たる・・高速で動く二人の動きを冷静に見ているとエリオが後方に大きく跳ぶ・・今だ!!!

 

(スバル行くわよ!!)

 

念話で指示を出すと、

 

(了解・・先に行くよ!!)

 

複雑に入り組んだウィングロードが展開されその上をスバルが駆ける・・

 

(後先考えず・・全力で行く!!)

 

自分自身の残像を大量に生み出す。そして

 

「ブラスターショット!!」

 

高速移動しながら、連続で砲撃を放つハーティーンが回避しようとするが

 

「させるか!クラスタースフィア!!」

 

スバルの肩から散弾型の射撃魔法で動きを塞ぐ、その止まった隙に連続で砲撃を放つ

 

「ぐうっ・・・」

 

雨の様に降り注ぐ砲撃の嵐がハーティーンを捉える、その内何発かはスバルに当たりそうになるが

 

(スバル!右後方のウィングロードに飛び移って!!)

 

(了解!ティア少し任せるよ!)

 

縦横無尽の張り巡らせたウィングロードはスバルの回避手段であり、次の一手に繋ぐ為の布石だ

 

「はあああああっ!!」

 

全力で砲撃の嵐を放ち、スバルの姿を隠す

 

「く・・・舐めるなよ!!!」

 

闇色のプロテクションがハーティーンを包み込む・・ここからはスバルの番だ、私はここで1度砲撃を止める

 

「・・あの魔導師は何処だ?」

 

スバルの姿が見えない事に驚きの声を上げるハーティーンの上空から

 

「でやああああっ!!」

 

全体重を乗せた踵落としを放ちながら落下してくるスバルの姿が見える、先程の砲撃の嵐それはスバルから意識をずらす為の囮だ

 

「上だと!?」

 

咄嗟に腕をクロスさせてその踵落としを防ぐが、砲撃の嵐とスバルの渾身の一撃で、ハーティーンの闇色のプロテクションは完全に砕けた

 

「まだまだぁ!!」

 

着地と同時に強烈な膝蹴りを放つ

 

「ぐうっ・・」

 

その余りの威力に動きが止まるハーティーンに

 

「でやああああああっ!!!!」

 

スバルが高速でラッシュを叩き込む

 

「ぐっ・・がっ・・・」

 

そのラッシュに耐える事が出来ず宙に浮かんで行くハーティーンを

 

「ティア!そっち行くよ!!」

 

此方目掛け全力で殴り飛ばす

 

「ナイス!スバル!!」

 

待機していた場所にピンポイントで飛んで来る、ハーティーンの背中に

 

「ブラスター!!フルパワーショット!!!」

 

銃口を押し当て全力の砲撃を撃つ

 

「ぐおッ!」

 

その砲撃に押され凄まじい勢いでスバルの方向に押し戻す

 

「カートリッジロード!!」

 

スバルがその真下でカートリッジを消費し

 

「ヘブンズ・・・ナックル!!!」

 

バキン!!

 

水色の光を帯びた拳がハーティーンを捉える、その瞬間音を立てて騎士甲冑が砕ける・・だがこれでまだ終わりではない!!

 

「ティア!!」

 

水色の魔力光に押され此方目掛け浮かび上がってくる、ハーティーンに

 

「カートリッジロード!!」

 

私の全魔力持って行け!!!

 

「ファントム・・・ブレイザーッ!!!!」

 

私のファントムブレイザーとスバルのヘブンズナックルがぶつかった瞬間爆発が起きる・・フラフラ状態で着地する・・私達の全魔力これで決まってなかったら・・もう打つ手が無い・・これで決まっていてくれと思いながら煙が晴れるのを待っていると

 

ブオン!!!

 

鋭い風を切る音と共にハーティーンが姿を見せる・・信じられない事だが奴は殆ど無傷だった

 

「まさかこんな技があるとはな・・少し驚いたが・・所詮この程度の威力・・俺を倒すには程遠いな」

 

そう言いながら着地し、腰から二振りのダガーを抜き放ち

 

「だが魔導師にしては良く戦った・・褒美だ・・せめて苦しまずに逝くが良い・・」

 

ゆっくりと迫ってくるハーティーン・・駄目だ・・殺される・・そう思った瞬間

 

「シュツルムファルケン!!!」

 

後ろの方から矢が飛んでくる

 

「ぬっ!!伏兵か!!」

 

ダガーで矢を弾き飛ばし後方に跳ぶハーティーンの前に、騎士甲冑を見に纏ったシグナムさんが着地する・・その姿を見て私は助かったと感じていた・・だが・・それは間違いだったのだったのだ・・

 

 

 

間に合ったか・・隊舎を後にするスバル達の姿を見て、嫌な予感がし居って来たのだが・・途中で見失ってしまった・・・先程の爆音のおかげで見つける事は出来たが・・正直1人で来たのは間違いだったか・・目の前にいる騎士・・確か・・ハーティーンだったか・・奴は強い・・兄上と同レベルかそれ以上・・正直私1人では勝ちはまず無いだろう・・私はそう考えていると

 

「・・烈火の将か・・丁度良い・・貴様を殺せば守護者は更なる力を発揮する・・悪いが俺の目的の為に死んでもらうぞ!!」

 

ダガーを両手に握り締め突撃してくる、ハーティーンに

 

「悪いがそう簡単に私を倒せる等と思うな!!」

 

その突撃に合わせる様に横薙ぎの一撃を放つが

 

フォン・・

 

ハーティーンの姿が消え、背後から

 

「こっちだ!!」

 

回転しながらダガーを振るってくる

 

「くっ!!」

 

受け止めようとレヴァンティンを構えるが

 

フォン・・

 

ダガーがそれをすり抜け、私に命中する・・おかしい・・受け止めた筈なのに・・確かに受け止めた感触が合った、だが実際は当たっている・・これはどういう事だ?訳が判らず混乱していると

 

「戦闘中に考え事とは余裕だな!!」

 

背後から蹴り上げられ、連続で斬り付けられる

 

「がっ!!」

 

一撃の威力は低いだが・・こうも連続で喰らうとダメージは蓄積していく

 

「はあああああっ!!!!!」

 

連続でダガーを振るいながら突撃してくるハーティーンの攻撃を、飛び上がり回避しようとするが

 

フォン・・

 

またハーティーンの姿が消える・・幻術なのか!?先程から攻撃しようとしたら消え、別方向に現れるハーティーンに幻術でも掛けられているのか?と思った瞬間

 

「ブラックエンド!!!!」

 

背後から斬り付けられ、地面に叩き付けられる・・

 

「ぐう・・どういう事だ・・どうして攻撃も防御も出来ないんだ・・」

 

何も出来ず良い様に攻撃をされる・・どうして・・まるで攻撃も防御も先読みされて・・先読み!?まさか・・こいつの能力は・・確かめて見る必要があるな・・ゆっくりと近付くハーティーンの僅かな隙を突いて

 

「カートリッジロード!」

 

レヴァンティンから薬莢が飛び出し

 

「スパイラルマスカレードッ!!」

 

高速で回転する螺旋状の斬撃を放つが

 

フォン・・

 

また妙な気配がし、全て回避する・・やはり・・こいつの能力は・・私は確信した・・こいつの能力が何なのかを

 

「その顔だと気付いたようだな?お前の推測どおり・・俺の能力は事象の先読み「アルファインフォース」俺の前では全ての攻撃も防御も全て無意味だ」

 

ダガーを握り直し、私に言うハーティーンに

 

「良いのか?敵にそんな事を教えて?能力が判れば幾らでも対処法はあるぞ」

 

レヴァンティンを構えながら言うと

 

「対処法か・・悪いがそんな物は無いな・・」

 

そう言うとハーティーンの姿が消え

 

ズガガガガガガガガッ!!!!!!!!

 

凄まじいまでの衝撃を感じた瞬間、私の背後にハーティーンが姿を見せ

 

「遅いな・・倒れる事さえ遅すぎる・・」

 

そう呟くと同時に、私の騎士甲冑は全て砕けた

 

「ば・・馬鹿な・・・」

 

ガシャンッ!!!!

 

私はそう呟くと同時に、膝から崩れ落ちた

 

「ふっ・・所詮はこの程度・・退屈な事だ・・さてと・・行くとするか・・守護者を殺しにな・・」

 

兄上を殺す?・・・ガリッ!!!

 

落ちていたレヴァンティンを握り締めると

 

「まだ息があったか・・しぶとい事だな・・だが貴様はもう死ぬ・・俺が態々止めを刺すまでもなくな・・大人しくそこで倒れていた方が懸命だぞ」

 

と言うハーティーンに

 

「私は・・誓ったのだ・・兄上を護ると・・」

 

そうだ私は・・誓ったのだ・・兄上を護ると・・震える足で立ち上がりながら言うと

 

「誓っただと?誰にだ」

 

振り返り私を睨み、尋ねるハーティーンに

 

「誰でもない・・ただ・・私の・・魂にだ!!」

 

震える足に無理やり力を込め切り掛かると

 

「魂にか・・くだらんな・・」

 

ザン!!!!

 

ガキンッ・・・

 

両断されたレヴァンティンが地に落ちると同時に、私はゆっくりと後ろに倒れていった・・

 

「「「「シグナムさん!!!!」」」」

 

私を呼ぶエリオ達の声がとても遠く聞こえた・・私は倒れながら

 

(兄上申し訳ありません・・約束は護れそうにありません・・・」

 

昔兄上と交わした約束・・

 

(シグナム、お前は・・いやお前だけじゃない・・皆だ・・頼むから私より先に死んでくれるなよ・・もう誰かを見送ると言うのは嫌なんだ・・だから私とお前達との約束だぞ・・)

 

穏やかに微笑む兄上の事を思い出しながら、私は意識を失った・・

 

「ここはどこだ・・」

 

私は気が付いたら紅い世界に立っていた・・

 

「・・地獄という奴か?・・当然か・・私はあれだけ罪を犯したのだからな・・」

 

と呟いていると

 

「馬鹿が、何を言っている」

 

背後から女の声が聞こえ振り返るとそこには燃えるような赤い髪に金の瞳の女が立っていた

 

「お前は何者だ?」

 

と尋ねると

 

「答える義理は無いと言いたいが・・まぁ良い私はアイギナ・・天雷の騎士アイギナだ」

 

名乗るアイギナに

 

「ここは何処なんだ?教えてくれ」

 

ここがどこかと尋ねると

 

「私の領域・・本来なら私以外の誰も入れぬ世界・・だが貴様はこの世界にやって来た・・つまり私の力を扱うだけの技能があるという事だ・・鉄槌と同じ様にな」

 

と言いアイギナの手から紫色の球体が浮かび上がり、私の中に入る

 

「これで終わりだ、早く私の世界から出て行け・・」

 

私の後ろに門が現れる

 

「それを通れば元の世界に戻れる・・早く行け貴様の仲間が死ぬぞ」

 

!!エリオ達か、慌てて門の中に飛び込むと

 

「1つ良い事を教えてやろう、自分の気持ちを偽って何になる?素直になるべきだな」

 

と言う声を最後に私の意識は遠のいていった

 

 

 

「そんな・・シグナムさんが手も足も出ないなんて・・」

 

僕は目の前の光景が信じられずそう呟くと

 

「さてと・・お前達も烈火の将と同じく、死んでもらうとしよう」

 

ハーティーンが僕達の前に立ち、剣を振り下ろそうとした瞬間

 

「ビフロスト!!!」

 

炎で出来た4つの矢がハーティーンに迫る

 

「ふん!!」

 

即座にそれを迎撃するが・・

 

「竜斬剣壱の型!!天竜斬破!!」

 

回転しながら剣を振り下ろしハーティーンを吹き飛ばす1人の女性・・

 

「シグナムさん・・生きてたんですね・・」

 

それは間違いなくシグナムさんだった・・纏っている騎士甲冑は姿を変えていたが間違いなくシグナムさんだった・・燃え盛る紅蓮の炎のような騎士甲冑に、魔力で構成された半透明な8枚の翼、その手には巨大な大剣・・左腕にはボウガンの様な弓が装着され、更には体を覆うように発生している、魔力と相まってシグナムさんの姿はまるで炎の化身の様だった

 

「お前達はさがっていろ、あいつは私が倒す」

 

シグナムさんは巨大な大剣を振りかざし、ハーティーンに向かって行った・・

 

 

第77話に続く

 


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