第78話
私は今とても困っていた・・理由は至って簡単で
「どうしましたか?」
目の前で首を傾げる女性・・シグナムが原因である・・昨日好きと言われ、その時は冗談だと思っていた・・だが次の日になって本気だったと理解した・・正直今私は体のあちこちが痛くまともに動けない状態で、ヴィータやはやてに、食事などを手伝ってもらっていた・・だが今現在私はシグナムに食事をするのを手伝って貰っている・・それで理解してしまった・・シグナムは本気なのだと・・そう思い横を見る
「「にこにこ」」
満面の笑みのはやてとヴィータが座っており、その反対側には
「「にこにこ(恐)」」
底冷えする笑みを浮かべたなのは達が見える・・一体私が何をしたと言うのだ・・そもそも何故私等を好きになる人物がいる・・こんな隻腕、隻眼の男の何処が良いと言うのだ・・私は現実逃避をしながら食事を再開した
「どうぞ・・」
シグナムがお茶を手渡してくる、それを受け取って飲んでいると
「龍也さん・・シグナムに何したんですか?」
笑いながらなのはが尋ねて来る・・それは笑っている筈なのに恐ろしいと感じた・・
「何もなんだが・・そうシグナムが私を好きだと言い始めたんだ・・何故か・・」
そう返事を返すとなのはとフェイトはシグナムを見て
「シグナム・・どうしてかな?今までそんな素振り見せなかったよね?どうして急にそんな事言い出したのかな?私に教えてよ」
なのはがどんよりとした目でシグナムを睨みながら尋ねると、シグナムは冷静に
「自覚しただけだ・・私は兄上が好きなのだと・・傍に居たいとそう思うようになった・・それが理由だ」
と言い放つ・・その瞬間ピリピリとした気配が充満する・・正直辛いと言い様が無い・・私はそのピリピリとした空気に耐えながらお茶を飲んでいた・・その光景を見ているティアナ達は
「「あーあ・・またライバルが増えたなぁ」」
と呟くスバルとノーヴェに
「ちっ・・油断していました、まさかこんな所に伏兵が居たとは・・」
舌打ちをするセッテに
「シグナムさんまでなんて・・」
計算外と言いたげなティアナ達を見ながら、私は空を見上げた・・
龍也がティアナ達の発するプレッシャーに負けて、空を見上げた同時刻
(どうしてこうなってるんだ・・)
俺は頭を抱えながら部屋の一角を見る・・そこには・・
「はい、ハーティーン」
嬉々として、漆黒の騎士に食事を渡す、俺の妹ラグナと
「ありがとう・・」
礼を言いそれを受け取る、ハーティーンの姿がある・・
(何でだ?何でラグナはこんなに嬉しそうなんだよ・・)
兄である自分でも見た事が無いくらい、ラグナは嬉しそうだ
「美味しい?」
と首を傾げながら尋ねるラグナに
「・・美味しいと思う・・」
返事を返すハーティーンの姿を見ながら
(どうすっかな・・報告するか?ハーティーンが居るって・・でもなぁ・・)
報告しようかと思いながらラグナを見る・・とても嬉しそうに笑っている・・
(はぁ・・監視してるって事にすっかな・・)
ハーティーンは確かにジオガディスの兵隊・・デクスの筈だ・・だが今のハーティーンには悪意が無い・・ただここにいる・・そんな感じだ・・
(とりあえず・・暫く休むって連絡を入れとくか・・)
休むと連絡を入れていると
「お兄ちゃん、ちょっと私買い物に行って来るね」
買い物に出かけて行くと言う、ラグナを見送り
「さてと・・話くらいは聞いとくか・・」
ハーティーンに近付く、するとハーティーンはゆっくりと俺の顔を見て
「守護者の所の魔道士か・・」
守護者・・旦那の事かと思いながらさっきまでラグナの座っていた椅子に腰掛け
「確か・・ハーティーンで良かったよな?幾つか聞きたい事があるんだけどよ良いか?」
笑いながら尋ねると
「構わない・・だがその代わり俺の話も聞いてくれ、それが条件だ・・」
俺はそれに頷き、幾つか質問をし始めた
「なぁ・・なんで俺とラグナを殺さないんだ?・・お前達は魔力がないと体が維持できないんだろう」
今まで報告で判った事だが、ネクロとデクスは魔力を吸収しなければ体を維持できない、その為に魔導師を襲う必要がある・・だからハーティーンが俺達を襲わない事が気になり尋ねると
「俺は他のネクロやデクスと違う、自分で魔力を生成できる・・だから魔導師を襲う必要性は無い・・極端に消費すれば襲うかもしれんがな」
成る程ね・・だからハーティーンが普通の魔導師を襲った記録が無いのか・・
「それじゃあよ、ダークマスターズはどうやって魔力を集めてるんだ?あいつらも滅多に目撃報告が無いんだけどよ?」
ダークマスターズの事を尋ねると、信じられない返答が返って来た・・
「レリックや進化出来ないネクロを喰らってだ」
味方を喰らうか・・酷い事すんな・・それとレリックか・・成る程ね・・その為にレリックを集めてるのか・・
「それじゃあ、ヘルズとヴェノムを除いたダークマスターズの事を教えてくれないか?」
駄目元で訪ねてみると
「ヴィルヘリア、バラガルト、アンテルテート、ランレ・デルーパ・・それとデクスのキメイラにヨルムンガンドだ・・」
以外にも答えが帰って来て驚きながら手帳に記していると
「ヨルムンガンドには気を付けるんだな・・あいつは知性がない正真正銘の化け物だ・・」
その警告も手帳に書いていると
(ん?どうしてこんなにすんなり答えてくれるんだ?・・何か考えてんのか?)
スムーズに返事を返すハーティーンに疑問を感じ
「なぁ・・聞いといて何だけどよ、どうしてこんなにすんなり答えてくれんだ?・・何か考えてんのか?味方の事をぺらぺら喋って良いのか?」
どうしても気になり尋ねると、ハーティーンは
「俺は俺の味方だ・・他の奴らがどうなろうが構わない・・俺は守護者と決着がつければそれで良い」
守護者・・旦那と決着をつけたいと言うハーティーンに
「最後に聞きたいんだけどよ・・どうして旦那に拘るんだ?」
どうして旦那に拘るのかと尋ねると
「・・俺は知りたい・・どうして守護者も科学者も誰かを護る?・・あいつらは一人でも強い・・群れを成す必要は無いのに・・それに誰かを護る為に無限に強くなるあいつらの事が知りたい・・俺にはあいつらが理解出来ない・・だからあいつらと戦う・・倒せば判る・・そう思うからだ」
知りたい・・か・・手帳を閉じハーティーンを見る・・近くで見ると良く判るこいつはネクロとデクスとは別物だ・・ネクロやデクスは人に近いが化け物って感じがする、だがこいつは人間のような感じがするのだ・・
(まぁ・・そんな訳ないか・・)
手帳を胸ポケットにしまい
「ほれ、次はお前だ・・今度はお前の話を聞いてやるよ」
答えてくれた礼に話を聞いてやると言うと、ハーティーンはゆっくりと頷き話し始めた・・
「・・声が聞こえた事はあるか?」
声?・・なんの事だと思いながら
「声?今も聞こえてるだろ?」
ハーティーンは首を振り
「頭の中に2つの声が聞こえるんだ・・・壊せ・・殺せと言う声と思い出せって声が聞こえるんだ・・」
壊せ、殺せに思い出せ・・か・・ううー良く判んないぜ
「悪い、俺は精神科医じゃないかんな・・そう言うのは判らんぜ」
返事を返すと、ハーティーンは
「そうか・・」
頷き窓から空を見上げた・・その姿は儚くて・・何か寂しそうだった・・
「ヴェノム・・ハーティーンの反応が無いそうですね?」
私はヴェノムを呼び出し尋ねると
「はい・・理由は判りませんが・・全く反応がありません・・考えられるのは・・死んだか・・なんならかの不確定要素により魔力の流れが切れているのが理由だと思います」
・・不確定要素・・!?まさか・・
「ヴェノム、洗脳が解け掛けているのではありませんか?」
私にはそれしか考え付かずヴェノムに言うと
「洗脳が・・いえそれはありませんね・・私とヘルズにジオガディス様の魔力ですよ?幾ら精神力があろうとそう簡単には解ける訳がありませんよ・・考えすぎですよヘルズ・・では私は戻りますよ・・新しいデクスの作成中ですので・・」
マントを翻し姿を消したヴェノムに代わって
「何ぐだぐだ考えてんだ?ヘルズ・・裏切るなら消す・・それが俺らのやり方だろうが!!」
暗闇の中から紫色の電撃を身に纏った、カブトムシの様なネクロが姿を見せた
「ランレ・デルーパ・・珍しいですね・・貴方が姿を見せるなんて・・」
ランレ・デルーパは滅多に姿を見せないネクロだ・・それが姿を見せた事に内心驚きながら尋ねると
「ふん・・何少々体が鈍っててな・・出撃許可を貰いに来たんだ」
パチパチと放電する、ランレ・デルーパに
「出撃許可ですか?・・別に良いですよ・・好きにしてください」
どうせ許可など無くても勝手に出て行こうとする、ランレ・デルーパだ、どうせ許可を取りに来たと言う事実が欲しくて来たんだろう・・ここで駄目だと言っても出て行くと判ってる以上、好きにさせるのが一番だと思い返事を返すと
「くっくっく・・ではな」
笑いながら闇に溶ける様にランレ・デルーパは姿を消した・・
「やれやれ・・気の早いことで・・」
もうパンデモニウム内にランレ・デルーパの反応は無い事に呆れながら、私は椅子に腰掛けた
「剣帝の復活・・それだけは防ぎたいですね・・」
そっと自分の仮面の右側の傷を撫でる・・これは過去の剣帝によって付けられた傷
「ですが・・復活させるのも1つの手ですね・・」
我らを裏切らない為に厳重に洗脳を施したが・・今なら洗脳が解けても良いと思う・・
「過去の因縁を断ち切ると言うのも良いですね・・」
過去に対峙した最強の剣士・・魔である闇を自在に扱い、神王とたった2人だけでジオガディス様に逆らった騎士・・そしてあいつとの決着はついていない・・
ガチャッ!!
背中の短剣を知らずの内に抜き放ち、それを両手に構え
「洗脳を解くなら解けば良い・・その時は決着を付けましょう・・剣帝・・ルシルファーシャッカスッ!!!!」
ビュン!!!ドガガ!!!
投げられた短剣は柄まで深く壁に突き刺さった・・
「くっくっくっ・・洗脳が解ければ良いですね・・ルシルファー・・その時は私の手で貴方を闇に葬って差し上げますよ・・」
暗いパンデモニウムの中にヘルズの笑い声が木霊していた・・
「ふーむ・・剣帝か・・」
天雷の遺跡の最深部で私はそう呟いた・・
「成る程ね・・神王と共に戦った最強の騎士ね・・」
ジオガディスの伝承が全て破壊されてしまったから他の壁を調べていたら見つけた、新しい伝承・・魔剣士の伝説
「闇を扱う剣士ねぇ・・それだけ聞いたら完全な悪者だな・・」
闇と聞いたらやはり悪という印象を受けるからな・・
「ふむ・・成る程ね・・この剣士が復活してくれれば、ありがたいのだがねぇ・・」
遺跡の壁を調べていると
「ん?ああ・・もうこんな時間か夕食の時間に遅れるな・・」
夕食の時間に遅れるとウーノが怒るので、作業を一度止めテントに戻り始めた
「父さん、今呼びに行こうと思っていたんですが・・丁度良かったです」
遺跡の入り口でトーレに会った、どうやら迎えに来てくれるつもりだったらしい
「はは、食事の時間に遅れるとウーノが怖いからな・・さっ早く行こうか?」
2人で笑いながらテントに戻り食事が終わり、皆で話していると小さなリュックを背負ったルーテシアがメガーヌのテントから出てくる
「おや?ルーテシアどこに行くのかね?」
そのリュックを指差しながら尋ねると
「龍也の所・・ネクロが多くなったから私じゃ危ないって・・ゼストが・・」
ゼストを見ながら言うルーテシア、ふむ・・まぁ正論か・・
「そうだな・・ネクロが多くなってきたからな・・ルーテシアじゃ危ないもんな・・」
まだ幼いルーテシアが狙われる可能性が高い・・ゼストの判断は正しいか・・
「良し、準備出来たわよ、ルーテシア」
メガーヌが転送用の機械の設定が終ったようでルーテシアを呼ぶ、するとルーテシアはちょこちょこと、その機械の方に歩いて行き機械の中心に立つ
「それじゃあ・・行って来ますお母さん」
メガーヌに行って来ますと言うと、機械が動き始めルーテシアの体は消えていった・・
第79話に続く
デバイス変化詳細 紹介
マッハキャリバー改
天雷の書のデバイスである、ベオウルフと融合し変化したマッハキャリバーで、加速力と攻撃力に防御力が大幅に上昇している。
真紅のバリアジャケットに、胸部と肩と足には鎧が展開され、左腕には紅い篭手が装着されている、魔力を打ち込む追加能力がある
スバルの突進力を強化する形の為これといって追加能力は無いが、その分基本性能が大幅に上昇している
魔法解説
リボルバーブレイク 左腕の篭手から強烈な一撃を放つ、龍也の玄武剛弾を相殺する威力がある
スフィアクラスター 両肩の鎧から散弾を放つ、射程は短く射角も狭い為、近~中までのレンジをカバーする、追加能力としてバリアブレイクの能力を持つ
ヘブンズナックル 魔力を凝縮した衝撃波を打ち込む、射程威力ともに高い
切り札 スフィアクラスターから踵落としに繋ぎ体勢の下がった敵に左拳と叩き付け、連続で魔力を打ち込み最後に全力のリボルバーブレイクで殴り飛ばす、魔法と言うより近接コンビネーションだがその破壊力は凄まじく高い、文字通り切り札である
クロスミラージュ改
マッハキャリバー同様、天雷のデバイスであるシュツルムと融合し変化した物で、主に飛行能力と射撃の精度が上昇している。
ベースは以前同様白だが、露出が少なくなり大人っぽい印象になっている、最大の特徴は背中の翼である、またデバイス本体も変化し
大型のライフルになっている、手元のレバーで直線と散弾の2タイプに大出力砲の3つに切り替える事が可能である
魔法解説
モードリバルバー 魔法と言うより射撃の状態の事で直線の砲撃を放つ事が出来る形態、威力と命中率が高い
モードショット 魔法と言うより射撃の状態の事で散弾の砲撃を放つ事が出来る形態、威力よりも命中と射撃の範囲が高い
ブラスターショット 幻術魔法発動と同時に高速機動と共に連続で砲撃を放つ
ハウリングブラスター 大出力砲撃でライフルの銃口が変形し巨大な銃口になる、そこから放たれる砲撃でなのはのスターライトと同クラスの破壊力を持つ、ティアナの最大魔法である
ストライクダガー ライフルの先が取れ大型ダガーになる、近接戦闘時に使用する