夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

82 / 145
第80話

第80話

 

「シザーアームズ!!!」

 

魔力が篭った鉤爪が僕目掛けて振り下ろされる、咄嗟に回避しようとするが・・

 

ズン!

 

(お・・重い!!)

 

騎士甲冑の重みで一瞬反応が遅れ、ランレ・デルーパの一撃が肩を捉える、来る衝撃に身構えたが・・

 

ガキーンッ!!!

 

甲高い音と鉤爪が命中するが、それだけだった・・

 

「馬鹿な!、俺の一撃を・・がふっ!!」

 

困惑するランレ・デルーパの腹にディメンジョンブレードを叩き付け、吹っ飛ばす

 

バキバキ!!

 

大量の木を巻き込み吹き飛んでいく、ランレ・デルーパの姿に僕は確信した・・

 

(この形態は攻撃力、防御力重視なんだ・・)

 

エグザとデュナスの両形態はどちらかと言えばスピード重視だ、だが新しいフォルムであるグランドの特徴は、ランレ・デルーパの巨体を簡単に吹っ飛ばす攻撃力と、ランレ・デルーパの攻撃を弾き飛ばすその高い防御力・・だがその分スピードが大幅に低下しているが・・

 

(これくらいなら問題ない・・このまま一気に押し切る!)

 

僕が両手のディメンジョンブレードを握り直していると

 

「ギガブラスターッ!!!」

 

先程僕を弾き飛ばした、紫の稲妻が木々の間から飛び出てくる

 

「!!」

 

反射的にディメンジョンブレードをクロスさせ受け止め、上空に弾き飛ばすと

 

「そうすると思ってたぜ!!シザーアームズ・・トライデントッ!!」

 

両手の鉤爪と頭の角から、魔力刃が放たれる

 

「ぐうっ!」

 

がら空きの腹に魔力刃が命中し、後ろに吹っ飛ばされる・・そして直ぐに

 

「もう一発喰らえ!シザーアームズ!!」

 

物凄い勢いで肉薄してくるランレ・デルーパの姿に、反射的にディメンジョンブレードを振るう

 

ガキーン!!

 

それは偶然にも振り下ろされた鉤爪と衝突した、ランレ・デルーパにしたら、必中のタイミングで放った技が防がれ一瞬だが動きが硬直する、僕にとってはその隙のおかげで体勢を立て直し着地する事が出来た、僕はしっかりとディメンジョンブレードを握り間合いを計る・・ランレ・デルーパも同様で左の鉤爪を僕の方に向け間合いを計っている・・ミドルレンジでは僕が不利・・僕が勝つにはクロスレンジまで飛び込む必要がある・・すり足で飛び込むタイミングを計る・・エグザやデュナスなら一瞬で踏み込める、だがグランドではそれは不可能・・一瞬の隙を突くか、直撃を恐れず飛び込むか二つに一つ・・そのタイミングを計る・・先に痺れを切らしたのはランレ・デルーパだった

 

「こいつで消し飛べ!!シャイン・・オブ・・ビーッ!!!」

 

ランレ・デルーパの体が光り輝いたと思った瞬間

 

ゴウッ!!!

 

ランレ・デルーパの体を中心に爆発が起きる

 

「ぐっ・・」

 

腕をクロスして爆発が止むのを待つが次々と爆発し止む気配が無い・・こうなったら僕に出来る事は1つ・・

 

(爆発の間隙を突くしかない!)

 

連続で爆発しているが、一瞬だけ次の爆発まで隙がある、その隙を突いて懐まで飛び込む!腕の隙間からタイミングを計る

 

ゴウッ!!ゴウッ!!・・

 

今だ!!爆発が一瞬止んだ隙に一気に懐に飛び込む

 

「何っ!?」

 

驚くランレ・デルーパに連続でディメンジョンブレードを叩き付ける

 

ギャリ!!ギャリ!!

 

滑らかだが硬い甲冑に弾かれ、火花が出る・・だが確実に浅いが甲冑に傷を与えていく

 

「くっ!!ちょこまかと!!」

 

両手の鉤爪が僕に迫るがここまで接近すると思うように攻撃できないのか、動きが鈍い・・この状態なら僕の方が有利!!後は連続で攻撃を続けるだけだ!!

 

ギャリ!!ズパン!!

 

何度目かの攻撃で遂にランレ・デルーパの体に深い傷を与える、何度も攻撃を喰らい続けた所為で遂に甲冑に限界が来たのだ

 

「俺の甲冑が・・・デスロートパイルッ!!!」

 

自身の甲冑が傷つけられた所為か、凄まじい速さで尻尾による突き攻撃を繰り出してくる。

 

(速い!!・くっ・・距離を取るしか無い!!)

 

甲冑同士が密着する距離まで接近している為、回避が間に合わなくなると判断し大きく後方に跳び距離を取る

 

「くそが!!ここまでコケにされたのは初めてだ!!許さんぞこの餓鬼がっ!!!」

 

ランレ・デルーパに物凄い勢いで魔力が収束していく・・多分さっきの森を焼き払った一撃が来る!

 

(一か八か・・カートリッジありのディメンジョンシザーに賭けるしかない!!)

 

そう思いカートリッジを使うと同時にディメンジョンブレードが輝き、一本の巨大なバスターソードになる

 

「ディメンジョンシザーッ!!!」

 

全力でディメンジョンブレードを振るう、それと同時に巨大な魔力刃がランレ・デルーパに向かって放たれる

 

シュン!!

 

直撃かと思った瞬間、ランレ・デルーパの前に障壁が現れ、ディメンジョンシザーを受け止める

 

「馬鹿が!こんな隙の多い技に何の防御も考えないと思ったか!!」

 

くっ・・駄目なのか・・一瞬諦めかけたが次の瞬間それは消えた

 

ズズッ・・

 

ディメンジョンシザーが障壁に徐々にだが食い込んで行き

 

「くッ馬鹿な!!俺の障壁が・・・ぐわああああっ!!!」

 

カッ!!ズドーンッ!!!

 

ディメンジョンシザーが障壁を切り裂きランレ・デルーパの体を捉えた・・

 

 

 

「凄い・・」

 

私は思わずそう呟いた・・いくらLV4とは言え、あそこまで巨大な魔力刃を喰らえば致命傷になるだろう、私はそんな事を考えながらエリオに近付いた

 

「はぁ・・はぁ・・ルーちゃんのおかげで勝てたよ・・」

 

肩で息をしながら礼を言うエリオに

 

「そんな事無いよ・・エリオが頑張ったから勝てたんだよ?」

 

笑いながら返事を返すと同時にランレ・デルーパの居た方向から

 

「あらあら・・随分詰めの甘い魔導師ねぇ?」

 

聞き覚えの無い女の声が聞こえ、次の瞬間舞い上がっていた砂煙が消し飛んだ・・蹲るランレ・デルーパの前に、妖艶な姿をした女性・・いや・・ネクロの姿があった、エリオが慌ててデバイスを構えようとするが

 

「あらあら・・随分勝気な子ね・・でも待ちなさい私はここに戦いに来たわけじゃないのよ?だから大人しくしててね?」

 

からからと笑うネクロに毒気を抜かれたようでデバイスを降ろすエリオを横目に

 

「貴方はネクロなの?」

 

そう尋ねると

 

「あら?ネクロに見えないかしら?・・まぁ無理も無いわね・・LV4になると限りなく人間に近いか、彼みたいに化け物になるか2つしかないからねぇ・・まぁ人間みたいになるのはかなり珍しいのよ?・・あら・・私とした事が自己紹介がまだだったわね?私はヴィルへリア勿論ダークマスターズの1人よ宜しくね?」

 

ウィンクをしながら自己紹介をするヴィルへリアに

 

「くそが・・俺の戦いを邪魔するんじゃねぇ!!」

 

ふらふらと立ち上がるランレ・デルーパに

 

「あのねぇ・・私は一応貴方を助けに来たのよ?少しは感謝して欲しいわね・・」

 

ヴィルヘリアはランレ・デルーパを抱えながら

 

「まぁいいわ、悪いけど私達は忙しいから失礼するわ、まだパンデモニウムの準備も終ってないのに、貴重なLV4を失う訳には行かないの、だからまた会いましょう?可愛い魔道士さん」

 

そう笑いながらヴィルへリアとランレ・デルーパの姿は消えて行った

 

「はぁ・・あのままだったら負けた・・」

 

騎士甲冑を解除しそう呟くエリオ、確かにその通りであのヴィルへリアと戦闘になれば疲労している私達に勝ち目は無かった

 

「そうだね・・それより体は大丈夫?」

 

エリオに体の調子を尋ねると

 

「うん、全然平気どこも痛くないし、少し休めば直ぐに六課に戻れるよ」

 

笑いながら言うエリオに頷き、2人で太陽を見上げながらエリオの体力が回復するのまでの間、話をしていた・・

 

「おかえり!・・あれエリオ君頬っぺたどうしたの?」

 

六課に帰るとキャロが出て来ておかえりと言うが、エリオの頬を指差し尋ねるとエリオは

 

「ちょっとネクロが出て来て、戦闘になっちゃって・・」

 

戦闘になったとエリオが言うと

 

「本当!?大丈夫だった2人とも」

 

大丈夫だったか?と尋ねて来るキャロに

 

「大丈夫だったよ、それに聞いてよキャロ!さっきねデュナスフォルムみたいに甲冑が変わったんだ」

 

甲冑が変わったとキャロにエリオが言うと

 

「えっ・・ルーちゃんとでも変わったんだ・・私だけじゃなかったんだ・・」

 

何かショックを受けているキャロに

 

「ちょっとエリオは向こう行ってて、私キャロと話があるから・・」

 

エリオに部屋から出て行くように言うと

 

「うん・・判った・・食堂で待ってるね」

 

怪訝そうだが頷き、エリオは食堂に向かって行った、2人になった部屋で

 

「ショックだった?・・私でもエリオの騎士甲冑が変わったのが?」

 

ショックだったかと尋ねると

 

「そうだね・・ショックかな・・私だけだと思ってたから・・」

 

ショックと言うキャロに私は

 

「そっか・・ショックだったんだ・・でもそれを言うなら私はキャロが羨ましいよ・・」

 

キャロが羨ましいというと

 

「どうして?私が羨ましいの?」

 

どうして羨ましいの?と尋ねるキャロに私は

 

「何時もエリオと一緒に居られるし、龍也とも一緒に居られる・・それが私は羨ましかった・・」

 

ジェイル達と居るのは楽しいだけど、やっぱりエリオや龍也と一緒に居るキャロが羨ましいと言うと

 

「そっか・・そうだね・・ルーちゃんもエリオ君が好きなんだ・・」

 

好き・・確かに私はエリオが好きだと思う、優しくしてくれるし護ってくれた・・だから私はエリオが好きなんだと思う

 

「でもそれはキャロも一緒、キャロもエリオが好きでしょ?」

 

真っ直ぐにキャロの目を見て言うと

 

「うん、私もエリオ君が好き・・だからルーちゃんとはライバルになるのかな?」

 

ライバルになるのかな?と言うキャロに私は

 

「違う、私とキャロはライバルにはならない・・2人でエリオを捕まえれば良い・・」

 

ライバルになるのではなく、2人でエリオを捕まえれば良い・・1人より2人の方が効率が良いと言うと

 

「そっか!その手が合ったね!そっか2人で捕まえれば良いんだ・・」

 

うんうんと頷くキャロに

 

「そう2人で捕まえて、2人で幸せになれば良い・・いがみ合う必要は無い」

 

2人でそんな事を話している頃食堂では・・

 

「ブルッ!・・おかしいですね・・急に寒気が・・」

 

寒気がと言うエリオに龍也が

 

「風邪か?薬を飲んでおいたほうが良い・・はいヴィヴィオあーん」

 

膝の上にヴィヴィオを乗せあーんをしながら言う龍也にエリオは

 

「風邪とかじゃないと思うんですけどね・・どうしたのかな?」

 

首を傾げるエリオ、齢10歳にしてピンクと紫の鎖に雁字搦めになっている事に、エリオが気付くのはもう少し先の事になる

 

 

 

 

「何やってるんだ?ハーティーン?」

 

俺は目の前の光景が信じられず目を擦りながら尋ねると

 

「俺も良く判らない・・だがラグナがこうしてくれと・・」

 

首を傾げるハーティーンの膝の上に、枕を置いて眠っているのは俺の妹に間違いが無い

 

(おいおい・・マジかよマジでラグナはこいつが好きなのかよ・・)

 

ハーティーンを監視し始めて今日で3日目だ・・その間ラグナはハーティーンにべったりで兄としては大変複雑な気持ちだった・・

 

(ハーティーンは確かに良い奴だけどよ・・ネクロだし・・俺らにしたら敵だもんな・・はぁ・・マジでどうしよう・・)

 

もうこうなっては報告も無理だし、かといって俺ではこいつには勝てないと判りきっているし・・どうすれば良いのか困っていると

 

キラッ!

 

ハーティーンの首にペンダントがある事に気付く

 

「ハーティーン、お前首のペンダントどうしたんだ?」

 

昨日まで無かったペンダントを指差し尋ねると

 

「前にラグナの事を忘れていたと言ったら殴られただろう?忘れられないようにこれを持っていろと言われた、裏側にラグナの名前が刻んである・・」

 

ラグナ・・そこまでやるか・・普通・・

 

自身の妹の事が判らなくなってきた・・

 

「所で話は変わるけどよ、まだ声は聞こえるのか?」

 

頭の中に聞こえるという声の事を尋ねると

 

「今は聞こえない・・どうしてか判らないがラグナと居るようになってからは聞こえないんだ・・」

 

聞こえないのか・・でもその声の思い出せって言うのはどういう意味なんだろうな?

 

「まぁ良いか・・それよりラグナを起こして飯にしようぜ、俺腹減ってんだよ」

 

何だかんだ言って、ハーティーンとの奇妙な共同生活に慣れて来ているヴァイスだった・・

 

 

 

 

「ふふふ・・完成しました・・」

 

パンデモニウムの中で微笑むヴェノム、彼の前には言うなら竜人型のデクスの姿があった

 

「これが私の持てる全てをつぎ込んで造ったデクス・・デクス・・ドライヴォルティス・・」

 

ハーティーンとは違う、一から創り上げたデクス・・それがドライヴォルティスだ

 

「ふふふ・・やっとですよ・・」

 

随分と長い時が経ったが、漸く完成した・・これでハーティーンは必要ない

 

「ヘルズにはああは言いましたが、洗脳が解け掛かってる可能性が強いですからね・・目覚められる前に消しておくのが得策ですね」

 

ドライヴォルティスはハーティーンをベースに創り上げたデクスだ、デクスの中で唯一ハーティーンに対抗出来る可能性を持っている

 

「ふふふ・・もう少しで貴方の出番です・・そして私に証明してください・・あんな奴より貴方の方が強いとね」

 

私はドライヴォルティスの入ったポッドを触りながら呟いた・・狂気のネクロ・・ヴェノムが造りし悪意の化身は少しずつだが確実に目覚めの時を待っていた・・

 

 

第81話に続く

 

 

デバイス変化詳細 紹介

 

レイジングハート フォトンモード

 

ファントムとの戦闘中にシャルナから譲り受けた力で変化したレイジングハート、白のバリアジャケットは青く染まり、背には魔力で構成された6枚の翼を持つ、レインジングハートも姿を変え、一回り大きくなっている、最大の特徴は4つのクリスタルで防御にも攻撃にも使える、背中の翼と巨大化したレイジングハートから女神と言われる形態である

 

魔法解説

 

エクストリームジハード クリスタルとレイジングハートから放つ超高出力砲撃、その威力はスターライトの約7倍で龍也の全力のプロテクションを貫く事が出来るが、威力が巨大すぎる所為かリミッターありでは1発、リミッター無しでも3発が限界の必殺砲撃である

 

 

バルディッシュ アルフォースモード

 

キメイラとの戦闘の際に覚醒した、バルディッシュの最終形態、美しい青い軽鎧に赤のマントを持ちその姿は魔導師と言うよりかは騎士である、バルディッシュは美しい装飾が施された二つのブレスレットに変化しており、右手からは魔力刃、左手からは盾を発生させる事が出来る、防御に加速、さらには攻撃力まで真・ソニックフォームより上、更に広域殲滅の魔法も行使が出来る最強形態である

 

魔法解説

 

ソニックミラージュ 強烈な加速により発生する分身、魔法というよりか体術に近い、最大で4体まで発生させる事が出来る

 

ウィンドガーディアン プロテクションとは違う防御魔法、マントを振るい風を操り強固な防壁を作る、だがその性質上発動中は他の行動を取る事が出来無い上に移動も出来ない為、凡庸性は低いが現存する魔法の中では最高の防御力を誇る

 

エルンストンウェル カートリッジを使用し放つ巨大な斬撃魔法、形式としては抜刀術に近く神速の一撃で射程、威力ともに高く、尚且つ雷と共に放つため貫通性も高い必殺の一撃

 

ライトニングフォース 龍也のガイアフォースをアレンジした技、龍也のが炎に対してフェイトのは雷である、周囲の魔力を吸収し放つ為カートリッジの使用は必要ないが、溜めの時間が必要である為凡庸性は低い、フェイトの持つ最大威力の魔法

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。