第84話
「何?・・魔力の収束を教えて欲しいだと?」
私は体の調子が完全に回復し、久しぶりに訓練に参加したが、その際にスバルが行き成り魔力の収束を教えてくれと頼み込んでくる・・頭を深々と下げるスバルの姿を見ながら
「これの事か?」
私は右手に魔力を収束させる・・蒼い光が右腕を包み込む・・それを見てスバルが
「それです!!私にそれを教えてください!!」
教えてくれと言うスバルに
「教えると言ってもな・・これは負担が大きいんだぞ?」
これは骨や筋肉にかかる負担が大きいと言うと
「構いません!!それを私に教えてください!!」
繰り返し教えてくれと言うスバルに
「ふー・・仕方ない・・教えるが・・そう簡単には覚えられないぞ?」
そう前置きをしてから私はスバルに魔力収束のやり方を教え始めた
「つぅ・・」
スバルが右腕を押さえ込みしゃがみ込む・・
「やり方が雑すぎる、まずは薄く魔力を収束させてその上から更に収束させろ・・じゃないと本当に腕を痛めるぞ・・」
ただ収束させるのではない・・まずは薄く魔力を収束させ腕を護る、更にその上から魔力を収束させるのだ
「はい・・えっと・・こうかな・・」
ぶつぶつと呟きながら魔力を収束させるスバルを見る
(飲み込みが早い・・元々独学でヘブンズナックルを作り上げたスバルだ・・こういう収束のコツは掴んでいるのだろう・・)
熱心に魔力収束をするスバル・・練習開始から1時間後・・
フォン・・
スバルの右腕を水色の魔力が包み込む、スバルはそれを見せながらスバルは
「龍也さん!!出来た!!出来ましたよ!!」
飛び跳ね喜ぶスバルにヘッドギアと防具を投げ渡す
「?・・何ですか?」
受け取った物の首を傾げるスバルに
「収束を教えてくれと言うことは自身の技に限界を感じてるんだろ?・・私の技を幾つか教えてやる・・だが口での説明は無理だ・・だから組み手の中で自分で掴め・・」
スバルの目を見据え言うと
「はい!!宜しくお願いします!!」
防具を身につけるスバルと組み手を始めた・・その姿を見るティアナは
「スバルばっかり・・私だって・・教えて欲しいのに・・」
ぶつぶつと呟くティアナを見て、エリオ達は
「「ティアナさんが怖いです・・」」
怖いと呟くエリオとキャロに
「????」
どうして2人が怖がっているか判らないと首を傾げるルーテシアの姿があった・・30分後・・
「も・・もう・・無理です・・」
肩で大きく息を整え無理だと言うスバルを見ながら私は
「そうか・・では少し休憩していろ・・後で組み手をまたやるぞ」
そう言うとスバルは
「は・・はい・・またお願いします・・」
へたり込み返事を返すスバルを横目に私はティアナの方に向かった・・
「ぶつ・・ぶつ・・」
ティアナがぶつぶつと呟きながらターゲットを射撃している・・命中率はかなり高いようで次々と命中していく・・
(射撃感は抜群だな・・元々才能はあるんだ・・無茶をしなければエースも夢じゃないか・・)
ティアナは天才と言っても良いだろう・・焦らず訓練を続ければエースも夢ではない・・だが・・改善点もある・・それは射撃型の魔道師が抱える基本的な弱点・・それは接近戦だ・・私はデバイスを置き射撃の精度を見ているティアナに
「流石だな・・射撃の腕はピカイチだな?」
後ろから声を掛けるとティアナは驚いたように振り返り
「龍也さん!!次は私の番ですか?」
笑いながら尋ねて来るティアナに
「そうだ・・ティアナの番だ・・ああ・・デバイスはストライクダガーで準備しろ」
私は軽く拳を握りながら言うと
「ストライクダガーという事は接近戦の練習ですか・・」
ダガーを構えるティアナに
「今から10分、拳、脚、ダガーどれを使っても良い・・私に一撃入れてみろ」
軽く拳を構え、ティアナの攻撃に備える・・
ジリ・・ジリ・・
すり足で迫ってくるティアナはダガーを逆手に構えている・・隙はありそうでない・・恐らくこの隙は業と出しているもの・・
(接近戦も苦手ではないという事か・・)
重心を後ろに置くと同時にティアナが駆け出してくる
バッ!!
顔を狙って蹴りが放たれる
「狙いは良いが・・相手との身長差を考えるべきだな・・」
ガッ!!
その足を掴み軽く後方に投げ飛ばす
「っとと・・」
体勢を立て直し着地する・・ティアナを見ながら
「さっ・・全力で打ち込んで来い」
私は手で挑発しながらティアナに声を掛けた・・
10分後・・
「ぜはー・・ぜはー・・」
肩で息をするティアナは酷く消耗している・・攻撃する時一番疲労する物・・それは攻撃の空振りだ・・私はティアナの攻撃を捌き続け・・ティアナの体力が尽きるのを待っていたのだ・・
「もっと攻撃する時は考えてやるようにな?」
「は・・はい・・ありがとうございました・・」
龍也達が演習場で訓練している頃・・・
「んーと・・これと・・これと・・」
ラグナが買い物をしている市街に
「フフ・・行くとするか・・」
市街を見下ろす蝶のような炎を翼を持った異形・・ストレイツォと
「やれやれ・・僕に命令しないで欲しいね・・」
黒い体を持った狼の様な異形・・ノワールの姿があった・・
ビーッ!!ビーッ!!
六課に警報が鳴り響く・・それに伴いブリーフィングルームに向かった
「ネクロか?」
ブリーフィングルームに入りながらはやてに尋ねると
「そうや、LV3が2体だけやけど・・ちょっと不味いことになってるんや・・」
モニターには人質であろう少女の姿があった・
「人質か・・どうするべきか・・」
蝶の様な翼を持ったネクロが少女の頭に右手を突きつけ、
「ブルーサンダーッ!!」
狼の様なネクロが角から電撃を放ち市街を破壊している・・
「ちっ・・私が出る・・フェイト達は一緒に来い、私がネクロの注意を引き付けている隙に人質を解放するんだ」
私はフェイト達を連れ出撃して行った
「クックッ・・漸く現れたか守護者・・」
蝶の様なネクロが少女の頭に腕を突きつけながら笑い
「派手に暴れてたのにも意味がある訳だ・・ストレイツォの馬鹿な計画に参加したのにも意味があったのか・・」
嘲笑う様に言う狼のネクロにストレイツォと呼ばれたネクロは
「馬鹿とでも何とでも言え、守護者を引きずり出せたのだからな・・ノワール」
ノワールと呼ばれたネクロは口に電撃を溜めながら
「まぁ良いさ・・僕達の目的は守護者を倒す事だしね・・ストレイツォは人質を放すなよ・・」
バチバチッと帯電音をさせるノワールに
「判ってる・・お前も仕留め損ねるなよ?」
ストレイツォのその言葉と共に青い電撃が走った・・
「!!」
サイドステップで回避し剣を構えようとするが
「おっと・・動くなよ・・動けば・・この女の頭を消し飛ばすぜ?」
ストレイツォが少女に突きつけた右手に炎が溜まって行く・・私は構えかけた剣を鞘に戻した
「そうそう・・動かないでね!!」
ギュンッ!!
上下左右から迫ってくるノワールに
「くっ・・」
辛うじて直撃は回避しているが・・このままではジリ貧だ・・ストレイツォは少女の頭から手を退けない・・フェイト達も飛び出すタイミングが掴めない・・
(このままでは不味い・・)
私に選択できるのは2つ・・少女を見捨てるか・・このまま死ぬかだ・・そう思った直後
ザンッ!!
私の背後に紺色のマントに闇色の騎士甲冑を纏った異形が姿を見せる
「ハーティーン・・」
漆黒の騎士が背中の鞘から剣を抜き放つ・・それと同時にストレイツォが
「はは!!ハーティーン!!守護者を仕留めに来たか・・良いだろうお前が止めを・・ザンッ!!・・がああああッ!!」
止めと言いかけた直後ストレイツォの腕が切り飛ばされる、ハーティーンは少女を抱き抱え、一瞬で瓦礫の影に隠れていたフェイト達の前に行き
「おい、女!!ラグナの手当てをしておけ!!」
フェイトにラグナと呼ばれた少女を渡し、私の隣に立つ
「何のつもりだ?」
腰から剣を抜き放ちながら訪ねると
「人質などと卑怯な事をする奴らは気に食わん・・だから排除しに来たが・・1人で勝てるほどあいつ達は弱くない・・だから・・」
ハーティーンが何を言いたいのか理解し
「成る程な・・敵の敵は味方・・と考えても良いか?」
ハーティーンを見ずに言うと
「ふん・・そんな所だ・・だが覚えておけ・・あいつらを倒せば次は貴様の番だ・・守護者・・」
にやりと笑うハーティーンに
「そうだな・・では・・ここは1つ・・」
私の剣とハーティーンの剣の切っ先が重なる
「「共同戦線と行くかっ!!!」」
最強の守護者と己を探す騎士が同時に空を舞った・・
「凄い・・」
僕は思わずそう呟いた・・お父さんとハーティーンが空を舞う・・それはとて美しく・・まるでかなり前から2人で居るのが当然だったように鮮麗されていた・・僕は・・いや僕だけじゃない・・フェイトさん達もその動きに魅了されていた・・
「ブルーサンダーッ!!」
ノワールが電撃を放つが
「無駄だっ!!」
ハーティーンが電撃を切り飛ばし
「はぁっ!!」
お父さんが凄まじい踏む込みでノワールの懐を取り、切り上げながら蹴り飛ばす
「がっ!!」
ビルに背中から追突するノワールに
「消えろ!!暗黒月光剣 満月の太刀ッ!!」
漆黒の魔力を纏ったハーティーンの剣が上段から振り下ろされる
「ぎゃあああああっ!!」
断末魔の叫びと共にノワールが消滅する
「この裏切り者がああああっ!!」
ストレイツォがハーティーン目掛け炎の弾を放つが
バッ!!
一瞬早くお父さんがその攻撃に割り込み、マントでその炎を防ぎながら
「油断してるんじゃないか?」
ハーティーンに挑発するように言うと
「ふん・・俺があの程度の攻撃でどうこうなる訳が無いだろう?」
同じく挑発するようなハーティーンに
「口の減らない奴だ・・」
お父さんがそう呟くと同時に
「「ぐるるるッ!!!」」
15体のデクスが姿を見せる・・ストレイツォに援軍が来た様だが、お父さんとハーティーンは
「やれやれ・・数だけで私に勝てると思っているのかね?」
剣を構えそう呟くお父さんに
「・・出来損ないが何体来ようが同じ事だ・・俺の剣の錆となれ・・」
2人同時にデクスに向かって行った・・
妙な感覚だ・・俺はダガーを振りながら感じる妙な感覚に戸惑っていた・・
(まるで遠い昔・・同じ事があったような気がする・・)
ダガーでデクスを両断しながら俺はそんな事を感じていた・・
「はぁッ!!」
守護者の剣がデクスを両断する・・それに別の男の姿が重なる・・赤い髪を持った男の姿がダブって見える
(何なんだ・・この記憶は・・)
知らない男なのに何故か妙に懐かしく感じそれに戸惑いながらデクスを両断していく・・それと同時に
(どうした?■■■■■■・・腕が止まっているぞ!!)
赤い髪の男が俺に話しかけてくる
(知っている・・俺はこの男を知っている・・)
何故か判る・・俺はかつてこの男と共に戦場を駆けた事があると・・その記憶の所為か動きが止まった所に
「がああああっ!!」
デクスが飛び掛ってくる
(しまった・・戦場で考え事など・・)
マントで防ごうとするがそれより速く
「瞬連刃ッ!!」
守護者が割り込みデクスを消滅させる
「何をしている?ハーティーン・・動きが止まっているぞ!!」
!!先程の男の言葉と守護者の言葉が重なる・・俺はそれに驚きながら
「ふん・・抜かせ・・貴様こそ・・動きが止まっているぞ!!」
守護者の影から飛び出したデクスを両断し、背中合わせで剣を構える
「やれやれ・・わらわらと鬱陶しいな・・大技で消し飛ばすとするか?」
俺に声を掛ける守護者に
「そうだな・・ストレイツォごと消し飛ばすか・・」
2人同時に魔力を収束させる
「全ての罪人に・・血の裁きを・・」
守護者の回りに真紅のスフィアが浮かぶ、俺も詠唱をする
「黒き獄炎に呑まれ・・燃え尽きろ!!」
俺の周りに漆黒のスフィアが浮かび・・2人同時に
「ブラッディ・・・レイ!!」
「ダークネス・・・スフィア!!」
デクスとストレイツォに無数の魔力弾が打ち込まれた・・
「ば・・馬鹿な・・俺が・・この俺がああああッ!!」
俺と守護者の嵐の弾幕に呑まれ、デクスとストレイツォは消滅して行った・・
「「・・・・・」」
バッ!!
残兵が居ない事を確かめてから守護者から距離を取る・・そしてお互いに剣を向け
「これで邪魔者は居ない・・守護者・・ここで決着をつけてくれる・・」
俺が剣を構えながら言うと
「そうか・・ならば・・私も全力で相手をしよう・・」
守護者が剣を俺と同じ様に構える・・漸くだ・・漸く・・答えが見つかる・・捜し求めた答えがこの男を倒す事で判る・・しっかりとダガーを握り直しながら守護者を見る
「・・・・」
片手で軽く剣を構え、俺を見る守護者の姿に再び赤い髪の男の姿と重なっていく・・それと同時に軽い頭痛が俺を襲い始める
(ちぃ・・折角・・守護者と決着をつけれるチャンスだと言うのに・・)
守護者に俺の変調を悟られるように必死にその頭痛と戦っていると
(剣を退け・・その方はお前の敵ではない・・)
ラグナと居る時には現れなかった男の幻が俺に声を掛ける
(黙れッ!!消えろ!!俺は・・守護者と戦い答えを得るんだ・・邪魔をするなッ!!)
俺がそう叫ぶと同時に幻は消え、頭痛も治まる・・俺はそれに安堵しながらダガーを構える・・それと同時に
スッ・・
守護者も剣を正眼に構える・・俺はそれに笑みを浮かべながら
「「いざ・・尋常に・・」」
2人同時に体勢を低くし・・
「「勝負ッ!!」」
ガキーンッ!!
守護者と俺の剣が交差した・・答えを得る為の戦いの幕が斬って落とされた・・・
龍也とハーティーンの戦いを見る、異形の鎧の騎士・・ヘルズだ、ヘルズはその戦いを見ながら
「やはり・・洗脳が解け掛けているのか・・」
私の記憶の中の剣帝の姿とハーティーンの姿が重なっていく・・ハーティーンの剣筋は荒々しくも完成された物だ・・剣帝の剣筋は美しい中にも獰猛な狼の様な鋭さがあった・・徐々にだが・・剣帝の太刀筋に近付き始めていた・・
「このまま守護者と戦い続けられると・・本当に記憶が蘇る可能性がありますね・・そしてその切っ掛けを与えた者は・・」
私は死神に看病されている少女から守護者とハーティーンの戦いに視線を戻す・・
「あの少女ですか・・それに守護者の動きに切れが無いのも気になります・・」
守護者の剣筋には何時もの鋭さが無い・・
「もしかすると・・科学者から何か聞いてるかもしれないですね・・」
遺跡には剣帝の眠っていたクリスタルがあった・・そしてそこには剣帝の伝承が刻まれていた筈だ
「まぁ・・仮に聞いていても・・関係ないですね・・」
スラッ・・
私は背中の鞘から剣を抜き放ち
「勝っても負けても・・ハーティーンは始末しますからね・・」
私は押し殺した笑い声を上げながら、守護者とハーティーンの戦いを見ていた・・
第85話に続く・・