夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第86話

 

第86話

 

「はぁぁ・・」

 

呼吸を整える・・それと同時に水色の魔力が私の体を包み込む・・魔力を直接身に纏うこの技は精神集中にはもってこいだ・・私がベットの上で精神を集中していると

 

「まだやってたの?」

 

ティアが髪を拭きながら呆れたように言うが

 

「もう少しだけ・・もう少しでコツが掴め・・ヒュン・・あっ・・失敗か・・」

 

返事を返した瞬間魔力が消える・・集中が途切れてしまったからだ・・

 

「はぁ・・上手く行ったと思ったのに・・極光・・・」

 

魔力を身に纏うこの技は極光と言うらしい、限界まで高めた魔力が光り輝く事から名付けられているらしいが・・私はまだ光り輝くレベルまでは到達していない・・強いて言うなら篝火と言った所だ・・私が落胆していると

 

「極光ねぇ・・それより先にやる事があるんじゃないの?」

 

ティアに言われて思い出す、そうだこれより先にやる事があった・・

 

「技のこと考えないと・・」

 

極光は優れた戦闘技能だ、それが何故現代に伝わっていないか?それは簡単だ・・この技には重大な欠点がある・・それは

 

「砲撃も直射も・・魔法が全部使えなくなる・・事か・・」

 

身体能力を爆発的に跳ね上げる対価に攻撃系の魔法が全部使えなくなる・・それが極光の欠点だ・・廃れて行ったのも無理も無い・・だが私には相応しい技だ・・射撃系の魔法が元々苦手な私だ・・極光は私に最も適した戦闘技法だ・・

 

「極神撃ね・・ちゃんと考えているよ」

 

極神撃?首を傾げるティアに

 

「極光の極に龍也さんの機神拳・・最後に撃破の撃で、極神撃だよ」

 

名前の由来を言うとティアは

 

「またまた大層な名前付けたわね・・少し大袈裟なんじゃない?」

 

大袈裟な名前だと言うティアに1つのCDを見せる

 

ドゴーンッ!!!

 

極光状態の龍也さんがビルを殴った瞬間一撃で崩れ落ちた・・

 

「・・・・判った・・私が悪かった・・大袈裟じゃないわ・・その名前・・」

 

謝るティアに頷き、別のCDを再生していく・・全て龍也さんの格闘戦時の映像でクアットロさんが録画していた物らしいが・・動きが全て見えるため良い資料になる、私がそんな事を考えて映像を見ていると

 

「ふーん・・まぁ良いけど・・私は寝るから静かにしててよね・・じゃおやすみ」

 

自分の部屋に戻って良くティアを横目に、私は自分に合う技をピックアップしていた・・

 

「やっぱり拳か体当たり系だよね・・」

 

龍也さんの使う、玄武剛弾や足技は私には向いていない・・やはりここは機神拳か羅刹拳から技を選ぶべきだと思う・・2つとも拳を主に使った技が主体だ・・見ているだけでも参考になる・・私はその日の夜遅くまで龍也さんの映像を見ていた・・

 

 

 

「どうです?ルキルメス?体の調子は?」

 

笑いながら尋ねて来るヴェノムに

 

「悪くは無い・・だが本当にLV4の姿がこれで変わるのか?」

 

醜い姿が変わるのか?と尋ねると

 

「その筈ですけどね・・まぁ不安なら1回進化してみては?貴方は私と同じでLV3と4に自在に変化出来るんですからね」

 

そう言うヴェノムに頷き魔力を上昇させる・・一定値を越えた瞬間俺の体を漆黒の魔力が包み込み姿を作り変える

 

「・・これが新しい俺の姿か・・」

 

LV3の時の鎧に骨で出来た二枚の翼・・そして左腕には一回り巨大化した剣があった・・

 

「いや・・上手く行ってよかったです・・どうです?気分は」

 

気分はどうか?と尋ねるヴェノムに

 

「最高だ・・今なら守護者とも互角に戦える・・」

 

俺が握り拳を作りながら言うと、部屋の中に1体のネクロが飛び込んでくる

 

「ルキルメス!!進化したのかっ!?」

 

両腕が機械で出来た、俺より一回り大きいネクロ・・

 

「ライガ・・随分待たせてしまったな・・」

 

俺がダークマスターズに名を連ねていた時、俺の配下だった3将軍のリーダー 迅雷将 ライガに言うと

 

「ああ、待っていたんだ・・お前が進化する時を今か今かと待っていたのだからな・・」

 

俺がLVダウンした時3将軍も解散となった・・3将軍は下位のLV4で俺はLV3・・LV3に4を支配する権利が無いからだ

 

「ヒューガとスーガは元気か?」

 

他の2人の事を尋ねると

 

「ああ、元気だ・・お前が進化したんだ・・3将軍もこれで復活か?」

 

3将軍が復活か?と尋ねて来るライガに首を振り、LV3の姿に戻り

 

「俺にはまだやるべき事がある・・それが終ったらダークマスターズに復帰する・・それまで待っていてくれ」

 

進化態を変えて貰った以上、俺にはやらねばならない事があるとライガに言うと

 

「覚えててくれたんですね・・スバルと言う魔道師と戦ってくれると言う約束を・・」

 

ヴェノムが笑いながら言う

 

「当たり前だ、貸しは返す・・それが俺のやり方だ・・」

 

そう言って出撃しようとすると

 

「待て、俺も行く・・恐らく守護者が出てくるだろう・・お前がスバルと言う魔道師に集中できるように俺も一緒に行こう」

 

ライガが俺も行くと言う

 

「ライガ・・ああ・・頼む・・2人で行くとしよう・・」

 

2人で出撃すると話をしていると

 

「そうそう・・スバルと言う魔道師に本気を出させるためにこうしてくださいね・・」

 

耳打ちするヴェノムに

 

「俺に戦士としての誇りを捨てろと言うのか!!」

 

その作戦が気に食わず怒鳴ると

 

「ですからスバルという魔道師が本気を出したら好きに戦ってくれれば良いですから、それまでは作戦通りにしてください」

 

そう言うヴェノムに忌々しいが頷き、俺はライガと共にパンデモニウムを後にした・・

 

 

 

「市街にネクロの反応が2つ・・1つはLV3、もう1つは4や」

 

ブリーフィングルームではやての話を聞きながら私は

 

「最近、頻繁に出てくるな・・何か目的でもあるのだろうか?」

 

最近上位のネクロが良く出てくる事に疑問を感じながら言うとはやては

 

「多分なのはちゃんとか私の新しい形態の偵察に来てると私は思う」

 

はやて達の新しいバリアジャケットの偵察・・その線が濃いか・・私もはやてと同じ事を考えていたのでそれに頷きながら

 

「判った、私が出よう、スバル達とチンクとウェンディを連れて行く、フェイト達は待機していてくれ」

 

私はそう指示を出し出撃していった・・

 

「私とチンクはLV4の方に回る、スバル達はLV3を頼む・・LV3は強いがスバルとティアナにウェンディが居れば何とかなるだろう・・もし危険だと感じたら直ぐに下がれ・・良いな」

 

スバル達に指示を出し、私とチンクは先に降下して行った・・だがそれは間違いであったと後で悟る事になる・・

 

「来たか・・」

 

私とチンクの前に1体のネクロが立ち塞がる・・灰色の体に機械で出来た巨大な両腕を持ったネクロが全身に雷を纏いながら

 

「俺は迅雷将ライガッ!!守護者っ!!!正々堂々俺と勝負しろッ!!」

 

私に右腕を向けながら言うライガに

 

(ネクロの中にもこういう奴が居るんだな・・)

 

私は感心しながら騎士甲冑を展開し

 

「チンク、お前もスバル達の方に回れ」

 

チンクに言うと

 

「伏兵の気配も無い・・どうやら嘘は言ってないようだな・・判った・・私もスバル達と合流する・・八神負けるなよ・・」

 

チンくはそう言うとチンクはスバル達の方に向かって走り出した・・

 

「戦いとは一騎打ちこそ・・相応しい・・」

 

バチバチと帯電しながら言うライガに

 

「ネクロの中にもお前の様な者が居るんだな・・」

 

拳を握り締めながら言うとライガは

 

「俺は誇り高き闘士!!卑怯な真似はせんっ!!正々堂々力で貴様をねじ伏せてくれるっ!!」

 

ドンッ!!

 

コンクリートを砕きライガが肉薄してくるが・・

 

「はぁっ!!!」

 

真っ直ぐに向かって来たライガの拳に向かって自分の拳を繰り出す

 

ガキーンッ!!!!

 

弾かれた様に距離を取ると・・

 

「はああああっ!!」

 

高速で蹴りを拳を繰り出してくるライガ、その一撃は確かに重く強いが・・だが・・

 

(私はそれより強い一撃を貰った事がある・・この程度では私には勝てんっ!!)

 

脳裏に誇り高き異端の騎士の姿が浮かぶ・・あいつの拳はもっと重かった・・もっと鋭かった・・

 

「はああっ!!」

 

繰り出された左拳に合わせて右拳でカウンターを打ち込んだ

 

「があっ・・・」

 

完璧なタイミングのクロスカウンターに一瞬よろけるライガだが・・

 

「エレクーゲルッ!!!!」

 

両肩から強烈な電撃を放射してくる・・

 

(直ぐに反撃して来るか・・)

 

余裕を持って回避すると

 

「ガイア・・ブレイカーッ!!!」

 

上段から拳を振り下ろしてくる

 

「くっ!!」

 

腕をクロスして受け止めるが

 

ビキッ!!

 

コンクリートに私の足がめり込む・・

 

「喰らえっ!!!」

 

全力の右ストレートを打ち込んでくる、だが今までの攻撃と違い大振りだ、私はスウェーで回避し

 

「はあああああっ!!」

 

がら空きの腹に拳を叩き込む

 

「がぁ・・・」

 

呻き声を上げ吹っ飛んでいくライガに

 

「おおおおおっ!!!」

 

極光を発現させる・・蒼く輝く魔力が私を包み込む

 

ズドンッ!!!

 

コンクリートを砕き一気に肉薄する

 

「でやあああっ!!!!」

 

右のボディブローでライガの体を跳ね上げる、直ぐに返しの左のボディを叩き込む

 

「がはっ・・」

 

動きの停止するライガに

 

「おおおおおっ!!」

 

連続で拳と蹴りを繰り出す

 

ズガガガガガッ!!!

 

遠くから見れば蒼い閃光が次々とライガの体を打ち抜いているように見えるだろう

 

ズドンッ!!

 

ラッシュが収まり落ちてくるライガ目掛け

 

「真覇・・剛掌閃ッ!!!」

 

全力で拳を叩き込むっ!!

 

「がああっ・・」

 

ビルを砕きながらライガが吹っ飛ぶが・・

 

(手応えが無い・・あの一瞬で自ら後ろに跳んだか・・)

 

手応えが少ない事からそこまで致命的な一撃ではなかったはずだ・・自分の拳を見ていると

 

「おおおおっ!!!」

 

瓦礫を突き破ってライガが殴りかかってくる、その一撃を受け止めながら

 

(どうやら・・LV4は伊達ではないか・・・)

 

腹の甲冑に僅かに皹が見える程度しか、見て取れるダメージは無い・・

 

(まだ合流できそうに無いな・・)

 

私は蒼い光に包まれた右拳を見ながらそう呟いた・・

 

 

 

 

龍也がライガと戦闘している頃・・私は

 

「つ・・強い・・」

 

ルキルメスの前に膝を付いていた・・

 

「立て・・この程度ではないはずだ・・」

 

ルキルメスが立てと言う・・ルキルメスは後ろを向きながら

 

「お前が立たなければ・・仲間が死ぬぞ・・」

 

ルキルメスの見る方向にはティアとウェンディにチンクさんがいる、3人とも漆黒のドームの中に閉じ込められている

 

「グラビドジオルグ・・あの中の重力は徐々に強くなっていく・・仲間を助けたくば俺を倒すんだな・・」

 

冷めた目で私を見るルキルメスに

 

「でやあっ!!」

 

足払いを放つが

 

「遅い・・」

 

軽く交わされ鳩尾に拳を叩き込まれる

 

「がっ・・」

 

息が詰まる私に

 

「ふんっ!!」

 

蹴りが叩き込まれ後方に弾き飛ばされる

 

「げほっげほっ!!」

 

余りの威力に咳き込んでいると

 

「立て、本当に仲間が死ぬぞ・・」

 

私の前に立ち言うルキルメスだったが・・顔つきが変わり

 

「!!・・悪いが予定が変わった・・お前が本気になるまで待つつもりだったが・・そうも言ってられなくなった・・」

 

バチンッ!!

 

ルキルメスが指を鳴らすと私の体に鎖が巻きつく

 

「それを切れなければ・・お前の仲間は死ぬ・・」

 

ゴオオオオッ!!

 

ティア達を閉じ込めていると重力の結界が強くなっていく・・

 

「「「ぐぅぅ・・・」」」

 

それまで何とか耐えていたティア達の体が地面にめり込んでいく・・

 

「くっ!!」

 

ガチャガチャッ!!

 

鎖を断ち切ろうとするがビクともしない、その間もティア達の体が地面にめり込んでいく

 

「くそっ!!切れろっ!!!」

 

鎖を切ろうとするがやはり切れる気配は無い・・

 

(どうする?・・極光に賭けるか・・いや・・それより確実な手が・・)

 

戦闘機人としての力を解放する・・それが一番確実だ・・だが・・

 

(怖い・・なのはさん達も多分この状況もモニターしてる・・知られるのが・・拒絶されるのが怖い・・)

 

多分この状況を六課でもモニターしているはず・・大勢の前でこの力を使うのが怖い・・拒絶されるのが怖い・・

 

「「「ううっ・・」」」

 

3人の声で決意する

 

(私は何を考えてる!!!・・仲間を助けるのが大事に決まってる!!)

 

目を瞑り・・戦闘機人としての力を発動させる・・私の目が緑から黄色に変わる・・そして思いっきり力を込めるが

 

ガチャガチャッ!!

 

鎖はまだ切れる気配が無い・・

 

(そんな・・これでも駄目なの・・もう・・私に残された手は・・戦闘機人モードでの極光だけ・・)

 

戦闘機人でも駄目なら極光を使うしかない・・普通に使っても駄目なのに戦闘機人状態では使えるかどうかも怪しい・・かといって戦闘機人モードを解除してたら間に合わない・・

 

(こうなったら・・極光に賭けるしかないっ!!!)

 

私は戦闘機人としての力に極光を上乗せした・・

 

「むっ・・遂にか・・」

 

ルキルメスが何かを呟くがそれどころではない

 

(力が暴れる!!)

 

戦闘機人化で上昇しているのにそれを収束しようというのだ・・そう簡単に行く訳が無い・・

 

(出来るはずだ!!この力を制御して・・皆を助けるんだっ!!)

 

私の体を水色の魔力が包み込み光り輝く、それと同時に力を込める

 

バキャンッ!!!

 

強固だった鎖が弾き跳ぶ

 

「はあああっ!!」

 

一気に肉薄しルキルメスを殴り飛ばす・・それと同時に漆黒の結界が消滅する

 

「「「はぁっ・・はぁっ・・」」」

 

肩で息をするティア達だがそれまで深刻なダメージは無さそうだ・・それに胸を撫で下ろしていると

 

「あれ・・バリアジャケットが・・」

 

バリアジャケットが変化しているのに気付く・・動きやすい白を基調とした服にナックルガードと足のすね辺りまでの甲冑・・肩にあった装甲などが無くなっているが・・

 

(体が軽い・・それに力が張ってくる・・これが完成形の極光・・これなら勝てるッ!!)

 

私が握り拳を作ると同時にルキルメスが姿を見せ

 

「これで・・やっと俺らしい戦い方ができる・・人質を取るなど戦士としての恥だ・・忌々しい」

 

舌打ちをしながら言うルキルメスは私の方を見て

 

「お前の全力が見たかったからと言って人質などを取って済まなかった・・だがここからは別だ・・我が名は闇の闘士 ルキルメス!!

貴様に正々堂々一騎打ちを挑むっ!!」

 

ルキルメスはそう言うと

 

「うおおおおっ!!!」

 

ルキルメスの姿を漆黒の魔力が包み込む・・それと同時にルキルメスから感じる威圧感が倍増する

 

(進化してるの・・LV3から4にそうは・・させないっ!!)

 

進化させる物かと拳を繰り出すが

 

パシッ!!

 

「焦るな・・」

 

極光状態の私の拳を軽々と受け止めるルキルメスの姿は、さっきよりさらに刺々しく禍々しくそしてその背には骨で出来た翼・・死神・・という表現がピッタリなルキルメスは私から距離を取り、拳を構える

 

「さあっ!!ここからが本当の勝負だっ!!!」

 

私とLV4ルキルメスの真の戦いはまだ始まったばかりだ・・

 

第87話に続く

 


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