第92話
六課のヘリポートに着くなり、私はハーティーンに
「悪いがデバイスを貸してくれ、一応規約でな」
デバイスを渡しように言うと
「ふん・・受け取れ・・」
両手首のブレスレットと懐から金色のカードを投げつけてくる、それを受け取り
「信用していると言って置いて悪いな」
謝るとハーティーンは
「当然の事だから気にしてない・・」
そう言うと黙り込んでしまったハーティーンに内心困りながら、私はブリーフィングルームに向かった・・そこにはシグナム、ヴィータに、はやてそれとセレスが居た・・ハーティーンはセレスを見て
「統制人格か・・やはり貴様も蘇っていたか・・」
目を細め言うハーティーンにセレスは
「そういう貴様も漸く蘇ったと言う所か・・ベルカ神聖騎士団軍団長 ルシルファーシャッカス・・いや・・剣帝」
セレスがハーティーン・・いやルシルファーの役職を言うと、ハーティーンは眉を顰め
「俺にその名を名乗る資格は無い・・操られていたとは言え神王の意思に逆らった俺にルシルファーの名は重い・・俺は異端の騎士・・そしてここに居るラグナの騎士・・ハーティーンだ、統制人格」
ラグナの前に立ちながら言うハーティーンの後ろでは
「あう・・」
真顔で言われたその言葉に赤面しているラグナを見ながら、セレスは
「私はもう統制人格ではない・・私はセレスだ」
名前を言うセレスにハーティーンに
「成る程・・守護者に名を貰ったという事か・・判った・・セレスと呼ばせて貰う」
自己紹介を終えたハーティーンは椅子に腰掛け、机の上に足を組み
「さてと・・何を話せば良い?・・ジオガディスの目的か?それともパンデモニウムの事か?・・それとも俺が信用出来ないから話を聞くつもりは無いか?」
挑戦的な口調のハーティーンにはやてが
「ん~信用できないって訳や無いね・・兄ちゃんが信用する言うなら私も信用する、兄ちゃんの判断に間違いは無いからな~」
笑いながら言うとハーティーンは
「ふん・・そうか・・それなら構わん・・どっちみち信頼されようがされまいが俺のする事に変わりは無いからな」
そう言うとハーティーンは机の上の足を降ろし、机の上に腕を組み
「さぁ・・何から話す?俺が知る限りの事では全部話そう」
と言うハーティーンにヴィータが
「パンデモニウムって奴について教えてくれよ・・どんな兵器なのかとかよ・・」
ヴィータがそう尋ねるとハーティーンは
「パンデモニウムは機動要塞だ、城壁全てが武器で国潰し専用の兵器だ・・実際これで10の国が焼き野原になった・・神王と聖王ゆりかごで破壊され、今は断絶された空間の中で修復中だ」
冷静に言うハーティーンにフェイトが
「こっちから行って破壊は出来ないの?」
こっちからその断絶された空間に行けないか?とフェイトが尋ねると
「残り全てのダークマスターズとLV4・・それに900体近いネクロにジオガディスに直接戦闘を挑む気か?そんなのは戦いではない・・ただの自殺行為だ・・それに今のパンデモニウムにそこまでの火力は無い」
鋭い目で言うハーティーンにセレスが
「そうか・・思い出したぞ・・貴様がパンデモニウムを両断したんだったな」
セレスの言葉になのはが
「国を焼き野原にした機動兵器を両断した?・・嘘でしょう?」
そう呟くなのはにセレスが
「ハーティーンの能力でな・・超高圧縮された魔力の刃を作る事が出来るんだ・・その刃ならダイヤモンドさえ簡単に切れる・・それさえ使えばそれくらいは出来る」
能力について説明するセレスに
「こんな風にな・・」
左手に漆黒の魔力を集め、軽く振るうとハーティーンの前のティーカップは簡単に両断された・・
「俺の能力は闇の変換素質でな・・炎等の変換素質に加えて、圧縮や放射も自由自在・・俺が魔剣士と呼ばれたのはそれが由縁だ」
ニヤッと笑ったハーティーンは次に
「次にジオガディスの目的だが・・これは推測の域でしか判っていないが・・何十万のリンカーコアを集める事としか判ってない・・神王なら何か知ってると思うのだが・・生憎俺はそんな話は聞いてないからな・・」
簡単だがジオガディスの目的について話した、ハーティーンは
「さてと・・夜天・・俺が知るのはこれくらいだ・・どうやら操られる前に記憶を幾つか消されたらしい・・肝心な所が思い出せない」
頭を軽く押さえながら言うハーティーンに
「ん、ありがとう・・それと私は夜天ちゃう・・はやてやちゃんと名前で呼んで」
はやてがジト目で言うと
「む・・それは悪かった・・何せ俺はお前達の名を知らんからな・・ヘルズが呼んでいた名しか知らんのだ」
そういうハーティーンになのは達が自己紹介した所で
「はやて、ハーティーンの部屋を用意してやってくれるか?・・それとなのはとフェイトはラグナを家まで送ってやってくれ・・もう夜も遅いから」
はやてとなのは達に言うと
「ん・・大丈夫や空き部屋あるでその部屋好きに使ってくれて良いで」
はやては空き部屋の手筈をしてくれ
「うん、判ったよ」
フェイトとなのはがラグナを連れてブリーフィングルームを出ようとすると
「明日また会おう・・ラグナ」
ハーティーンがそう声を掛けると
「うん!!また明日・・ハーティーンじゃあね・・」
出て行くラグナを見送り終えたハーティーンに
「ハーティーンこっちだ・・」
行くぞと声を掛けてから、私達もブリーフィングルームを後にした・・
「守護者・・俺と貴様の決着はついていない・・何時かどちらが上か貴様に判らせてやる」
空き部屋に向かって行く途中でそんな事を言う、ハーティーンに
「そうだな・・勝負はついていない・・いずれ決着をつけよう・・」
私としても決着つかずだった、ハーティーンとの戦いに決着をつけようと言いながら、空き部屋に案内し
「今日からここがお前の部屋だ、好きに使ってくれ・・それじゃあな・・」
部屋の前でハーティーンと別れ、私も部屋に戻った・・そこには
「王・・お待ちしておりました・・」
セレスが待っていた・・私は内心驚きながら
「どうしたんだ?セレス」
何の用かと尋ねると、セレスは
「はい、ハーティーンの事なのですが・・明日ハーティーンを連れて聖王教会に一緒に行って貰えないでしょうか?」
聖王教会に一緒に行ってくれないか?と言うセレスに
「別に構わないが・・聖王教会に何の用があるんだ?」
そう尋ねるとセレスは
「はい、聖王教会には剣帝が使っていたデバイスが安置されています・・それがあればこれからの戦いが楽になると思うのです」
その説明に頷き
「判った、明日聖王教会に行こう」
一緒に行くと言うとセレスは頷き
「ありがとうございます・・それでは失礼致します・・」
溶ける様に消えていくセレスを見送ってから、私はベッドに横になり眠りに落ちた・・
「・・朝か・・」
ベッドから起き出し呟く・・
「中々寝付けなかったな・・やれやれ・・」
昔は野宿やテントでの睡眠が多かった・・それとどうも感じが違い中々寝れなかったのだ・・
「まぁ・・良い・・さてと・・どうするか?」
起きたのは良い・・だがやる事が見つからない・・デバイスは預けてるし・・暇つぶしする物も無く・・どうするかと考えていると
コンコン
ノック音の後に扉が開き
「起き・・てるか・・ハーティーン、ちょっとついて来て欲しい場所があるんだが良いか?」
そう言う守護者に
「別に構わん・・どうせ暇だしな・・」
やる事も無いので頷き、俺は守護者と共に敷地の外に出た
「ベヒーモス・・セットアップ」
敷地の外に出るなり、守護者が黒塗りの大型バイクを呼び出す
「私はこれで行くが・・サイドカーで良いか?」
そう尋ねる守護者に
「断る、そんなものより俺のデバイスを返せ、それにバイクモードがある」
そう言うと守護者は懐から、俺のデバイスを取り出し渡してくる、俺はそれを受け取り
「グレイダルファー、モードビークル」
俺の隣に守護者のバイクと同じ大きさの黄金のバイクが現れる、俺はバイクに跨り
「良いぞ・・それで何処に行くんだ?」
何処に行くかと尋ねると守護者は
「悪いが・・少し待ってくれ・・セレスが来るんだ」
暫く待っていると
「申し訳ありません・・お待たせしました」
セレスが守護者のバイクのサイドカーに乗り込む
「待たせたな・・ハーティーン・・行くとしよう」
そう言うと走り出した守護者のバイクの後を追い、俺もバイクを走らせた
「・・ここは・・ベルカの土地か・・」
俺はバイクを走らせながら呟いた・・建物や辺りの雰囲気は違うが判る・・この場所はベルカの土地だと、俺の呟きに気付いたのか守護者が
「流石に鋭いな・・ここはベルカの自治区になる・・私達が向かってるのはベルカの聖王教会だ」
目的地を教えてくれる守護者に
「聖王教会・・?・・そんな物が出来てるのか・・」
俺の時代に聖王教会などと言う施設は存在しなかった・・やはり俺の時代とは大分違うと考えている中、俺達は聖王教会に到着した・・
「こっちだ・・」
俺の前を歩いて行く、守護者とセレスの後を追い、俺も建物の中に入って行った・・
「お待ちしてました・・八神中将・・」
迎えの女に守護者は
「久しぶりだ・・カリム・・元気そうだな」
そう呟く守護者にカリムと呼ばれた女は
「そうですね・・私は元気ですよ・・それと・・貴方が剣帝ですか?」
俺を見て尋ねて来るカリムに
「そうだ・・だが1つ聞こう何故俺が剣帝だと知っている」
何故知っていると尋ねると
「ふふ・・ここには剣帝・・つまり貴方の伝承と貴方のデバイスが安置されているのです・・だから私は貴方の事を知っているのですよ」
柔和な笑みのカリムに
「俺のデバイス・・?・・まさか・・王龍かっ!何処だ!!何処にあるっ!!」
詰め寄りながら怒鳴ると
「そんなに大きな声を出せなくても直ぐに案内しますよ・・此方です」
そう言うと奥に向かって歩き出したカリムの後を追い、俺達は教会の奥に向かった
コツコツ・・
薄暗い通路を歩きながら、カリムが
「ここには龍の石像が安置されています・・それがデバイスだと・・次元さえ切り裂く最強の剣だと聞いているのですが・・私にはとても剣には見えなかったのです」
そう呟くカリムに俺は
「王龍は自立型のデバイスでな・・基本的に龍の姿で存在し、俺とユニゾンする時だけ剣になる」
俺は簡単に王龍の説明をしながら
(あの時俺の呼びかけに王龍は答えなかった・・だがこうして直接会えば・・あるいは・・)
ヘルズは言っていた・・俺と剣帝の魔力の波長は違うと・・俺は確かに剣帝だ・・だが俺はかつての俺とは違う・・もしかしたら・・王龍は俺に答えてくれないかも知れない・・俺は内心そんな不安を感じていた・・
「ここです・・ここに王龍が居ます・・」
カリムが扉を開き、俺と守護者を中に促す・・俺はゆっくりとその部屋に足を踏み入れた
「・・王龍・・」
部屋の中心に存在する、龍の石像・・それは間違いなく王龍だった・・俺はゆっくりと王龍に手を伸ばすが・・
バチィッ!!
凄まじい音を立てて手が弾かれる・・俺は王龍の目を見て
「やはりお前は・・俺を認めてくれないのか・・」
そう呟く・・悲しかった・・王龍は親友との・・神王との絆の象徴だった・・それが俺を拒む・・それがとても寂しかった・・俺がポケットに手を戻すと
「やはり・・王龍に拒まれるか?」
そう尋ねるセレス・・どうやらある程度の予測は着いていたようだ・・俺は
「見ての通りだ・・王龍は俺を主と認めない・・」
俺とセレスが話しているとカリムが
「待って下さい、おかしいじゃないですか・・これは貴方のデバイス・・何故それに拒まれるですか?」
訳が判らないと言う口調のカリムに俺は
「俺はヘルズとヴェノムによって限りなくネクロに近い存在にされた・・それが原因で俺の魔力はかつての物と違う・・だから王龍は俺を認めてくれない・・」
俺がそう呟くと、守護者が俺の肩に手を置き
「今は駄目でもいずれ王龍はお前を認めてくれる・・だからそんなに気を落とすな」
そう言う守護者に
「ふん・・誰が気を落としてるって?・・俺はかならず王龍を再びこの手にしてみせる」
握り拳を作りながら言い、俺達は機動六課へと戻って行った・・
「・・ふふふ・・面白いわね・・この坊や・・」
私は画面を見ながら呟いた・・そこには槍を持った幼い騎士・・エリオの姿があった
「うふふ・・あの時は見逃したけど・・次に会ったら・・この手で・・」
異形の右手を見ながら呟いていると
「・・貴方も飽きないですね・・ヴィルヘリヤ・・良く毎日同じ映像を飽きないですね?」
私の部屋にヴェノムが入りながら言う、私は横目で
「うるさいわね・・貴方だって毎日毎日飽きもせずキメイラを弄くってるじゃない・・それと同じよ」
皮肉を込めて言うとヴェノムは肩を竦め
「まさかそう切り替えされるとは予想外でしたよ・・」
頭を抱えながら言うヴェノムに
「それにしても・・貴方がここに来たっていう事は私の出番かしら?」
ウィンクしながら言うと
「中々鋭いですね・・その通りです・・ヘルズが剣帝と守護者に大分痛めつけられましてね・・回復のために膨大な魔力がいるんですよ・・しかしここにレリックはもう残ってないです・・だから管理局忍び込んで盗んで来ようと思っているのですが・・その為に貴方に陽動をして欲しいんですよ」
そう笑いながら言うヴェノムに
「別に良いわよ~出撃すればこの坊やを奪えるかもしれないし・・」
映像の坊やを指差しながら言うと
「貴方前、守護者が良いとか言ってませんでしたっけ?」
そう言うヴェノムに
「うふふ・・守護者は確かに良いわ・・でもね・・あれを思い通りにするのは難しいわ・・あれだけ信念が強いと私の能力じゃ難しいのよ・・でも坊やなら違うわ・・この位の精神を操るなんて造作も無い事・・そして坊やと守護者を戦わせるの・・面白そうでしょ?」
守護者は仲間を傷つけない・・その守護者がどう動くか楽しみじゃないか?と言うと
「確かに面白そうですね・・判りました貴方の好きにしてください、ネクロ、デクスは好きなのを持っていってください・・それじゃあ宜しくお願いしますよ」
そう呟き出て行ったヴェノムの後姿を見送ってから
「うふふ・・あの娘達がどんな顔するか楽しみだわ~さてと準備しようかしらね~」
あの坊やと一緒に居た、ピンクと紫の魔道師の事を考えながら、私は準備の為にパンデモニウムの奥に向かった・・私が向かう先から
「ゴルルルル・・グアアアアッ!!!」
地獄の底から響く様な凄まじい叫び声が響いていた・・
第93話に続く