夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第93話

第93話

 

 

聖王教会から戻った所でハーティーンに

 

「皆に紹介するから一緒に来てくれ」

 

一緒に来てくれと言うとハーティーンは、一瞬考え込むような素振りを見せたが

 

「判った・・一応自己紹介くらいはしよう」

 

頷いたハーティーンと共に私は演習場に向かった

 

「1・・2・・3・・4・・っと・・」

 

準備体操をしているスバル達に

 

「全員集合ッ!!」

 

集合するように号令を掛ける、目の前に整列するスバル達と

 

「ん?誰だ・・あいつ・・?」

 

訓練を見ていたノーヴェ達に

 

「今日から私達に協力してくれる・・ハー・・」

 

皆に紹介しようとするとそれを手で制し

 

「ふん・・貴様達は久しぶりになるな?俺を覚えているか?」

 

スバル達を見て言うハーティーンだが、スバル達は判らず首を傾げる・・それを見て

 

「判らないか・・では思い出させてやろう・・」

 

ザッ・・

 

ハーティーンが拳に魔力を集め、シュミレーションのビルに向かって

 

「デモンズ・・フィストッ!!!」

 

私のヘブンズナックルナックルに似た技を放つハーティーンにスバル達は

 

「その技はっ!?・・」

 

驚愕の声を上げるスバル達にハーティーンは

 

「これで思い出せたか?・・魔道師?」

 

にやり笑いながら言うハーティーンにスバルが

 

「どうしてお前がここに居る!!ハーティーンッ!!!」

 

敵意を見せながら言うスバルにハーティーンは

 

「守護者の話を聞いてなかったのか?・・今日からお前達に協力すると」

 

そう笑うハーティーンの前に立ち

 

「そう敵対するな・・ハーティーンはもう私達の協力者だ、だから安心してくれ」

 

臨戦態勢のスバル達に言うと

 

「龍也さんがそういうなら・・信じますけど・・」

 

納得できないという表情だが頷いたスバル達に

 

「それじゃあ・・訓練をしようか・・スバルとエリオは走れ、良いか六課の外を3週だそれが終ったら戻って来い」

 

そう言うとエリオが

 

「あの・・走るのに何か意味があるんですか?」

 

訳が判らないと言う表情のエリオに

 

「良いか?スバルとエリオは拳を使う戦闘も出来るだろう?強力な拳打を打つには強靭な足腰が必要になる、今日から毎朝3週六課の外を走れ、良いな?」

 

走る意味を説明すると納得したのか走りに行ったスバルとエリオを見ていたノーヴェは

 

「私も行くか・・よっと・・」

 

見ていた場所から飛び降り走り行った・・走りに行ったスバル達を見ながら

 

「さてと・・ティアナは前回に続いて護身術を覚えてもらう、それとウェンディお前も来い、同時進行で教えるから」

 

離れた所で見ていたウェンディに声を掛けると

 

「了解っすよ~」

 

にこにこと笑いながら来るウェンディを見ていると、ティアナが

 

「その・・龍也さん気を悪くしたら悪いんですけど・・射撃とか魔法の訓練の方は良いんですか?」

 

申し訳なそうに尋ねるティアナ・・ここミッドチルダでは魔法がメインで己の体を使ったりする格闘技能はあまり重要視されていない・・だからティアナの質問はもっともだが・・

 

「まぁ・・その通りだが・・近接技能も出来た方が良いと言うだけだ、ネクロは数で押してくる時もある、だからスバルとエリオが抜かれる可能性も有るからな・・そうなった時の為の護身術だ、納得できたかな?」

 

どうしてか説明すると、ティアナは

 

「そうですね・・確かに近接も出来た方が良いですね・・判りました・・宜しくお願いします」

 

頭を下げるティアナに

 

「う~し・・準備完了っすよ~」

 

私とティアナが話している間にストレッチをしていたウェンディが準備完了だと言う、それを確認してから

 

「それじゃあ、2人で好きに攻撃して来い、私に一撃入れるか、スバル達が戻ったら終わりだ良いな?」

 

2人にルールを説明してから、私も構えを取った・・

 

 

 

 

 

甘いな・・俺は守護者の訓練を見てそう感じた・・好きに攻撃させその全てを防ぐ、守護者の技能は高い・・だがその後が甘い度々反撃に出ているが全て寸止めだ・・それでは訓練の意味が無い・・俺がそんな事を考えていると

 

「何故そんなに兄上を睨んでいるのだ?」

 

背後から声を掛けられた・・だが驚きはしない・・気配で判っていたからだ

 

「烈火・・いやシグナムだったな・・睨んではいない・・ただあの訓練では意味が無い・・そう思っただけだ」

 

自分の意見を言うとシグナムは不機嫌そうに

 

「意味が無い?・・何故そう言い切れる?・・兄上の訓練で新人達の能力は大幅に上昇しているのだぞ」

 

睨みながら言うシグナムに

 

「上昇ね・・だが聞くが寸止めに何の意味がある?痛いから回避や防御に力が入る・・だから意味が無いと言いたいだけだ・・まぁ・・その内守護者も攻撃を振り切るだろうがな・・」

 

今は恐らく下地作り・・ある程度鍛え終えれば守護者も攻撃を当てる様になるだろうと思い、そう言うと

 

「確かにそういう見解もあるな・・」

 

納得という感じのシグナムと話をしていると

 

「ぜはー・・ぜはー・・三週って結構きついですね・・」

 

肩で息をするエリオとか言う小僧を見て、一瞬過去の事を思い出し・・考え込んでいると守護者が来て

 

「走り終わったか・・それじゃあそのまま基礎をやるぞ、私も一緒にやるから頑張れよ」

 

そう声を掛けてから腕立てを始めた守護者達を見ながら、俺は演習場を後にした・・

 

・・数分後・・

 

「ここは・・何処だ・・」

 

俺は迷っていた・・やはり道が判らない・・自分の部屋に戻ることも出来ず・・かといって演習場に戻る事も出来ず・・困惑していると

 

「ん?・・お前誰だ?」

 

背後から声を掛けられる・・この声には聞き覚えがあった・・俺は振り返りながら

 

「俺が判らないのか?ヴァイス?」

 

振り返った先にはラグナの兄である、ヴァイスが居た・・知らない男に名前を呼ばれ困惑しているヴァイスに

 

「これで判らないか?」

 

ラグナに貰ったペンダントを見せると・・ヴァイスは表情を変えながら

 

「お・・お前まさか・・ハーティーンかっ!?」

 

驚きながら尋ねて来るヴァイスに

 

「俺以外にこのペンダントを持つ者はいない筈だが?」

 

このペンダントはラグナの手作り・・つまりこの世にこれ1つしか存在しない物なのだ・・

 

「だよな・・そっか・・お前やっぱり人間だったんだな・・」

 

うんうんと頷きながら言うヴァイスに

 

「所でここは何処だ?・・俺は自分の部屋に戻りたかったのだが・・迷ってしまった・・」

 

迷っていると言うと

 

「お前の部屋・・確か空き部屋はあそこだけだったよな・・良いぜ案内してやるよ」

 

案内してくれるというヴァイスに礼を言い、俺は自分の部屋に向かって移動を始めた

 

「・・そうだ・・もうラグナには会ったのか?」

 

自分の妹にあったか?と尋ねて来るヴァイスに

 

「ああ・・もう会った・・元気そうだったよ」

 

と他愛も無い話をしながら部屋の前に着いたが

 

「~♪~♪~」

 

誰も居ない筈の俺の部屋から鼻歌と共に掃除機の音が聞こえてくる・・

 

「・・・ヴァイス・・俺はこの歌に聞き覚えがある」

 

そう呟くとヴァイスは

 

「奇遇だな・・俺もだ・・随分長い間聞いてた歌だ・・」

 

これから導き出される答えは・・1つしかない・・

 

「とりあえず・・開けようぜ」

 

ヴァイスの言葉に頷き、俺は自分の部屋の扉を開き停止した・・ベッドしか置いてなかった部屋には、何時の間にか様々な家具が置かれ・・埃りが溜まっていた部屋は綺麗になっていた・・そして部屋の真ん中には

 

「あっ・・おかえり、ハーティーン・・とお兄ちゃん」

 

ここに居ない筈のラグナの姿があった・・想定外の自体に困惑していると

 

「ちょっと待っててね、今朝ごはんの支度するから、座って待ってて」

 

その言葉に反応し、2人で椅子に座ったが

 

「「・・ちょっと待て!!何でここに居る!!」」

 

2人同時に突っ込むとラグナは

 

「はやてさんがここの鍵くれたから居るんだけど?」

 

首を傾げながらフライパンを振るうラグナにヴァイスが

 

「鍵くれたからって、男の部屋にほいほい入っちゃ不味いだろう!!」

 

最もな事を言うがラグナは冷静に

 

「でも、一緒に暮らしてたし・・ハーティーンは変な事しないし・・大丈夫だよ」

 

笑顔で言うラグナに疲れ果てた様にヴァイスは座り込み

 

「ちくしょう・・どうしてこんな事に・・ハーティーン・・最初に言っておくが・・ラグナに手を出したら殺すぞ・・」

 

半泣き状態で睨みつけてくるヴァイスと

 

「ハーティーン、卵は目玉焼きかスクランブルエッグどっちが良い?」

 

キッチンから聞こえてくるラグナの楽しげな問いかけを聞きながら俺は

 

「・・何とまあ・・賑やかな事だ・・」

 

そう呟いた・・その時俺の顔は自然と笑っていた・・心から楽しいと思ったのは本当に久しぶりのことだった・・

 

 

 

 

龍也達が訓練と朝食を終えた頃、六課内に警報が鳴り響いた・・

 

「またネクロか?」

 

私は慌ててブリーフィングルームに向かい絶句した・・モニターに映し出された1体の異形の姿に

 

「グルル・・グオオッ!!!」

 

雄叫びを上げながら暴れ回る、漆黒の龍の姿に・・私だけでなくはやて達も黙り込んでいると

 

「ヨルムンガンド・・遂に出したか」

 

何時の間にか現れたハーティーンが呟く・・その間にはやてが

 

「これだけ大きいと全員で当たらんと無理やと思うんやけど・・そうも行かんみたいや・・」

 

モニターが切り替わり、別の通りが映し出されるそこには複数のLV1の姿があった・・

 

「この大きいのは隊長陣とチンクさん達と兄ちゃんやな・・民間人の保護はスバル達で・・LV1の方は・・」

 

はやてが全員の顔を見ながら作戦を考えていると

 

「LV1の方は僕が行きますっ!!!」

 

エリオが自分が行くと言う・・

 

「その気持ちは買うが・・1人では無理じゃないか?」

 

私が言うとエリオは胸を張りながら

 

「LV1位なら、僕とキャロ達で大丈夫です!!、お父さん達はヨルムンガンドの方に回ってください!!」

 

自信満々に言うエリオに

 

「判った・・ではLV1の方はエリオ達に任せる・・皆行くぞ」

 

私はエリオの言葉を信じ、任せたが・・それが間違いであったと後に知ることになる

 

「しかし・・デカイな・・」

 

ヘリから見下ろしながら私は呟いた・・こうして見てもかなりの巨体だ・・しかもその周りに居るデクス達の存在が厄介だ・・出来る事ならハーティーンにも協力して欲しかったが・・手続きがまだ取れてなく出撃してもらう事が出来無かったのだ・・

 

「とりあえず、私達でヨルムンガンドに攻撃を仕掛けてみる・・チンク達はデクスの方を頼むぞ」

 

そう指示を出してから私達は降下した・・

 

「しかし・・デカイな・・どうする兄貴?・・バーストモードになるか?」

 

まだ離れているヨルムンガンドを見ながら尋ねて来るヴィータに

 

「いや・・止めて置いた方が良いな・・恐らく今回の目的は偵察になると思う・・敢えてあちら側の策に乗ってやる必要は無い・・時間は掛かるが遠くからダメージを与えるのが妥当な戦だろう・・」

 

あれ程の巨体に接近戦を挑むのは無謀だ・・遠くから砲撃等で少しずつでも良いからダメージを与えるのが得策だと判断し

 

「それじゃあ、なのはとフェイトは上から砲撃を頼む、私達も遠くから削っていって見る」

 

作戦を説明してから、私達は戦闘を開始した・・その様子を見る赤いマントのネクロ・・ヴェノムは

 

「成る程・・作戦通り掛かってくれましたか・・それでは私は私の仕事をするとしますか・・」

 

ヴェノムはマントにその体を隠すと同時に蝙蝠になり、管理局の方に飛んで行った・・

 

 

 

 

「でやあっ!!」

 

迫ってくるLV1をエグザフォルムのストラーダで両断する、今までのストラーダと違いエグザフォルムでは鎌が追加されているのでこういう斬るという攻撃も大分得意になってきた・・そんな事を考えていると

 

「エリオッ!!右後方のビル影からネクロが出てくるよ!!油断しないで!!」

 

後ろの方で索敵をしていたルーちゃんから指示が飛ぶ、その指示に従い

 

「クレセント・・ミラージュッ!!」

 

巨大な魔力刃を飛ばす、飛ばすと同時に

 

「キキ!?」

 

飛び出てきたネクロが両断され消える、だが大振りな攻撃の所為で一瞬隙が出来ネクロ達が飛び掛ってくるが

 

「させないっ!!我が求めるは、戒める物、捕らえる物、言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖・・錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」

 

飛び掛ろうとしたネクロ達の足元から複数の鎖が現れ捉える、この拘束は一瞬といっても言いが・・その一瞬の隙があれば

 

「倒せるっ!!・・スピーア・・アングリフッ!!」

 

一瞬だけ魔力を背中のマントから放出し一気に加速し纏めて3体のネクロを貫く、これも今までのストラーダでは直線的かつ応用性が低かったが、お父さんに協力してもらいかなり凡庸所為の高い技になっている、それにこれだけではなく・・

 

「紫電・・一閃・・でえええぃッ!!!」

 

全力で拳を地面に打ち付ける、それと同時に稲妻が地面を駆け巡る、打撃だけではなくこういう風に地面を利用し広範囲かつ高威力の技へと仕上げたのだ・・

 

「これで・・終わりかな?」

 

LV1の姿が見えなくなった所で僕はそう呟いた・・お父さんに出会う前ではLV1にも苦戦していたが・・今ではそんなに苦戦しずに倒す事が出来る、一応自分でも索敵していると

 

「大丈夫・・もう近くにLV1の気配はしないよ・・」

 

索敵していたルーちゃんが合流してくる・・だから気を緩めていると

 

「でも大分、流れが掴めて来たね、エリオ君」

 

キャロも合流してきてそう呟く、僕達のチームは僕がメインで戦い、キャロが防御及び支援、そしてルーちゃんが索敵と支援・・これが一番上手い具合に回るのだ

 

「そうだね・・大分慣れてきたね」

 

敵も居ないので少し話していると、上空の方から

 

「あらあら・・前に言わなかったかしら?・・詰めの甘い事だって?」

 

その声と共に黒い魔力波が飛んでくる、反射的にプロテクションを張りその攻撃を防ぐと

 

「あら、中々どうしてやるわね・・今ので少しはダメージを与えようと思ったのだけど」

 

そうは言っているが敵意は無い・・何を考えているか全く判らないでも・・

 

(相手はLV4・・やる事は・・先手必勝だッ!!)

 

一気に肉薄しストラーダを振るったが

 

ガキーンッ!!

 

甲高い音を立てて僕の一撃は異形の右手に防がれていた、ヴィルヘリヤは作戦成功と微笑み

 

「うふふ・・馬鹿な坊や・・こんなに簡単に罠に掛かってくれてありがとう」

 

その言葉と同時に僕の足元から闇色の魔力が放たれ、僕は意識を失った・・

 

 

 

 

 

「うふふ・・作戦成功ね・・」

 

私は微笑みながら坊やを降ろす・・それと同時に坊やの赤い騎士甲冑が色を変える・・漆黒の禍々しいまでの色にそれを見て

 

「エリオ君に何をしたのッ!」

 

飛竜を連れたピンク色の魔道師が怒鳴る、私は笑いながら

 

「何って・・簡単よ・・精神を支配したの・・つまり坊やはもうこちら側・・判る?」

 

そう言うと同時に坊やが駆け出し、槍を振るう

 

「!!」

 

咄嗟の事に反応出来なかった、ピンク色の魔道師を紫の魔道師が突き飛ばしその一撃を回避する・・肉体的にダメージは無かったがそれ以上に精神的にダメージを受けたのだろう

 

「え・・エリオ君が・・私を・・」

 

信じられないと言う様子で呟くピンク色魔道師・・言いにくいわね・・確か・・キャロとルーテシアだったわね・・興味が無いから間違えてるかもしれないけど・・私はそんな事を考えながら瓦礫に腰掛け

 

「さて・・その坊やの精神を解放するには、私を倒すか・・貴方達が死ぬか・・坊やを殺すか・・どれか1つだけ・・うふふ・・貴方達がどれを選ぶか楽しみだわ~精々私を楽しませてね~」

 

私はそう呟きながら手を振り、坊やと魔道師同士の戦いを見ていた・・

 

 

第94話に続く

 

 

敵の手に落ちたエリオ・・その狂気の刃が2人に迫る!

絶体絶命のピンチの時に2人はある決断をする・・

その純なる想いが最後の奇跡を呼び起こす!!

 

次回 龍帝の騎士への目覚めっ!!

 

お楽しみに下さい・・

 


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