第96話
「シャマル、エリオの様子はどうだ?」
ヨルムンガンド襲撃の夜、医務室でエリオの容態を見ていたシャマルに尋ねると
「そうですね・・かなり負荷が掛かってます・・普通なら掛かるはずの無いレベルでリンカーコアにダメージが溜まってますね」
カルテを見ながら言うシャマルに
「やはりあれが原因か・・」
一瞬だけ見た、エリオの新しい騎士甲冑は私から見ても凄まじい魔力を持っていた、オメガに匹敵・・いやもしかしたらそれ以上の可能性もあった・・だがそれゆえに幼いエリオには過負荷になってしまったのだろう・・私が推測を立てているとシャマルは
「私もそうだと思いますね・・多分いまのエリオでは長くて10分・・短くて・・5分といった所ですね・・」
やはり私と同じ結論のシャマルに
「そうか・・エリオには私の方から説明しよう・・それでは悪いがエリオを頼む」
シャマルの目を見ながら言うと、シャマルは穏やかに微笑みながら
「大丈夫ですよ、お兄さんエリオはちゃんと私が見てますから、お兄さんもちゃんと休んでくださいね」
私にも休めというシャマルに頷き、私は自室に戻った・・
次の日・・
「ふむ・・まだ眠ったままか・・」
早朝からエリオの様子を見に来たが、依然として眠ったままのエリオを見ながらベッドの横に置かれた椅子に腰掛ける、エリオが眠っているのは何も魔力消費だけではない、足の怪我も大きく関係している傷はかなり深く、そして流れ出た血も可也の量だ、それでエリオは眠ったままなのだ
「さてと・・早く起きないと、キャロとルーテシアが心配するぞ・・」
エリオが寝ている部屋の隣で眠っている、キャロとルーテシアの事を考えながらエリオの髪を軽く撫でた・・昼少し前にエリオが漸く目を開く
「・・あれ・・ここは・・」
何処に居るのか判ってない様子のエリオに
「ここは医務室だ・・それにしても随分無茶をしたものだな?」
場所を説明してから、無茶をしたなと言うと
「お・・お父さん・・えっと・・その・・すいません・・」
ベッドから上半身だけを起こし謝ってくるエリオに
「謝るのは私ではないな、お前が謝るべきなのは誰か判っているな」
そう尋ねるとエリオは神妙な顔で頷き
「はい・・キャロとルーちゃんですよね」
確り判っている様子のエリオに
「別ってるなら良いさ・・さて起きたばかりで悪いが新しいストラーダのモードは余り使うな」
昨晩シャーリーからストラーダの新しい形態の分析結果が来たが、それを見て決めたのだ・・あのモードはまだエリオには早過ぎると、この判断をしたのは私だけではなくフェイトの判断でもある、エリオは少し驚いた素振りを見せながら首を横に振った
「それは・・幾らお父さんの言葉でも聞けません・・インペリアルでなければキャロもルーちゃんも護れないんです・・だから誰がなんと言おうと僕はインペリアルを使います」
はっきりと言い切ったエリオの頭に手を置く、一瞬目を瞑ったエリオ・・もしかしたら殴られると思ったのかも知れない・・私はそんな事を考えながら
「そこまで言うなら私は止めんよ、護りたい者を護りたい時に力が無いのは嫌だからな・・だが今まで以上に厳しい訓練になるが・・それでも構わないか?」
スバルの極光同様あの力は鍛えればノーリスクで使えるようになるだろう・・その為に今まで以上厳しい訓練なるが良いか?と尋ねるとエリオは
「お願いします!!僕は・・もっともっと強くなりたい!!大切な者を護れるように!!」
強い口調のエリオの頭を撫でながら立ち上がり
「判った・・フェイトの方は私で説得しておこう」
かなりの過保護であるフェイトの説得をしようと言いながら医務室を出掛けた所で
「ああ・・忘れる所だった・・2人の姫の気を付けると良い」
そう言うとエリオは
「姫・・?どういう意味ですか・・?」
意味が判らず首を傾げるエリオに
「意味は直ぐに判る・・」
私が部屋を出ると同時にキャロとルーテシアが医務室に入る、私はゆっくりと医務室から歩き去りながら、時折医務室から聞こえてくる
「あああ・・ごめん・・ごめん!!無茶したのは僕が悪かったから泣かないで~」
悲鳴にも似たエリオの声を聞き
「ふむ・・ヴァイスが言っていた意味が漸く判った・・」
以前ヴァイスが言っていた、エリオはピンクと紫の鎖に雁字搦めになっているの意味を漸く理解していた・・エリオが目覚めてから3日後・・演習場では
「死ぬ・・死んでしまいます・・」
「もう・・駄目・・一歩も動けない・・」
大の字で死んでいるエリオとスバルの姿があった・・エリオが完全に復帰したので、3日前から言っていた通り訓練を再開したのだが・・案の定ついて来れずこうして大の字で寝転がっている・・私はその2人の姿を見ながら
「ふむ・・もうギブアップか・・それではやはり極光とインペリアルでの戦闘許可は出せんな」
そう言うと2人はよろよろと立ち上がり
「「まだです・・まだ・・やります」」
はっきりと私の目を見て言う2人に
「そうか?・・無理なら構わんぞ・・唯戦闘許可が出せんと言うだけだからな」
軽く挑発しながら言う、こういう時はあえて挑発し反骨精神を煽る方が良いのだ、案の定2人は
「「無理じゃないです!!まだ行けます!!」」
ふらふらとしていたスバルとエリオは確りと立つ、それを見てから
「ふむ・・では訓練再開と行こうか・・」
外させていたリストバンドを着けさせる、それと同時に
「「うぐっ・・」」
2人の体が沈み込む・・今このリストバンドの負荷は通常の7倍、とてもじゃないが2人の魔力量では動けなくなるレベルだ・・だがあえて高い負荷を体に掛ける事で短時間で極光とインペリアルに耐えれる体を作るのが目的だ、2人がリスト着けたのを確認してから
「走るぞ・・ちゃんと着いて来いよ」
そう声を掛けてから私は走り出した、当然2人は走ると言うよりかはジョギングと言う感じだ、体の重みと魔力の消費でとてもではないが走れる訳が無いのだ・・だが
「どうした!!ちゃんと走れ」
そう檄を飛ばすと
「「は・・はいっ!!」」
意地で走ってくる二人を見ながら、私は六課の敷地の外を走り始めた
「スパルタと言うよりあれは拷問に近いような気が・・」
その訓練光景を見ていたなのはが呟く、それに
「拷問?・・何を言うか・・まだ甘いな・・あのへろへろの状態で模擬戦をした方が良い」
何だかんだで既に六課に一員として受け入れられている、ハーティーンが言う
「模擬戦って・・死んじまうぞ?・・真剣であの2人」
その言葉にヴィータが呆れながら言う、龍也がスバルとエリオの訓練をするって言い始めてまだ3日だが、あの訓練はスパルタを通り越して拷問では?と言う意見が挙っている・・または龍也はドSでは?と言い始めた隊員も居る・・ちなみにその者は粛清の対象になっている・・
「だが・・あれは2人が望んだ事だ・・我々がどうこう言う問題ではない」
シグナムがそう言うと皆
「そうだよね・・自分でやるって言い始めたんだから私達がどうこう言う問題じゃないよね・・」
口々に自分たちが言う問題ではないと言い始める、龍也は訓練が終るたびに辛いなら止めるか?と聞いているがそれでもまだやると言いやっているのはスバルとエリオだ、自分でやると言っている以上第三者がどう言おうが止める筈無いのだ・・皆がそんな事を思っている中・・シグナムが1人で演習場を後にする、それを見てヴィータが
「どうしたよシグナム?兄貴が戻ってくるまで待たないのか?」
そう尋ねるとシグナムは
「・・少し1人で考えたい事がある・・悪いが私は部屋に戻る・・」
そう返事を返し、シグナムは演習場から出て行ったその様子を見て
「何だろうね?シグナムが考えたい事って?」
なのは達があれこれと憶測を話す中、ハーティーン1人だけが
「・・・・」
冷めた目線でシグナムの後姿を見ていた・・
「くっ・・私は弱くなった・・」
私は部屋に戻らず、六課の敷地の一部に結界を張りその中に居た・・レヴァンティンを構えながら
「もう1度だ・・」
魔力を収束しブラストモードに変化しようとするが・・
バチンッ!!
音を立てて騎士甲冑が解除される・・私は自分の手から離れたレヴァンティンを拾い直しながら
「何故だ・・何故・・ブラストモードに成れない・・」
もう一週間になる・・兄上のユニゾン形態の一撃を見てからもっと強くなろうと思い・・ブラストモードを使いこなす為に訓練をしているのだが・・何故かは判らないがブラストモードが発動出来ないのだ・・いやそれだけではない・・魔力も不安定だし・・体の調子もおかしい・・良く考えればヨルムンガンドの時から体の不調は感じていた・・だがこんな事を誰かに相談する訳にも行かずこうして1人でどうしてか?と考えるが答えは出ない
「こんな様では兄上を護る等と・・夢のまた夢だ・・私は一体如何してしまったんだ・・」
答えの出ない自問自答を繰り返す・・ブラストモードを手にする前まではこんな事は無かった・・強くなる為に手にした力なのに・・その所為で弱体化している等と笑えない冗談だ
「今日は・・もう休もう・・きっと明日には元の戻っているさ・・」
そんな事は無いと判っている・・なのにそう口にし部屋に戻ろうとした瞬間
フラッ・・
急に足に力が入らず倒れかける、慌てて木に手を置きバランスを取る
「くそ・・一体何が・・「お前では王を護る力は無い・・」・・はっ!!・・私は何を・・」
一瞬何かを口走った気がするが思い出せない・・私は疲れているのだろうと思い部屋へと早足で戻って行った・・その姿を見る黒い服の男・・ハーティーンは虚空を一睨みし
「何時まで不干渉を決め込むつもりだ?セレス・・お前はシグナムに起きている現象に気付いているのだろう?」
そう声を掛けると何も無い空間から浮き出るようにセレスが姿を見せ
「不干渉な訳ではない・・唯私でもどうにも出来ないのだ・・あれは烈火自身が乗り越えなければならないことだからな」
そういうセレスにハーティーンは
「まぁ・・俺には興味の無い事だ、シグナムが炎に体を乗っ取られようが取られまいがな・・」
シグナムの不調・・それはブラストモードの力を与えた存在・・アイギナが体を乗っ取ろうとハッキングをしているからだ・・セレスは眉を顰めながら
「あれの忠誠心は我々の中でも相当強い・・最初からそれが目的で力を与えたんだ・・」
クレアと違いアイギナやシャルナは夜天の守護騎士の事を認めていない・・それが力を与えた時点でおかしいと気付くべきだったのだ
「ふん・・貴様でも予定外の事か・・守護者は気付いていない・・早く手を打つのだな・・手遅れになる前に」
ハーティーンはそう言い残し戻って行った・・一人残されたセレスは
「手を打てか・・生憎だが・・私でもどうしようもない・・烈火自身の問題なのだからな・・」
そう・・もうセレスでも手が出せる問題ではないのだ・・元々夜天の守護騎士システムのオリジナルはこっちだ・・つまりアイギナにとってハッキングするのは訳が無い事なのだ・・
「こんな事になろうとは・・物事とは思いとおりにならぬものだ・・」
セレスもそう呟き溶ける様に消えて行った・・シグナムの不調の正体・・それはアイギナの存在・・それがどう影響を及ぼすかは・・誰にも判らない
第97話に続く