マイ「艦これ」「みほちん」(第1部)   作:しろっこ

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美保鎮守府港湾内の戦いの後、それぞれの『後の祭り』です。



第70話<後の祭り>(改)

「ここから始まったようなものだな」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」

:第70話<後の祭り>(改)

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 夜が明けた鎮守府。

 

 私は執務室に入った。祥高さんは、今回の戦闘の後始末をしているらしく不在だった。だが机の上に軍令部からの命令書……例の阿武隈と伊168が美保鎮守府に着任する旨の通知書が置いてあった。

「潜水艦娘か、心強いな」

 

 その時、ドアをノックする音。

「はい」

 

「失礼します」

鳳翔さんだった。

 

「あの、スミマセン司令……新しい作業服をお持ちしました」

「ああ、有り難う」

 

 そういえば私も埠頭での戦闘の後で濡れた作業服をバスタオルで拭いたりして朝の風に当たっているうちに、それなりに乾いたようだったが、まだ多少は湿っていた。

 

彼女は、やたら「済みません」を連呼して平身低頭で包みを出してくれた。

 

「助かるよ」

私が受け取ると何故か彼女は繰り返し頭を下げる。

 

「ん?」

その理由は直ぐに分かった。

 

開けてビックリ

「紫(パープル)……か?」

 

「……」

だから鳳翔さんは蚊の鳴くような声で謝罪の言葉を繰り返したのだろう。真っ赤になっている。

 

私は包みを開けて作業服を広げながら言った。

「別に君が謝ることじゃないよ。まぁ先人たちのセンスを疑うけどな……」

 

そこでふと気付いた。

(ああ、これは艦娘のセンスか)

 

私の気持ちを察したように彼女は言った。

「かなり以前ですが美保に一週間ほど立ち寄った大型艦の艦娘が置き忘れたものです。実は、ご本人にお返ししようかと連絡をしたのですが……」

 

そこで鳳翔さんは少し詰まる。何故か言い難そうだ。

「断られたのか?」

 

「いえ……彼女曰く『また来るから預かってくれ』とのことで」

彼女は困惑した表情を浮かべた。

 

「なるほどね……」

確かに鳳翔さんみたいな真面目な艦娘は対応に苦慮しそうな返事だな。

 

「ですから、ご本人に無断で司令にお出しするのも憚(はばか)られたのですが祥高さんが『今日、明日にその艦娘は来ないでしょうから』とのことで」

 

「ああ、私が借りることになるわけだな」

なるほど、イロイロ事情があるんだな。

 

 何気なく縫い付けてある名前を見た私は、少し驚いた。

そこには『武蔵』とあった。

「大型艦って……まさか?」

 

「はい、武蔵さんです。数年に一度、あるかないかですが日本海側で大規模な戦闘や演習があるときに舞鶴に寄られることがあるようで、その時はたまたま開設直後の美保鎮守府にも来られたのです」

 

「なるほど分かった。良いよ今回はこれを借りよう」

「はい、では食堂でお待ちしております」

一礼をして退出した彼女。

 

 私は控え室でピンクの作業服から紫の作業服に着替えた。もうどうにでもなれ、だ。

 

 食堂に下りると参謀たちは既に着席していた。

 

「おお、スマンです。先に頂いております」

呉オジサンが言い訳をする。

 

「いや、そのままで結構です」

私も彼らに合流して着席した。

 

案の定、神戸も舞鶴も少しギョッとしている。

 

私は言った。

「ああ、この作業服……サイズがなくて結局、戦艦娘のものを借りたんですよ」

 

舞鶴が言う。

「目がチカチカしそうだな」

 

「やっぱり……艦娘ですねえ」

神戸が納得している。

 

私が参謀たちと朝食を食べていると大淀さんが来た。

「失礼します」

「どうした?」

 

彼女は報告書を見ながら言う。

「一時間程度で、港湾内の掃海は終わりました」

 

「そうか、ご苦労」

私は返事をした。

 

すると舞鶴が口を開く。

「思ったより早いな」

 

大淀さんは彼を向いて応えた。

「はい、掃海自体は、これで完了ではなくて今回は緊急出動に必要最低限の航路を確保しただけです。二次被害を防ぐために一旦は撤収させました」

 

改めて私は思い出したように聞く。

「あれは……川内は大丈夫だったのか?」

 

その言葉に彼女は少し困惑したような微笑を浮かべた。

「ええ、実は『まだまだ』とか言って物足りなさそうでしたが神通さんが止めていました」

 

「はは、やっぱり」

私は苦笑した。参謀たちも同様だった。

 

大淀さんは報告が終わると敬礼をした。

「では、皆生までの配車の準備を致します」

 

「頼む」

私も敬礼を返した。

 

「失礼するよ」

響が私の朝食を持ってきた。

 

「ありがとう」

「……」

軽く頷くようにして彼女は厨房の方へ戻っていく。今朝は響以外の第六駆逐隊の面々は休んでいるようだな。

 

「まあ、司令の紫パワーには負けますが」

そう言いながら呉オジサンは懐から何かを取り出す。

 

「実はさっき何人かの駆逐艦娘の子たちに手紙っちゅうか手書きのカードを貰ったんや」

彼は机の上に数枚のカードを出して見せてくれた。

 

「まぁ孫娘みたいな感じやね」

すごく喜んでいる。

 

「ジイジ感、一杯ですよ?」

神戸が、からかうように言うが呉オジサンは満更(まんざら)でもない様子だ。

 

いずれ彼は、この鎮守府宛てに『もみじ饅頭』とか大量に送ってくるかもしれない。

 

「そういえば私も……」

神戸もまた懐から手紙を出す。

 

「鳳翔さんや赤城さんからは、何故か御礼状を貰いました」

顔を見合わせる一同。

 

「なぜって? 理由は明らかやないか?」

呉オジサンが反撃する。

 

「いや、実は手紙の内容以前に、こう言うことが初めてでして」

困惑したような彼。

 

 するとその時、誰かが駆け寄ってきた。

「頼もうーっ」

 

「た?」

私たちが振り返る間もなく比叡がやってきた。

 

「これをっ!」

何か手紙らしきものを握り締めた彼女は、それを神戸の目の前に突き出した。

 

「は?」

目を白黒させている彼は押し付けられるようにして、その封書を受け取ると比叡は反転した。

 

「では」

軽く敬礼をして走り去る彼女。

 

「何だ? それは」

舞鶴が聞くと神戸は言った。

 

「挑戦状?」

私たちは苦笑した。

 

 その後、朝食を終えた私たちは身支度のため、20分の調整時間を設けた。

その間に私は執務室に入った。直ぐに内線が入り、着替えた後の阿武隈と伊168が顔を出した。祥高さんによると、彼女達は呉からの異動らしい。

 

 阿武隈は北上にイジめられないか、かなり恐れていた。

 

私は言った。

「北上は、そんなに根に持つタイプじゃないから大丈夫だよ」

 

まあ、後で個別に北上にも話しておこう。

 

 午前中は、参謀たちと共に皆生温泉で疲れを癒した。

 

お風呂に浸かりながら舞鶴とはいろいろ話が出来た。とっつき難そうな彼だったが意外にも彼は気さくだった。まあ、お互いに敬遠しあっていただけか。きっと私に似たタイプなんだろう。

 

 北上のことは、どうしても手放したくなかったようだが。異動については、もともと軍令部の命令だ。また北上自身が今後も美保に留まる決意だから。こればっかりは、もうどうしようもない。

 

 ただ舞鶴の心の棘(とげ)が少しでも解けたのは嬉しかった。お互い日本海の護りを固めようと誓い合った。彼が舞鶴の提督になるのもそう遠くないかも知れない。

 

そのことを彼に言うと、少し複雑な表情を見せた。

「いや、そう艦単には行かないと思う」

 

「そうなのか?」

私が訝(いぶか)しそうに言うと彼は声の調子を落とした。

 

「私に兄が居てね……軍部の医師なんだが、評判が悪い」

何か事情がありそうだ。何となく彼に悪い気がして、それ以上は突っ込まなかった。

 

 だが後年、この舞鶴の兄が軍部、いやこの国を揺るがすほどの大きな問題を引き起こすことになろうとは、その時の私には全く想像も出来なかった。

 

 伊168については、その呉ジイジが、とても残念がっていたけど。美保は現在、潜水艦ゼロだから仕方がないよな。

 

 皆生温泉から上がったその足で、お昼前には米子駅から相次いで参謀たちを送り出した。

 

米子駅前に立った私は感慨深かった。

「私の美保鎮守府は、ここから始まったようなものだな」

 

 その後の美保鎮守府について簡単に記しておこう。

 

 山城さんは、ずっと入渠している。違う所の故障じゃないのか? 

ただブツブツ言って鬼気迫るから下手に近寄れない。しばらく様子を見てから接しよう。

 

 故障といえば利根は年中カタパルトがどうのこうの言っている。単に運用方法の問題だろう。あの戦闘の後、最近では日向から射出の仕方とか運用について中庭や埠頭で指南を受けているようだ。利根も少しは日向みたいに大人しくなればいけど。

 

 その脇……この前は食堂の横で天龍と龍田さんが水着で横たわっていて、さすがに度肝を抜かれた。この二人も放って置くと違う方向でやばいぞ。早いうちに海水浴に行かせるか。

 

 青葉がその二人を記事にしたから分かったけど。彼女もマメだよな。そういえば彼女は戦闘記録も律儀に集計しているようだ。データが記者の命だというのが信条らしい。今後は統計面での作戦補助とかお願いも出来そうだな。

 

 その青葉がよく取材しているのが吹雪だ。時々、他の鎮守府に呼ばれて姉妹艦と共に出張することが多い。あの一生懸命な感じが他の提督にも受けが良い。もはや美保の親善大使みたいになっている。執務室にも他の司令部からの、お礼状や記念写真が増えつつある。持ち上げられて多忙になっても、あの純朴な性格がまったく変わらないのは凄い。姉妹艦娘と美保のPRを兼ねて必死に頑張ってくれる。大淀さんが、そのうち吹雪の「交流館」でも開きましょうかと言っていた。

 

 一方の祥高さんは相変わらず静かに強い。そして感度は高い。よくもまあ、あんな芯の強い艦娘が出現したよなと思う。何となく他の艦娘とは違う感じは残るが、悪いことではない。彼女は日本の護りの為には不可欠な存在だ。

 

 その横にいる寛代も相変わらずだな。ボーっと見えて、やはり通信関係での感度は高い。鎮守府では随一だ。最近笑顔が増えてホッとする。この娘も付かず離れずで責務を全うしてくれるだろう。

 

 一長一短だが個性的かつ魅力的な艦娘たちだ。私も敵だけでなく艦娘たちにも負けぬよう知・徳・体とか鍛えなきゃ。

 

……お、そうだ。これから作戦会議だった。私も、まだまだ不十分だが滅私奉公で頑張ろう。

 

『提督がこれより艦隊の指揮を執ります』

 

……でち?

 

<みほちん第一部:やっと完結>

 

 

 引き続き、第二部が始まります。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。

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