雁夜おじさんに憑依してしまった大学生   作:幼馴染み最強伝説

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妄想暴走プロローグ

「はぁ…………なんでこうなった」

 

今ので何回目になるかわからないため息……多分十は越えたと思う。

 

ベンチに座って、コーヒー片手に項垂れながら、半ば自暴自棄になっていた。

 

周囲の人間はそんな俺を心配そうに、だが遠巻きに見ている。

 

まぁ、ジャパニーズの俺がこうして世界の終わりみたいな雰囲気を醸し出していれば、例え周りにいるのが全員外国人だとしても心配くらいはしてくれるだろう。うん、話しかけないでくれてありがとう。今はそっとしておいて欲しかったんだ。言語も全くわからないしね。

 

なんで俺はどことも知れない国にいるんだ。というのは割と重要だが、其処まで悩んでない。言葉が通じなくたって、ボディランゲージがあるじゃない。え?何の解決にもなってない。わかってるよ、そんな事。

 

幸い、地図持ってて、泊まっているホテルがわかるから衣食住には困らないんだけど、それも数日の間だけ。数日あれば頭の中を整理できることには出来るが、それは諦観しているだけなのか、開き直ってるだけなのか、わからない。両方ダメじゃん。

 

さて、良い子の皆。俺が何でこんなにも悩んでいるか教えてあげよう!

 

聞いて驚け!なんと!なんとだ!

 

俺………間桐雁夜になっちゃった!

 

………泣いていいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間桐雁夜。通称雁夜おじさん。

 

もうこれでもかってくらいに度重なる不幸に晒され続け、結局最後の最後で救いたかった子に「あの妖怪に刃向かうとこうなります」的な事実を突きつけてしまった救われなさすぎる人。

 

おまけにアインツベルン相談室なる映像特典では自分のサーヴァントであるバーサーカーことランスロットに「自分よりも酷いやつ」と言われていた。作者どんだけ雁夜おじさん嫌いなの?とアニメ観ていた俺は切にそう思った。

 

だってあの人、ちょっと思い込みとか激しいけど、好きな人に幸せでいてほしかったから頑張ったんだよ?そりゃ、時臣殺したら本末転倒な上に寧ろ恨まれるまであったけど、そこは人間。欠点の一つや二つくらいは目を瞑ってあげようよ。欠点が致命的な気がする?そんなのこの世界の住人じゃ常識の範疇だよ。時臣見てみろ。うっかり属性とか言ってるけど、あれもううっかりで済ませていいようなレベルじゃないぞ。ケイネスだってプライド高い奴の典型的なツメの甘さが半端ないし。ウェイバーとか三流以下の魔術師だぞ。あんなの龍之介に毛が生えたくらい……いや、人間スペックは龍之介の方が高いから、あの時点では差し引き無しくらいかな?後で超すごいやつになったけど。

 

まぁ、それはともかくだ。

 

そんな可哀想な雁夜おじさんに同情していなかったわけじゃない。というか、同情しまくっていた。

 

だが、成りたいだなんてサラサラ思っちゃいなかった。

 

普通思うか?人生ハードモードとか超越して、少し先が真っ暗どころか無くなってるんだぞ?そんなのやだ。いくら特典持ち(・・・・)の憑依者でも成りたくないものくらいはある。誰だってサイバイマンとかにはなりたくないだろ?それならせめてラディッツにしてくれって思うだろ?強くなれる要素あるし、強くなれるまで逃げまくりゃいいんだから。

 

や、そりゃ雁夜おじさんだって、聖杯戦争にさえ参加しなけりゃ死なないよ?寧ろ、それなりに良い人生送れるよ?

 

でもね。俺ってば保育士目指してた人なの。半年くらいしかまだ勉強してなかったし、かなり危ない橋も渡ってたけど、これでも子ども好きで虐待とかのニュース見ちゃうと親殺してやろうかって思うくらいには子ども好きだった。

 

子ども嫌いなら「聖杯戦争?HAHAHA!そんなの参加しマセーン!」とか言えた。でもでも、あれってば参加しないと桜ちゃんが原作よりも酷いことになっちゃうの。未来の美少女が、とかそういうのはその頃にはお爺ちゃんに差し掛かりそうなおっさんの俺には関係ないけど、子どもを病ませるような環境を見過ごすわけにはいかん。具体的には臓硯処刑コース。

 

しかし、その臓硯こと妖怪爺さんは本当に妖怪なんだ。

 

本当の身体はとうの昔に無くなってるし、今の身体は何回も乗り換えた蟲の集合体。

 

おかげで本体潰すまで不死身に近いし、本体は何処にいるかわからん上に性格は鬼畜の極み。昔は世界平和のために頑張ってましたな人とは思えないレベル。鬼の手持った教師とかに退治されそうな人だ。麒麟さん、あの人退治してください。先生じゃないのかって?いや、なんか神の使いの方が強そうじゃん?実際先生手も足も出なかったし。

 

話は逸れたが、そういうのもあって、流石に子どもが陵辱されてるのを素知らぬふりして「人生楽しいなぁ」とか言えるほどメンタル強くないし、人格破綻してるつもりもない。死んだほうがマシというわけじゃないけど、永遠に悪夢として魘されるくらいなら多少命懸けでもやるしかない。罪悪感に押しつぶされて自殺する可能性があるくらい、俺時々ネガティヴになるから。

 

そういうわけで目下の問題はいかにして臓硯を殺すか。

 

先ず一つ目は聖杯戦争に勝って、聖杯にお願いする。

 

万能の願望機こと聖杯さんは第三次聖杯戦争によって汚染されて、何もかも悪い解釈で願いが叶っちゃうわけだが、特定の誰かを殺せという始めっから悪いお願いならいけるんじゃね?的な考え方だ。悪い解釈も何もあったもんじゃない。

 

ただ、ここで問題なのは俺がお願いするためには聖杯戦争勝たなくちゃいけない。臓硯からの援護なんて望めないし、多分掴まされるのはランスロットだから、ライダーやランサーとは相性悪い。おまけにマスターには外道神父とか魔術師殺しとかいる。もうやだ。

 

なので、他の可能性も模索してみる。

 

もう一つはいっそ魔術師殺しさんこと悪逆非道、外道、血も涙もない正義の味方、衛宮切嗣師匠にお願いするという手もある。聖杯戦争がいつ始まるのか具体的なことは覚えてないが、その前に接触して「臓硯殺して下さい」ってお願いすれば殺してくれるかもしれん。代行者の言峰に「臓硯、悪いやつ、ころして」と頼むのもいいが、あちらは殺し損ねる可能性ありそうだからな。ほら、相性的に。そこはやはり本職に。

 

とはいえ、こちらもこちらで問題なのが、既に聖杯戦争が始まりかかっている場合。

 

そうなれば「臓硯とか殺してる場合じゃねえし」と言われるのは目に見えている。そりゃ、臓硯に令呪宿れば話は変わるが、多分それはないだろう。今回の聖杯戦争捨てるからとか言ってたぐらいだし、偽臣の書とかあるし、お爺ちゃんだし、聖杯戦争に参加しない方法があるに違いない。

 

そして最後の手段。俺が殺す。

 

殺しに行くまではヌルゲー。殺すとなったら一番ハードな選択肢。

 

油断し切ってるから懐に入るまでは簡単。だって、俺間桐を勘当された落伍者だし。魔術使えないと思われてるからね。

 

ところがギッチョン。俺は魔術使えるんだな、これが。

 

というのも、それは俺の持っている特典というのが関係している。

 

実は俺。端折ったけど死んでるんだよね。一回。理由?多分病気。

 

そんでもって、よくある神様転生ってやつで「生き返りたい?」って聞かれたから、「まあ、どちらかと言われれば」と答えたわけ。

 

そしたら「じゃあ何か欲しいものある?」と聞かれたので即座に某有名ゲームの魔法とか使えるようにしてほしいと答えた。だってあれ夢あるじゃん?魔術じゃなくて魔法だからね。代価とか無いわけだ。素晴らしいことこの上ない。

 

本当はスタンドとか超能力とか欲しかったけど、あれって当事者の影響を結構受けるらしいし、いざ同じ能力を手に入れても劣化コピーとか話にならん。ましてや、日常生活じゃ使えない可能性もある。

 

てっきり、元の世界に戻してくれると考えてた俺はそうお願いしたわけ。今考えればそんなわけあるかって話だが、そんな事特典云々でテンションMAXだった俺の頭の中には無かった。

 

そして現在に至る。

 

自暴自棄になって、街の中心でメテオ打ちそうになったのは許してほしい。せめてコメットにしてあげる。どっちも危ないけど。

 

因みにMP的な概念も存在するらしい……というより、実際俺の頭の中にはそれが見えてる。

 

MP500。

 

なんか強めの中ボス的な微妙なMPだった。せめて最後に0一つ足してラスボスクラスにして欲しかった。ストレス発散にマジック連発できないじゃん。寝ないと回復しないんだよ?それかエーテル。エリクサーの方がいいけど。それにバーサーカーの消費って激しいらしいから、二秒で一減る計算だったら、長期的に戦えないし。

 

いっそ、サーヴァントで戦わないでマスターにデジョンとか打ってみるか。多分防御出来ないから次元の狭間にポーイして終わりだ。

 

あれ?これなら聖杯戦争イージーじゃね?臓硯にデジョンは効かなさそう(というより本体に打てないと意味ない)が、これなら聖杯戦争勝てるんじゃね?

 

勝てる!これなら聖杯戦争勝てるよ!

 

ランサー相手だとゲイ・ジャルグで無力化されそうだし、起源弾とかヤバそうだけどなんかいけそうな気がしてきた!

 

良し、そうと決まれば善は急げ。冬木に戻ろう。原作開始より何年も前ならよし、原作開始直前でも無理ゲーじゃないのはわかった。どうしようもなくなったら、間桐邸だけでもマジック連発でぶっ飛ばす。それで行こう。

 

先程とは打って変わって拳を強く握りしめて立ち上がる。

 

ここからだ。逆襲の雁夜はここから始まるんだ。

 

見てろよ、うっかりバカヤローに妖怪ジジイ。目にもの見せてやるからな!

 

さて、家に帰…………あ。

 

「冬木って………どこだっけ」

 

 

 

 


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