雁夜おじさんに憑依してしまった大学生   作:幼馴染み最強伝説

18 / 23
お待たせしました!

最近、ISの方をなんとか投稿しようと頑張っていた結果投稿が遅れました!

まぁ、他にも文化祭あったり法事あったりと忙しかったりしましたけど、これからはきっとこんなに遅れない……と思います。信じないでください。





無邪気さは時にとんでもない爆弾を投下する

 

「さてと、これから汚染された聖杯をどうするかについて話していきたいんだが……」

 

場所はアインツベルン城………ではなく、ところ変わって原作における衛宮邸。

 

場所を変えたこと自体に深い意味はなかった。単にこちらの方が落ち着くというそれだけの理由だ。

 

畳の上で茶をすすりながら、というのは日本人的に心安らぐものだ。ああいう洋風な感じで、おまけにズタボロの城じゃ落ち着けん。

 

落ち着けないといえば、タマモの真名を明かした時のセイバー陣営の反応が凄かった。

 

当然といえば当然か。通常、聖杯戦争には神霊は呼べないわけだし、ジルキャスさんが呼ばれたのも汚染の影響とも言われていたが、その程度では神霊を呼ぶ理由として相応しくない。

 

とはいえ、俺が魔法使いである事を考慮した途端に「それじゃあ仕方ないか」という反応で納得したのはどうなのだろうか?いいの、それで?

 

まぁ、一応、俺が伏せていた情報を開示したのだが……

 

「むふ~♪」

 

タマモに関しては落ち着きすぎである。おまけに妙にべったり。真剣な話をするというのに、これではイマイチ緊張感に欠ける。そもそもこいつに緊張感を求めるのは間違いかもしれないが。

 

「まずは大聖杯のある場所だが……」

 

「ああ。それはこちらでも把握している。円蔵山の『龍洞』。ここに六十年かけて冬木のマナを吸い上げてきた大聖杯がある。その際、使い魔越しに観てきたが……雁夜。君の言っていたことは正しかったよ。あんなドス黒いものに、願いなんて叶えられるはずが無い」

 

わかってはいたことだが、それでも切嗣は残念そうな表情でいった。

 

しかし、それもすぐにひっこませて、次の言葉を述べる。

 

「君は『アレ』をどうにか出来ると言っていたね。元に戻せるとか、戻せないとか」

 

「ああ。理屈的には出来なくもないとは思うんだが………」

 

いかんせん、大聖杯に通じるかがわからない。

 

あくまでも「リバース」は障害ステータス。ステータスというからにはサーヴァントなら余裕で効くんだが、果たして聖杯をサーヴァントや人間同様に捉えられるかどうか。

 

俺の思い込み次第なら、いっそ切嗣に簡単な暗示の魔術でもかけてもらって「大聖杯はサーヴァントと同じ」とでも無理矢理思いこませればなんとかなるだろう。

 

「一応出来なかった時の事も考えてくれ」

 

「ああ。最悪、セイバーの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』で大聖杯を消し飛ばす。あんな物はこの世にあっちゃいけない。問題は後の被害だが………そこは教会に任せよう」

 

「そうだな」

 

何もかも俺達でやる必要はない。とりあえず、人的被害をゼロに抑え、二次災害も防ぐ。それさえこなしていれば、後の事は全投げしよう。神秘の秘匿なんて出来ないしな、こっちは記憶の消去しか持ってない。

 

「一つ、質問してもいいかしら?」

 

手を挙げて問いかけてきたのはアイリスフィール。別に挙手する意味はないのだが、どうにもアイリスフィール的には俺と切嗣だけの作戦会議に見えたらしい。

 

「どうぞ」

 

「聖杯を元に戻すまでの事はわかったのだけれど………その後はどうするの?聖杯戦争を再開するの?」

 

「そうだなぁ……」

 

聖杯を元に戻した後はどうするか………ライダーは聖杯戦争を再開したそうだったし、事情を知らないランサー組も聖杯戦争はやる気満々だろう。アーチャーは再開するなら呼び戻せとの事だったな。

 

「セイバーは聖杯戦争をしたいか?」

 

「どちらかと言われれば……というところですね。以前ほど、私は聖杯を求めているわけではありませんし、強いて言うなら、ランサーと決着をつけたくはあります」

 

セイバーはランサーと死合たいか……成る程。

 

「お前は?」

 

「私ですか?ご主人様が聖杯戦争をしたいのであれば闘うだけです。そうでないのなら、私に戦う意味などありませんね。今この瞬間が、私の求めるものですから♪」

 

聞くまでもなかったか。

 

さて、どうするか。

 

俺としては聖杯戦争を再開したところでメリットがないので、したくはないのだが、今の所、半分以上が再開希望だからなぁ。面倒な事この上ない。

 

まぁ、ぶっ飛んだ願いもないし、誰が勝者になっても問題は………うん?ぶっ飛んだ願いがない?

 

「セイバー。念を押すようで悪いが、ランサーと闘えればそれでいいのか?」

 

「はい。今の所はそれで構いません」

 

やはりか。なら、問題ないな。

 

「アイリスフィールさん。聖杯の状態に関わらず、聖杯戦争は再開しない」

 

「そう。でも、貴方はそのつもりでも、他の陣営が納得しないと思うわ」

 

「それなら問題ない。頭の固い魔術師共はともかく、サーヴァントに関して言えば、聖杯を求める理由さえなければ、聖杯戦争を再開しなくても納得はしてくれるだろうし、文句言うなら、全身全霊をかけて吹っ飛ばす」

 

特にライダーとギルガメッシュ。あいつらは事情を知ってるにもかかわらず、全投げしてきた挙げ句「聖杯戦争シタイナー」とか抜かしたら、マジギレする。

 

「聖杯を求める理由を無くす?どういうこと?」

 

首をかしげるアイリスフィール。まぁ、当然の疑問か。

 

「簡単な事さ。タマモもそうだが、アーチャー、ランサー共に聖杯をそこまで求めてない。ライダーに至っては願望って言っても受肉だ。それくらいなら現時点でも叶えられる願いだろうし、なんなら全員受肉しても問題ないはずだ。後はセイバー次第だったけど………それもさっき解決した。だから聖杯戦争を再開する必要性はない」

 

まぁ、綺礼のお父さんが納得するかは知らないがな。何が何でも時臣を勝たせたいというのであれば、確実に聖杯戦争を再開させて、綺礼に手伝ってもらって、誰かのサーヴァントを奪おうとするだろう。狙われるとすれば、ウェイバー辺りだろう。殆ど一緒にいるとはいえ、常ではなかったし。或いは俺達が同盟を組んでいる事を知らずに切嗣辺りを狙うかもしれない。

 

「とはいえ、それもこれも全て上手く行ってからの話。一先ずは聖杯が元に戻ってから、また決めた方が良い」

 

何もないのに越したことはないが、何もかも上手くいって終わりっていうのは考えづらいしな。ことこの世界においてはそう言うフラグなんじゃないかと思うまである。特に俺というイレギュラーがいる以上、それ以上のイレギュラーも想定しておかないと。

 

「一先ずは大聖杯のある『龍洞』に行ってから。不測の事態に備えて、実行は二日後。それまでに色々準備しておこう。後はなるようになる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

俺はタマモと桜と一緒に街に繰り出していた。

 

準備期間と称して二日を用意したわけだが、その実、俺には特にする事がない。

 

何せ、俺が使うのは魔法。魔術のように発動するための土台が必要ない、なんなら今すぐにでもこの辺りを更地にするくらいはわけないのだ。

 

だから、久しぶりに桜を外に連れ出してみた。流石に聖杯戦争を止めている中、わざわざ桜を家に閉じこもらせる必要性なんてどこにもないからな。

 

久しぶりの外出とあってか、桜はとてもはしゃいでいて、タマモは本当に桜の母であるかのように、まさしく良妻という言葉が似合う程の立ち振る舞いをしている。何時ものシリアスブレイカーが悪夢のようだ。いや、悪夢か。

 

桜の服や玩具などの買い物を済ませ、近くの公園に腰を下ろしていた時ーー。

 

「ほう。このような場で会うとはな、カリヤ」

 

「ん?……………アーチャー?」

 

「なんだ今の間は。今更この面貌を忘れたとは言うまい」

 

そうは言われてもなぁ。

 

今のギルガメッシュははっきり言ってアレだった。

 

というのも、致命的なまでにファッションセンスが皆無だった。

 

思わず、寝起きかよとツッコミたくなるような服装に、片手にはおそらく宝物庫から引き出してきたであろう酒。なにやってんだ、お前。

 

「先日聖杯を元に戻すと言っていたが……何をしている?」

 

「見たらわかるだろう。遊んでるんだよ、俺の子と」

 

「あれがか?見た所、血は繋がっていないのだろうな」

 

桜を一瞥して、ギルガメッシュはそう言った。

 

たった一瞬みただけでギルガメッシュは俺と桜の血が繋がっていないと言った。流石は英雄王といったところだろうか。確か、これがギルガメッシュ自身の強みでもあるとか言ってたような気もするし。

 

「桜の旧姓は遠坂。時臣の娘で、養子なんだ」

 

「成る程。お前の子というには異常性に乏しいとは思ったが………ククッ、あの時臣の娘か。それならば納得も出来る」

 

ギルガメッシュはそう言って、酒を呷る。昼間っから酒呷るなんてダメ人間の鑑だな。

 

「……しかし、あの娘。お前達といるからだろうが、確実に影響を受けているな」

 

「……それはつまり、桜も俺と同じ存在になるって事か?」

 

「いいや、お前のような存在は本来あり得ん。例え神霊がいようとも直接的に神の恩恵を受けているお前のような存在にはなり得ない。だが、近しい存在にはなるだろうよ」

 

俺とタマモの影響で桜も準魔法使いになるって事か?

 

聞いたら桜は大喜びしそうだが、そうなると魔術協会やら聖堂教会やらに狙われる可能性があるから、俺としては全く喜べない。

 

しかし、近くにいるだけで影響を受けるって事は……

 

「もしかして、俺とタマモの間に子どもが出来たりしたら……」

 

「神霊と半神に近い存在の子など、十中八九、神の力を宿すに決まっている。そも、貴様はあの女狐めを伴侶にするつもりだったのか?」

 

「一応」

 

「ハッ!神霊などがこのようないざこざに現れたと思えば、そういう事か」

 

何か勝手に納得してらっしゃるよ、英雄王。こいつ本当にぼっち極めた性格してるよな。人と会話してるのに、自問自答して、勝手に決め付けるなんて。

 

「おじさーん!」

 

そうこう話していると、桜がとてとてと走ってきた。実に愛らしい。

 

「みてみて!これ、タマモおねえちゃんが作ってくれたの!」

 

桜がしていたのは花で作った首飾り。

 

とても可愛らしいものだが、確かタマモには陣地作成スキルみたいなのがあるから、これも普通じゃないよな、どう考えても。

 

タマモの方を見ると、にこやかにこちらに手を振っていた。

 

一応敵サーヴァントが近くにいるわけだが、ギルガメッシュの事を考えても、いきなり不意打ちで俺の首を刎ねる事をしないのは重々承知しているらしく、敵意を見せたりはしていない。まあ、ギルガメッシュが敵意や殺意を見せた瞬間に即座に臨戦態勢に入るだろうけど。

 

「とっても似合ってるよ、桜ちゃん」

 

「ありがとう、おじさん……………?」

 

視線が俺からギルガメッシュへと向けられる。

 

「この人だあれ?」

 

「えーと、この人はーー」

 

「貴様達雑種の王だ」

 

俺が紹介しようとしたら、その言葉にかぶせるようにギルガメッシュが言う。

 

初対面で雑種なんて酷いものだが、これがギルガメッシュの平常運転。それどころか、王と自分から名乗っただけ、子ども相手には良心的なのがわかる。

 

「おう?おにーさんはおうさまなの?」

 

「まだ貴様にはわからん事だがな。何れ、我が拝謁の栄に俗した事を末代の栄誉として語り継ぐ時が来るだろうよ」

 

ギルガメッシュの言葉に桜は首をかしげる。

 

そりゃそうだ。まだ桜は六歳。ギルガメッシュが何言ってんのか、全くわかるはずがない。

 

桜は悩みに悩んだ末、ポンと手を叩いた。はてさて、一体どういう解釈をしたのか。

 

「わかった!おにーさんはちゅーにびょうなんだ!」

 

「ぶっ!」

 

満面の笑みで桜はギルガメッシュに厨二病宣言した。

 

や、ヤバい……これはいくら何でも面白すぎる。

 

「テレビでね。じぶんのことをおうさまっていうひとや、むずかしいことをいいたいひとのことをちゅーにびょうだって、いってたの」

 

「あ、あははははははは!」

 

は、腹痛い!どんだけピンポイントなんだ、そのテレビ番組!

 

あー!死ぬ!死ぬ!笑い死ぬ!

 

ギルガメッシュの方を見てみると、怒髪天を衝く程の怒りに表情を歪ませ………ている事はなく、眉をひそめていた。

 

「ちゅーにびょう?なんだ、それは?偉いのか?」

 

ここでまさかの誤算。ギルガメッシュは厨二病という単語を知らなかったらしい。一応助かったと捉えるべきだが、それはともかく面白すぎる。

 

「答えろ、カリヤ。なんだ、そのちゅーにびょうというものは?」

 

「あー、お前みたいな奴を世間一般でそういうんだ」

 

「我のような偉大な存在をちゅーにびょうと言うのか」

 

やめろぉぉぉぉ!これ以上俺を笑わせるなぁぁぁ!

 

「げほ、げほっ!し、死ぬ!」

 

「だ、だいじょうぶ⁉︎おじさん!」

 

「だ、大丈夫だよ、桜ちゃん。ちょっとツボに嵌ってね」

 

無意識でも面白すぎるだろ、笑い殺す気か。タマモだって、そっぽ向いたまま、肩震わせてるよ。絶対爆笑してるだろ、あい

 

『桜ちゃん最高過ぎますよ、ご主人様!厨二病って!確かに第三者から見ればそこの金ピカは厨二病ですけど!しかも本人も気づいてないとか、マジウケですね!あははははははは!』

 

念話で笑いを煽ってくるなぁぁぁ!そして満足そうな顔をするな、金ピカ‼︎

 

「これは良いこと聞いたな。雑種、確か桜と言ったな。覚えておいてやろう。そしてこれは褒美だ」

 

そう言うとギルガメッシュは王の財宝から宝石を取り出した。

 

「わぁ!きれい!」

 

「ありがたく思え。本来ならば我の敵であるカリヤの娘である貴様は我が恩賞を与えるべき民ではないが、その未熟さにして、我に知識を与えるというのはなかなかどうして見所のある雑種よ。次に会う時はもっと我を褒め称えよ」

 

ふはははは、と笑いながら、ギルガメッシュは去っていった。

 

あいつ、厨二病の本当の意味を知ったら、多分ブチ切れるんだろうなぁ。今のうちに何か手を打っておかないとな。

 

「おねえちゃん!みてみて!とってもきれいな石くれた!」

 

「そ、そうです、ね。ま、また、わ、わた、私が指輪に、して、あげま、すから、ね」

 

「?なんでタマモおねえちゃんわらってるの?なにかいいことあったの?」

 

「う、うん。桜ちゃんのお蔭で、ね」

 

必死に笑い声をこらえながら、それでも笑みを隠しきれていないタマモは言葉を詰まらせながらも答えていた。いや、そんなに笑ってるのに、素が出ないお前凄いな。

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。