テスト期間中にもかかわらず、投稿しました!
実に一ヶ月ぶりということですが、今回は以前お話ししました通り、閑話です!
時間軸はぶれぶれで他の未完の作品を優先しますので投稿ペースもかなり遅くなりますが、宜しければどうぞ!
◇狐とライオンのキャットファイト?◇
まずい。非常に気まずい。
「「………」」
テーブルを挟んで、タマモとアルトリアが無言で火花を散らしていた。
何故にこうなった。
無事に聖杯戦争も終わって、全員受肉して万事解決と思ったら、いきなり修羅場かよ……なんでさ。
「騎士王さん。この際、はっきり申しておきますけどね、ご主人様はわ・た・し・の!ご主人様ですからね!それを踏まえて、ここに居候されるおつもりですか!」
「ええ。例え、聖杯戦争が終わろうとも貴女のマスターがカリヤだった事に変わりはありません。ただ、私はこれからはカリヤと共にこの時代を謳歌したいと考えている所存です。後、私はこの時代に留まると決まった以上、騎士王ではありません。アルトリアと呼んでください」
「ああ、それはすみません……じゃなくて!ゼンッゼン理解してないじゃないですか、この腹ペコ王!ご主人様は私の旦那様です!そこは揺らぐことのない事実です!どんな事情があっても絶対に譲りませんから!」
「なっ⁉︎何故そうなるのですか!私にとっても、二度目の生を謳歌する上で、カリヤの存在が不可欠なのです!それに腹ペコ王とはなんですか!」
バチチチ……と両者の間に火花が散る。
今のやり取りでわかったと思うが、セイバーことアルトリアは俺の事が好きらしく、最初はタマモと既に話し合いを済ませているのだとばかり思っていたのだが、単に会話が噛み合ってなかっただけらしい。
いや、そもそもなんで俺の事好きなの、セイバー。信頼は得ていた。かといって、それが好意に直結するかと言われればノーだ。人類皆ちょろインになる。
「そもそも、私に新しい目的を見つけ、二度目の生を謳歌しろと言ったのは貴女のはずだ!」
「うっ……これは痛いところを……」
タマモにしては珍しく押されている。何時も口八丁と勢いでイケイケドンドンなのに。
「で、でも、それとこれとは話が……」
「違いません。それにカリヤもここにいていいと言ってくれました。なので、私がここにいること自体は何もおかしなことではありません」
威張るようにセイバーは胸を張った。確かに言ってることは何もかも正しい。俺もタマモもぐうの音も出ない……が、今の発言でタマモが生き返ったな。
「そうですね、確かに。ええ、アルトリアさん。貴女の言ってることは何一つ間違ってませんとも」
「わかってくれまし「ですが!」はい?」
「それを言うなら、私は聖杯から召喚されたその日にご主人様に求婚し、聖杯戦争が終わり次第、結婚する権利を手に入れているんですよ!」
「そんな……!」
あ、セイバーがめちゃ絶望してる。そしてそれとは対照的にタマモは勝ったという表情でくずおれたセイバーを見下ろしていた。とことん悪役風だな、うちのサーヴァント。
「ふっふっふっ、貴女に耐えられますか?私とご主人様の新婚いちゃいちゃ生活が。きっとご主人様は猫をかぶってますから、夜になると獣になりますよ。所構わず『
おい、なんか俺が悪いみたいになってるじゃないか。誰が猫の皮を被った獣だ。確かに新婚初夜は覚醒するかもしれないが、所構わずなわけないだろう。お前じゃあるまいに。
「あ、いえ、大丈夫ですよ。それなら」
「そうでしょうそうでしょう。大丈夫………は?」
「よく考えてみれば、私は『カリヤの側にいたい』とは言いましたが『絶対にカリヤと結婚したい』とは言ってません」
「………ようはご主人様と生活出来れば、立ち位置は関係ないと?」
「そうですね」
ここに来て、まさかの不毛の争い⁉︎どこまで噛み合ってないんだ、この二人⁉︎
「おおう、なんだ。騒がしいな」
竿とバケツを持って現れたのはアロハシャツのクー・フーリン。
「そらよ。今日は結構取れたぜ……つっても大半サバだけどな」
「おう、ありがとう………ん?待て、お前なんでさも当たり前のように俺の家にいるんだ?」
「固いこと言うなよ。聖杯から直接召喚されちまったから、受肉しても行く当てねえんだ。穀潰しにはならねえから、ここに置いといてくれや」
「それならいいんだが……」
まあいいか。ある意味こいつ聖杯戦争のせいで不幸な目にしか合ってないしな。それにそろそろ魔術協会やらが何かしてきそうだし、こいつに追っ払ってもらうか。
「で、結局こいつら何を言い合ってたんだ?」
「正妻戦争……的な」
「はぁ?」
「いや、なんでもない。それよりも桜ちゃんを迎えに行ってくる」
「ああ、あのちっこい嬢ちゃんか」
ん?なんでこいつは桜の事を知ってるんだ?
「お前と桜ちゃんって会ってたか?」
「まあな。今朝方からここにいるわけだし、釣りに行くついでにあの嬢ちゃんも送ってってやった。あの嬢ちゃんも嬢ちゃんで才能あるみてえだな」
「わかるのか?」
「伊達にキャスタークラスの適性があるわけじゃねえよ。お前の事やあの嬢ちゃんが後生大事に抱えてた本の事はこれっぽっちもわからねえが、魔術ならある程度わかるぜ」
そういえばそうだっけ。ランサーって言ったら基本的に自害だからその印象が強すぎて。
と、クー・フーリンと話しているとタマモとセイバーの間で何やら商談が成立したらしく、こちらに歩いてきた。
「ご主人様。私とアルトリアさんで妥協点を見つけました」
「どんな?」
「ご主人様と結婚して幸せな家庭を築くのは私です。つまり正妻です。で、アルトリアさんはーー」
「私はカリヤ。貴方の剣となり、貴方達を護ります。その代わり、定期的に私と共に旅をしてください。新たな目標を見つけるために必要な事ですから」
「これなら一夫多妻ではありませんし、ある意味アルトリアさんはボディーガードみたいなものです。まあ、ご主人様にはそんなもの必要ないとは思いますけど、本人たっての希望ですし、魔法使い一人にサーヴァント二体、犬一匹ならちょっかい出そうなんて事は思わないでしょうから」
「だから犬って言うんじゃねえ!」
「そうやって吠えるだけしか出来ないところが犬ですよね〜、ご主人様〜♪」
俺に同意を求めてくるな。俺はこれでも(一応)尊敬してるんだぞ、英雄だから。
「ま、まあ、それはともかくだな。解決したならいいんじゃないか?」
闘いにならなくてよかった。そしたら確実にこの家がなくなるし、この家じゃなくても、周囲が更地になるし。
「それはそれとして、タマモ。言い合っていたらお腹が空きました。ご飯はいつ食べるのですか?」
キリッとした顔でセイバーはタマモに問いかける。
「……やっぱりこの腹ペコ王、追放していいですか?」
そしてさっきの今で早くも意見を百八十度変えさせるとかセイバー凄いなと思わざるをえなかった。
◇言峰綺礼の覚醒◇
「せんせー!いつものやってー!」
「ダメだよ!せんせーはわたしとおままごとするの!」
「えー!おれとキャッチボールするってやくそくだったよ!」
足元に集う幼子達を見た後、神父服を着た男ーー言峰綺礼は瞑目する。
何故こんなことになってしまったのだろうか。
聖杯戦争が終わり、また答えを見つけるため、再度間桐雁夜に挑むために修業の旅に出ようとしていたその矢先の出来事だった。
『綺礼!貴様を我の臣下としよう!さあ、我の為に働け!』
と、ギルガメッシュにいきなりそんなわけのわからない宣言をされた挙句、こうしてギルガメッシュの経営する孤児院に父である璃正共々勤めさせられることになった。
父に関しては、実に順応するのが早かった。
生まれてこのかた、こう言ってはなんだが綺礼があまり子どもらしくなかったというのもあるが、子どもが好きだったのだろう。実によく馴染んでいた。
綺礼も綺礼で黙々と働かされているものの、やはり心は空虚だ。自分のしたかったことはここには無いとわかっていた。
(やはり、私の心の隙間を埋めるには、間桐雁夜を打倒するほか無い)
その渇望が通じたのか、はたまたただの偶然か。
「ギルガメッシュに呼ばれてきてみれば……なんでお前がここにいるんだ?」
「ッ⁉︎間桐雁夜⁉︎」
そこにいたのはジャージ姿の雁夜。
横には芸人の衣装かと突っ込みたくなるような服装のギルガメッシュがいた。相も変わらず、ファッションセンスは壊滅的なのである。
「ギルガメッシュ。どういうことだ、何故間桐雁夜がここに?」
「なに。我が選りすぐった者共を見せてやろうと思ったまでよ。キレイ。お前は気にするな、命懸けで子ども達の才を磨け」
ようは「さっさと働け」である。
文句を言いたいのは山々であるが、そもそもギルガメッシュに文句を言おうものなら、その場で打ち首になる可能性がある上、何故かギルガメッシュは子どもに好かれている流石のカリスマである。
「それで?どの子にどんな才能があるんだ?」
「まずはあそこに泣いている者がいるだろう?タツヤというのだが、タツヤは参謀や策士に向いている」
「そうか?めちゃくちゃメンタル弱そうだが」
「ふっ。よく見ろ、泣きながら相手の顔色を見ている。あれはおそらく嘘泣きだ。だが、それらを悟らせないのは実にいい。我も初見は嵌められた」
「ソースはお前かよ……」
「次にあそこで歌っている者がいる。サオリというが、サオリには『アイドル』とやらの才がある」
「可愛いからか?超音痴だけど」
「確かに容姿もいい。だが、サオリは将来的に世界的な歌手になろう。この我が保証する」
「人類最古の王様の保証付きとはあの子は大成する事が確定だな」
と、綺礼そっちのけで話をする雁夜とギルガメッシュ。
こうなってしまっては話に割って入ろうとしたらギルガメッシュの機嫌を損ねる。そしてその後は言わずもがな。仕方なく、言われた通りに働こうとしていたその時。
「キレイ。アキラには何れお前の使う戦闘術を教えておけ」
「戦闘術?八極拳の事を言っているのか?」
「ああ。アキラには戦士としての天賦の才がある。正しく育てば、凡俗共では指一本触れる事が出来なくなるだろうよ」
そう言われてアキラと呼ばれた少年の方を見てみても、そこまで才能があるとは思えない。
だが、ギルガメッシュが名を覚え、そして自らの経営する孤児院に連れてきた(働いてはいない)人間だ。無意味や無価値を嫌うギルガメッシュに限って、そんな事は言うはずもなく、その少年もここにいるはずが無いのだ。
しかしながら、教えろとは言われたものの、自分にはたして出来るのかどうかと言うのが綺礼の純粋な疑問である。
そもそも人並み以下の感性や感情しか持ち合わせない自分が一体何を教えられるのだろうか。
綺礼が思い悩んでいたその時だった。
「そういえば、あの娘ーーサクラはどうしている?」
「サクラちゃんか?最近グリモアーー俺があげた魔道書なんだが、使えるようになってな。俺も教えてるんだが、もののついでに切嗣に魔術の指導なんかをしてもらってる……ああ、切嗣ってのはセイバーのマスターだ」
「ああ、あのみすぼらしい男か。アレでなくとも、お前のサーヴァントがいるだろう?」
「タマモ的には自分の魔術は教えたく無いんだとさ。黒歴史らしい。だから、俺と切嗣が魔法と魔術を教えて、セイバーとクー・フーリンに剣術とか槍術、後ルーンの魔術とか教えてもらってる」
(魔法に魔術、サーヴァントに剣術や槍術をとは……一体、その娘はどの戦場に駆り出されるというのだ)
耳に入ってきた情報にさしもの綺礼も雁夜の正気を疑った。
無論、雁夜が無理矢理学ばせているわけではなく、桜がやたらと興味を示して、片っ端からおしえてもらっているのだが、それはそれは吸収率の早いこと。なんでもござれの最強少女と化していた。
と、そこで綺礼は思った。
間桐雁夜と衛宮切嗣という自身が過去と現在において目的としていた人間。
その二人の弟子である間桐桜を倒しうる弟子を育成すれば、それは間接的には二人に勝利したことになるのでは無いか?と。
そこからの綺礼の行動は早かった。
「輝」
「あ、キレーセンセー!どうしたの?」
「強くなりたいか?」
「なりたい!」
綺礼の『打倒間桐雁夜の弟子育成計画』がこの瞬間始動した。
後にこの輝と呼ばれる少年が、伝説の格闘家として後の世に語り継がれることになることを綺礼はまだ知らない。
◇壮絶な姉妹喧嘩?◇
「桜!今日こそはあんたをぎゃふんと言わせるんだから!」
びしっと桜に指をさして宣言するのは赤い服を着た少女ーー遠坂凛。血縁的には桜の姉に当たる人物である。
「はぁ……姉さん。二週間前もそう言ってましたよね?」
肩を落として、桜は深くため息を吐いた。
それも無理は無い。
百二十六戦全敗。
それが桜と凛の闘いの戦績でもちろん全敗しているのは凛の方である。
「今日は違うのよ!」
「それも言ってました。でも、前もダメでしたよね?」
当然である。
魔法を使える桜とあくまで『魔術師としては』優秀な凛。その時点で軍配は桜に上がり、剰え、桜は魔法魔術を無条件で跳ね返すリフレクが使えるのだ。凛がどれだけ宝石魔術を行使しようとも全て返っていく。
そしてそれを現時点で正面突破できる人間は雁夜しかいない。
「そう言っていられるのも今のうちよ?今日はなんていっても秘策があるんだから!」
「はいはい。今日は私もお夕飯を作る準備をしますから、早くしましょう」
そう言いながらグリモアを開く桜。凛は何時ものように宝石をその手に持ち、臨戦態勢を整えていた。
「行くわよ、桜!今日こそは勝って、雁夜おじさんの弟子にしてもらうんだから!」
凛が桜にこうして何度も挑んでいるのには理由がある。
それは『凛が桜に勝てば、雁夜の弟子となる権利を与える』。
それが雁夜と時臣の間で結ばれた約束で、桜も「早い話、負けなければいいんですよね?」と快諾した。
「どこからでも。静寂に消えた無尽の言葉の骸達。闇を返す光となれ。
凛の放ったガンドは桜の目前で見えない壁に当たり、その軌道を凛の方向へと向ける。
凛はそれを横に飛んでかわす。
「本当に無茶苦茶よね!どんな魔術も無条件で跳ね返すなんて!ーーーSieben!」
握った宝石を桜に向けて投げるもやはりダメージは無い。
「お返しです!岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち。集いて赤き炎となれ!
桜の手から放たれた炎の球が凛のすぐ横を通過し、地面を焦がす。
「珍しいじゃない、桜。あなたから攻撃してくるなんて」
「今日は急いでますから。最低レベルの攻撃魔法しか使えませんし、威力もお父さんには及びませんけど」
桜自身の言う通り、桜の魔法はその恩恵を直に受けている雁夜には及ばない。
グリモアがあって初めて八割程度までの再現が可能で、グリモアが無くなれば、威力は半分以下。詠唱抜きになると二割しか効果が見込めない。だが、魔力消費量は同じなため、魔力保有量が雁夜の五分の一程度の桜では、長期戦は出来ない。
(あれで最低レベル⁉︎やっぱり魔法って理不尽すぎるわ……)
「でも、だからこそ、私も教えてほしいのよね。一人の魔術師として、その極みを」
「はぁ……姉さんって本当に負けず嫌いですね」
そうして桜が詠唱に入ろうとした時、凛は不敵に笑った。
「
身体を深く沈め、凛は桜との距離を一気に詰める。
「はぁっ!」
「ッーー
目の前に現れた凛に目を剥く桜は、詠唱しては間に合わないと詠唱破棄で唱える。そしてその直後、凛の掌打が桜の腹部をとらえた。
桜の両足が地面から離れ、数メートル後方へ飛ぶ。
もちろん、急所は外してあるが、それでも肉体強化から放たれた八極拳の一撃は『一般人』なら動けなくなるようなものだ。
「どう?まさか殴り合いをしてこようとするなんて、思わなかったでしょ?」
勝ち誇った笑みで凛は告げる。
後は桜が戦闘不能になったと確認できれば、治癒の魔術で治して勝ちを報告しに行かなければ、と考えていた。
だが……。
「……姉さん」
事も無さげに……というほどではないものの、桜はゆっくりと立ち上がった。
当然である。桜はサーヴァントから武術を習っている身。痛みには十分に慣れている。
「……この闘いを始めた時に決めたルールを覚えてますか?」
「ええ。もちろんよ、それが?」
「……姉さんはその時こう言ってましたよね?『魔術師なら魔術師らしく、魔術戦だけにしましょう。肉弾戦なんて絶対ダメ』って……」
「……そ、そうだったかしら?」
冷や汗をダラダラと流し、そっぽを向く凛。
ぷちん、と桜の中で何かが切れた。
「もう怒りました!いつもいつも自分の都合で私に挑んできた挙げ句に、自分が指定したルールを自分で破るなんて!今までは姉さんだからと我慢してましたけど、堪忍袋の緒が切れましたよ!今日は姉さんには少し痛い目を見てもらわないといけません!
「
桜の言葉に反射的に投げた宝石は凛の詠唱に全く反応せずに地面に落ちる。
「無理ですよ。一時的に姉さんの魔術を封印しました。本当なら言葉すら発せなくなってしまうんですけど、それだと意味がありませんから、魔術だけ封印しました。これで今日は魔術は使えませんね」
「はい⁉︎封印って……」
「まだまだいきますよ。時よ、足を休め、選ばれし者にのみ恩恵を与えよ!
「ぐっ……」
身体が重くなるのを感じて、凛は片膝をつく。
「どうですか?全然身動き取れませんよね?」
「……みたい、ね。はぁ……今回も私の負けか……」
そう言って落胆する凛だが、一向に魔法が解かれる気配はない。
何事かと顔を上げると、桜は笑顔のまま、凛を見下ろしていた。
「言いましたよね?今日は少し痛い目をみてもらうって」
「な、何する気?」
「痛い目といっても痛い事はしません。ただ、遊んでもらうだけです」
「遊ぶって……もしかして……」
「はい。スラ太郎くんです」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
桜の手元に現れたのは緑色の粘液をドロドロと垂れ流しているスライム。
これは召喚魔法を使えないかと雁夜が試してみた結果、たまたま近くに置いてあったおもちゃのスライムが反応。ただただぬめぬめした気持ち悪い粘液を出し続けるだけのスライムが完成したのである。
その時、たまたま間桐邸に遊びに来ていた凛はその被害者第一号で、それが若干トラウマになっていた。
因みに桜は何故か気に入っていたりする。
「スラ太郎くん。今日は姉さんがいっぱい遊んでくれますよ〜」
「……」
「そうですか。スラ太郎くんも嬉しそうです」
「何も言ってないわよ、そのスライム!」
「そんなことありませんよ。私はスラ太郎くんの気持ちが伝わってきますから。では、一時間たったらまた来ますから、いっぱい遊んであげてくださいね?」
「ちょ、ちょっと待って、桜!謝るから!ごめん!本当にごめん!だから許して!無理無理無理!気持ち悪い気持ち悪い!スライムだけはいやぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
凛の必死の懇願も今回ばかりは桜の耳に届かず、結局は三時間後、忘れていた桜が迎えに来るまで、凛はスラ太郎の遊び相手となり、一ヶ月ほど戦いに来る事はなかった。