仮面ライダーハイセ   作:黒兎可

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「……ッ」
 
 四方さんに担がれているリゼの身体が、一瞬、不自然に震えた。
 それを見た瞬間、私は、なんとなく嫌な焦燥感が胸を過ぎって。
 
「どうした? トーカ」
「……なんでも、ない」
 
 背負ったヒナミを起こさないように歩きながら、私は、一度「あんていく」の方を振り返った。
 
 クロナにも連絡は入れたから、たぶん戻ってくると思うけれど……。
 
 だっていうのに、私は、やっぱり何か違和感を拭いきれなかった。
 
 
 
 


#084 切声/流転/餌相

 

 

 

 

 

 真っ暗になった視界の中。爆裂した視界の中。

 うすらぼんやりと聞こえる、死神の声。

 

「――『V』に対して、アオギリの樹は――」

 

 それを聞きながら、なんとなく――僕の脳裏にはあの日、あの時。最後に見聞きしたやりとりが、浮かんでいた。

 

  

『なんでッ……、あなた、がっ……』

 

 

 リゼさんに落とされた鉄骨の上方。

 

 その彼女の視線の先に立っていた――ピエロマスクの青年の姿を。

 

 彼は、店長に、仮面ライダーに、左手の甲を見せるようなVを示していた。侮辱のニュアンスがあるのか、それとも――その「V」そのものに、意味があるのか。

 

 今の僕には、それを考えることも出来ない。

 

 

 ……嗚呼。

 

 

 

 やっぱり、勿体無かったかな。

 

 ほんのり残った、トーカちゃんの唇の感触が……、トーカちゃんの堪えた顔が、浮かんで、流れて。

 

『帰ってこなかったら、ぶ、ぶっ殺すから――』

 

 ……後、追ったりしないよね。

 しないでほしいな。

 

 そんな心配をしながら――僕の思考は、床に、どろどろと、貫通してあふれ出した。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 ウイさんが梟のバケモノにぶっとばされたです。

 ベロさんも梟も重いって言って、そのまま口から射撃されてぶっとばされたです。

 

 

 そしてそんな時、ビルの下から「巨人」が上ってきたです。大きさ、3メートルくらいです?

 

 赤と銀がすごく目立つ配色です。その色のおかげで、でもそれがクインケだってわかるです。 

 

 ……ホントにクインケです?

 それくらいに大きくて、とんでもない感じです。そしてその中央、胴体の中に、ガイコツみたいなヒトがいたです。腕と足が、それぞれ片方ずつなくって。亜門ジョウトーとか篠原サンがしてるような、そんなベルトを付けているです。

 

 

『――?』

 

 ぐるるるうなりながら、梟のバケモノがそのガイコツを見たです。

 

 ガイコツさんは、くっくっくって笑ったです。

 

「地行君に無茶を言って、『5年前』から作ってもらっていた甲斐はあったねぇ。確実に貴様を殺せるクインケ!

 貴様もまたそこまで大きくなっているとは想定していなかったが、これでようやく互角といったところだろう。なぁ――梟!」

『ぐるるるるるぅ……、ぐるぅ?』

 

 くてん、と、バケモノの頭が、漫画みたいに首傾げたです。

 

 お前誰、みたいな感じのニュアンスがひしひし伝わってくるです。

 

「そこで転がっている、貴様の『父親』に言われた。憎悪のみでは貴様にたどり着くことが出来ないとな。

 だから私なりに考えた。(かすか)を無残に食い荒らし、私とアキラから家族を奪った貴様と相対して、私がどう振舞うべきか――」

『――クラスタ・ザ・ダイザー!』

 

 クインケの起動音が鳴ると、上に開いていたカバーが閉じて、胴体がふさがったです。こうして見るとロボットみたいです。構造全部赫子だからグロいけど。

 ずちゃりずちゃりいいながら、警戒に上って、僕らの横に立つロボットです。見た目よりも軽いみたいです。

 

『覚えていようが、覚えていまいが関係あるまい。

 誰も撃ち果たせぬというのなら――誰が挑んだところで、結果は代わりない』

『ぐる……?』

『せめて――が来るまでの間、私が、相手をしよう――!』

 

 フットボールとかみたいなしゃがみ方をして、そのまま、3メートルのクインケロボットは、梟の怪獣に飛びかかったです。

 

 なんだかすごく、テレビとかでたまに見かける光景です。子供向けとかでありそうな感じの画です。やってることは、頭掴んで引っぺがそうとしたり、足に噛みつかれて転がされたり、格好良さなんて欠片もないですけど。

 あるのは、どっちも「相手を殺す」ってことだけです。 

 

 ロボットの方の動きは、なんだかちゃんと人間みたいです。攻撃が、僕から見てもえげつないの多いです。でも梟の怪獣は、結構余裕を持って応戦してるです。

 

『ぐるぅぅ――ハハハ! ナル、ホド。

 甲赫ヲ外装ト骨、鱗赫ヲ筋肉、尾赫ヲワイヤー、羽赫ヲ循環ニ回シテル、カ。

 オ前、ソレ、何人殺シタ?』

『材料のクズの数など、今更、数え切れるかあッ!』

『ナルホド』

 

 なぐるです、なぐるです。

 梟のお腹を容赦なく殴るです。大体おんなじくらいの身体の大きさで、動きとか、音がすごいです。

 

「什造……っ」

「篠原サン?」

 

 音がうるさくって起きたです? よろよろと歩いてきた篠原サンが、僕の隣に腰を下ろしたです。

 

「何がどうなってるんだ? こりゃ」

「さっき、ウイさんがぶっ飛ばされて、ガイコツみたいなヒトが来たです」

「嗚呼、真戸か」

「アキラちゃんです?」

「いや、あれアッキーラのお父さん」

 

 なるほどです。随分痩せたです。

 

 じっと、ロボットを見つめてる篠原サン。「ドライバー技術の応用とはいえ、身体にかかる負荷なんか酷いもんだろうに」とか言ってるです。

 

「でも、普通にしてたら戦えないです、あのヒト」

「嗚呼、そうだな。だから本来なら後方要員として、丸のところに居たはずなんだが――なんで飛び出して来た、アイツ」

 

 通信を試みる篠原サンです。でも、ノイズが聞こえるだけです。

 とても立ち入れる状況じゃなくって、疲れたみたいな篠原サンは、ぜいぜい言いながら見上げてるです。

 

 アキラちゃんのお父さんは、ロボットの中ですっごく笑ってるです。「ひははははは」みたいな声が、スピーカー越しに聞こえるです。

 

 攻撃の速度が、どんどん早くなっていくです。

 

 梟の怪獣が、押されてるです。

 ロボットが器用に、他のヒトが倒れてない方に誘導してるです。

 

『――終わりだ、梟!』

『――リコンストラクション!

 クラスタ・フル・ブラストオ――』

 

 

『ウルサイ』

 

 

 がきん、と。

 何か変形しはじめていたロボットの足を掴んで、梟の怪獣はそのまま、ロボットを「背負い投げ」したです。

 

『ヨテイヘンコウ』

 

 そんなことを言いながら、ロボットを掴みながら、空中に飛び上がる梟です。二つの巨体が、平然と空中に飛ぶです。すごい光景です。篠原サンあんぐりしてるです。

 

 そして、そこから更に適当にロボットを投げ捨て。

 

 

『――赫者(オーバー)! 崩壊撃破(ブレイクバースト)!』

 

 

 どこからかそんな音が鳴ると、怪獣の首のあたりが分離して、飛び上がったです。

 残った怪獣の胴体は、ものすごい勢いで「変形」して、鳥の足みたいな形になって。

 

 そこに、一番最初の小さい、僕らと同じサイズの梟が、右足を突っ込んで――まるで梟の足の先が、その巨大な鳥の足みたいな感じになるようにして。 

 

 

 そのまま落下して、地面に投げ捨てられたロボットをプレスしたです。

 

 

「な……、真――」

『呉緒ォオオオオオオオオオオオオオオオ――ッ!』

 

 通信機に丸手さんの声が響くです。でも数秒経たずノイズになるです。

 もしかして、どこかで妨害でもされてるです?

 

 地面に抑え付けられた、ロボットみたいなクインケ。その周囲で、捜査官たちが銃構えて、梟の怪獣を取り囲み始めて。 

 

 丁度その時、変形した足が光ったです。

 

 

 次の瞬間――ロボットがバラバラに消し飛んでいて、そのパーツとかで、捜査官、いっぱい、いっぱい死んだです。

 

 

 篠原さんが、目を見開いて動きを止めていたです。

 僕は、つい疑問に思ったのを聞いたです。

 

「勝てるです? 僕達」

「……やるしかない、だろ。什造」

 

 拳を握りながら、涙を流しながら。篠原さんは、下で転がる捜査官たちと、骨みたいなヒトの死体を見ていたです。

 

 

 

『――――いい心がけだね』

 

 

 

 

 そして、突然下から上昇してきた梟が、篠原さんの顎を猛烈な勢いで蹴り飛ばしたです。

 

 下にある怪獣の身体は、周囲にある捜査官の身体を集めて……、何するです? 食べるです?

 でも、下を向いてられる状況じゃないです。

 

 篠原サンを飛ばした梟は、僕のことを一瞥して、一瞥するだけで、そのまま篠原サンのところまで歩いたです。

 

『変な髪型!』

 

 感想が僕と一緒だったです。

 篠原サンは、無理やり身体を起こして、梟を見たです。

 

 ドライバーの中央に手をやり、何か操作しようとして――。

 

「やっぱり……、お父さんを、助けに来たのかな? 君は――」

 

 

 篠原さんの右足が、ふくらはぎのあたりから輪切りにされたです。

 宙を舞う足に、篠原さんが絶叫するです。

 

 手がドライバーから離れたのを見て、梟は言ったです。

 

 

『そ う だ よ ?』

 

 

 梟の声は、怒っているみたいでした。

 

 そのまま、篠原さんの、足を、どんどん、どんどん――。 

 

 

 

『片方だけじゃ不公平だよね』

 

 

 

 最後に左足も、太ももの真ん中くらいから切り飛ばして――その時点で、篠原サンは白目向いたです。

 

 梟はそのうちの一つを拾い上げ、カステラでも食べるように、服を剥がして、齧りだして。

 

 

『――君も「おそろい」にする?』

 

 

 そんなことを、気楽な様子で聞いてくるです。

 

 僕は――。頭の奥で、何かが蠢きだしたような感覚があったです。

 

 ――善人ぶって、蔑むような目が僕は大ッ嫌いです。

 

 そういうヤツらは、みんな殺してやりたい。でも、篠原サンがいなくなったら、お菓子を買うのも、きっと一人じゃ出来ないような状態になるです。

 だから無理やりガマンして、それでも所々無理が出て。時々たしなめられて。 

 

 昇進の時にお勉強を見てもらったり。

 クインケの案を出すのに、最後まで付き合ってもらったり。

 

 そして――。

 

『――天使がみたいなのがもし、いきなりこの世界で生きるならさ。純粋すぎて、どんな色にでも染まっちまうんじゃないかって思うんだよ』

 

 どういうことです? と聞くと、篠原サンは「なんとなく」と笑うばかりで――。

 

 

 

 

『ウチのお尻が青い子が世話になったからね。

 ――返礼は、してあげないと』

 

 梟の赫子が、篠原サンに突き刺さって。そして、篠原サンのお腹の中を――。

 

 

 

 

 

 ――ホラ見ろ? 「オニヤマダ」討伐の時の祝賀会。

 ――師匠の伊庭さん、マルにいわっちょ。奥のが入局したての有馬で、こっちが有馬にクインケ教えてたアキラの親父さんだよ。

 

 ――功績なんかより、伊庭さんが自分のことのように喜んでくれたのが、嬉しかったな。

 

 ――いつか。

 

 

 

 

「――――――――――――――――――――――――――ッ!」

 

 

 

 

 ――お前ともいつか、ちゃんと呑みたいなぁ。

 

 

 

 篠原さんの言葉に、僕は、衝動的に、叫んだ。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 ――こらこら、こっちに来るのはまだ早いぞ? 鋼太朗っ。

 

 ……もはや階級など関係ないだろうに、張間の声はあの時の調子で俺に語りかける。

 

 ――死んだらいけないんでしょ? そしたら、悲しむヒトがいるから。

  

 嗚呼、もちろん悲しむヒトも居る。それに……、結果的に、人殺しにしてしまう者も。

 

 ――だったら起きる! 耳、聞こえてるでしょ?

 

 張間の調子は、本当に、最後に会話を交したときと何ら変わりなく。

 

 

 

 そして、俺の名前を呼びかける声を聞き、俺は意識を取り戻した。

 

 

 

「――亜門さん!」

「……政道か?」

「よかった! 意識が……、止血は、あのクインケが自動的にやったみたいだし、一安心じゃないけど、でも、嗚呼――」

 

 震えながら涙を流す政道。心配をかけてしまったようだが、そうも言っては居られない。

 

 周囲を見れば……俺以外に生き残っているのは気絶している二人くらいか。

 その他は惨憺たる様子だった。だが、その中にバイクの破片と思しきものが存在していうることが、意識を失う直前に俺が見たものの実在の証明になるだろう。

 

 あの喰種と……、安久が戦ったことの。

 

 彼女は、カネキくんを助けに来たのだろうか。この状況で、命がけで。

 

 

 ……カネキくんを助けるために狂った者と、彼を助けるために命がけでここにたどり着いた者と。

 

 捩れた、歪んだ結論だ。梟討伐というトリガー一つで、何故、何故こうも大きく結果が捩れてしまうのか――。

 

 

 政道が、千之准特等に叫ぶ。おそらくあちらで医療班の手配をしているのだろう。

 

 だが――。

 

 

  

「――必要ない。

 君達の生き死には、俺達が管理する」

 

 

「准特等――!」「あ、がッ……」「う、うあああああ!!!!!」 

 

 そんな言葉と同時に、第四隊が猛烈な勢いでバラバラにされていく。

 

 現れたのは、アオギリの喰種。

 地面に転がってる死体の一つ――あの少年の喰種のものを見て、その白装束の、赤い仮面の喰種、タタラは肩をすくめた。

 

「赫子が『足りなくなった』のか。だからあいつの改造は費用対効果が悪いと言ってるのに……。

 ノロ、死堪(シコラエ)に補給させてやれ」

 

 がちゃがちゃと音を立てながら、捜査官の死体をあさっていた長身の、口だけがついた仮面の喰種。それが痛々しい、肉が剥離するような音を立てながら、少年の喰種の死体の口に、赤黒い筋繊維めいたそれを――。

 

 

「αアイムヒアΩ」

「起きたら早くアヤトの方と合流しろ。そういう手はずだろ」

「ろん? のん? んー? ……うわあああああああああああああああああん!!!!! びぇええええええええええええええ!!!!!!!」

 

 

 数秒と立たず立ち上がった少年の喰種は。タタラの方を見て、自分の身体を見て、唐突に泣き出した。

 それを無視して、タタラは前進する。

 

「あ……、が、か……」

 

 震える政道。敵を前に、凄惨な光景を前に、死を意識しているのだろう。俺も、覚えがないとは言わない。前線に出る機会が少なければ、それだけつまり死から遠いということになる。生き死にの覚悟が鈍ることも、十分あるだろう。

 

 ドウジマは……、まだ使える、か。

 

「……死にたがりかな? 君」

 

 立ち上がり、政道をかばうよう前に出る俺に、アオギリの喰種は俺に言う。

 

 

「亜門さん、無理ですって……! そんな身体じゃ――」

「――それが、どうした!」

 

 

 手足をもがれてでも、戦う――守りたいもののために、愛すべきもののために。

 その中には、政道。お前も当然のように含まれている。コイツらが真戸さんや、篠原さん達や、アキラの方に向かわないとも限らない。

 

 だからこそ。

 

 

「ここは、俺が食い止める。退却して、お前は体制を立て直せ」

「あ、あ……」

「早く――ッ!」

 

「――できませぇんっ!」

 

 政道は、クインケを構えて射撃する。

 

「俺だって喰種捜査官なんだ! みんなを、貴方を、守りたいから捜査官やってるんだ――!」

 

 タタラは首の動きだけでかわし、他の喰種のように攻撃を受ける事はない。

 政道は、それでも叫びながら射撃を通ける。恐怖に震え、泣きながら、目を見開きながら、それでもなお。

 

 政道は以前言っていた。偉くなれば、より多くのヒトを守ることができるのではないかと。その根底にある切っ掛けを、俺は知らない。だからこそ、この場での彼の行動は、この状況でなお立ち向かおうとする意思を――。

 

 

「お前、法寺の部下か?」

  

 

 瞬間的に距離を詰め、タタラは政道を持ち上げる。

 首を締め上げながら、政道に、鬼気迫る様子で問い正す。

 

 早い、一体いつ――既に俺から、二人はかなりの距離が離れていた。

 

 眼前には、泣き喚き続ける少年の喰種。

 

「そのクインケ……、もう一つあるはずだ。中国で、手に入れたはずのものが。

 どこだ、どこにある――!」

「離、せ……、お前なんかに、法寺さんが負けるもんか――ッ!」

「会話はちゃんとしようか、君」

 

 ノロと呼ばれた長身の喰種の方に、政道を投げる。 

 

 次の瞬間、ヤツの胴体が膨らみ、腹部に「穴」が開き、政道の左肩を飲み込んだ。

 

「回収しておけ。『材料』だ」

「……」

「――なしけなあああああああああああああああああ――kШ」

「お前はいつまで泣いている。とっとと行け――」

 

 

 呆然とした顔で、涙を流す政道。

 

 俺は、瞬間的に激昂し、ドウジマを振りかぶり――。

 

 

 

「好……、我中意你這種人」

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

  

 

「――つまり、君たちには……。あれ?」

 

 死神は、目の前で物言わなくなった二人の喰種を見て。

 手に持つ黒いクインケと、それが抉っている青年の片目を見て。

 

 

「……あ、深く抉りすぎた」

 

 

 そんなことを、小さく呟いた。

 

 

 

 

 




 
 
 
 気が付くと、ママと一緒にいたです。
 
 ママはたっくさん、手下を引き連れてたです。
 ママのために、僕はどんなことでもやったです。痛いコトも、痛くされることも――僕が僕として、不確かになるようなことも。
 
 僕は誰なのか――? 考える暇はたくさんあったです。 
 
 でも、だからこそ僕は僕でしかなかったです。
 
 
 ママから与えられた、什造という名前しかなかったです。
 鈴屋玲って名前は、意味がなかったです。
 
 
 そんなママが逃げて、僕が置き去りにされて。
 
 それでも僕は、ママのことが大好きで。
 
 アカデミーに引き取られて、友達がちょっと出来て。クロナとナシロはよく話し掛けてくれて――。
 
 でも、せんせいの一人が、男の子と一緒に、ねこさんバラバラにしてるところを見て。埋めてあげてたのに、なんでか、みんな僕をさけるようになって。さげすむようになって――。
 
 その目が、僕は、大ッ嫌いで。
 
 口で綺麗なこと言って、内心が汚いのがもう大ッ嫌いになって。
 
 
 篠原さんと会ったのは、そんな時でしたです。
 
 
 篠原さんは言ったです。みんなに混じって生きるためには、殺しかねないことはしちゃいけないって。だから怒りを押さえる方法を考えようって。
 僕は、よくわからないです。
 
 今でも、よくわからないです。 

 梟討伐に赴く前に、篠原さんは言ったです。僕が死んだら、悲しいって。
 
 
 でも――その意味だけは、今ではもう、わかるようになったです。
 
 
「なにやってるですか、はんべ~」
「先輩……」
 
 
 後輩の面倒見るのも大変です。
 
 でも、死なれて欲しくもないから、僕も頑張るです。
 
 
 篠原さんの分まで僕はやるです。
 
 あの時、そう約束したですから。
 
 
 
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