仮面ライダーハイセ   作:黒兎可

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月山編エピローグとアオギリ編プロローグ?



#021 偽名/信託

 

 

 

 

 

「――なるほど。で、命からがらレストランから逃げ延びて来たと。で、結局入館条件手に入んなかったんかいッ! 新しい情報なんもないじゃンン!!」

 

 どわっと怒鳴るイトリさんに、僕は思わず身を引いた。場所は彼女のバー。例のごとく血酒(要するに腐った血)を飲みながら、彼女は僕をどつく。

 でも数秒すると、ため息をついて一言。

 

「……まあ生きてて良かったんじゃないの? ヘッポコなりに頑張ったみたいだし。

 蓮ちゃんにも久々に色々小言いわれちゃったしねー。研はお前のオモチャじゃないんだーとか、大体お前は昔からいつもいつもヒトに無理難題をーとか、平和に過ごしたい奴相手に人生を引っ掻き回すようなことをするのは良くないーとか」

「……なんか、意外です」

「そでもないよ? 蓮示って結構、酔うとしゃべるし」

 

 あと小さい動物とかすっごい好きだしね、とイトリさん。

 

 ちょっと意外な話ではあったけど、確かにこの間ヒナミちゃんと一緒に、ヘタレ(四方さん曰くシューティングスターウィング)に「おはよう」を覚えさせようと何度も何度もチャレンジしていたのを目撃したりもしたので、信憑性はそこそこか。

 

「ま、青二才にしちゃ頑張ったし? ご褒美は少しはないとアレよね。

 じゃあ、おねーさまがヒトハダ脱ぐのと、情報へのヒントと、どっちがいい?」

「へ……、は、はい!?」

 

 突然、胸元の開いたドレスのそれを軽く引いて、ちらりと中側を見せて笑うイトリさん。悪戯っぽいそれは明らかにからかわれているのが分かるけど、それでも一瞬体や視線が硬直してしまうのは、仕方がないと思いたい。

 

 そんな僕のリアクションを見て「やっぱ純だねぇ」と彼女は笑った。

 

「そんな本気にしなさんなって。蓮ちゃんどころかウーさんにも逆にいじられるわ、私そうしたら。……って、本当に脱いだ方が良かった?」

「いや、そういう訳では……」

「ジョークジョーク、グールジョーク♪」

 

 本当、何というかしてやられているというか。

 やっぱりこのヒトは、ちょっと苦手だった。

 

「転落事故についてはスキップして、リゼについて少しだけ。

 イッツベリィベリィビッグヒント」

 

 ものすごく大きなヒントと言いながら、イトリさんは少し怪しげに笑う。

 

 

 

「神代利世なんて喰種は――存在しない」

 

 

 

 彼女の言葉が、一瞬僕には理解できなかった。

 

「戸籍のない喰種も多いし、苗字はそれにならってコロコロ変える喰種も多いけど、親から受けた名前は簡単に変える喰種はいないものよ。分かり辛いしね。

 でも、リゼは違う。

 ある時期にぱっと現れて、その後にポイっと元々の名前を捨ててリゼとなった」

「名前を捨てて……」

 

 神代、リゼ。利世。世を利する。

 

 彼女の元の名前も気になるけど、だとすれば直の事、彼女の名前が気になった。本を読むのは、喰種だろうと何だろうと関係なかったんじゃないかと、今振り返って僕は思ってる。とするならば、名づけたそれに含まれた意図や、意味は――。

 

 彼女の生き方そのもの、と言えなくもない。

 でも、どこかに違和感があると、僕は引っかかりを覚えた。

 

『――でも結局、どんなに想っても(わたし)は救えないのにね』

 

 脳裏で時折響くリゼさんの言葉が、今も聞こえたそれが、やはりどこか歪だ。

 

 まるで、何か重要なファクターを見落としているような――。

 

「ま、とりあえず20区に来る前のことについて探ってみればいいんじゃない? というアドバイスな感じだけど、これでどぅ?」

「……」

「聞いてる? カネキチ。うりゃ」

「……? わ、わわっ!?」

 

 考えごとをしていると、イトリさんがしな垂れ掛るように抱き付いてきた。感触やら何やら色々言いたい事はあったけど、それよりも何よりもまず酒くさい。喰種的にやっぱり、あの血酒はアルコールのそれと同様に感じ取れるらしかった。

 

「ねえ、カネキチ?」

 

 イトリさんは、僕の耳元で囁くように言う。

 

「――隠されてるような真実ってのは、どんな時でも残酷だったことの方が多いわよ?

 それを忘れないよーに」

「……肝に銘じます」

「ん、素直でよろしい!」

「いや、あの、ちょ――ッ!」

 

 その後、しばらくイトリさんに弄られたりして、感謝の言葉を言ったりもしたけど。

 店を出た後、僕の脳裏では思考がぐるぐると回っていた。

 

 嘉納教授曰くの、リゼさんの家族。

 神代リゼという喰種の非実在性。

 そして――リゼさんの死自体が、仕組まれていたのではないかということ。

 

「店長たちは、何か知ってるんだろうか」

 

 少なくとも、トーカちゃんとかは知らないと思う。あれで結構顔に出るので、知ってたらちらっと察することができるし。

 

 そんな事を考えながら歩いていると、白い髪の少年とぶつかった。

 

「あ、すみません」

「あああ、こっちこそごめんです。おかしのこと考えてて、しばし我を忘れてました」

 

 なお、彼の手には30円で買えるキャンディがえっと……、一、二、三本握られていた。全部開封されていて、同時に舐めていた。味違うのに不味くないんだろうか……。

 

「それじゃさよなら、そそくさ、あたりが出たらもういっぽん~」

 

 それはアイスじゃないかな、と思いはしたけど、ツッコミを入れる余裕はなかった。

 

 立ち去り際、漂う彼の臭いがどうしてか、うっすらとハンバーグじみた臭いに感じられて――早い所隠れて、ドライバーを装着しなきゃならなかったからだ。もっともドライバー自体は、トーカちゃんが持って帰っていたので、この時は角砂糖に頼ることになったのだけれど。

 

 

 そして、駅で改札を通ろうとしたタイミングで、財布を盗られていたことに気付いた。

 

 

 

 

 

     ※

 

 

 

「スリぃ? 顔とか覚えてねーのかよ」

「顔伏せてたし、よく見えなかった……」

「あら、物騒」

 

 数日後のあんていく。僕の煎れた一杯をテキトーに飲みながら、ヒデは僕の話にツッコミを入れていた。

 「何で駅前まで気付かなかったんだよ」というツッコミにはちょっと困った。いくら何でも、食欲が湧いて危険だったからとは言えない。

 

 そして、そういうこととは別にして、僕はちょっと対応に困っていた。

 

 トーカちゃんも少しやり辛そうに、助け船を出す。

 

「何それ……。被害届けとか出したの?」

「いや、いいよ、そこまで入ってない方のだったし。カツアゲ対策に財布、普段から三つくらいは持ってるから。

 あと、その財布もなんか翌日、お金だけ盗られてたけど返ってきたし。39円と一緒に」

「カツアゲ対策って……」

「39円、お礼かしらそれ」

「いやいやトーカちゃんの言う通りだぜ! 再犯防止の意味合いもあるしな。

 ねぇ――三晃さん」

 

 ヒデの言葉に、彼女は、図書館で一度だけ話した事のある「喰種」の彼女は、「さぁ」と肩をすくめた。

 

 そう、これが僕やトーカちゃんが、ちょっとやり辛くなってる理由。

 事と次第は簡単で、肉のパックを彼女が取りに来たタイミングで、運悪くヒデと遭遇したという話だ。シンプルだけど、それゆえに回避が難しい問題だ。

 

 以前彼女が「ヒデと一緒に行動したことがあった」と言っていたけど、どうやらそれはサークル関係の手伝いらしかった。

 

 相変わらず手が広いヒデに、聡い相手に関わらないと言っていた彼女が引っかかってしまったということか。その割に、表面上のそれを彼女は完璧にこなしていた。

 ヒデの側も普通に同じ学校の生徒同士という感じで、いつもの様に軽くナンパをかけたりするテンションではなかったんだけど。

 

「ったく、お前がマヌケ面さらしてっからだろ? カネキィ」

「あ、西尾先輩」

 

 そして地味に、西尾先輩が救世主だった。

 

 あんていくのウェイター姿を着た西尾さんは、やっぱり僕なんかよりスラっとしていた。立ち姿はいつもの様に軽いノリだったけど、様になるのはうらやましい。

 全体的に体調も回復していて、その動きには淀みがない。

 

「もっとシャキっとして、ギギっと睨んでりゃ、チンケな野郎にゃ狙われねーんだよ。

 まず腹筋割れ腹筋」

「け、結構無茶言いますよね、西尾さん」

「癪だけど、確かに腹はバッキバキの方がいいよ」

「トーカちゃんまで!?」

「動けた方が便利じゃないかしら」

 

 どうやら喰種基準で言うと、この場に僕の味方は居ないらしい。

 

「本読みながら上裸で腹筋してるカネキとか、それはそれでシュールだけどなー」

 

 ヒデ(ブルータス)、お前もか。

 でも僕の様子を見てか、彼は笑いながら話を変えてくれた。

 

「いやでも西尾さん、あんていくのイメージ的にちょっとナンパすぎじゃないっスか?」

「ん? 永近追い出すよ?」

「それはちょっち勘弁を……。って、そういえば何で先輩ここでバイト?

 って、あー! まさかトーカちゃん狙いじゃ……」

「誰が欲しがるんだ、んな単細胞女」

「あ゛?」

「トーカちゃん、どうどう」

 

 声が普段出していいような声音じゃない。

 後ろから押さえる仕草をして、トーカちゃんを宥める。と、何を思ったのか数秒こちらを見て、トーカちゃんは軽くため息をついた。何? と聞けば、何でもないと返答される。

 

「……こっちもこっちで、中々面白い感じね」

 

 スマホを確認しながら、三晃さんはそう言って席を立った。

 一緒にレジの側に向かうと、彼女は小声で僕に話しかけてきた。

 

「今日はもう出なおすわ。永近君、タイミングが悪いわね」

「あはは……。意外と仲が良さそうで、びっくりしました」

「距離をとるにも情報は必要だから、必要があれば多少は仲良くなるわよ。お互いに(ヽヽヽヽ)

「……?」

 

 何だろう、今の言い回しにどこか違和感を覚えたのだけれど。

 会計を済ませてる途中、三晃さんは二本指を立てて言った。

 

「話しておくことが二つ」

「はい? えっと――」

「私の彼氏を名乗ってた、詮索好きの喰種。11区で餌探してる最中、殺されたから」

「!」

 

 脳裏には、数週間前まで店に来ていた人物の肖像が浮かぶ。確か店長にボコボコにされてた、という話をトーカちゃんから聞いたのだけど……。

 

「何か、変な動きがあるって、メールが来てたから。永近君には少し世話になってるし、忠告」

「あ、ありがとうございます……」

「それからもう一つ」

 

 お釣りを受け取り、彼女はあんていくの扉を開ける。 

 

 ベルの音と共に、その向こう側で、小さな人影が見えた。小学生くらいと言って通りそうな、ショートカットの女の子。首からはカメラをぶら下げていて、服装は何故かジャージ姿。

 

 彼女はこちらを見ると、すぐさまカメラを弄り始めた。

 

「えっと……」

「前に言ってた、例外。といっても、本題はそっちじゃないんだけどね」

「それは一体――ッ!」

 

 そして、僕は硬直した。

 

 カメラを弄っている彼女を覗き込む、長身の青年。雑誌の表紙でも飾りそうな、腕をギプスで固定した、臙脂色のスーツ姿の彼は――。

 

 ぱしゃり、と僕と三晃さんがカメラに収められる。

 

「びっくりしたかしら」

「……トーカちゃんが、倒したはずじゃ」

「完全回復はしていないみたいだから、しばらくちょっかいかけては来ないと思うわ。腕もまだ完全にくっついていないみたいだし。

 あと、しばらくは掘さんと遊んでると思うから、少し警戒しておくくらいでいいんじゃないかしら、という話」

「……堀さん?」

「カメラの彼女。私達、高校時代同じ学年だったのよ」

 

 その話に、僕は思わず度肝抜かれた。

 ファインダーをいじっている彼女から視線を外し、向こうの青年、月山習は僕にウィンク。鳥肌が立ってしまうのは、もはや仕方ないと思っていただきたい。

 

「じゃあ、また今度。何かあれば追って知らせてあげるわ」

「あ、はい――」

 

 唖然とする僕に少しだけ、悪戯を成功させた子供のように微笑んで、彼女は店を後にした。

 

 

 

   ※

 

 

 

「あー全く、かったりぃかったりぃ! 美味いのは認めっけど、入れるの面倒だなぁ珈琲」

「インスタントじゃないですからね」

「何より、トーカに教わんなきゃなんねーのが面倒。なんでカネキ、覚えてないんだよ」

「えぇ……。僕、この間研修とれたばっかですよ。全部は流石に……」

『ヘタレクション!』

「……何だよそのインコ? てか何だよヘタレクションって」

 

 四方さんが仕込んだのか、ヒナミちゃんが教えたのか。

 どちらにせよ、意味がわからないヘタレの鳴き声だった。

 

 あんていくの二階にて、僕と西尾さんは休憩中。ぐだっとダレている彼と話しながら、僕はヘタレにエサをやっていた。

 

「まあ、でも助かったには助かったんだけどよぉ、何だかなぁ」

 

 うーんと唸る西尾先輩に苦笑いしながら、僕は先日のことを思い出す。

 

 月山さんと戦った後。つまりはほぼ翌日。

 僕、西尾先輩、店長の三人で、店のバックヤードで話したのだ。その結果、彼は「あんていく」に入店した。

 

 大事な相手(ヒト)がいるのなら、積極的に誰か(ヒト)の命を奪ってはいけない。その相手を失って哀しむヒトが出てくるのだから。

 

 先輩に肉を提供できないかと話してみれば、店長、実は西尾先輩の受け入れ準備はちゃっかり出来ていたという。元々彼の状態を把握していたのか、それとも別な理由があるのかは定かではないけど。

 

『ここでなら、比較的罪を犯さず生きることもできるだろう。

 ただし対価は貰おう。君のためにも、誰の為にもならないからね』

 

「で労働力ってことでバイトになった訳だけど……、ありゃ絶対、貴未のことも全部把握してんだろうなぁ。みんな自分の手元に置こうとしてやがんだ」

「そう……、なんですかね?」

 

 情報の把握については、可能性は高いと僕も思う。あの言い回しは、そう考える事もできる類のものだったから。

 

「管理が趣味なんじゃねぇのか? あのジジィ」

 

 でも、西尾先輩の見解は、全体的にその……。

 

「俺は、芳村のじぃさん信用した訳じゃねーしな。裏じゃ何やってるか全然わかんねぇ。

 ああいうのが一番、裏切ったりする時は怖いからな」

「裏切る、ですか」

「昔、姉ちゃんが死んだ時がそんなもんだった」

 

 ま、だからって訳じゃないけどと、先輩は明るく言う。

 

「それでも20区ではここが一番安全ってのは間違いないだろうし? しばらくはせいぜい、利用させてもらうぜ」

「(素直じゃないなぁ)」

「あ゛、何か言ったか?」

「い、いえ別に……」

 

 凄まれても困る。いや、だって先輩、声音が明らかに明るくなっているというか。

 とても言葉通りに、疑心暗鬼に陥っているような声音じゃなかったというか。

 

「しっかし、お前もよくわかんねぇヤツだよな。貴未助けようとしたり俺店に入れるし。

 お前ら殺しかけたのも俺だけどよ」

「……まあ、逆に殺しかけたっていうのもありますけど、やっぱり、なんか収まりが悪いと言いますか、何と言いましょうか」

「何言ってるかわかんねぇって」

 

 軽く笑いながら、西尾先輩は僕を指差す。

 

「お前ってさ。喰種とか人間とかって、どう思ってる?」

「……大層なものじゃないんですけどね」

 

 苦笑いしながら、僕は彼の質問の答えを考える。

 一つ一つ、考えを声に出す。

 

 人間として、色々な喰種を見てきた。

 喰種として、色々な人間を見てきた。

 

「今のままじゃ、いけないんだとは思います」

 

 全体で言えば、やっぱり喰種にとって人間は餌としか扱われていない。捕食対象としか扱われない以上、どう足掻いたって話し合いにならない。月山さんや、以前の西尾先輩なんかを見ていると、それは強く感じられた。

 

 そして逆説的に、人間からすれば喰種はバケモノのようにしか思われないことが多い。自分達の天敵である以上、それは必然であって、同時に少しだけ違う。捜査官たちの言葉の全てが間違っていることはないけど、でも、だからといって「あんていく」のような立場を、存在しないものとして扱うことは出来ない。

 

「きっと、それは正しくない。

 だから――僕等に必要なのは、たぶん、距離なんだと思います」

「距離?」

「丁度良い距離とか、あるいは干渉できて干渉できない距離というか。

 お互い蹂躙し合う関係のまま行くんじゃなくて、もっと尊重しあっていけば、きっと、共存していけるんじゃないかなと」

 

 お互いに庇い合う西尾先輩たち。

 人間を尊重してバランスを維持しようとする「あんていく」と仮面ライダー。

 

 自分の生命さえすり減らすように、友達との日常を守りたいトーカちゃん。

 

 きっと、そういうのが糸口であって。

 

「――お互いに、手を差し伸べられれば、簡単だと思うんですけどねぇ」

「……何つーか、本当クソみてぇにお人よしだな、お前」

 

 その表現は如何なものだろうか。

 

 西尾先輩は、しかしらしくもない感じに視線を逸らして、半笑いとも呆れともつかない顔になった。何だその顔。

 

「ま、悪くないんじゃねぇの?

 甘いとは思うけど、お前のそーゆーとこに救われる奴も、居るっちゃあ居るだろうしな」

 

 そして何というか西尾先輩は今日、ものすごく変だった。

 貴未からありがとうって言っておいてくれと言われたと言って、白紙のルーズリーフとかくれたり。あと、トーカちゃん用と思われる髪留めとかも貰ったり。

 

 下の階に下りると、トーカちゃんが視線でヘルプを寄越していた。ヒデに掴まっているらしい。

 

「20区ってそんな物騒なんかねぇ。実感ねぇけど」

「あ、えーと……」

「どうしたんだい? ヒデ」

「お、カネキ。アレだ、今ニュースでやってたんだけどよ。11区で何かあって、捜査官の人数増えるんだってよ。20区も」

「増える?」

「本部から派遣されるらしい」

 

 その言葉に、トーカちゃんが僕の隣で少し表情を曇らせた。

 

 裏側の在庫整理ちょっと手伝ってと言って、店番を西尾さんに変わってもらう。

 

「動き出したってことかな? 前の時の――」

「いや、たぶん別な方だと思うけど……。でも、警戒はした方がいいな。あんまり外に出してやれなくなるけど」

 

 ヒナミちゃんについてどうするかの話し合いをしてると、不意にトーカちゃんが「忘れてた」と言って、クインケドライバーを取り出した。

 

「悪かった。持っていっちゃって」

「いや、別にいいよ? ずっとないと大変だけど、一日とかくらいなら」

「……アンタ、ヒトに無茶すんなとか言っておいて、自分は無茶してるよね」

 

 そうなのかな、と頭を傾げると、ため息をつきながら彼女は僕にドライバーを手渡した。

 

「とりあえず、渡すから」

「あ、うん。ありがとう」

「大事に使ってよ」

「……へ?」

 

 それだけ言って、トーカちゃんは仕事に戻るため、バックヤードから出て行く。

 その言い回しに何か引っかかりを覚えながら、僕はドライバーを見返して。

 

 その裏側に、文字が掘りこんであるのを見つけた。

 

 

「……()RA()TA()?」

 

 

 子供が搔いたような乱雑な字で、適当に彫られたようなそれは、確かにローマ字読みでそういう風に読めた。

  

  

  

 




ホリチエたちとの集りは、そんな大した集まりじゃないです。


次回、ようやく2号ライダー装備おひろめ?
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