仮面ライダーハイセ   作:黒兎可

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そろそろ次編に移りますが、あと1、2回は番外編続きです・・・ライダーとは一体、うごごご;

一人相撲回


番外編 似色/後押

 

 

 

 

 

 アオギリから帰ってきて、カネキが変わったことがある。

 確かに見た目も、それから物腰も以前とはどこか違うことに違いはないんだけど、それより大きな問題。

 

 ――あんていくで接客をする時、頻繁に自分の顎を触るようになった。

 

 それの何が問題なのか。以前の私は知らなかったことだけど、でも永近さん、カネキの親友が言うには、ああしてるときは何か誤魔化している時、みたいな感じのことを言われた。

 確かに私を庇う時も、お母さんの話を濁す時も、しょっちゅう顎を触っていたように思う。

 

 今もほら、人間のお客さんから世間話ふられて、会話してる時も……って、話かけてるの、女子大生くらい? って何であんな目きらっきらさせてカネキに話しかけてるんだ、あ゛? 何、私の知らないところでモテてたりする訳?

 客だから凄みはしないけど、いや、そもそも凄む理由もないんだけど。でも私の頭の中はそんな感じのに染まったり染まらなかったり。

 

 こっちに帰ってくるカネキのほっぺを抓ったりすると、普通に「どうしたの?」みたいな目で見てくる。

 何でもないと答えるしかないので、私はそう口にした。

 

「そう。でも、何かあるならちゃんと話してね。慣れてるけど、お客さんの前だし」

「……」

 

 ……何だろ。いつものカネキと言えばいつものカネキなんだけど、ちょっと直視できない。

 っていうか、言われたことに不思議な恥ずかしさが込み上げてくる。あと一緒に、それはこっちの台詞だって言葉も飲み込まないといけない。

 

 微笑むカネキから視線を逸らして、私は裏側から珈琲豆を取りに行く。ニシキが「程々にしてやれよ」とか少しニヤリとしてくるのがどうしてかイラっと来たけど、お店の中なので出来る限り押さえてバックヤードに向かった。

 

 店長はまだ回復していないけど、お店をやってる時間は裏側で豆を挽いたりくらいはしている。だから今も、椅子に座ってこっちを見るその目は、いつものように 穏やかな感じだった。

 

「はい、追加分だ。

 ……ところで、どうかしたかな?」

「はい?」

「何か悩んでるように見えた」

 

 悩んでる? という訳じゃないんだけど……。私的にはカネキも帰ってきて、家にアヤトが(嫌々そうだけど)居る訳だし、これで不満なんてある訳ない。というか、これ以上望むのはどうなんだろう。ヒナミの腹に顔のらくがきして、珍しく怒られるくらいには平和な感じだし。

 とすると、要するにその悩みってのは私自身じゃなくて、私が誰かに対してというものなんだろうけど。

 

 ……色々考えを並べてはみたけど、要はカネキだ。

 

 芳村さんなら何か良い意見でもあるかって思って、私は話した。

 

「カネキ、最近無理してるみたいで。なんか見てられないって言うか」

「ふむ。例えば?」

「上手く言えないんですけど……、接客してる時に、なんか、前よりもっと誤魔化してるって言うか」

「……そういうのは、カネキくんがトーカちゃんに指摘してる側だと思っていたけど、うん。結構」

「結構?」

「いや、何でもないかな。

 さて……、トーカちゃんはそうした場合、カネキくんからどうしてもらっていたかな」

「ど、どうしてって……?」

 

 店長は何を知ってるんだろうと一瞬思ったけど、それは置いといて。

 当たり前みたいに、カネキは話を聞いてくれた。と言うか、私に話せってよく言ってきてた。実際、話をして多少軽くなったり、抱えていたものを共有したせいなのか、なんとなく気恥ずかしかったりもするけど――。

 

「話、聞いてもらってたんですけど、でも……」

「でも?」

 

 ――よくよく考えたら、アイツから話はされたことがなかった。

 

「……ヒトに話させる割に、アイツ自分から話したりしないんですよね。話せば軽くなるなんて言いながら、結局。私から聞けば、少しは話すんですけど」

 

 あの曖昧な顔がそういう表情だってわかったせいか、なんだか見るだけで妙に胸の奥がざわつくって言うか。

 短気な性分なせいか、ぶん殴りたくなる時もあったりする。どうせそれでも誤魔化されるだけだと思うから、やらないけど。

 

「……少しだけ、昔話をしようか」

 

 時間はとらせないと言う店長に、私は首を傾げた。

 

「――ある所に、一人の男が居た。彼は、あまり幸福な生まれではなかった。

 生きる為に多くを蹂躙し、自らを呪っていた」

「……よ、芳村さん?」

「そんな彼がある日――救われた」

 

 切っ掛けは些細なものだったけれど、と店長は微笑む。

 

「自分の周囲は全てが敵で、心の拠り所など何処にもなく。

 しかしそんな彼は、ただその相手と話した。そして、救われた。不思議な――嫌、ともかくだ。

 彼女(ヽヽ)は言った――」

 

 ――貴方が貴方らしく居るだけで、きっと救われる人もいるはずなんです。

 

 話が指し示す事柄と、その対象が誰なのかということを、なんとなく察する。と一緒に、私は話の続きに耳を傾けた。

 

「まあ、そこまで難しいことではない。決して簡単とは言わないがね。

 カネキくんは、カネキくんなりの方法をとるんだ。でも必ずしも、トーカちゃんがそれに合わせる必要はない。方法は無数に存在している」

「……」

「相手の心にしっかりと、耳を傾けてあげることだ。そこまで行けるのに時間はかかるかもしれないが……。

 方法が思い付かないというのなら、皆に聞いて見ると良い。きっと力になってくれる」

「……ありがとう、ございます」

 

 きっと話してくれたことは、店長にとっても大きなことなんだと思う。どこかその目が、遠い場所を見つめているように見えたから。

 私は店長に頭を下げてから、店内に戻った。

 

 

 

 

 で、色々聞いてみた。人によっては多少濁したけど、元気付けてやりたいみたいな感じで。

 

 ケース1。 

「お兄ちゃんも本好きだから、お姉ちゃんの好きな本とか送ったら、喜ぶんじゃないかな。買いに行くなら、私も選んで一緒に買いたい! ――うん、明日行こ!」

 

 ケース2。

「何で俺があんなヤツの……(これ何年かしたら同棲とかし出すんじゃ)、いや、何でもない。

 知らねーけど、姉貴がやるなら大体受け入れるんじゃねーの? 何、それじゃ意味ないって? んなの俺カンケーあるか! そもそも聞いてんじゃねぇ!!」

 

 ケース3。

「ええ~!? と、とかちゃん、それって……(にやり)。うんうん大丈夫大丈夫、バックアップなら任せて!

 じゃあまず、あの彼氏さんの好きそうなものとか……、本、買ってあるの? うんうん、じゃあ、次にシチュエーションだよね。だったら――へ? デートの話でしょ? 違うって、またまたトーカちゃん、顔赤くしちゃって……、あ! ちょっとカラアゲとらないでよ~」

 

 ケース4。

「ふふふ、遂にトーカちゃんも、この魔猿を頼る時が「ごめんなさいね。私もそこまで詳しい訳でも、得意という訳でもなくって……、そもそも年頃の時、一番近くに居たのコレだし。ただ強いて言えば「僕直々の「気持ちが伝われば良いと思うわよ。元気がない理由を聞きたいなら、安心して話してもらえるように。自分が相手にとって安心できる相手になれるのが、一番早いんだけれどね「は、はは、二人とも、少しはこ「なんだかんだでカネキくん、もやしっ子で文学青年だって部分は変わらないと思うから」

 

 ケース5。

「カネキくんもトーカさんも、根はピュアだと思うから、ストレートに言えば良いんじゃないかな。カネキくんでも、心配させるとなればきちんと言うんじゃないかな。

 それでもだったら、気分転換出来ることを何か考えてみたら? 僕なんかだと、みんなで集ってレストラン行ったりして、わいわい騒いだり。あ、そうだ、この間急に帰ってきた『ロマ』って友達が居るんだけど――」

 

 ケース6。

「研が、か。……………………………………………………………………………………、……「蓮ちゃん任せてたら、日が暮れちゃうわよトーカちゃん。どーんとお姉さんにまっかせなさい♪

 で、何々カネキチ? はっはーん……(察し)。じゃ、一つ一つ手ほどきしてあげましょう。まず、肩とか足とか出てる服を着て、呼びます。手招きします。寄り添います。距離を詰めます。しな垂れかかります。後はそのままベッドに力づくで倒して、スケスケ見せてがーっとやってわーっと……へ、何そういう話じゃない? でも男ならそれが一番盛り上がるで――「止めろイトリ。困ってる」……じゃ仕方ないわね。

 んー、真面目に答えると、特にないんじゃないかしら? そーゆーのって。自分で開き直るなり、笑い話に出来るようになるなりするまで待たないとさ。だから、それまで隣で一緒に居てあげるのが、良いオンナってもんさ! 環境第一! で隙を見てごにょごにょ……、きゃー! カネキチもこういう方面苦手そうだったけど、トーカちゃんもそうよねー」

 

 ケース7。

「カネキ、確かに元気ないよなぁ、アヤトの姉ちゃん……。無理してるんなら、俺も力になりてぇ」「バンジョーさん、相談されてるんですよ?」「い、いや俺はだなぁ……。でも、確かにわかんねぇ。すまねぇ」「ダメダメじゃないですかー」「ま、バンジョーさんにその手の話題は、ねぇ」「ど、どういう意味だお前等!」

 

 ケース8。

「……私なんかに頼ってる時点で相当アレなのね、霧嶋さん。なんだか同情できるわね。

 確かに大学が同じと言えば同じだし、永近くんといるのを見かけることも少なくけれど……。表面上は完全に取り繕っているみたいだから、察せないわね。力になれなくてごめんなさい」

 

 ケース……9。

「まさか霧嶋さんから頼られることになるとはねぇ……、インタレスティング! 実に興味深いッ。どれ、僕もマイフェイバリットフレンドの二人目たる彼のため、尽力しようじゃないか。

 だがしかし、カネキ君に元気がないだと……? 何たる悲運! 感情は肉の味を落――ごるぱっ」

 

 

 

 月山の顔面を蹴っ飛ばしてその場から退散した私は、脱力しながらぶらぶらと足を進めていた。

 放課後、なしの礫であんていくに来てた三晃に聞いて、その流れで月山が来た。嫌々ながらも一応聞いて、結果的にこんな感じだった。

 

 三日間で色々聞いて、ヒナミと一緒に本買いに行ったりもしたけど(ちなみに、ヒナミの選んだのは確かにカネキすきそうなヤツだった)。確実っぽい結論は、私的には得られなかった。

 ……まあ、色々参考には出来そうだけど。カヤさんのとか、真面目なイトリさんのとか(そっちけいの話題は勘弁。すごく恥ずかしかったり変な笑い出て来る)。

 

 バイトも終わって、カネキも居ない(今日はシフトじゃない)。訓練はお互いリハビリかねて休んでるところなので、私 はそのまま帰ろうとして――。

 ふと、出入り口のところに残ってたカネキの使い捨て眼帯が沢山入ったのを手に取った。

 

「……」

 

 白い眼帯は前のカネキの象徴みたいなものだけど、っていうか、何でこれこんなとこあんの? 何、忘れて行ったの? ウタさんの作った眼帯(マスクじゃない)付けてること多いから忘れたのか。

 

「……おうちにもってこう」

 

 うん、だって落し物だし。悪いよね、放置しておくのは。そうそう、だから家にも行っても別に悪くは――。

 途端、頭の中でイトリさんの猥談が羽根を生やしてひゃっほうして(意味不明)、私は表で悶絶した。

 

「……何やってんだ? トーカ」

 

 ……そして、それを思いっきり人に見られた。

 あんな話聞かせられたせいだ、と責任転嫁しようとすると、何故かアヤトの半眼が瞼の裏に浮かぶ。

 

 うっせと言いながら顔を上げる。

 

 あ、という風に、ニシキ隣にいた女のヒトが私に頭を下げてきた。見覚えがある。……って、見覚えしかない。名前覚えてないけど、ニシキの彼女。

 私が、一度殺しかけた……、なんとなく、居辛い。

 

 何でもないと言ってその場を去ろうとする私に、でもその女は私の手を掴んだ。

 

「おい貴未――」

「……あ゛?」

「あ、えっと……、何か悩んでるんでしたら、力になりますよ?」

 

 こんな感じで、運命のケース10。

 

 

 

   ※

 

 

 

 カネキ自身は、何があったかなんて私達に話さない。だからみんな、出来る限り前みたいにカネキと話したりしてる。たまにカップを持つ手が震えたり、変なところに力が入るのか壁とかにぶつかったリしてるけど、それはまだ許容範囲だと思う。

 

 でも、髪は真っ白のまま。肌は段々治ってきたけど、爪も真っ黒。

 そうなった理由のせいかは知らないけど、やっぱりカネキは元気がない。何かを隠すようにごまかしたりしてる。

 

 なんて言ったら良いのかわかんないけど、アイツのそういう顔見てるのは、なんか嫌だった。なんでもかんでも一人で背負いこんでるのを見ると、殴りたくなる。

 ただそれと同時になんか恥ずかしくなってくる自分が、それはそれでもやもやするんだけど。

 

 ニシキの彼女にも、詳しくは話せない。ただちょっとしたことに巻き込まれて、それから元気ないって言う、単にそれだけなんだけど。

 

「霧嶋ちゃんは、どうしたいのかな?」

 

 少し怯えながら(当たり前だけど)だけど、それでも砕けた口調で聞いてきた。

 なんだかカネキみたいなこと言われている気がするけど、私は言葉に詰まった。

 

 ニシキが黙ったまま私達の間で視線を往復させる。

 

「……贅沢、なんだけど、」

 

 搾り出すように、私は口を開く。

 

「出来れば……、無理して欲しくない。『今まで通りの毎日』が一番良いけど、なんか、自分を大事にして欲しい」

「うん。……そういうのって、言ってもなかなかわからないものだよね」

 

 訳知り顔で頷くそいつは、ニシキの方を一瞥してから、私に笑いかけた。

 

「私はどっちかって言うと、その、カネキくんみたいな側だったかな。たぶんなんだけど、一杯一杯なんだと思うよ。ショックが大きくて。でも毎日やらないといけないっていうか。でも私よりは立ち直れてる感じ、なのかな?」

「まあ、昔のお前程じゃねーわな」

「うん。だったら――引っ張ってあげれば良いんじゃないかな」

 

 引っ張る? と首を傾げる私に、ニシキの彼女は頷いた。

 

「一緒に居て、気にかけて、遊んだりしてくれるだけでも、すごく楽になると思う。ニシキくんの話とかもまとめると、たぶん大丈夫だと思う。

 だから、カネキくんがそういう風になれるように、少し背伸びしたら良いんじゃないかな」

「背伸びって……」

「だって、霧嶋ちゃんってニシキくんとタイプ違うみたいだし」

 

 余計なお世話だ、と言うニシキに、彼女は少し苦笑い。

 

「ニシキくん結構遊んでたみたいだし……」「オイ」「ま、それはおいて置いて。

 だから何か、やっぱり気分転換させてあげられれば良いんじゃないかな」

 

 あんまり力になれなかったらごめんね、と言って、笑う彼女に、私は一応頭を下げた。

 

 

 

 最後の、ニシキの彼女の話を踏まえると。……やっぱり私が何か頑張るしかないんじゃんか。

 いや、当たり前なんだけど、でも普段の私に出来る頑張りじゃないってことだよな、それって……。背伸びした眼張りって、何よ。

 

 依子の顔が頭を過ぎって、その口が「デート♪」と動くのを幻視して、私は自室で机に突っ伏した。

 

「……あつい」

 

 シャツのボタンを二つまで開けて、ニシキから「要るか?」と、なんか気を使われて手渡されたパンフレットというか、地図というかを開いて見た。地図は8区にある大型ショッピングモールで、かなり有名なところ。どうも二人はそれ帰りだったみたいで、ニシキが紙袋いくつか持ってた。

 

 映画館もあって、本屋も大きくて。……特にそこまで行きたいって訳じゃないけど、ケータイで画像を調べて、なんとなくカネキと一緒に居る映像を思い浮かべる。

 

 うん、悪くないかも。

 

 少なくとも、単にいつも通り振舞ってるよりは強気になって、色々言える、ような気がする。

 カネキも初めて行く所だと困惑してるだろうし、うっかりガード固めてるところから、ぽろっと聞きだせる、かもんない。

 

 

 そしたら、絶対話させてやる。

 私だって話聞いてもらったりしたんだから、アンタだってそうしたって良いんだって、言ってやるんだから。

 

 

 そんな小さな目標を胸にしまいこんでいると、ヒナミから「お姉ちゃんどうしたの、変な笑い声してたよ」とツッコミを入れられてなんか知らないけどすごく焦った。

 

 

 

 

 




トーカ「ぐへへへへ・・・」←ら○ぽーとのパンフレットを読みながら

ヒナミ「(アヤトくん、お姉ちゃんが怖いよぉ)」ちょっと涙目
アヤト「・・・(何想像してやがんだ、あの色ボケトーカ)」汗を垂らしつつ


次回は久々にカネキ視点?
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