仮面ライダーハイセ   作:黒兎可

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※修正忘れてたので結構手が入ります・・・(2015/12/24)


Uc"J" 03:喰種の喫茶店

 

 

 

 

 突進をかける僕に対して、目の前の喰種は上部に甲赫を振るった。瞬間的にそれを判断して中腰の姿勢になりながら、タックルをかます僕。しかし、それを受けてもたじろがず、背中を掴まれて投げられた。

 

 縦に積まれた荷物に激突して、バランスを崩す僕。一歩一歩悠然と歩み寄り、立ち上がり掛けた瞬間目掛けて赫子を振り下ろす――。

 たまらず立ち上がる事を放棄して、僕はバク転して後退。

 

『――鱗・赫ゥ!』

 

 途中でベルトのレバーを一度操作し、背後から自分の赫子を新しく出現させる。手の形をしたこれを使い、更に高く、遠くへと僕は自分の体を飛ばした。

 対する仮面の喰種は、赫子の形をまた変化させる。腕に絡み付いてたそれを外して、再び背中から出たのは大掛かりなパイプのような、結晶のような翼。羽赫か、あれは。

 そこから自分の前方に並ぶ荷物やコンテナ目掛けて、連続で射出して蹴散らした。

 

 このままだと明日のここの場所の業務に差し支えそうだ……、何か方法を考えないと。

 羽赫に変化させたまま、喰種はこちらに距離を詰める。一瞬の馬力が上昇しているらしく、受けた僕の両腕にみしみしと痛みが走った。鱗赫による回復速度の上昇でも、一撃が重い以上は耐久にも限度がある。

 

 弾き飛ばされつつ、周囲の荷物に被害を与えないよう赫子を使って交わし続ける僕。

 そんなことおかまいなしの相手に対して、せめて場所を変えようよと言ってやりたかった。……暴走しているようにも見えるので、言っても聞かない可能性は高いのだけれど。

 しかし、タイミングの問題もあるけど形態変化したなら、こちらもそれに応じよう。ベルトのレバーを押し上げて「上部の」ダイヤルを回し、再度落す。

 

『――(コウ)(カァク)!』

 

 ベルトの音声と同時に、僕の両腕に背中から出てきた赫子が巻き付き――。

 

 飛びかかってくる目の前の相手に、銀色の巨大な拳になったそれで、思い切り殴りつけた。

 吹き飛び転がる喰種。仮面の口が開き、垂れる舌と共に血を吐いている。

 

 立ち上がった相手に、再度両腕で交互に殴る。

 

 跳ね飛ばされる相手を追い、荷物を退けながら走る僕。

 しかし、もうそのタイミングでは既に相手は逃走を開始していた。

 

「速度か……」

『――鱗・赫ゥ!』

 

 再び赫子を切り替えて、僕は「手」で壁や天井のパイプなどを経由しながら走る。倉庫を羽赫の圧倒的な爆発力で逃走する相手に、流石にこれでは追い付けなさそうだけど――。

 それでも相手がスタミナ切れになりはじめたために、段々と距離が縮まる。

 

 室内を出ると、やや相手の足取りがふらふらとし始めていた。勝負をかける、とばかりに僕はより強く足を踏み締める。

 

「!――っはが」

 

 しかし、相手もそれで終わりにすつるもりはないらしい。突如出現した、恐竜のような尻尾を振り回して、彼は僕を壁に叩き付けた。

 再生力はともかくとして、しかし一度距離を開けられてから、追いすがるほどに僕の脚力は高くない。乗りものがある訳でもなく、僕はそのまま変身を解除した。

 

『――くすくす、ざまぁないわね研くん』

「……ほっといてくださいよ」

 

 頭の中に響く彼女、リゼさんの声に僕は肩を落した。いつも通りと言うべきか、彼女は酷く楽しそうだ。マスクを外してカツラと眼帯を付ける僕に、彼女は当然という風に言う。

 

『そんなの当たり前じゃない。貴方、結局逃げられたんでしょ? また被害出るわよ、人間か喰種かは知らないけど。貴方が止められなかったせいで』

「……」

『で、どうするのかしら? このまま放って置くわけにもいかないだろうし』

「……とりあえず、現場に戻ってみます。最初に襲われていて、逃げた喰種が食べていた人間がどこかに転がってるかもしれませんし」

 

 そんな風に言いながら、僕はスマホを取り出して位置の検索。

 さっきの高校生? たちが呼んだのか、救急車のサイレン音が耳に聞こえる。

 

 僕はそこから一歩引いた上で、嗅覚を頼りに探す。食欲、そう食欲だ。「喰種」の嗅覚で食欲がそそられる臭いは、生きた人間より死んだ人間のものだ。無論、僕はそれを食べる訳ではないけれど、しかし死体探しという意味では間違いなく手助けになる。

 

 結果、程なくして発見した。……もう何年も人の手が入っていないような、廃墟同然の家屋だ。そこの庭で、何人もの人間が「喰い散らかされていた」。

 人間と喰種との境界に立つ以上、僕はこの光景について、思う所は多い。あの女性の喰種の食べた後の光景がこれであっても、僕は自分でこういった光景を作り出そうとは思えない。それにこうした方法は、いずれ必ず足が付く――。

 

 そう思っていたら、ぴくり、と死体の山の中で、動くシルエットがあった。

 

「今のは……?」

 

 僕はしゃがみ、その相手を確認する。肩まで開かれた上着を着た、しましまズボンの少年。年は僕より下、トーカちゃんと同じくらいか。髪は薄い色で、下の方が黒になっている。

 ただ、僕の嗅覚が訴える。彼は、人間ではないと――。

 

『――意識がなさそうね、その子』

 

 喰種の少年。酷く憔悴していて、顔色が悪い。

 どう対処すべきか考え、僕は一度「あんていく」に連絡をとった。

 

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 ――もう止めてくれ。

 

『あら、本当に良いの? お兄さん、助けられないわよ?』

 

 ――もう、そんなことどうだって良いから。僕を、解放してくれ。

 

『でも自由になったら、助けに行くんでしょ? 無駄だって分かりながら――優先順位を間違えちゃいけないわよ? 貴方。私の愛しい子の一人。貴方だけでは無理だから、私が骨をあげたのだから』

 

 ――だって、こんなことしてたら僕は――。

 

『拒絶しても良いけど、大丈夫。誰も攻めないし――いずれはみんな、行きつく先は永遠しかないから』

 

 

 

 

 視界は、真っ暗。鼻をくすぐる臭いはどこか芳ばしく、懐かしさすらある。

 それに引っ張られるように僕は悪夢から意識を取り戻した。

 

「ここは……?」

「目が覚めた?」

 

 うっすら目を開けると、僕の真上の方に黒髪の青年が居た。年は僕と同じくらいだろうか。温和そうな目をしていて、そして片方は白い眼帯に覆われていた。

 彼は「ちょっと待って」と言って立ち上がり、部屋の入り口の方に向かう。扉を開けて向こうに何言か言うと、こちらに戻ってきて僕に手を差し伸べた。

 

「無理に起き上がる必要はないけど……、大丈夫そうなら、手を掴んで」

 

 それを借りて起き上がる。見れば、僕はパーカーを着せられていた。

 

「大丈夫? 魘されてたみたいだったけど」

 

 うなされていた? いや、確かに魘されていたんだろう。悪夢に。意味のわからない悪夢に。

 夢の内容を思い出そうとすると、しかしどうしてか左目の奥に強い激痛を覚えて、僕は頭を押さえる。

 

「……どうやら意識は回復したようだね、カネキくん」

「店長」

 

 入り口からやってきた男性。カネキと呼ばれた目の前の彼と同じような、ウェイターのような服を着たヒトだ。皺が刻まれた、優しげな表情。その眼窩の奥は、赤く、黒く染まっていた。

 下に戻って大丈夫だと言う言葉に従い、カネキさんというらしい彼は扉を出て行った。

 

「喰種……、あなた達は一体……?」

「まず、珈琲でもどうかな」

「……こー、ひー?」

「豆を挽いて作る飲み物だ。馴染みが薄いかな? 気に入ってくれれば良いが」

 

 ことり、とテーブルの上にカップを置き、彼は僕に薦めて来た。

 

 こんなもの、口にしたこともない、はずだ。それにそもそも、喰種はヒト以外を食べることは――。

 でも、彼は微笑みながら僕の行動を待っているらしい。そのまま出されたものを受け取らないのもどうか、という思考が過ぎって、少し警戒しながらも僕はカップを手にとった。

 

 不思議なことに、鼻の奥に広がる香りは不快感を示すものではない。

 好奇心にかられて、一口。湯気が立っていたため、下品ながらも音を立ててすする。

 

 口の中に広がった味わいは、苦味と、わずかに甘さのようなものが際立つ一杯。肉を食べた時のような多幸感とはまた違う、落ち着いた味わいがそこにあった。

 

「お、いしい」

「ふふ、ありがとう。いくらでもお替りしてくれ」

「あ、あの、ありがとうございます」

「いえいえ。それじゃあ、自己紹介していこうか。

 私は芳村。ここの喫茶店『あんていく』の店長をやっている。下に降りれば店のフロアになっているからね」

 

 喰種が、喫茶店……?

 

「昨晩、君が憔悴し倒れていたところをカネキくんともう一人、店の仲間が運んできたんだ」

 

 さっきの黒髪の彼か。

 

「発見された状況が状況だったから何かあったのだろうとここに連れてきて、介抱した。調子はどうだい?」

「……いえ……」

「なら良かった。じゃあ次は……、君の知りたい事について多少答えていこうか」

 

 僕は、思わず聞いた。喰種が何故喫茶店などしているのかと。

 

「うん。よく聞かれるよ。察するまでもなく、本来我々は人間社会では身を隠して生きるのが賢いのだからね。

 だが……、私はヒトが、ヒトが生きる世界が好きなんだよ」

「ヒトの、世界……」

「ここ『あんていく』は20区の喰種が集う場所でもある。が同時に喫茶店だからね、人間のお客さんも、常連さんまで出来ている」

 

 だから下に降りる時は気をつけてくれ、と芳村さんは笑った。

 

「今度は、こちらから聞いても良いかな。君は、一体どうして倒れていたのか」

「倒れて、いた……」

 

 再び左目の奥に激痛を覚えて、僕は押さえる。

 はじめから、違和感はあった。目が覚めて、カネキさんの手をとって起き上がって。その時点で、違和感はあった。だけどこうして、指摘されて始めてより明確に違和感の正体を突き止めた。

 

「……なんで?」

 

 

 僕は、自分について覚えていることを言う。

 

「名前は、リオ。年は、16? ……」

「……ひょっとして、思い出せないかな?」

 

 芳村さんの言葉に、僕は首を縦に振った。

 会話や動作など、ある程度常識的な部分は覚えているのに、どうしてか自分のことについて何一つ連想が湧かない。考えの向かう先、向かう先でまるで道が途切れているような、違和感だけがそこに残っていた。

 

「……なるほど。何があったのか考えるのは難しいが、どうやら訳有りのようだね。

 リオくん。君はどうしたい」

 

 僕は、僕は――。突如どうしたいか聞かれて、しかし僕は不思議とあまり思考を介さず答えた。

 

「―ー思い出したい、です。何か、思い出さなきゃいけないことがある気がするんです」

「……わかった、協力しよう」

「えっ?」

「これでも、管理者まがいのこともやっているからね『あんていく』は。見ず知らずとは言え、倒れていたところを誰からも助けられなかった喰種というのも、寂しいじゃないか」

 

 無論、出来る範囲だけれどねと続ける芳村さんに、何故か僕は涙が零れた。

 

「じゃあ、その代わりだ。君には『あんていく』を少し手伝ってもらいたい。良いかな?」

「その……、働いたことなんてない、ですけど、僕、なんかでよければ」

「みんな始めはそうさ。でもすぐ上達するさ。さっきのカネキ君もね」

 

 ではよろしく頼むよ、と言う芳村さんに、僕は頭を下げて。

 そして気恥ずかしさからか、思わず言ってしまった。

 

「……珈琲、もう一杯もらえますか?」

「むろん」

 

 

 

  

 




トーカ「また何か面倒ごと背負い込んで……」上目遣い半眼
カネキ「いや、でも結果的には放っとかないで正解だったし」

ニシキ「……(どうでも良いけど、なんか前より顔近くね?)」


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