No.5 大レースバトル!in A with A 前半戦
No.4 喰種開業医・笛口アサキ 第3患者、第4患者
※キャラ崩壊注意
※2/17誤字修正
『5.イっせーの! で走る』
<――大レースバトル!in A with A 前半戦――>
「大レースバトル、in アオギリ with あんていく~~~~!」
いえーい、だのひゅーひゅー、だのという声が、2つに分かれたチーム内部から叫ばれる。なおたまーに「何なの?」「知らねぇ」「アニキー!」「ついにこの魔猿がベールを脱ぐ時が」「カネキがんばれよー」だの色々な呟きが漏れ聞こえていた。
そんな中、廃墟に臨時的に設置されたようなステージの端、司会者の女性はマイク片手に頭を下げた。
「このコーナーは、東京喰種界の事情通! メタ発言? お前まだここに居ちゃまずいだろ? 細けぇこた良いんだよ! 比類なき女流ミステリー作家、高槻泉が司会を務めさせていただきます!
ルールとしては超簡単! 提示されたレース競技に『あんていく』『アオギリの樹』からそれぞれ指定数ずつ出場し、1位を決める! 1位以外は、競技にまつわる(人間基準で)美味しい食べ物を頂けちゃう! むしろ頂けって感じです!
解説は皆選手ご存知このお方! 東京喰種界トップのジェントル、あんていくオーナーの芳村さんです! きゃー、かっこいー! お父さまになってー!」
「解説の芳村です。……? 高槻さんだったかね、どうぞよろしく。
ところで何故か私は、君の顔立ちに少し妙なデジャブを感じるのだが――」
「さて! 今回の種目はこちら!」
ぱちん、と指を慣らすと廃墟の壁面に文字が映される。
――借り物競争ー―
「借り物競争でございます。お題は三つ、それぞれを借りてチェックポイントに行き、認められれば通過! これを三回繰り返して、一番最初にゴールできたヒトの優勝です。
なお細かいルールですが、お題一つにつき持ってこられたものや相手は、他の選手は使えないことになります。
ではでは出場者、各陣営から2人ずつの皆様はこちら!」
あんていく側からニシキ、トーカが立ち上がりステージへ。
アオギリの側からは鯱、ミザが立ち上がりステージへ。
ニシキは隣の巨大な鯱の立ち姿に唖然とし、ミザは酷く不服そうに首を傾げていた。
「……なんで私は今ここに居るんだろう。何? :reの時点で併合されているから関係ないだろってこと?」
「よし、勝ったなぁ。悪いがコミュニケーション系の授業じゃ俺、成績トップだぜ」
「小童、驕るべから
鯱の妙に気合の入った台詞にびくり、と肩を震わせるニシキ。なおトーカは、何故か体操着(ブルマ姿)にジャージで暗い表情を浮かべていた。隣のニシキが全身ジャージのみの運動着であることを考えても、なかなかに対比としては酷い。
「なお実際に学校指定の運動着がある方は、それっぽい格好をしてもらってます」
「私以外該当者居ないじゃねーかッ! てかブルマじゃないっつーの司会者ァ!」魂の叫びである。
「まあまあ。霧嶋選手はどうなの? 自信ある?」
「去年、見てはいたけど面倒そうってくらい……?」
トーカちゃんファイトー! という少女の声に、少しだけ照れてため息をついた。
なおミザはミザで司会者に話題を振られると「走るくらいなら、一応」とだけ。
「さ、では皆トラックに付いてー? ちなみに各チェックポイントは、それぞれイトリさん、ウタさん、四方さんに付いてもらって居ます」
「よろぴくー!」「うん」「……」
「はいはい、ではでは並びましたね? では位置について、よーい……、ドン!」
ぱん! という音と共にトラックを走り出す四人。身体能力のみで最も素早い鯱と、ルール上指定がなかったためか赫子を出してそれに迫るトーカ。ニシキの「あ、それ汚ねぇ!」という反応にも、特に気にした様子はなかった。
「わーって借りてらっしゃい!」と言うイトリから受け渡された
「さて、第一チェックポイントのお題ですが、芳村さん。状況をどう見ますか?」
「ふむ。詳細についてはチェックポイント突破者が現れないと出ませんが、これは中々トーカちゃんが有利ではないですかね」
「ほうほう? ――おっと、芳村さんの解説通り、今、霧嶋トーカ選手が第一チェックポイントを突破ァ! 鯱選手は逃げ惑うカネキくんを必死の形相で追跡中!」
トーカが突破した時点で、ステージのスクリーンには「お題1:家族」と表示された。
アヤトが面倒そうにギャラリーに帰って行く中、ミザが「こんなの公式で対応してないでしょーが!」と憤怒の表情である。
「さて単独トップに躍り出た霧嶋トーカ選手ですが! お? おっと、西尾ニシキ選手が連れてきたのは? 女性? おっと、イトリ選手からおっけーが出ました! 将来の家族というのもおっけー扱いな模様ですノロケやがって! チョコ食わせられて吐き出しやがれ!」
「高槻さん、落ち着いて……。
さてしかし、第二関門もまたトーカちゃんは有利かもしれませんねぇ」
月山習を連れて行ったトーカに、ウタが無言でサムズアップ。画面に出力された「お題その2:嫌いな相手」という文字に「Why!?」と何故かショックを受けたらしい月山。
「さーてレースもラストスパート? 現在の選手の状況は、ついに鯱選手が第二チェックポイントに突入! ミザ選手は『私、聞いてない!?』と第一から動けず、西尾ニシキ選手と霧嶋トーカ選手の一騎打ちか? あーっと、そして古間円児さんがすごく微妙な顔をして西尾ニシキ選手に連れられてきてるぞ!」
「嫌いと言っても100%の嫌いという訳ではないんでしょうが、これは後で色々響いてきそうですねぇ」
「おっと? しかしなにやら彼独自の理論で納得したようで、訳知り顔で頷いてます。わかってる、わかってるよニシキ君、と口が動いてますね」
「私としては後、バックブリーガーされて連行されたカネキくんの事がひたすらに気になりますが……」
「さて、しかし最終ラウンド。固まって動けなくなってる霧嶋トーカ選手! おっと、西尾ニシキ選手がお題を見て爆笑! 霧嶋トーカ選手の肩をぽんぽんと叩きます! あれは何だ、勝者の余裕か!?」
「下手をするととんでもないカミングアウトになりかねないお題ですからね。いい加減腹をくくるしかないでしょう」
「随分コメントが手厳しいですねぇ……。というより、今回のお題は芳村さん指定でしょう?」
「煮え切らないのは構わないですが、早い所決着を付けないと後悔先に立たないかもしれませんからね。早いうちに、というところでしょうか」
「おっと! そして再び西尾ニシキ選手、自分の彼女選手の手を引いた! ということは今回のお題は? お題は? あーっと、そして霧嶋トーカ選手、意を決したように伸びている金木研選手に走る! 覚悟を決めた乙女の顔だ、が間に合わない、良いのかそれで! 本人気絶してるのが幸か不幸か!?
あーっと、そしてゴオオオオオオオルッ! 優勝者は、西尾ニシキ選手です!」
会場から上がる拍手。倒れたカネキを抱き起こしはしたものの、意識を取り戻させるかさせまいか迷いに迷っているトーカ。
スクリーンには「お題その3:好きなヒト」と表示されてたりもするので、察するに余りある。
「さて、では罰ゲームのコーナーです」
「罰ゲームって言ったよこの司会者!?」
ミザの言葉を、高槻泉は軽く流した。
「本日のご馳走はこちら! 栄養士を目指す花の女子高生、小坂依子作の特性からあげ! カネキメシを踏まえたバージョンアップ使用のそれをとくご賞味あれ!」
トーカは「まあ慣れてるし」と(表面上は)平然と口に運ぶ。
鯱は「奴ヌッ?」と口の中で咀嚼する。修行か何かの一環とでも思ってるのだろうか。
この二人はまだまともな反応だったが、ミザの反応が圧倒的に悪かった。口に含んだ瞬間、カメラが回っているためか意識して笑顔を作ろうとしていたが、十秒も立たず「アッー!」と叫び失踪。
ナキがなんとなくそれを見て「ざまぁねーな!」みたいな表情をしていた。
―――――――――――――――――――――
『4.ェトしゃんと盛り上がろう!』
暗転した場所で、丸椅子の上に座る男性。背中をこちらに向けて、黒い白衣を身にまとっている。髪は長いというより、切るのを面倒がっているのか適当に束ねている。
そんな彼が、ちらりとこちらに身体を向けた。人の良さそうな顔をしているが、少し疲れている印象である。ひげはうっすらと生えており、メガネに、首には聴診器を巻いていた。
「――やぁ。理性と本能の狭間に囚われた皆さん。
私は笛口アサキ。喰種の赫子に目がないドクターです」
特に妻の赫子の形状の美しさといったら、と何かを語ろうとした瞬間、口から涎が垂れかけ、じゅるりと袖で拭った。
<――喰種開業医・笛口アサキ 第3患者――>
今は使われなくなった、とあるコンテナハウス。空き地の管理も行き届いて折らず、一見して廃墟のそれだ。そんな場所に看板も立てず、ひっそりと経営しているのが笛口アサキの診療所だ。
喰種の医者として、今日もやってくる患者たちを、食糧と引き買えに診ているのだ。
さて。
「次の方どうぞ? ……? 嗚呼、大丈夫です。私は喰種専門のドクター。ヘルスケアからメンタルまで、大概のことは受け持ち、より素晴らしい赫子を……(じゅるり)
おっと失礼。ともあれ、ご心配なさらず」
アサキの言葉に、扉を開けるか開けないか躊躇していたシルエットは、やがて諦めたように扉を開けた。
現れた男は、顔面に刺青が入っていた。髪は染めて真ん中分け。荒々しく切り傷の入った革のジャケットを着用していた。
「せ、先生……、どうもです」
「おお、ルチさんじゃないですか。今日はどうしましたか?」
ばつが悪そうに部屋に入って椅子に座るルチ。アサキは微笑みながらも、内心ではテンションが上がっていた。
(ルチ……一応の本名は加賀美竜地。20区にかつて君臨した「
戦闘テクニックや赫子の訓練方式はリーダーのそれを参考にしており、クセのない動きや素早さで敵を翻弄するスタイルは、単体でも侮り難くグループでの司令塔的立ち位置に相応しい!)
もっともそんな内心は臆面にも出さず、アサキはルチの相談に乗っていた。
見た目は乱暴そうに見えるルチだが、世話になっているせいかアサキには愁傷な態度である。
「スミマセン。傷がある訳でもないのに、毎度毎度……」
「まあ、力を誇示するためとは言え無茶を続ければそれ相応に代償は出ますからねぇ。人間を食べる、という行為にしても赫胞の限界というのもありますし、血中のRc値が上がりすぎれば精神にも異常を来たすことがありますから、その点にはご注意下さいね。
それで、本日は?」
「……また、ダメだった」
ルチの打ち開ける悩みは、ひとえにある女性についてのものだ。恋慕ではなく憧憬。彼は、かつて自分が所属したグループのリーダーたる女性について相談していた。
「まあこんな商売やって十数年も経つと、色々なヒトを見てくるのでね。そういうのも一つの生き方だとは思いますが、認められないなら何度でも行かないと、ストレスも出てしまうでしょう。どちらの方がということもありますが、今の所は赫子に悪い影響が出て居ないようですし」
「それでも俺は……、俺達は、あの頃のあのヒトに戻ってもらいたいんですよ」
「複雑なところですかねぇ。内心。それはそうと……、ルチさん、ここ数年は貴方の赫子を見てませんから、そろそろ検診をしたいところですねぇ」
うっ、とルチの表情が引き攣った。
「おや、どうされました?」
「い、いや、別に構わないんだが、先生さん検診中の顔が――」
「どうかしましたか? いけませんねぇ。あくまでこれは診療ですよ?」
「そ、そうかい……?」
渋々、というように背中の肩甲骨の上から、赫子を展開するルチ。翼のようなそれを見て、アサキの目はちょっとヤバイ感じにいっちゃった。
両手に赤い手袋を装着して、赫子に直に触れる。
「はぁ……、やはり素晴らしいですねぇ。荒々しく磨かれたこのイメージ。クセがついていない、柔軟なように一見すれば見えますが、その実は多くの戦闘パターンが蓄積されたからこその形状。
許されるなら検体サンプルとして、一つ一つじっくり解析したいッ!」
「だからそれ止めてくれって!」
赫子を仕舞い、ルチはずざざ、と入り口の壁に背中を付けた。明らかに表情が引いている。荒くれ者のような容貌が、それに似合わないくらいに引いていた。
アサキは不思議がって首を傾げる。「あくまで診療ですから」と微笑む彼の目は、どうしてか据わっており、歴戦のルチをしても得体の知れない恐怖が込み上げてくる類のそれである。彼以外の医者が居ないため、暴力的に出られないというのも理由の一端だが、どちらにせよ本質的にはルチは彼の診療を苦手としていた。
「大丈夫、痛くしないから、痛くしないから!」
「そ、それ以前の問題だ先生さんッ、チっ!?」
にじり寄ってくるアサキに恐怖を感じ、ルチはたまたま開いていた窓に向かって飛びこみ逃走を計る。がこれには何故かアサキも負けじと白衣を翻し、デスクワークの多そうなそのイメージを根底から覆すような圧倒的運動神経で彼の追跡をはじめた。
「痛くない、痛くしないから――!」
まるでゾンビ映画か何かのごとく、色々振りきれたアサキはルチを追いかける。
逃げるルチのその表情は、CCGの特等捜査官に出くわした程に怯えていた。
※
<――喰種開業医・笛口アサキ 第4患者――>
今は使われなくなった、とあるコンテナハウス。空き地の管理も行き届いて折らず、一見して廃墟のそれだ。そんな場所に看板も立てず、ひっそりと経営しているのが笛口アサキの診療所だ。
喰種の医者として、今日もやってくる患者たちを、食糧と引き買えに診ているのだ。
「次の方、どうぞー」
さて。
「変なのキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!」
「変なのとは……失礼な同業者だよねぇ」
扉を開けた喰種は、動物の耳のようなものの付いたフードを被った、全身に包帯をまとった相手だった。更にその上から吸血鬼とかが着ていそうな、赤と黒のマントを纏っているので格好に一貫性がない。
妙にテンションの高い声を上げたものの、一応は来客である。患者かどうかは「同業者」という言葉から怪しくはなったが、ともあれ一度謝罪し、席に座るよう促した。
「やあどうも。エトだよ。某所で医者まがいのこともやってるよー(まぁ死神ドクターだけど)」
「どうも、笛口アサキです……?(今何か呟きが聞こえたような気が)」
「やーやーどうも。なんだか知り合いの男の子から、赫子に目がない医者が居るって聞いてネ。ちょっと話してみたくなったんだ。
他のお客さん来たら出るから、それまで話をしようよ」
「男の子……? それはともかく、話とは?」
「どうやったら赫子が強くなるかとか、色々かなー。例えば私のなんだけど」
ぞぞぞ、と纏っていたマントに口が複数出現する。ぎょっとするアサキ。そしてマントは口々に「エトしゃん」だの「びっくり」「サプライズ」だの小声で会話をはじめた。
「そうか……、そのマントさては赫子ですね!!」
「そういうこと。ドライバー付けたら分離したし、まあそのままにしておくのもがさばるから薄く伸ばしてみたんだよねー。ほら、こっちの方が(死神博士)らしいじゃん?」
「(何かまた小声が聞こえた気がするけど……)しかし、しゃべる赫子とはまた珍妙な」
「これはこれで、扱う分には普通に使えるから結構便利なんだけどねー。治療中はよく言う事聞いてくれるし」
「ちょっと、触らせてもらっても?」
赤い手袋を装着したアサキに、エトは特に気にせずマントを差し出した。
アサキはそれを少し手に取り、じっと顔を近づけて分析する。
(手触りは普通のマントだがどこか革のような質感がある。そして口が開いた箇所は裏側が膨れて、最低限の声帯のような器官が発生している? わざわざそうなる以上はそうなるだけのイメージが必要なはずだが、聞いている限り口の会話は別個になっている以上、大本にイメージがあるということか。
しかし何よりそれよりも気になるのは……この包帯の下、一体どんな種類の赫子が詰まっているのか。組織に属してると言った以上、また同業者である以上赫子をそうそう露出させることはないだろうが、しかしどうしても知りたい。彼女の真価を――)
アサキの視線が、マントの下、椅子に座ったためローブから露出した、中途半端に包帯が巻かれた足が露出している。ただしアサキの意識は彼女の身体などにはない。
マントから手を離すと、さっとローブに手をかけようとするアサキ。それをさっと手で払って、座りながらエトは一歩後退した。
「な、何? どうしたの?」
「ガードは固いか……、こうなれば――ッ」
日中、妻帯者とは思えない速度で自分より身長の小さな彼女の服(?)を脱がせようと躍起になる医者の姿がそこにはあった。
対してエトは、本気で抵抗していた。心なし声が震えてる。平常時の彼女を知っていれば何事かと目を見張る光景であるが、どちらかと言うと彼女の恐怖は当たり前にありえる勘違いから派生してる類のものだ。赫子を出さないあたり既に勘違いの最たるものであるが、もっとも彼女自身、相手を殺そうとしていないだけまだマシな対応と見るべきか、気が動転していると見るべきか。
「こ、これはあくまで研究の一環だから……、一環だからちょっと、大人しくして――」
「ちょ、止めて、格好とか痴女い自覚はあるけど他人に剥かれる趣味はないから! 流石に!
きゃあああああッ!!!!」
『――
「うをっふ!?」
腰にドライバーを装着し、レバーを落としたエト。診療所の一室が一瞬真っ赤に染まり、というか輝き、数秒後には猛烈な勢いで扉を開けて逃走するエトの姿が。
突然の事態に驚いた妻、笛口リョーコは、急いで室内に駆け込む。
床で大の字に倒れたアサキは、天井を見ながらぼそりと呟いた。
「赫者か。……流石にそこまで行かないと無理か。
あっはははははは――!」
大笑いを上げる旦那の姿を見て、彼女は軽く頭を抱えながらも抱き起こした。
※番号の順番がおかしいのは仕様です
※配信内容を間違えたので修正・・・