仮面ライダーハイセ   作:黒兎可

73 / 145
本作における当然の帰結
エピローグの余韻を、おそらく完全にぶち壊す可能性が高いので、読む際はそこだけ注意を・・・ 

あ、ネット版外編はナンバリング版も別に作りました;


Uc"J" ディレクターズカット版エピローグ

 

 

 

「――どうだ、エト」

「大丈夫。これだけ残ってれば、また『生まれ変わる』よ。無論、パーツは少し必要になるけど――」

 

 

 

 鈍い視界には、ライトの光。

 見覚えのある少女のような女性が。片方だけ赫眼を光らせて、微笑みながら僕を見ている。誰だっけ、このヒト――。

 

 

 

「”骨”については、もうちょっと実験が必要かな?」

 

 僕の左目の、真っ暗な視界を擦り。胸に刺さった丸ノコのようなそれを軽く摘んで。

 

「もう、君の枷はない。鏡を見て、浮き出た痣を見て、狂ってしまう必要もない。

 だから、もう大丈夫」

 

 

 

 

 ――今は、お眠りなさい。

 

 

 

 その言葉と一緒に、彼女は背中から出した赫子をゆっくりと僕に近づけて――。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃墟のような光景の中――。

 

 こうして夜に一人で居ると、昔のことを思い出す。……思いだせるようになったんだ。兄さんと二人で、色々な廃墟に移って寝泊りした時のことを。

 夜、寝られない時は色々な話を聞かせてくれたことも。楽しくて、睡魔に飲まれて気が付くと朝になって。そういうのが僕は好きだった。兄さんも兄さんで、どこからそういう話を仕入れてくるのかわからなかったけど、たぶん図書館とかなんだろうと今なら思える。

 

 そういえば、食糧の調達はずっと兄さんに頼りっきりだったっけ。

 今思えば、あの赤々とした光景を生み出さないように、僕が暴走しないように注意をしていたんだろう。それだけ僕が危険ならば、CCGも優先的に駆逐しようとするだろうから。

 

 そういえば、一人で身の回りのことをこなすのも随分慣れたっけ。

 記憶を辿りながら、僕はコーヒー道具を取り出して動かす。

 

 カップを二つ揃えて、それぞれに。

 湯を沸かし、引いていた珈琲豆へ「の」の字に注ぐ。泡が膨らむごとに香る芳ばしいそれは、何度嗅いでも不思議な気分だ。

 

 芳村さんの味には程遠い僕の腕前。

 それでも、あんていくと出会って僕が出来るようになったことだ。

 

 一口飲めば、まだまだな味わいと一緒に思い出す、あんていくの日々。

 

 トーカさんに、ニシキさんに、古間さんにカヤさんに、万丈さんたちやヒナミちゃん。

 四方さんに月山さんに、店長や――カネキさん。

 

 

 ――みんな、どうしているだろう。

 

 

 胸を締め付ける痛みに、僕は大丈夫だと言い聞かせる。

 

 自分の分と、もう一つの手を付けてないカップを手に取り、僕はテーブルに向かって運ぶ。

 

 

「――お待たせ、兄さん」

 

 兄さんは何も言わず、ただ微笑んだ。

 テーブルに並ぶ二つのカップ。僕は自分の分を手に取り、兄さんは目の前のものを取って、一口。

 

 味について聞くと、少し困ったように笑う兄さん。

 

 一口飲んで、僕は口を開いた。話した事が沢山あるんだ。兄さんに。

 

 兄さんが居なくなってからのことを。

 兄さんにかけてきた迷惑や、感謝を。

 

 そして、もっともっと沢山のことを。

 少しだけ兄さんみたい思えたカネキさんのこととか、ニシキさんの惚気とか、初々しいトーカさんのこととか。本当は、ちょっと好きになりかけていたこととか。

 人間の食べ物の味とか、お店で働くこととか、お客さんのこととか。図書館に初めて行って、本をいくつか読んだりしたとか。前に兄さんが話してくれたものが、その中にあったりしたこととか――。

 

 

 

 空はどこまでも、深く優しく続いていて――僕等は、いつまでも自由だった。

 

 僕の話に兄さんは微笑む。僕は、それが嬉しくていくらでも話して。

 

 

 

 どれくらいの時間が経ったのか。空が、光を帯びはじめる。

 

 

 

 兄さんは立ち上がり、僕の後ろから背を押す。戸惑う僕に微笑みながら、兄さんは光の方へ、僕を押し返して――。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ハッピー、バースディ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は、生まれた。

 

 

 

 

 




※元ネタがわかったヒト用に注意
別に若本声にはなってないと思います;
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。