「ふーむ…」
町の通りにある【ヘファイストス・ファミリア】の店、
その店の前でガラスの向こうに並べられた剣をまじまじと見つめる少年、キリトは、顎に指を添えて唸り続けていた。
「そんな怖い顔してどうしたの?」
「へっ?」
いきなり聞こえてきた声に驚く。
俺としたことが気配を全く感じなかった…。どれだけ考えてんだよ…。
そう思いながら、声をかけてきた少年、ベルにキリトは向き直った。
「いやちょっとした考え事だよ。ベルはダンジョンから帰ってきたところか?」
「うん、ギルドにも行ってもう帰るところだったんだけど。剣を睨みつけてるキリトが目に入ったから」
「に、睨んでたか?」
「うん、すっごく」
そう言って苦笑いするベル。俺は全く自覚がなかったので溜息をついた。
「それで、なんの考え事を?」
「えっ?ああ、実はもう一本剣が欲しくてな」
「もう一本?その剣使えなくなっちゃったの?」
「いや、実はな。二刀流も試したくなってな」
「二刀流?キリトできるの?」
「なめるなよ。昔、二刀流も鍛えてたんだ」
「へぇ〜っ!」
目を輝かせるベルに苦笑いしていると。「あれっ?」とベルが首をかしげた。
「じゃあ、悩んでたのは…」
「問題のその剣がなかなか…」
できるだけ重い剣が好きな俺はLv7ともなると、相当の重さを要求する。そんじょそこらの店ではそんなに重いものは売っていないだろう。使い手が使えないんじゃ話にならない。
そんなこんなでなかなか決まらず唸っているわけだ。
「確かに、キリトの剣。すごい重いもんね…。うーん」
と、少し考え込んだベルは俺と同様唸り始めた。
「あっ!!」
「のわっ!?ど、どうした…?」
いきなりの大声に驚いて尋ねると、ベルはバッとこちらに顔を向け詰め寄ってきた。
「あるっ!あるよっ!たぶん!!」
「た、たぶん?」
そう言って「ちょとついてきてっ」とベルは俺の腕を掴み、歩き出した。
* * *
「で、なんで剣のありかが【ヘスティア・ファミリア】なんだ…?」
「まーまー、とりあえず入ってよ」
そのまま背中を押され、俺は【ヘスティア・ファミリア】に入って行った。
「遅かったねベル君!…ってキリト君、どうしたんだい?」
「いや、自分もよくわからないんですが…」
「へっ?」
出迎えに来たヘスティア様の質問に頬をかきながら苦笑いした。
「僕が呼んだんです」
「ベル君が?ふんふん随分と仲がいいな〜二人はっ」
そう言って何か自分の子供が友達を連れて来た時のお母さんみたいな顔をしたヘスティア様は「まぁゆっくりしていってくれ」と言って行ってしまった。
「で、剣はどこに?」
「えっとね、ちょっと付いてきて」
そうして俺は、部屋へ入って行った。
「おかえりベル」
「あっ、ただいまアレシアさん」
「アレシアって、そのままここにいたのか」
「うん、ここのファミリアに入ったんだよ」
「ええっ!?」
いきなりの告白に仰け反り返ってしまう。
「ス、ステイタスとかは…?」
「あはは、それは流石に。形だけのってことになっちゃってるけどね」
「へぇ〜」
恩恵は授けられていないけど、アレシアはここに残ることを決めたらしい。今は大切な仲間だと話すベルを見て自然と笑みがこぼれた。
「あっ、そうだった。アレシアさん、ヴェルフどこにいるか分かりますか?」
「えっ?ヴェルフ?」
いきなり出てきた名前に俺は首をかしげた。尋ねられたアレシアは一度固まると首を横に振った。とそこへ
「ベル様遅かったですね。どこで道草してたんですか〜?」
「リ、リリっ」
お風呂から上がった後のリリがベルに詰め寄った。当の本人はアタフタと慌てている。
「べ、別に道草なんてしてないよっ」
「どうですかねっ、また女性と遊んでいたのではないですかっ!」
「ち、違うって!キリトと話してたんだ!」
「え?」
そう言ってやっと俺の存在に気づいたようだ。
「どうも…」
「どうしたんですか?もう夜になりますよ?」
「いやちょっとな」
やっと疑いが腫れてため息をついているベルに苦笑いしていると、 ベルのお目当てとしていたヴェルフ、それに命が入ってきた。
「ん?キリト」
「キリト殿」
「よおヴェルフ、命」
「あっ、ヴェルフ!探してたんだ」
「俺を?」
「うん、ドロップアイテムのことで」
「ドロップアイテム?」
俺が尋ねると、ヴェルフが答えた。
「この前のドラゴン。あれのだ」
「ああ、あれか」
数日前のドラゴン討伐の際に出たドロップアイテムでこれがまた相当な強度だった。なんせあの馬鹿力なアマゾネス二人の攻撃を弾き返したほどだ。重さもかなりあり、俺が持ってやっとのこと持って帰れたくらいだ。そのせいで帰りは行きよりきつくて、ついた頃にはみんなヘトヘトで倒れこんでしまった。
「なるほど、それを使って作るってことか。でも、いいのか?俺が使って」
「どう?みんな」
「ああ、構わないぜ。なんせあそこまで行けたのはキリトのおかげだし、ドロップアイテムを持ってこられたのもキリトのおかげだ」
「私もヴェルフ殿と同意見です」
「右に同じです」
どうやら【ヘスティア・ファミリア】は承諾してくれるようだ。
「アイズ達も、好きに使ってくれていいって言ってたしな」
すると、何か考え込んでいたヴェルフが口を開いた。
「キリト、ファミリアにスミスはいるのか?」
「ああ、リズベットっていうやつがな」
「腕は確かか?」
「俺たちの武器は殆どあいつもちだ」
「そうか、なら良かった」
「キリトももう帰ったほうがよさそうだしね」
「え?」
そう言われ外を見ると、もうすっかり真っ暗だった。
「ごめんねキリト。こんな遅くなっちゃって」
「いやいいよ、じゃあ俺は帰るかなっ」
「うん、おやすみ」
「ああ」
そうしてドアを開けるとちょうどヘスティア様がはいってくるところだった。
「お、キリト君帰るのかい?」
「はい、お邪魔しました」
「ああ、夜道は気をつけろよっ!」
「ははは…」
冗談で言ってくるヘスティア様にもう一度挨拶し、家を出たのだった。
* * *
「へぇーっ!これが65階層で出てきたっていうドラゴンの」
朝。俺はベルとの稽古が終わった後、リズにドロップアイテムを見せた。
「ああ、鱗だ」
「全くあんた達も無理するわよねー。65階層って」
「呆れてくれるな。で、頼めるか?」
「ええ、任せなさい!2日もらえる?」
「ああ、頼む」
そうして話しているとアスナとシリカが入ってきた。
「あっ!キリト君ついに?」
「おう」
「わあっ!楽しみです。キリトさんの二刀流っ!」
「また試してみたいとか言って、ダンジョンにこもるんじゃないわよー」
「うっ、そ、それは」
「ホントに好きだね〜キリト君」
「体は大切にしてくださいっ!いくらLv7でも人間なんですからっ!」
「なんかギリギリ人間みたいな言い方じゃなかったか…?」
「うるさいわね、ていうかここにきてやっと登場とかなんなのよ!もっと喋らせなさいよ!」
「そうです!全然登場シーンないです!」
「俺に言うな!」
そうして愚痴を聞かされ続けるのだった。
* * *
『オオーーッ!!』
僕達【ヘスティア・ファミリア】は、前に置かれた剣に釘付けとなった。
エレラルドに光るその剣は、とても鮮やかで美しい。細さ、長さはもう一本の剣【エリュシデータ】と同じだ。きっと重さも負けていないだろう。
「こ、こんな重いのを片手ずつ持つの…?」
「ああ、そうだ」
『うへーっ』
こんなことできるのはキリトぐらいだとみんな思うのだった。
「で、昨日言ってたリズベットっていうのが…」
「そっ、私よっ!まったく苦労したんだからっ。硬いし重いしで」
「ほ、ホントに感謝してますよ…」
「うん?だったら今度ご飯おごりなさいよね」
「あ!リズさんだけずるいですっ!キリトさんっ!私とも行きましょうねっ!」
その光景にアスナさんは微笑む、恋人としての余裕だろうか…。凄いな…
「おーおー、キリト君。モテモテじゃないかっ!」
「そ、そんなんじゃないですよっ」
そんなこんなでキリトは【エリュシデータ】と新しく、【ダークリパルサー】を手に入れたのだった。