お久しぶりです!
今回のお話は先月末ぐらいに公開予定でしたが、最初は次回書くお話と1話として書いていたので筆が止まっていました。ですが思ったより長くなりそうだったのでこうして2話に区切ることにしました。
さて、東京地区予選決勝の結果はいかに……?
───ラブライブ!東京地区予選決勝、全パフォーマンス終了後。
───UTX、大スクリーン前。
この場には予選決勝でパフォーマンスを終えたグループのメンバーやその学校の生徒、そして一般人が集まっていた。
東京地区予選決勝は特設ステージで行われていたが、そのステージには電力などの関係もあってスクリーンを取り付けることができなかった。なのでこうしてUTXのスクリーンで結果発表をすることになっている。
その結果発表を待つ人々はまだかまだかとソワソワしていた。そして………
『ラブライブ!東京地区予選』
『決勝』
『WINNER』
スクリーンに映像が映し出されると大きな歓声が上がった。さらにデカデカと表示された文字ひとつひとつにも歓声が上がり、出場グループのメンバーは固唾を飲んで続きの文字を待つ。
『Shooting Stars』
その結果がついに出た。結果はShooting Starsの勝利だ。
結果を伝える画面が表示され、それを見ていた人達からの大きな歓声と拍手がShooting Starsのみんなを包んだ。
「やったー!勝ったよ!」
「うん!そうだね!」
「やったにゃー!」
「いえーい!」
亜里沙と雪穂は興奮が収まり切らず互いに手を取って喜びを露わにした。
凛と穂乃果はいつもと変わらず大喜びだった。
花陽は泣きそうになりながら喜び、真姫は顔では当たり前のようにしているが内面はとても喜んでいる。
ことりは海未にハイタッチをしようと誘い、海未はそれに恥ずかしそうに応じたが、そんな表情は喜んでいた。
童子はShooting Starsのみんなにお祝いの言葉をかけにまわっていた。
「ついに、行けるのね……!」
「うん……!」
真癒美と瑞希は大スクリーンを見上げながらこれから先、秋葉ドームで踊れることを思って興奮を抑えきれずにいた。
「でも……」
「? でも……?」
「───これは、先輩達のおかげなのかな……?」
「っ……!?」
真癒美がそんな気持ちを幼馴染である瑞希に打ち明けたその姿を、ナオキは少し離れたところから見ていた。
────あいつら、やっぱり……
ナオキは歯を食いしばり拳を強く握りながら息を細く吸い込んだ。
────1月1日、昼前。
「ふわぁ……」
「もう、はしたないわよ」
「すまんすまん。でも昨日は遅くまで起きてたからまだ眠気が……ふわぁ……」
太陽が新年初の輝きを見せているがまだ寒さが和らがない中、厚着で身を包んだナオキは絵里と亜里沙と共に神田明神に向かって歩いていた。
今日はアイドル研究部のみんなで初詣に行く……予定だったのだが、あいにく元μ’sのメンバー達は希に拉致された。では何故絵里はいるのかというと………
『えりちの身柄は下っ端のナオキくんに預ける!』
と言われ、こうしてナオキと行動を共にしているというわけである。
「また巫女服着てお手伝いしたかったのになぁ……」
「はははっ、そんなに巫女服が気に入ってたのか?」
「………知らない」
「えっ、ちょっ、絵里……!?」
ナオキは急に不機嫌になって早歩きをする絵里の理由がわからず困惑した。隣では亜里沙がため息をついたのでそのことにもショックを受けた。
───私はただまたナオキと一緒にお手伝いしたいだけなのよ、バカ。
絵里はそんなことを口に出せずに少しだけ頰を赤くしてそのまま神田明神の方に向かっていった。
────神田明神。
「やっぱり人がいっぱいだな」
「そうね。時間ももうすぐお昼だし」
男坂の前で待ち合わせをしており、ナオキ達は男坂の方から本殿の方に向かって行く人達を眺めながらみんなが来るのを待っていた。
「あっ、来た!お〜い!」
亜里沙が手を振る先には着物姿の真癒美と瑞希がこちらに向かって歩いてきた。2人は手を振る亜里沙に手を振り返してから隣にいる絵里に気が付きびっくりした表情を浮かべて小さく頭を下げた。
「あけましておめでとう!」
「あけましておめでとう。おっ、2人とも着物か」
「あけましておめでとう。似合ってるわよ」
「あけましておめでとうございます。ありがとうございます……」
「あけましておめでとうございます。えへへへへ……」
新年の挨拶を交わして、着物姿をナオキと絵里に褒められた2人は照れた様子を見せた。
2人の着物はどちらも花柄のもので、真癒美は濃いピンク色、瑞希は青寄りの紫色だ。瑞希の家は着物を取り扱っているお店で、役者などをしていて着物を使用する人、部活動で使用する人、そして行事ごとで使用する人など様々な人が利用している。瑞希は偶にお店を手伝っていて、所謂そこの看板娘ということになる。今回は2人で瑞希の母親に着付けをしてもらったみたいだ。
「さ、早く行こうぜ」
ひと段落したところでナオキが男坂を登っていくと4人はその後に続いた。
談笑しながら男坂を進んで登り切ると、参拝客が本殿に向かって列を成していた。そんな列を整理したり案内をしている人物にはみんな見覚えがあった。
「あっ、ナオキくん達だにゃ!あけおめにゃ!」
「あけましておめでとうございます!」
「あけましておめでとう。3人は列整理か」
「あけましておめでとう。そうよ。ほら、邪魔だから並ぶなら早く並んで」
真姫がナオキ達5人を列に並ばせると2年生達はまた自分達の仕事に戻った。列整理には警察の人も加わっていた。
参拝者の列はゆっくりゆっくりと進んでいく中、ナオキ達は賽銭を準備しながら自分達の番を待っていた。絵里・真癒美・瑞希・亜里沙はスタンダードに5円玉だったり、5円を何枚か重ねたりしていたが、ナオキは5円玉を4枚、そして1円玉を1枚と合計21円を用意していた。
「あら、ナオキは20円じゃないのね。21円って何か意味があるの?」
「えっ!?い、いやぁ、別に?ただ……」
「ただ……?」
「えっと……そ、そう!今年もニッ!と笑顔でいれるようにだよ!」
「……それって25円じゃダメなの?ニコッて」
「それはニコッ!だろ?おれはニッ!だから!」
「そ、そうなのね……」
ナオキと絵里がそんな会話をしているのをすぐ後ろから聞いていた真癒美と瑞希は吹き出しそうになる笑い声を抑えていた。ナオキはそれに気付いていたのもあって少しだけ頰を赤くした。
21円のお賽銭にはその割り切れない数字から恋愛継続や夫婦円満という意味が込められているらしい。そう、夫婦円満。その意味に絵里が気付くのはまた別のお話。
やっと賽銭を入れて本殿に向かって手を合わせることが出来たナオキ達は続いて御守りなどを買うためにその売り場の方に向かった。
「いらっしゃいませ〜!御守りはいかがですか〜!?」
「今年の干支の置き物もありますよ〜」
「はい、350円ちょうどですね。ありがとうございます」
「あけましておめでとう。穂乃果達はここで店番か?」
「あけましておめでとうございます。はい、今は私達がここの担当です」
「あけましておめでと〜」
「あけおめ!」
売り場では2年生組が店番をしていた。ナオキ達と挨拶を交わした後もすぐに参拝客が商品を選び出したので、ナオキ達は邪魔をしてはいけないと買うものを選んだ。
「ナオキまだ?先行ってるわよ」
「あぁ、すぐに追いつく!………海未、これを」
「はぁ……なんで隠れて買うんですか?」
「いいだろ、別に」
ナオキは絵里にバレないように『恋愛成就』の御守りを購入してからすぐに先に行っていた絵里達に追い付き、人通りが少ない事務所の裏に向かった。
「あ、いたいた。希〜、にこ〜」
「えりちやん。あけましておめでとう」
「あけましておめでとう」
「えぇ、あけましておめでとう!」
「希さん、これはどこに運べば……!」
「雪穂!あけましておめでとう!」
「亜里沙!?あ、あけましておめでとう」
事務所の裏では希、にこ、そして雪穂が商品が入っていると思われる荷物を運んでいた。雪穂は亜里沙達がいるとは思わず一瞬驚いた表情を見せた。
雪穂は今回姉の穂乃果達と一緒に神田明神のお手伝いをしている。なんでも、他の人達がいるとはいえ穂乃果が神社のお手伝いをするのが不安なようで、自ら手伝いを名乗り出た。
「雪穂、巫女服似合ってるわね」
「流石は和菓子屋の娘って感じ」
「あ、ありがとう……」
「さ、早く行くわよ」
「はいはい。ほな行こか、雪穂ちゃん」
「はい!じゃあ、また」
ナオキ達は雪穂達がまた荷物を運び出すと邪魔はできまいとその場から離れることにした。
それから一行は屋台を見てまわりそろそろお昼時で空腹だったお腹を少しばかり満たした。ベビーカステラや唐揚げ、フライドポテトに焼き芋、焼きそばにいちご飴、そして冷えた体を温めてくれる甘酒も堪能した。それに食べ物は飲み物だけではなく、あみだくじや射的など楽しめる屋台も多く見られた。
「ナオキくんってよく食べるよね、流石男の子って感じ」
「お義兄ちゃんは家でもご飯が余ったら全部食べてくれるんだよ!」
「………残飯処理係」
「腹が減っては戦は出来ぬって言うからな。それに昔父親から『男ならたくさん食え。そしたらいいことがあるぞ』ってひたすら言われ続けたからな。そのいいことっていうのはよくわかんないけどな」
ナオキは昔話を終えてからさっき買ったベビーカステラを口の中に放り込んだ。
さらに屋台をまわっていたナオキの目に、あるアクセサリーを売っている屋台で見覚えのある人物が商品を選んでいるのが入った。
「ん〜、これか?いやそれとも……」
「ミツヒデ……?」
「ん……?おっ、ナオキやないか!」
その人物とはナオキがかつて通っていた大坂学園の生徒会長である香川ミツヒデだった。今はその身を引退し大学受験真っ最中で、さらにその学校のスクールアイドル、ナニワオトメのマネージャーも務めている。
「なんだよ、珍しくアクセサリーなんか見て」
「いやちょっとな。それよりも……」
ミツヒデは姿勢を正してナオキの後ろにいた絵里達に視線を送った。亜里沙・真癒美・瑞希はミツヒデと面識がないため少し警戒していた。
「初めまして、Shooting Starsの絢瀬亜里沙さん、福田真癒美さん、奥村瑞希さん。自分は香川ミツヒデ、よろしく」
「わ、私達をご存知なんですか!?」
「もちろん。だって俺らナニワオトメのライバルであるμ’sと同じ学校のスクールアイドルや。知らないわけないやろ」
「ナ、ナニワオトメ……!?」
「そういえば話したことなかったな。こいつはナニワオトメのマネージャーだ」
「「「えぇ〜っ!?」」」
ナオキが声をかけた人物の正体を初めて知った3人は驚きを隠せずにいた。三大スクールアイドルと呼ばれたナニワオトメのマネージャーが自分達の目の前にいることが衝撃的だった。
「なぁ、ミツヒデが来てるってことはみんなも?」
「あぁ、来てるで。今日はみんなでこの"聖地"にラブライブ!の優勝祈願に来たんや」
「せ、聖地……?」
「神田明神が……?」
ミツヒデが本殿の方を親指で指しながらここに来た理由を説明すると、"聖地"というワードにナオキと絵里は首を傾げていた。それとは違い、他の3人は納得したような表情を浮かべていた。
「なんやお前ら知らんのか?伝説のスクールアイドル、μ’sがラブライブ!決勝を前にここで優勝を祈願して見事その手に優勝を勝ち取った神田明神って結構スクールアイドルの間では有名な話やで?今日もようさんスクールアイドルの子らも見たで」
「なんだか結構恥ずかしいわね……」
「その話がそんなに浸透しているとは……」
ミツヒデが腕を広げて熱のこもった説明をすると途端に当事者である2人は恥ずかしくなり頰を赤く染めた。
「まぁ、多分あいつらは絵馬の方にいると思うからまた声をかけるとええ。俺は大事な用があるさかい」
「わかった、1回寄ってみるよ。それじゃあ、またラブライブ!で」
ナオキはニヤリと笑顔を浮かべて右手の拳をミツヒデに向けた。
「……あぁ、負けへんで」
ミツヒデはそれに答えるように同じような表情を浮かべて右手の拳をナオキが出してきた拳に合わせた。
「そうだ。マチコは
「………お前にはお見通しか。サンキューな」
ナオキはミツヒデにしか聞こえないほどの声でそう言うと、みんなを連れて絵馬が掛けられてある所へと向かった。
「決めた。おっちゃん、これひとつ!」
「あいよ!まいどあり!」
ミツヒデはもうすぐ誕生日を迎えるマチコへのプレゼントを選んでいたのだ。ナオキはその日が近いことからミツヒデがプレゼントで悩んでいるのだろうと思い声をかけた。それは見事的中し、ミツヒデは無事妹であるマチコへのプレゼントを買うことができた。
「真姫ちゃん。私達、負けないからね!」
「私達だって負けるつもりはないわ。覚悟しなさいよね」
絵馬の掛けてある場所の近くでは再会したナニワオトメのリーダーであるマチコとその親友である真姫がお互いの検討を誓って固い握手を交わしていた。
「はぁはぁはぁはぁ……着いたぁ……!」
三ヶ日も終わり、Shooting Starsは来月のラブライブ!本戦に向けての練習を始めていた。今日は休みの日だったが1年生達は自主的に集まって神田明神で練習をしていた。かつてμ’sがしていたという男坂ダッシュを行なったのだが、これがまたキツイもので終えた人から順に倒れ込むほどだった。
「先輩達は、こんな、練習を、してたの……!」
「流石だわ……!」
「μ’sってやっぱり凄い……!ねっ、雪穂!」
みんな口々に先輩達の凄さを息を切らしながら呟いたが、唯一雪穂だけは空を見上げて息を切らしているだけだった。
「どうしたのよ、もう限界?」
真癒美は起き上がって雪穂の顔を覗いた。しかしその顔は限界だというよりは何か考え事をしているものだった。
「具合でも悪い?」
「そうなの!?」
「ううん、そういうのじゃなくて……」
雪穂は体調の不調を首を振って否定して体を起こして神田明神のお手伝いをしている時に見た絵馬を思い出した。
その絵馬のほとんどはラブライブ!優勝を祈願するもので、自分達の先輩であるμ’sの影響力というものを実感し、そしてその影響力のある人達と同じステージに立っているのだということも改めて感じさせられた瞬間だった。
「ただ、本当に凄いんだなって……」
その雪穂の言葉に1年生達の表情は曇っていった。それは4人とも同じ気持ちだからだ。
伝説と呼ばれているスクールアイドルμ’s。当時3年生だった人達が卒業してその活動を終えた。残った1.2年生、現在の2.3年生は音ノ木坂学院スクールアイドルShooting Starsの一員として活動を続けている。そしてそんな人達と自分達1年生は同じスクールアイドルとしてステージに立ち、これからラブライブ!決勝に挑む。しかし、自分達はスクールアイドルを始めたばかり。伝説と呼ばれるほどの先輩達との実力差は歴然としている。
───私達は先輩達と一緒に踊ってもいいのだろうか。
───この決勝に出られるのも先輩達のおかげなのだろうか。
そんな黒い思いを誰しも心の中に秘めつつも、それを一切口に出そうとしない。
「でも、私達は……私達なりに頑張らなきゃいけないんだ」
亜里沙の言葉にみんなハッとした。
先輩達に負けないぐらいの"輝き"を手にするため、自分達なりに追いつかないといけない。その気持ちが不安を和らげて力に変える。
「……さ、練習するわよ」
『おー!』
ほとんど人がいない神田明神に1年生達の元気な声が響く。それはまるで不安を見ないように声で誤魔化しているようにも感じられた。
「あの子ら、もしかして……」
この神社でアルバイトをしている希はその様子の一部始終を見ていて、1年生達の気持ちに気付いてしまった。
そのことを希は休憩中にナオキにメッセージで伝えた。ナオキは以前から気付いてはいたがそのことを口には出さなかった。
しかし、その問題に向き合う時が一歩一歩踏み寄せていたのだった。
───次回へ続く……
ありがとうございました!
ナニワオトメの久しぶりの登場!次回はついにラブライブ!本戦決勝!どんどんラストまでカウントダウンですね。
そして忍び寄る黒い影……1年生の気持ちがこれからの展開にどう影響するのか。偉大な人、先輩がいると心強いし憧れる一方、自分と比べてしまって萎縮してしまうことありませんか?
と、言い残したところでまた次回お会いいたしましょう!ごきげんヨーソロー!