早めに投稿しようと思ってたら色々忙しくて投稿できませんでした。すみません。
さてラブライブ!本戦決勝の結果は果たして……?
───ラブライブ!本戦決勝の2日後。
決勝の翌日は休みになっていて、そのさらに翌日であるこの日はあいにくの雨だった。
音ノ木坂学院アイドル研究部の部室には2.3年生と童子がいつもの席に座っていて、雨が窓に当たる音だけが部屋に響いていた。
「……やっぱりおれ様子を───」
「───辞めなさい。逆効果よ」
我慢できなくて立ち上がったナオキを真姫は止める。ナオキは大人しくそれに従って椅子に座りなおした。みんな深刻な顔をしていて誰も喋ろうとはしなかった。いや、いつも通り話す程の空気ではなかった。
───ここにいない1年生はというと真癒美と瑞希が所属するクラスに集まっていた。真癒美は自分の席から離れようとはせずずっと窓の外を見つめていた。
「真癒美、そろそろ行こうよ。先輩達心配してるって」
「………うん」
親友である瑞希の言葉に返事をした真癒美は一向に立ち上がろうとはせず、そんな真癒美を他のみんなは心配そうに見つめた。
──部室ではみんなの視線はある一点に集中していた。
それは、銀色に輝くトロフィー。
『ラブライブ!準優勝』の文字が台座に刻まれていて、端が赤い白い布には『第2回 音ノ木坂学院 Shooting Shooting』の文字がマジックで書かれていた。
「……惜しかったなぁ」
童子がボソッとそう呟くとみんなは静かに頷いて"あの時"のことを思い出す。
───秋葉ドーム。
ぐんぐんと伸び続けるShooting Starsとナニワオトメのグラフ。それを誰もがじっと見つめていた。
──そしてそれは唐突に終わりを告げる。
片方のグラフが僅かにもう片方のものを超えたところで上昇が止まった。その瞬間、今日1番とも言える大きな歓声がドームに響いた。
『っ……決まった!優勝は……』
『大坂学園スクールアイドル!』
『ナニワオトメ!』
「おおおお────!!!!」
A-RISEがナニワオトメの優勝宣言を行うと、観客の歓声とほぼ同じタイミングで大きな音が鳴り響き、ステージに色とりどりの紙吹雪が舞った。
その差を付けたのは両学校の生徒数だった。第2回ラブライブ!では誰もが素晴らしいと思う演技で他学校の生徒すらμ’sに票を入れていた。今回もその傾向が見られたが、基本は自分の学校に、地元に、母校に票が入れられた。大坂学園の生徒数と音ノ木坂学院の生徒数の差は明らかだった。
2.3年生はライバルであるナニワオトメを素直に祝福し、真姫と凛はマチコと握手を交わした。
しかし、1年生達は祝福の気持ちはあるが素直にそれができず、ずっとスクリーンに表示された最終ランキングを見つめていた。
「2位……」
「つまり、準優勝?」
「そう、だね」
瑞希・亜里沙・雪穂はそう呟き、ショックではあったが「2位」という事実をある程度は受け止めていた。
───でも。
「うっ、うぅ……!」
「真癒美……」
真癒美は誰よりも深く落ち込み、涙を流した。そして瑞希の肩にデコを当て、服を掴んで声だけは出すまいと歯を噛み締めて涙を流した。瑞希はそんな真癒美を胸でギュッと抱きしめて頭を撫で、その気持ちに向き合った。
(こんなに素直な真癒美……いつ振りなんだろう?)
──中学2年生ぐらいから真癒美は強くなった。いや、強く振る舞ったと言うべきだろうか。それまでは何か上手くいかないことがあるとよく声を上げて涙を流していた。ダンス大会で負けた時も母親の服に顔をうずめて泣いていた。しかしそんな真癒美の姿を最近は瑞希でさえ見なくなっていた。それはきっと妹の誕生が原因だろう……と瑞希は考える。
真癒美が小学3年生の時に、
そんな真癒美は今回これほど悔しがり、声を押し殺して涙を流している。瑞希は内心、とても安心していた。真癒美は変わっていないということが再確認できたからだ。
(こんなことを言えば真癒美は怒るだろうけど、私は素直な真癒美の方が好きだよ)
「いいんだよ。素直になって……」
そう囁きながら瑞希は優しく真癒美の頭を撫で続けた。
───みんなの記憶からその時の光景は離れるはずもなかった。そしてその気持ちもわかっていた。
「やっぱり、"あのこと"なのかな?」
「十中八九そうでしょうね」
「でもあんな真癒美ちゃんを立て直すにはどうしたら……」
穂乃果・海未・ことりの言葉に部室にいるみんなは唸り声をあげた。そしてナオキは決心したように静かに声を上げた。
「……あのさ、みんなに提案があるんだ」
───真癒美達のクラスの教室。
真癒美は無言で外を、他の1年生達はそんな真癒美を心配そうに見つめながら本戦決勝のことを思い出していた。
「ねぇ、真癒美……何か言ってよ」
「うん……」
「真癒美ってば……!」
「うん…………」
瑞希が何度も名前を呼ぼうとも真癒美の反応は変わらなかった。そんな2人を見ていた雪穂と亜里沙はどんどん表情が変わっていく瑞希に気付き、真癒美の名前を静かに呼んだり瑞希の興奮を抑えようとした。
そしてついに───
「っ……"まゆちゃん"!!!」
突然の大声に3人共ビクッと肩を跳ね上げて思わず顔を瑞希の方に向けた。
「な、なによ。それにその呼び方は辞めてって……」
「いつまで1人でうじうじしてるのよ!もっと素直になりなよ!」
「なっ……!」
「ずっと意識ここにあらずって感じで……悔しいなら悔しいって言えばいいじゃん!先輩達に合わせる顔がないならそう言えばいいじゃん!」
「っ……瑞希に……"たまちゃん"になにがわかるのよ!」
「わかるよ!だって私はまゆちゃんの幼馴染だよ?!考えてることぐらいわかる!」
「ちょ、ちょっと2人共……」
「「雪穂は黙ってて!」」
「は、はいぃ……!」
真癒美と瑞希の息の合った声に、2人を止めようとした雪穂もたじろいでしまう。亜里沙はどうしたらいいのかわからずにあたふたとしていた。
睨み合いを続ける2人だったが、真癒美の目からは涙が線を描いて頬を伝っていた。
「……ってるわよ」
「真癒美ちゃん……?」
「悔しいに決まってるわよ!だって最高の演技をした!それに憧れの先輩達だっていた!負けるはずないと思ってた!でも、違った……!」
「それは先輩達も『どのグループが勝ってもおかしくない戦いだったから仕方ない』って言って──」
「───そうじゃない!私が言いたいのは、
『っ……!』
その言葉に3人の心はギュッと締め付けられた。何故ならそれは図星だったからだ。
「みんなも思ってたでしょ?もしかしたら私達が先輩達の邪魔をしているかもしれないって。先輩達は"伝説"とまで呼ばれたスクールアイドル。それに比べて私達はついこの前にスクールアイドルを始めた1年生……その差は圧倒的、天と地ほどの差があるわ。
楽しくなかったかと言われればそうじゃない。楽しかったし嬉しかった。でもその中でも『邪魔かもしれない』って気持ちもあって……その気持ちがどんどん大きくなって。そしてラブライブ!では準優勝。先輩達なら、先輩達
「それは私も、ううん、私達も思ってた……」
「うん……」
「……"真癒美"は素直じゃない分、その気持ちを、責任を誰よりも1番重く感じてたんだと思う」
真癒美は自分の気持ちをぶつけると、歯を噛み締めて泣き声だけは漏らさないように涙を流した。しかしそれは真癒美だけが思っていることではなく、雪穂・亜里沙・瑞希も同じことを思っていたことだ。
何度もそのことを考えてしまっていたが、ラブライブ!も近くその思いが余計邪魔になると思って心の奥にしまっていた。しかし、「ラブライブ!準優勝」という結果が鍵となって、そのしまっていた思いは大きくなって飛び出したのだ。
3人共、真癒美が動かないから部室に行かなかったわけではない。それもあったが、3人の心の中にも「先輩達に合わせる顔がない」「なんと言えばいいかわからない」「どうしたらいいのかわからない」という気持ちがあり、この場を動こうにも動けなかったのだ。その気持ちに真癒美の本音を聞いてから気が付いた。
「失礼しま〜す」
そんなことを考えていると、教室のドアの開く音と人の声がして4人の視線はそっちに向いた。
『ナオキくん(お義兄ちゃん)!?』
その声の主はナオキで、さらにナオキの後ろには2.3年生と童子の姿もあった。4人は動揺してなんと声を出したらいいかわからず視線をずらして口を閉じた。
「……やっぱり気にしてるのか?」
ナオキの真面目な声での問いに1年生の4人は頷くことすらできなかった。
それを見たナオキ達はお互いの顔を見て頷き合い、そしてナオキに促された花陽が1年生達の前に出た。
「みんな、かよちんの話を聞いてほしいにゃ」
凛がそう言うと1年生達は恐る恐る花陽の方に顔を向けた。花陽は深呼吸してから真剣な顔で真っ直ぐと1年生達を見た。
「みんなに伝えることがあります。それは───」
それは1年生にはとても予想できなかったもので、今後のShooting Starsの、アイドル研究部の運命を変える言葉だった。
「───私達は、Shooting Starsを……脱退します」
『え……?』
1年生達は自分の耳を疑った。何かの聞き間違いだと思った。恐る恐る、その言葉の"意味"を亜里沙が聞いた。
「それって3年生がってこと、だよね?」
「そ、そうだよ!もうびっくりさせないで───」
「───違うわ。今回の引退は3年生もだけど、私達2年生のことでもあるのよ」
可能性を信じたかった亜里沙と雪穂の言葉を真姫が否定する。花陽が言った引退という意味がはっきりして1年生達は再び言葉を失い、場を静寂な雰囲気が支配する。
「……真癒美?」
瑞希は下唇を噛んで俯く真癒美の名を呼んだ。しかしすぐに拳を強く握ってぷるぷると体を震わせる様子を見て、咄嗟にその後起こるであろう最悪の事態を予測してしまった。真癒美を抑えようとしたがもう遅かった。
先程までの真癒美の心情からもう我慢をすることは不可能。コップから水が溢れているのにさらに水を加えることと同じことなのだ。
「もっと早く気付くべきだった。お前達が───」
「──ふざけないでください!!!!!!」
ナオキが何か言いかけたが、今はそれを聞く余裕すらない真癒美がその言葉を遮った。みんなの視線は嫌でも真癒美に集まった。
そして真癒美の勢いは止まらずそのまま言葉を続けた。
「なんで、なんで先輩達が辞めることになるんですか!?それってラブライブ!に負けたからですか?!それなら余計にわからない!だって負けたのは私達のっ……!!」
「落ち着きなさい。だからそれは違うって言ったでしょ?」
「それならなんで辞めるんですか?!一緒に……みんなで輝きになろうって言ってたじゃないですかっ!!あの言葉は嘘だったんですか!?」
「そんなことは……」
「そういうことじゃないですか!?私は認めない……先輩達がShooting Starsを辞めるなんて!」
真癒美は様々な不安や不満でいっぱいで余裕がなかったからか、所々で敬語になってしまっていた。一気に言葉を連ねたため息を荒くして若干の涙を流していた。
そのタイミングを見計らってナオキは先程みんなに提案したあの事を伝えた。
───数十分前。
「……あのさ、みんなに提案があるんだ」
『提案?』
「あぁ、前から話してたろ?おれ達2.3年生、元μ’sの存在が
「うん、みんなで集まって話したよね」
「ああ。それでさ、このタイミングで……"あれ"を実行したらいいんじゃないかなって」
ナオキの言葉に意味のわかる2.3年生は驚きの表情を見せる。童子は何のことかわからず不思議そうにみんなを見た。
「それは……火に油では?」
「そうよ。今のタイミングはベストとは思わないわ」
「でも、もしかしたらあいつら……特に真癒美は来なくなるかもしれない。だったらいっそこのタイミングで……っていうのがおれの考えだ」
一同はナオキの意見を聞いて唸り声をあげる。その意見も納得できるところがあるからだ。真癒美が1番責任を感じているのはみんなは察していた。
「ちょっと。とりあえずうちにもわかるように説明してくれへんかな?」
「あ、すみません」
痺れを切らした童子はついに説明を求めた。ナオキは苦笑いしながら謝り、童子に事情を説明した。
以前から1年生達はプレッシャー、自分達と踊ることへの不安を抱えていたこと。そして元μ’sで集まってそのことについて話し合ったこと。その結果、2.3年生がShooting Starsを抜ける決断をしたということを。
「なるほどなぁ。確かにその方があの子らの為かもしれへんね。でももちろんあの子らが反発するのはわかってるよな?」
「はい、それはわかってます。だからこう決めてたんです。おれ達2.3年生、いえ───」
「───来年音ノ木に残る2年生と、お前達1年生とライブ対決をして欲しい。そしたらおれ達の言っていることがわかるさ」
『えっ……!?』
そのナオキが提示した内容に1年生達は戸惑い、驚きを隠せず声をあげた。
「先輩達、伝説と呼ばれたスクールアイドルと勝負なんて、結果はもうやる前からわかっている」と1年生達はすぐに思った。
「……怖いのかにゃ?みんなは怖いから対決を受けようとしない……そうだよね?」
答えを渋っている1年生達に対して凛は挑発とも取れる発言を投げかけた。というかこれは挑発である。凛の言ったことは図星だったが、プライドが高く余裕がなくなっている真癒美がそれに乗らないわけがなかった。
「そんなんじゃないです!考えてただけですから!」
「ちょっと真癒美……!」
「受けるわよ、その対決!」
「「「えぇ〜!?」」」
真癒美の宣言に1年生達は驚きの声をあげた。2.3年生は上手くいったと笑みを浮かべた。
「決まりだな。じゃあ対決は再来週の金曜日。全力で、正々堂々と対決すること。大丈夫か?」
『は、はい!』
「よし、じゃあルールはこうしよう。
曲とダンスは同じものを使う。でも曲の間奏部分は決めずに、そこだけ各自で考えること。それまでの練習も各自で集まってする」
「あ、1年生達はうちが練習見るからな〜」
「3年生はおれが見る。それでいいだろ?」
全員、ナオキが提示したルールに納得して頷く。それを確認したナオキはポケットに入っていたUSBを童子に渡した。
「この中には曲と振り付け表が入ってます。振り付け表はコピーしてみんなに渡してやってください」
「任しとき〜」
「曲名は『Shangri-La Shower』だ。楽しみにしてるぞ」
そう言うとナオキは教室から出て、それを追うように2.3年生も出て行った。その場に残ったのは1年生達と童子だけだ。
「じゃあうちはコピーしてくるさかい、ちょっと待っててな〜」
さらに童子も出て行ったため、1年生達は教室に取り残されてしまった。誰も話そうとはせず、ずっと出口の方を見つめていた。
「……ごめん、勝手に引き受けちゃって」
「いいよ。引き受けないとあのまま先輩達辞めちゃってたもん」
「でも、どうして……」
「でもまだチャンスはあるよ!もしかしたら対決の結果次第では残ってくれるかもしれないし!」
「それに、今の私達の力を試す機会でもあるしね」
亜里沙と雪穂のひと言でみんなは決意が固まったように互いの顔を見て頷き合った。しかし皆、心にはまだ少しの不安が残っていた。
1年生と3年生の対決の日まで2週間。今まで体験したことがない練習が始まった。
「ほなみんなまずは歌の練習やで〜」
『はい!』
(───もしかして、私達が負けたら先輩達は残ってくれるかも……)
───次回に続く。
ありがとうございました!
さてさて物語は急展開に!何点ですか?え、9点?はい、そうですか。"急"展開だけに。
ということで次回をお楽しみに!