みなさん!平成生まれのシベリアです!!令和になりましたね新元号!結構前に自分が時代をまたぐのがひとつの夢だと言ったのを覚えてはりますか?まさに、上皇上皇后両陛下のおかげさまで良い形で夢が叶いました!
みなさん令和もよろしくお願いします!もうすぐこの作品は最終回ですがね。
さて!今回は思ったより前回から時間が空いてしまいました。本当はGW中に投稿する予定やったんですがね。前書きが長くなりましたが、どうぞ本編をお楽しみください!
1年生と2年生はついに1週間後までに迫った対決の日に向けて練習を重ねていた。2年生は思い出の屋上で、1年生達は空き教室で練習しており、それぞれナオキと童子が指導していた。
掲示板や窓などの学校の所々に対決のポスターが貼られていて、学校中からの注目も高い。この対決の観客、つまり審査員は音ノ木坂学院の生徒と教職員に決まった。そしてそれにその全員が賛成してくれた。それだけアイドル研究部という存在がこの音ノ木坂学院では大きなものだということなのだろう。
「ストップストップ!みんな動きがバラバラやで!どうしたん?恋の悩みか?」
『違います!』
「あらなんや、おもろないなぁ。ほんならみんなどうしたん?まだ共通パートもできてへんやで?」
童子の言葉に1年生達は目線を逸らした。
練習を始めて1週間が経つが、歌もダンスも1部を除いてタイミングがバラバラのままなのである。個人パートは完璧なのだがと童子は頭を悩ませた。
「とりあえずみんな休憩な。しっかり身体休めて再開するで」
『はい!』
みんな床に座って休憩しながら何故タイミングが合わないのか考え始め、そのせいで教室内は沈黙が続いた。童子はその中でみんなの顔を見回しながら考えて、そして何か思いついたのか唐突に声を上げた。
「そうや!みんな、対決に向けての意気込みを言ってみて」
「えっ、なんで……」
「いいからいいから!はい、亜里沙ちゃん!」
童子は思いつくとすぐに亜里沙を指名し、その本人はびっくりして少し戸惑いを見せた。
「えっと……私はなんて言うか……凄く楽しみ!あのμ’sと勝負できることが!」
「そうかそうか。次は雪穂ちゃん」
「私は……勝ちたい。勝ってあんなことを言ったお姉ちゃんや先輩達を見返したい……!」
「うんうん。次は瑞希ちゃんな」
「私は───」
雪穂の次に指名された瑞希は、自分の隣で俯く真癒美に横目で一瞬視線を送ってから理由を語った。
「───私は、この4人で1曲を歌って踊るとは思わなくて……だから、ちょっとドキドキしてます。一体どんなライブになるんだろうって……」
「なるほどな。では最後に真癒美ちゃん」
「えっ……!?」
最後に指名された真癒美は顔を上げ、自分に視線が集まっているのを確認して自らの気持ちと向き合った。
「私は………」
───『いつまで1人でうじうじしてるのよ!もっと素直になりなよ!』───
真癒美の脳内にあの日の瑞希の言葉、表情が蘇ってきた。
ラブライブ!本戦決勝に負けて、それが自分達のせいだと落ち込んでいた真癒美に、幼馴染であり親友の瑞希が怒り、それで軽く言い合いになったこと。その後先輩から告げられたShooting Starsの脱退。そしてその時に"思った"こと。
真癒美の心は闇のように暗かった。正直やる気にはならず、みんなのタイミングが合わないのも自分のこの気持ちが伝染したからだと思っている。
(───もしかして、私達が負けたら先輩達は残ってくれるかも……)
そんなことをあの時に思わなければこんなことにはならなかったのにと後悔の念が湧いてきていた。こんなことを言えばきっとまた喧嘩になってしまう。
「私は……」
咄嗟に嘘の気持ちを言おうとすると、視線に瑞希のムスッとした顔が入ってきた。きっと瑞希には真癒美が嘘を言おうとしていることなどお見通しなのだ。
もちろんそのことは真癒美自身もわかっていて、嘘をつけば余計に衝突するだろうと素直に言うことにした。
「私は正直……"負けてもいいかな"って思ってた」
そのまさかの言葉に全員が絶句した。しかし瑞希はどこかそれを予想していたという表情に変わった。
「この勝負、負けたら私達の実力がなかったことが証明される。そしたらもしかしたら先輩達は残ってくれるかもしれない。ずっとそう考えてたわ」
童子はこの瞬間に、みんなの気持ちは同じ方向を向いていないことがわかった。特に大きく分けると、真癒美以外の3人は対決に対してポジティブな考えを持っている。3人はすぐに修正できるとしても、真癒美は中々難しいだろう。
そして童子はそれを打開する方法を考え始めた。時間もあまり残されていない中でどうすればいいのか。しかしこれはあくまで本人達の気持ちの問題。解決できるのは本人達しかいないのである。
「ねぇ、それ……本気で言ってる?」
雪穂のひと言で一気に空気がピリついた。それをまずいと思った童子は止めに入ろうとした。しかし、すぐにその動きを止めてまた考え始めた。もしかしたらこのまま置いておけばいいのではないかという考えが浮かび、そこからは傍観の姿勢を取った。
「本気よ。ここで嘘を言ってもなんの意味もないでしょ?」
雪穂は怒りたくても怒れずにいた。真癒美の言っていることに多少の理解はできるからだ。でもこのままではダンスが完成しないままライブを迎えることになってしまう。そんな気持ちに雪穂は葛藤していた。
「それは、間違ってると思う」
すると亜里沙がはっきりとした口調でそう言うと、みんなの視線はその亜里沙のいる方向に向いた。
「なんで?亜里沙は先輩達がShooting Starsを抜けてもいいって言うの?」
「違う!私もそれは嫌だもん。でも、その答えはきっと対決の先にあるって私は信じてる」
「答え……?先輩達が辞めるか辞めないかっていう?」
「ううん、違うよ。きっとそれ以外にも何か目的があるんだよ。なんとなくだけどわかるんだ」
その言葉に他の1年生達は他にも理由がある可能性に気が付いてハッとした。あの先輩達が何の考えもなしに辞めるなんて言うはずがない。
「でもどんな理由があったとしても、この先私達には先輩達がいないとまともにやっていけない……そのことをわかってもらうには負けるしか──」
「──それが間違ってるんだよ」
「え?」
「先輩達が必要なら、その気持ちを込めて踊ればいいと思うんだ。私達らしく、楽しく!」
「……………」
亜里沙の説得に真癒美は言葉を失い、少し考え込むように俯いた。
「……まっ、勝ったら勝者権限で先輩達に辞めないでくださいって言えばいいんじゃない?」
「ふふっ、確かに」
亜里沙の言葉に元気付けられた瑞希と雪穂はやる気に満ちた顔で笑い合った。亜里沙もそんな2人を見て笑顔で2回ほど首を振った。
そして3人の視線は未だに俯く真癒美に向いた。
「真癒美、悔しくない?あそこまで言われてさ。先輩達にも負けないダンスができるって見返したいって思わない?」
「………そうね」
真癒美は久しぶりに微笑んでから天井を見上げた。ラブライブ!本戦決勝に進めることがわかった時、秋葉ドームの舞台で沢山の人達の前で踊った時、そして本戦決勝での準優勝が決定した時、さらにはそのあとから今までの自分を振り返った。
「まさかあの亜里沙に気付かされるなんてね……」
すると真癒美は亜里沙に微笑んでから下を向いて、大きく深呼吸をしてから自分の両頬を少し赤くなるぐらいの強さで叩いた。その音は教室内に響き、みんなその音に驚いて思わず体をビクッとさせた。
「ま、真癒美……?」
瑞希は突然のことだったので真癒美を心配して顔を覗き込むが、その表情を見てどこか安心したように微笑んだ。それは雪穂や亜里沙、それに童子も同じだった。
「───ごめん、私どうかしてた。練習しよう!勝って、あんなこと言った先輩達の考えを変えさせよう!」
『おー!』
(うん、みんな同じ方向を向いたみたいやな)
童子は笑顔でやる気に満ち溢れた1年生達を見て安心して、
───屋上。
「ただいま〜」
「「あ、おかえり!」」
「みんな、どうだった?」
屋上にいた2年生達は1年生の様子を見に行っていたナオキを迎えた。ナオキはずっと1年生達の練習の様子を見ていて、みんなが元気になったところを見て安心して戻ってきた。
「最初はやっぱりバラバラだったけど、もう大丈夫みたいだ。さ、練習を再開しよう。1年生達に負けるわけにはいかないからな」
『うん!(えぇ!)』
そして2年生達も1年生とのライブ対決を楽しみにしていて、再び練習に熱を入れるのだった。
───ライブ対決当日。
ついに訪れたアイドル研究部所属である1年生と2年生の対決の日。この日の昼休みにナオキ・穂乃果・海未・ことりの3年生と童子は昼ご飯を早めに済ませて6限目に迎える対決の準備をしていた。リハーサルは昨日のうちに済ませていて、1.2年生はあとは本番を待つだけとなっていた。
今回、ヒフミの3人は観客として参加してもらうためライブ中の音響などは3年生と童子の5人で行う。そしてもちろん5人は公平を期すために投票も行わず、その結果を見届けるだけだ。
「よし、あとは本番を待つだけか」
ナオキはステージを客席の1番上から見下ろしてもうすぐ始まるライブに期待感を寄せていた。一体どんなライブになるのか想像がつかないが、いいライブになることはわかっていた。
「ナオキく〜ん!司会の練習するから見ててね〜!」
「わかったー!」
穂乃果の声掛けにナオキが手を挙げて返事をすると、穂乃果・海未・ことりがライブで担当する司会の練習を始めた。
その光景をナオキは感慨深そうに見つめていた。もう3人がステージで輝く姿を見ることができないということが胸を締め付けて少し苦しくなっていた。そんなナオキに童子はその気持ちに共感するように頷き、ナオキはお礼の意味を込めて軽く頭を下げた。
色んな意味が詰まっているライブが───
『さぁみなさん!お待たせしました〜!』
『ただいまより、アイドル研究部2年生と1年生の対決ライブを行います!』
『司会は私達……』
『高坂穂乃果!』
『園田海未』
『南ことりの3人でお送りします!』
『『『よろしくお願いします!』』』
───穂乃果達3人の元気な声をもって幕を開けた。その声に反応して、この日を楽しみにしていたであろう生徒と教職員達は歓声混じりの拍手をした。
順調に進行が進む中、ステージ袖では制服姿の1.2年生が待機していた。1年生はとても緊張していて顔を引きずっていて、2年生は楽しみで笑顔を浮かべながら司会を進める3年生を見続けていた。
「そろそろだね」
「じゃあ、あれやろう!」
「仕方ないわね」
「真姫ちゃん、絶対楽しみにしてたにゃ」
「ゔぇぇ……!?」
「ふふふふふ……」
1年生は不思議そうに小声で盛り上がる2年生を見ていた。しかし2年生が右手をピースの形にして小さく円陣を組んだので、その理由はすぐにわかった。
「いち!」
「に!」
「さん!」
『まきりんぱな!ミュージック、スタート〜!』
みんなでした円陣の3人バージョンだ。その光景を見ていた1年生は唖然としていたが、真癒美の抑えきれずに漏れた笑い声が空気を一転させた。
「わ、笑わないでよ!」
「ご、ごめんなさい……!だ、だって、まきりんぱなって、まんまだし……!」
「っ〜〜〜!だから嫌だったのよ!考えたの誰よ!」
「ナオキくんにゃ」
『まきりんぱな』という名前の名付け親がナオキと知った1年生は笑いを堪えきれずに揃って声を上げて笑った。しかし、これで1年生が感じていた緊張は少し和らいだ。
そしてその束の間、いよいよ2年生の出番が迫ってきたので3人はすぐに出れるように準備を始めた。
『それではまずは2年生から!』
『『『どうぞ〜!』』』
「じゃあ、行くにゃ!」
「「うん(えぇ)!」」
3年生の揃った声の後に照明が消え、それと同時に2年生はステージへ駆け出した。
今回対決で披露する『Shangri-La Shower』は、夏合宿で作ったもうひとつの新曲だった。元データはアイデア段階の曲のフォルダのもので、この曲をデビュー曲にしようと最初は考えてはいたが「やっぱりデビュー曲は1から作ったものがいい」と改めて、この曲は本当は日の目を浴びないはずだったのだ。それがついに解放され、観客の前で披露される。
スポットライトが彼女達を照らすと、歓声と共に曲のイントロが流れ始めた。
曲調は夏の祭りをイメージされていて、お祭りの雰囲気が感じられる。共通部分のダンスもついつい一緒に踊りたくなるほど楽しそうで、これもお祭りの雰囲気に合っていた。
Aメロを花陽・凛が半分ずつ、Bメロを真姫が歌ってそのコーラス部分は花陽と凛が歌い、サビに突入する。サビはコーラスも含めて3人一緒に歌い、その後に間奏が始まった。この間奏部分は終盤を除いて2チームのオリジナルの振り付けになる。
間奏が始まるとまずは右側にいた花陽にスポットライトが当たり、音楽に合わせてテンポよく靴の音を鳴らした。いわゆるタップダンスだ。花陽のソロ部分がひと通り終わるとスポットライトは左側にいた真姫に切り替わり、同じくタップダンスを披露した。さらに真姫のソロ部分が終わるとスポットライトはセンターの凛に当たった。そして凛のソロ部分が終わったのを合図に、今度は3人同時に靴を鳴らした。間奏が終盤に差し掛かる前に凛だけが3回転して、その間2人が音を鳴らしていた。そして凛が回転し終わって3人同時に音を鳴らすと、共通の振り付けがある終盤に差し掛かった。
それぞれのソロ部分は2秒ほどしかなかったが、その間で完成度の高いタップダンスを披露した。3人で合わせるところも完璧にタイミングが合っていて、それを見ていた人達は思わず拍手をしてしまった。ナオキは3人の苦労を思い出して小さくガッツポーズをした。
『『『ありがとうございました!!!』』』
3人は全力を出し切って笑顔で汗を流しながらみんなからの拍手と声援を受け、深くお辞儀をしてからステージ袖へ下がっていった。
幕裏で喜ぶ3人を少し遠くから1年生達は見つめていた。わかってはいた先輩達の凄さを再認識し、そして先輩達へ憧れる気持ちがより強くなっていた。
「ねぇねぇ、私達も円陣やろう!」
「いいね〜!」
「あ、でも名前はどうする?」
「名前ねぇ……」
4人は集まって唸り声をあげた。そんな1年生を2年生は微笑ましそうに見つめていた。
「もうここは単純に、"アイドル研究部1年"でいいでしょ」
「瑞希、単純すぎ」
「でもちょっといいかも」
「うん!ハラショー!」
「じゃあ決まりってことで、真癒美!」
「えっ、私?」
瑞希に名指しされた真癒美はびっくりして自分を見つめてくるみんなの顔を見回した。
先程2年生が円陣をした時のようにこの円陣はリーダーが最初に言うもので、この場合みんなは真癒美を1年生のリーダーと認めているのと同じ意味だ。しかしもう出番は近く迷っている暇はなかった。
そして真癒美は覚悟を決めて表情は戸惑いのものからやる気に満ちたものへと変わった。
「じゃあみんな!先輩達に負けない、最高の演技を見せよう!お客さんにも、先輩達にも!」
「「「うん!」」」
恒例の円陣を組んだ4人の顔には不安はなく、ただただこのステージを楽しむことしか考えていないようだった。
「すうっ───いち!」
「に!」
「さん!」
「よん!」
『アイドル研究部1年!ミュージック……スタート〜!』
そんな4人を2年生、ステージから様子を伺っていた海未は微笑みながら見つめていた。そして海未は1年生の準備が出来たと判断して、MCで場を繋げている穂乃果達に合図を送った。
『さぁ、1年生の準備が出来たみたいなので登場してもらいましょう!』
『『『どうぞ〜!』』』
そして1年生達は照明が消えるとともにさっとステージへ駆け出し、配置に付いた。それから曲が始まるまでの間は5秒ほどであったが、彼女らにとってその僅かな時間でさえも永遠に続くと思わせるほどに長く感じるものだった。
1年生達はあれから1週間、2年生には負けないと必死に練習に取り組んだ。そしてその成果は十分本番に現れていた。
そして歌って踊っている本人達は必死で気付いていないが、それを見ている人達は感じていた。1年生は先程披露していた2年生に負けず劣らず、もしかするとそれ以上の魅力を持っているかもしれないと。
Aメロは真癒美と瑞希、雪穂と亜里沙の2組で分けて歌い、Bメロは真癒美、瑞希がソロで前半を、サビ前である後半を雪穂と亜里沙が担当した。サビはコーラスを合わせて全員で歌い、練習の時に中々揃わなかったダンスもその完成度から4人の息が合っていることを感じることができた。そしてサビが終わって曲は間奏に差し掛かり、ついに4人で決めた振り付けをみんなに向けて披露する。
まずは音楽に合わせてセンター寄りにいた真癒美と瑞希が右手でハイタッチしてスキップしながら左右にいる雪穂と亜里沙の方に進んだ。そして瑞希は雪穂と、真癒美は亜里沙と左手でハイタッチ。それから瑞希と真癒美はそれぞれ目を合わせながら雪穂と亜里沙の周りを1周し、両手でハイタッチをしてから仲良くハグをした。それから再び舞台の中央で真癒美と瑞希がスキップで交差しながら右手でハイタッチし、それに続くように雪穂と亜里沙も中央でハイタッチ。そして雪穂と亜里沙がセンター寄りの位置で立ち止まると共通の振り付けを披露した。
そのオリジナルの振り付けは2年生に比べれば簡単なものだったかもしれない。しかし、息の合った楽しそうな振り付けはしっかりと見ている人達の心を掴んでいた。
曲が終わってから贈られたみんなからの惜しみない拍手が、ずっと不安だった1年生達に大きな安心感を与えた。
『『『『ありがとうございました!』』』』
手を繋いで横一列に並んで頭を下げる1年生達に先程より大きな拍手が贈られた。
1年生がステージ裏に下がると3年生が出てきて投票開始が告げられた。下がった1年生達は安心したからか思わず涙を流してしまう。そんな中、生徒と教師達による投票は着々と行われている。まだ安心できないと涙を拭く1年生。2年生も含めてみんな結果が気になって、チラチラとステージ前に設置された投票箱に目線が行ってしまっていた。
投票が終わり、放送席ではナオキを加えた3年生と童子によってその集計が行われていた。生徒や教師達が口々にライブの感想を言い合っている中、ステージ裏で1.2年生はチラチラとステージの方を見たり、円を描きながら歩き回ったり、どこか落ち着かない様子を見せていた。
「あ、穂乃果ちゃん達が出てきたよ!」
凛はステージの向かい側から穂乃果達3年生が出てくるのを確認すると声を上げた。その声に反応して全員が目線を同じ方に向けて、客席の生徒達はさらにザワザワとした。
『皆さん、お待たせ致しました!』
『これより、投票の結果発表を行います!』
『まずは1年生、2年生はステージへ!』
海未の言葉に合わせて待機していた1.2年生は歓声を受けながらステージに出た。そして3年生を間に挟んで止まり、いよいよ対決の結果が発表される。
『どちらも素晴らしいパフォーマンスでした』
『どちらが勝ってもおかしくない対決だったと思います!』
『では、発表します!』
この瞬間、講堂の中は一気に静かになって、全員が固唾を飲んで司会の2年生に視線を向けた。1年生は祈るように手を交え、2年生はどこか落ち着いた様子で目を瞑って下を向いていた。
『結果は、なんと────
────両者同点です!』
そのまさかの結果に講堂全体がどよめいた。1年生は信じられないという表情で2年生を見つめた。
「同点……」
「それってもしかして……」
「多分、お前達が思っていることと同じだ」
未だにその結果に驚きを隠せない1年生の前にナオキが現れ、みんなの視線はナオキの方に向いた。
「ど、どういうことなの?」
状況がはっきりと掴めていない真癒美の言葉にナオキは頷いて、この結果の理由を語った。
「これはμ’sだったからだとか、同じ1年生だからとかそういうのじゃないんだ。みんなが2組のパフォーマンスを見て、悩み悩んだ末に選んだ結果が同点になったんだ。
「輝き……」
「その通り。おれ達はこれをお前達1年生に知って欲しかったんだ。実はこうなるだろうってのはある程度予想はできていた。な?」
ナオキの問いかけに2.3年生は直ぐに頷いた。その光景に1年生達はさらに驚いたが、それと同時にふと"ある疑問"が湧いてきた。
「でも、そしたらなんで───」
「───決勝で負けたのか、だろ?
それはな……お前達にとっておれ達、元μ'sという存在がプレッシャーになっていたからだ。そのプレッシャーが本来の実力を抑えていた、ってところかな?」
その疑問に対するナオキの予想に1年生は心当たりがあったことを回想し、そして納得した。
「そもそも、なんで決勝に行けたと思う?なんでドームの舞台でパフォーマンスができたと思う?それはパフォーマンスをしたみんなの実力があったからだ。ましてやおれ達のおかげなんかじゃない。むしろこっちが感謝したいぐらいだ」
「「「「えっ……?」」」」
「そうだよ」
「にこちゃん、希ちゃん、絵里ちゃんが抜けて、私達はちゃんとやっていけるか不安だったんだにゃ」
「でもそんな時、あなた達が入ってくれた」
「みんなは6人になった私達に勇気を、希望をくれたんだよ」
「雪穂、亜里沙、真癒美、瑞希、それにマシュ。私達がこうして最後まで、ドームの舞台に立てたのはあなた達のおかげなのです」
「1年生のみんなか横にいる。それだけで不安なんてふっ飛んで、安心して踊ることができたんだよ!」
「それに、お前達がこのことで悩んでいることは勘付いていた。なのになんて言葉をかけていいのかわからなくて信じることしか出来なかった。だけど、今はこう言ってやれば良かったなって後悔してる……『例え輝き方が違っても、並んで輝くことはできる』ってな」
2.3年生から掛けられた優しい言葉に溢れ出る感情を抑えきれずに1年生は涙を流した。
『自分達は先輩達の邪魔をしているのかもしれない』『自分達のせいで優勝できなかったのではないか』『自分達は何の役にも立っていない』そう思っていた4人の心に2.3年生からの言葉は強く響いたのだ。
その光景を客席から見ている人達も感動して心をクッと締め付けられるような感覚を覚えてながら、ステージで涙を流すメンバー達を見つめていた。
2.3年生も涙を堪える中、ナオキはさらに言葉を続けた。
「2年生が脱退するって言ったのは決してお前達と踊るのが嫌だからなんかじゃないし、邪魔だからなんかじゃない。みんなにはこれから入ってくる人達と一緒にμ'sとは違う輝き方、Shooting Starsの輝き方で最高の輝きを……ラブライブ!優勝を目指して欲しい。それがおれ達、μ's10人全員の意見だ」
「スクールアイドルはみんな違う輝きを持っているものなんだよ!だから凛達に合わせようとしなくていい、凛達と同じようにしようとしなくていい!みんなが歌いたいように歌って、踊りたいように踊って、"みんなの輝き"で今回みたいにお客さんを喜ばせて欲しい!」
涙が収まった1年生達はその凛の言葉を聞いて観客席の方に目線を向けた。すると1人、また1人と拍手の音が広がり、それはすぐに歓声が混じったものとなって講堂に響いた。
「よかったよ〜!」
「今のみんななら大丈夫〜!」
「楽しかったよ〜!」
「私達はずっと応援するわよ〜!」
様々な歓声、応援が拍手混じりに聞こえてきて、1年生達の目は再びうるうるしだした。しかし出かけた涙を拭き取った真癒美は他の3人と目を合わせて頷き、何かを決意したようにステージの向かい側に立つ2.3年生の目をしっかりと見つめた。
「わかった。私達、"新生"Shooting Starsは次のラブライブ!でリベンジしてみせる!だから……先輩、抜けたことを後悔しないでよね」
真癒美はそう声高に宣言するとニヤリとした表情で右手を前に差し出した。それに応えるように凛は笑顔で頷いて右手で差し出された手を握った。
「うん!期待してるにゃ!」
未だ鳴り止まないどころか、元μ'sが抜けた音ノ木坂学院のスクールアイドル、新生……いや、"新星"Shooting Starsの門出を祝うようにさらに大きくなっていた。
「ん〜!終わった〜」
「お疲れさん。はいこれ、先生方から頂いたドリンクやで」
「わーい!童子せんせーありがと〜!」
「頂きます」
「いただきま〜す!」
片付けや忘れ物のチェックが終わり、2年生と童子は席に座って先生方からもらったドリンクを飲みながらひと休みしていた。目の前に広がるのは誰もいない席とステージ。つい先程まで大盛り上がりだったのが嘘のような静けさの中ライブの興奮が蘇って、その時の光景や声を思い出していた。
「ほんまに凄かったわぁ。ウチ、思い出しただけで泣きそうになるわ〜」
「そうですね。その気持ち、わかります」
「卒業式の前にいい思い出ができたね」
みんなライブの余韻に浸っているがもう来週には卒業式。このライブも数々の大切な思い出となって心の中に残り続けることだろう。
「卒業式と言えば……答辞は大丈夫なのですか?」
答辞……在校生からの送辞に答えるために読むもの。例年は3年生が務めていたであろう前生徒会長が担当するそれを思い出した海未は、呑気にドリンクを飲んでいる穂乃果を見て言った。
「ふふーん、バッチリだよ!」
「本当ですか……?」
「今回はほんまやで。内容に関しては完璧やと思うわ。後はちょっとだけ誤字脱字とか言葉を直すだけ」
「……なら良いのですが」
答辞はナオキではなく穂乃果が担当のため、海未はしっかり出来ているか心配なようだが、少し疑いながらも童子の言葉を信じた。
「でもいつも答辞は生徒会長がやってたけど、ナオキくんがやらなくてよかったの?」
「あぁ。送辞は卒業生に贈る言葉だからなんとかなったけど、答辞は送辞への返答以外に3年間の思い出を振り返るっていう部分があると思うんだ。そうなると2年の途中から入ってきたおれじゃなくて、3年間この学校にいて、この学校と地域をよく知っていて、
「それに生徒会長時代、ナオキはよく『やっぱり会長は穂乃果が良かったんじゃないか?』って言ってましたからね」
「え!?ホント!?」
「まぁ、あんまり学校を知らなかったおれより、よく知っててみんなを引っ張れる穂乃果の方がいいだろ?」
「でも穂乃果ちゃんが生徒会長してたら、共学は決定してなかったかもな〜」
「ちょっとせんせー!それどういう意味ですか〜!?」
頰を膨らませた穂乃果にみんなは笑い声をあげた。穂乃果はそんなみんなを見てさらに頰を膨らませた。
こうした、たわいも無い日常もあと少しで終わりを告げると思うと少し寂しい気持ちになってしまうみんなだったが、それはグッと心の中に留め、今浮かべている笑顔はそんな感情を表に出さないように蓋のようなものだった。
────せめてこの涙は、卒業式が終わるまでは取っておこう。
───次回に続く。
ありがとうございました!いかがだったでしょうか?!
実はライブの結果、むちゃくちゃ悩んでました。多分こんなに展開に悩むのは滅多にないですね。あとはオリジナルの振り付けをどんなものにするかも結構考えました。そのためにShangri-La Showerをひたすら聞いて、なんか評価が悪いラブライブ!のVitaのゲームの本にあったダンスの振り付けや、その動画を見ていました。あのゲーム、自分は好きですよ?
さてさて次回はいよいよ卒業式……!お楽しみに!!さようなら〜!