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カルマンは自問自答した。
_私はどうすべきだったのか 私の愛は、弟に疑われていた。
弟のエースと喧嘩をした。喧嘩というには、あまりに一方的に感情を打つけられて私はサンドバッグのように心を揺らすしかなかった。
エースにはサボという友達ができ、その様子に安心したのも束の間。私はガープ中将に拉致されて遠出する頻度が上がった。エースと喧嘩をした日も、いつものように拉致され久方の帰宅。やっとエースの顔が見れると、気を緩ませた間もなく顔を合わせた弟は、般若かくや修羅を背負ったような様子だった。
鋭い眼光に、鉄パイプを後生大事に抱え込んで背景には闇を背負っていた。
一体何が…???
心配して、あれやこれや聞くと舌打ちをされ、初めての塩対応に一時の硬直。
エースが私に舌打ち…反抗期を迎えた少年の母親ってこんな気持ちなの…???
気がついた時にはエースの姿はなく、固まった私を置いてどこかに行ってしまったらしい。
半泣きで、エースが友達だと紹介してくれたときの記憶を辿り、”サボ”少年の元にたどり着くと、サボと話しているうちになんとなく機嫌の悪い理由がわかってしまった。
そんな時丁度エースもサボの元に現れたのでまた話をしようと試みたが、今までエースに父親のことを話さなかったことや、急に海軍に所属してしまったことなんかの今まで不信感が募っていたらしく。私は、エースに怒鳴られてしまった。
「血も繋がってもねえ、親が誰かもわからねえ姉ちゃんには分かんねえんだ!!もう、俺に構うな!!俺は望まれない子供だった!!」
ああ、エース。キミそんなこと思ってたの。
カーテンでも引かれたように、目の前が隔絶された。悲しいという感情もあったが、虚しいという感情の方が強かった。
もう、姉ちゃんはボコボコだ。体と心に空いた隙間からべこべこ音がしそうだ。
ガープ中将に箝口令に近い注意を受けて、私はエースに母親のルージュさんのことしか話さなかった。それでもエースにはルージュさんが、お母さんが待ち望んでいた大切な子供なんだよと、伝えた気でいたんだけど自己満足のようだった。
全く一体どこで、父親のことを聞いたんだ。
エースとはサボの手助けもあって、どうにか仲直りをしたけどどこか気まずそうで申し訳なかった。これは、私の伝達能力の不振に会話の下手さが起こした出来事だ。
しかしこの出来事は、私を海軍に留まる理由には十分なった。
早々に辞めてしまえと思っていた海軍だが、人探しには丁度いい。海軍に属していれば、身元の保証ができ人は口が軽くなる。民間では未発達な技術を、軍は有していたりと御誂え向きだ。海軍専用紙のニュース・クーで読んだベガパンクが専門しているという血統因子、私はこれを血統因子=DNAと考えている。つまりDNA検査ができる。
カルマンはこの世界で生まれて海を彷徨ってルージュの元に辿り着いてから、生みの親は種と胚の存在。気にすることはなく、親を指す言葉は育ての親のルージュとロジャーで完結している。
カルマンには、この世界以外で生きた記憶がある。最早それも、記憶の彼方に放り投げ出されたものだがしかし、実の親と過ごした記憶がある。そこから急にONE PIECEの世界に投げ込まれたのだ。こんな感性を持つのはその反動、自己防衛の一種なのかもしれない。
しかし、その両親から託された弟エースがルーツを重要視しているなら話は別。
弟が大事にしているものを、姉が粗末にしていい道理はない。
海軍の情報網に立場を利用しない手はない。その為には、海軍で地位を高める必要がある…指折りで今後の予定をリストアップすれば、多少実現不可能なことが多々あったがなんとかするしかない。
この時、この瞬間からカルマンのルーツの探究が始まった。
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「…不味い。」
舌触り、不愉快。
後味、不愉快。
歯触りは…、無駄に良い。
口にしたはいいが、これ以上は体内に入れたくないそんな味のする果物を食べてしまった。
__カルマン11歳 能力者となる。
カルマンは、北の海の極秘任務というものに参加していた。
扇のような羽毛のついた頭、獰猛な猛禽類の目、光沢のある白黒の羽毛の身体。鉤爪は
私は、海に嫌われた代わりに空を飛べる翼を手に入れた。
世界で一桁台しか確認されていない”トリトリの実”のモデル オウギワシ。
それにしても、まあ今回の任務は私にとって丁度よかった。
かちゃりかちゃりと擦れて金属音を鳴らす首元のドックタグ。記載された出身地は北の海。ドックタグの成分に不純物を比べて、浮かび上がったのがここから島4つ分程離れた”狩人の島 イーゼル島”。この任務が終われば6日の休みを取ってある。移動時間を考えて島を探索する時間は、実質2日。空を飛べる私だからこなせるスケジュール。
でも、今は任務に集中しなきゃね。おつる中将に折角声をかけて貰えた仕事だ。頑張らねば。
気を引き締めては見たものの、眼下に広がるのは灰色の世界。
「こちら上空”C”より、目標は未だ見えず Go ahead」
嘴に変化した口元で固定された小型の電伝虫に話しかけた後、一方的に切ると翼を逸らして旋回した。
監視船がスワロー島についてから、目標の”ドフラミンゴ”の海賊船が現れたと思ったら、ミニオン島で爆発が起こり檻が出現。鳥籠のような物に閉じ込められながらも次々と起こる事態を事細かに記していくと、電伝虫から通信が入り私はミニオン島に降り立って人の姿に戻り雪の積もった道を歩く。
体温の高い鳥型から、人に戻ると外気との温度差で口から蒸気が上がった。
「ずっ…」
鼻を鳴らしてブーツを濡らして、重たい雪の中を歩いて進む。
ひゅるるん
ひゅるるん
ばーん
ばーん。
花火のような音で、花火でない。
銃の発砲音、大砲の嘶き。
野太い悲鳴に、助けを求める声。
それらを背中で聞いて、歩くと足跡で踏み荒らされた地面に倒れた血濡れの男を見つけた。
周りの血の染みたところを避けて、膝をつくとかろうじて息をしているのが分かった。
「こちらC、重病人を発見。手配書からコラソンだと思われる、これより監視船に確保する Go ahead」
この男、身体中銃弾が打ち込まれている。止血してもあんまり意味がなさそう。
しかしそんなことも言ってられない、海軍の教本通りに手当を開始する。鼻と気管に入り込んだ血を吸い出して、地面に吐き出す。気道を確保出来たら包帯を巻いて、男を縄で大きめの瓦礫に固定する。
そうしていると鳥籠が解かれたのを、目視で確認できたので私は身体を人と鳥の中間、人獣型に変化させると大きくなった鉤爪を瓦礫に食い込ませて空に飛び立った。