私の名前は不知火です   作:おもいつかない

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すべての始まり


プロローグ【Mirage】

真夏の真っ白な光を私達に照らしてくる太陽の下、

私と誰か達が敵と戦闘を繰り広げる。

 

弓を射て、艦載機を飛ばす者。

巨大な砲台で敵を吹き飛ばす者。

魚雷を的確に当てていく者。

 

そして私は水の上を風のように滑り、敵軽巡洋艦の懐に潜り込む。

 

醜い口だ。

いや、これは口とも言えないか。

 

下顎しかない口かもわからないもの奥に砲身を差し込み、

トリガーを引く。

 

爆発音と共に軽巡の身体が四散する。

硝煙の匂いがする。

 

ずっと匂ってきたせいか好きになった匂いだ。

 

私は自分が独自の世界に入り込みかけているのに気づき、

直ぐに戦闘モードに切り替える。

周りを見渡し、敵の姿を探す。

ガチャリという音。

 

 

––––––後ろか。

 

私が振り返ると、下から駆逐艦が私に砲塔を向けている。

発射まで一秒もないだろう。

咄嗟の判断で、私は思いっきり体を反らせて弾の回避を試みる。

 

爆音が響き渡る。

 

私に損傷はない。

反らした体を戻し、後ろに跳びながら駆逐艦に砲塔を向ける。

駆逐艦の次弾の発射が間に合うはずもなく、

私の弾によってその駆逐艦は破壊される。

 

もう、周りに敵は見えない。

 

戦闘は終了したか。

 

仲間の名前を呼ぼうとするが、

そこで私は部隊から少し離れていることに気づく。

 

100mといったところか。

動きすぎたな。

 

反省しながら、部隊の元へ戻ろうと足を前に進める。

 

そう、私は戻ろうとした。

 

だが、私の足が前に出た瞬間、

私の背面に強い衝撃と痛みが走る。

 

私は痛みに顔を歪め、

血を吐きながら衝撃で飛んでいる体を翻した。

 

そこには敵雷巡がいた。

 

–––––––魚雷か!–––––––

 

雷巡がどこにいたのか考える余裕はなかった。

 

 

落ちていく体を動かそうと、

心の中で延々と同じ言葉を繰り返す。

 

動け、動け。

動け動け動け動け動け動け動け動け–––––––

 

私が必死になりながら体を動かそうとしても、

体は思い通りに動いてくれない。

 

艦装から水に入っていく。

 

冷たい怖い嫌だ恐い死にたくない怖い恐い嫌だ

イヤだコワイ沈みたくない嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 

私の恐怖などお構いなしに、

私の体はどんどん水の下に入っていく。

 

頭まで水の中に入る前、最後に私の目は、

硝煙のせいで出来上がった陽炎と、遠く鎮守府を写す蜃気楼を捉えた。

 

視界が青に染まる。

水の中に沈んでいく。

息ができない。どんどん暗くなっていく。

 

私は水面にある、太陽のような太陽の光に手を伸ばす。

 

非情な現実に引き寄せられ、暗い水の底に沈んでいく。

太陽の光は小さくなっていく。遠くなっていく。

 

私の意識は水に奪われる。

水に、暗闇に飲み込まれる。

溶けていく。

 

 

 

–––––––––––Mirage–––––––––––

 

 

 

「おきな–––し––なんて––だよ」

 

誰かの私を呼ぶ声に、私は意識を引かれる。

 

「うぁ...............う........」

 

ゆっくりと瞼を開いて、

最初に映ったのはオレンジ髪の少女。

茶色い天井。そして私の上げた手。

そんな私の姿を見て、少女は嬉しそうに私を抱き締める。

 

「よかった!このまま目が覚めないかと思ったわ!」

「ここは...........?」

「ここは第四鎮守府よ、あなた浜辺で倒れてて介護されたのよ」

「そう、ですか」

「あなた名前はなんて言うの?」

「名前..........?」

 

名前を問われたところで、私はとあることに気付く。

 

「記憶がない..........」

「えっ?あなた記憶がないの!?」

 

驚きの声を上げる少女を横目に自らの手を見直すと、

どうしてか、心の中に名前が浮かんできた。

 

「不知火..........私の名前は、不知火」

「不知火........ん?もしかして.......あなた私の妹?」

「私の名前は陽炎。陽炎型駆逐艦一番艦の陽炎。

私の古びた記憶が合っていれば、あなたは陽炎型駆逐艦二番艦不知火。

姉妹艦と会えて嬉しいわ!」

「姉妹..........艦?」

「どうしたの?」

「いや、艦という言葉が引っかかってしまって」

「.......もしかして、自分が艦娘ってわかってないの?」

「艦娘?」

 

「私達はかつて沈んだ艦の思いが形になったもの。

今、世界を危機に陥れている深海棲艦を倒す最良の兵器よ」

 

「兵器...............」

「そう。ま、そこまで深く考えなくていいわ。

私達はここで生活を楽しみ、深海棲艦を倒せばいいだけなんだから。

じゃ、これからよろしくね!不知火!」

 

陽炎が私に握手の手を差し伸べる。

私はそれを握り、

 

「はい、よろしくお願いします」

 

この世界で生きていく決意を固めた。

不知火の名を背負って生きていく覚悟を、固めた。







蜃気楼
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