私の名前は不知火です   作:おもいつかない

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蝉の声を五月蝿く思いながら、





第一話【不知火】

特に怪我はないので、鎮守府内の案内をしてあげる。

という陽炎の提案に乗り、

そこそこ綺麗な鎮守府の廊下を歩いていると、

思いついたように彼女は呟く。

 

「あーぁ、そういや提督不知火のこと心配してたんだっけ。

んー.......、とりあえずはうちの提督に会ってもらうわね、不知火」

「はい、私は拾われた身ですので。指示に従います」

「貴女かったいわねー、もっと気楽でいいのに」

「どうにもそういうのは性に合いませんので」

「ま、個人の性格だからこれ以上言わないけどねー」

「ありがとうございます、

ところで提督はどこにいらっしゃるので?」

「ここ」

 

陽炎は私から1mしか離れていない扉を指差す。

なるほど、こんなに近かったから思い出したのか。

私は扉をノックし、

 

「提督、いらっしゃいますか」

 

と言った。

自然に行ったこの一連の行為に隣で陽炎が驚いているのだが、

一番驚いているのは私だった。

なぜこんな簡単に、自然に、こんなことができる。

いや、答えはもう出ている。

私が以前どこかで使われていた艦娘だからだ。

 

「入りなさーい」

 

返ってきた返事に、

思考の世界から現実に引き戻された私は慌てて扉を開ける。

取り敢えずは話を聞こう。考えるのはそれからだ。

部屋の奥に二人の人物が確認される。

銀髪の女性と、優しい顔をした人物。

 

「あら、あなた目が覚めたのね!変なところとかはない?」

「体に異常はありません、お気遣いありがとうございます」

 

白い服を着た、提督と思わしき人物が、

興奮気味に近づいてきた女性に対してか苦笑いする。

 

「まぁ、異常がないなら何よりだ。

まだ落ち着かないかもしれないが色々聞いても?」

「あっ、提督!この子は記憶喪失です」

「記憶喪失?何も思い出せないのかい?」

「名前だけは思い出しています。私の名前は不知火です」

 

私の名前を聞くと、一瞬提督が驚いた顔をしたのを私は見た。

ありえない、そんな顔をしていた。

この人は私を知っている。

私の名前を、私の知らない私を知っている。

顔から察するに今軽く口に出して良いものではないようなので、

今は黙っておこう。また、接触する必要がありそうだ。

 

「そうか、不知火か。

記憶がないなら、頼れる場所もないのだろう?」

「はい」

「なら、この鎮守府に着任するというのはどうかな。

上には私から話しておくし、このご時世だ。

上もこっちに強く言えやしないだろう。」

「そうしていただければ幸いです」

 

提督からの提案、飲まない手はない。

ここで、記憶を取り戻すまで働かせてもらうことにしよう。

 

「よし、決まりだ。君は艦娘だが」

「戦えます」

 

提督の言の葉を待つことなく、

口をついて出た言葉は自分には直ぐには理解ができなかった。

条件反射的に言った。戦える、と。

その場にいた私を含む全員が、

鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする。

 

「はははは........、

記憶がないから雑務をしてもらおうか、

なんて思っていたんだが、心配は無用だったわけか」

 

口をついて出た言葉だったが、私の心に偽りはないらしい。

『私』が残した何かが戦えると、心の奥で叫んでいる。

 

「はい、駆逐艦不知火。戦えます。

この言葉に偽りなく、敵を殲滅できます」

「わかった。夕張、彼女の艦装の修理を頼む」

「わかりました、一日で仕上げます」

 

夕張と呼ばれた銀髪の女性が部屋を出て行く。

彼女の開いた扉が閉まると同時に陽炎が私に声をかける。

 

「本当に戦えるの?無理なんてしなくてもいいのよ?」

「ご心配ありがとうございます。大丈夫ですよ、私はやれます」

「そう..........じゃあ、明日からよろしくね!一緒に戦いましょう!」

「はい、改めてよろしくお願いします」

 

私達を見て微笑む提督に向き直り、敬礼する。

 

 

 

「駆逐艦不知火、これより第四鎮守府に着任します。

ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」







高台から海を見下ろして、



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