軍の偉いさんの高い見てくれだけの車の熱気が残す、
海。
今、私の目の前には広大な海が広がっている。
懐かしさを覚える磯の臭い、遠くに見えるは小島の蜃気楼。
やはり、私は艦娘だったようだ。
この環境に少し高揚している。
しかし、懐かしさを感じている私の体には、
そんな考えとはかけ離れた物騒な物が付いている。
背中には艦装、手には砲台のような火器、足には魚雷。
どれもが女性に似つかわしくない、
人を何かを傷つけるための危ない物だ。
そして、目の前には、6人の艦娘。横には5人の艦娘。
これから演習が始まる。
私が鎮守府に着任してから17時間ほど経過した。
昨日はあの後入浴し、直ぐに与えられた寝床に入って寝た。
ぶっちゃけ何かを考えるのも辛いくらい精神的に疲れていた。
泥のように眠り、朝起きると
夕張さんが私の艦装だというものを持ってきて、
目の下に隈をつけて疲れたと言い残してどこかへ行ってしまった。
当然、私にそこからどうしたらいいかなんてわからないので、
艦装を片手に呆然としていたのだが、
突然陽炎が訪ねてきて、私の腕を引っ張った。
訳も分からず連れられていく私。
そして今に至る。
今から演習が始まるということは、
隣にいる最上という人から聞いた。
陽炎に対して言いたい。
せめて演習だということくらい言ってくれ、と。
いくらなんでも楽しいことよで済ますのはないだろう。
まぁ、ここまで来てしまった者は仕方がない。
相手はなんでも第三鎮守府の艦娘達らしい。
「にしても不知火ちゃんだっけ?凄いねー。
着任して直ぐに他鎮守府との演習に出されるなんて」
隣で最上さんが笑みを浮かべる。
凄いというか、無茶だと思う。
自分が艦娘だということすら忘れていたのに、
いきなりこんな演習に駆り出されても戦えやしない。
せめて、最低限の動きの確認くらいはしないといけない。
「記憶だけで言えば、
初めて艦装を付けますので足手まといにならないよう頑張ります」
「へ?」
体を伸ばしながらの私の言葉に最上さんは唖然としている。
「実戦どころか艦装付けるのも初めてなのかい!?」
「はい」
最上さんの反応から察するに、
やっぱり無理があるんじゃないだろうか。
「提督は何を考えてるんだか...........ま、理由があるよね」
「随分信頼しておられるのですね」
「そりゃあね。提督は僕達のことを思って動いてくれてるから」
手をヒラヒラと振り、
提督の話をする最上さんは少し誇らしげで、
提督に対する信頼が本当であることが伺える。
なるほど、悪い提督ではなさそうだ。
上手くやっていけそうだと安堵していると、
向こうの艦娘の一人が話し始めた。
「じゃあ、演習を始めましょうか。
取り敢えずはそれぞれメンバー紹介といきましょう。
私は第三鎮守府第一艦隊旗艦蒼龍です。
それで右から順番に、
足柄、高尾、日向、叢雲、由良となります。
今日はよろしくお願いします」
向こうの蒼龍と名乗る人が言い終えると、
こちら側の夕張さんより長い髪をした銀髪の女性が言葉を発する。
「こちらこそよろしくお願いします。
私は第四鎮守府第一艦隊旗艦翔鶴です。
そして、右から順に陽炎さん、摩耶さん、最上さん。
っと、えー......................と」
「昨日付で第四鎮守府に着任しました、不知火です。
御指導御鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
これはもしかして、私のことをちゃんと知ってるのは、
陽炎と夕張さんと提督だけなんではなかろうか。
第一艦隊だとか聞こえたが、
第二でも第三でも今の私のような奴が混じるものではないから
気にしないことにしよう。
一瞬驚いたような顔をしたがすぐに持ち直して、
苦笑いをしながら、翔鶴さんが続ける。
陽炎が笑っているように見え、笑い声が聞こえたのは、
気のせいということにしておこう。
「そうですか、よろしくお願いします。
それでえっと、最上さん、不知火さん、金剛さんです」
「皆さんよろしくお願いしマース!」
皆、名前を呼ばれると礼をするだけだった中、
金剛さんが大きな声で挨拶をする。
なんだか金剛さんがどういう人か、
これで半分くらいわかった気がする。
皆が金剛さんに苦笑いする中、蒼龍さんが話し始める。
「それじゃあ、演習始めましょうか。
私がこの石を水面に投げます。
石が水面に触れたらそこから演習開始です。さぁ、投げますよ」
蒼龍さんが高く石を放り投げ、
放物線を描いて水面に向かって落ちていく。
ポチャン、と音がした瞬間に、演習は始まった。
初めてで、久しぶりの戦場。
精々頑張らせていただくとしましょう。
私は戦火の中を駆けていく。
『私』の残した闘争心に身を任せて。
遠く離れた無人島の、