千冬さんはラスボスか   作:もけ

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一夏と鈴のディ○○ーシーデートの内容は以下の通りです。
別に一々読まなくても本編だけで大丈夫ですが、まぁ一応。

5:30 起床
6:00 別々にこっそり寮を出て駅で落ち合う
7:30 舞浜駅到着、喫茶店で朝食をとる
8:00 入場ゲートに並ぶ
9:00 入場
   アメリ○○ウォーターフロントへ
9:10 タワテラのFPを取得
   ミステリ○○アイランドへ
   ジャーニーに並んで乗る
9:40 ○○リカンウォーターフロントへ
   タワテラにFPで乗る
10:00 ロスト○○ーデルタへ
10:20 インディのFPを取る
    ○○ーマーラインでメディ○○ーニアンハーバーへ
10:40 空いてる内にショッピング
    ショーの抽選をする
12:10 ○○クトリックレールウェイを経由して○○トリバーデルタへ
    インディにFPで乗る
12:40 テイクアウトのフードを買い込み、○○ィテレーニアンハーバーで場所取り
14:00 水上ショーを鑑賞
14:30 ○○リカンウォーターフロントへ
15:00 ウォーター○○○○パークで抽選に当たった期間限定のショーを鑑賞
15:30 ポート→ロスト→アラビー→ラグーン→ミステリアスとのんびり一周
17:30 チャイナ○○ジャーで早めのディナー
18:30 ○○ィテレーニアンハーバーで場所取り
19:30 夜の水上ショー
20:30 花火
20:45 ポートへ移動
    ○○アトピアに並んで乗る
22:00 閉園


デートの後は裁判っ!?

「これより裁判を始めるっ!!」

「何、これ」

「何よ、あんたたちっ」

 

 いきなりで僕自身よく分かっていないけど、とりあえずどういう状況かと言うと、鈴とディ○○ーシーから帰って来るとそのまま食堂に連行され、1組のみんなに取り囲まれました。

 

「検察側、罪状を述べてください」

「はい。被告、織斑一夏と鳳鈴音は先に提出した行動によりデートをしていたのは明白であります」

「「(まぁ、そうだけど)」」

 

 二人して頷き合う。

 

「よって、死刑を求刑します」

「はぁぁぁぁっ!?」

 

 僕は開いた口が塞がらなかったので、鈴の絶叫だけが響き渡る。

 

「それでは弁護側、反対意見を述べてください」

 

 言葉に釣られて反対側に目を向けるが誰もいない。

 

「弁護人不在のため、弁護なしと判断。これより求刑に移ります」

「ちょっと待ったぁぁぁぁっ!!」

「何か?」

「『何か』じゃないわよっ!! なんでデートしただけで死刑にされなきゃいけないのよっ!!」

「そうだよ。別に悪い事なんかしてないんだし」

「ちなみに死刑執行人は織斑先生です」

「「うっ」」

 

 それはリアルに怖い。

 

「べ、弁護士を要求するわ」

「構いませんが、果たしてこの場に弁護を引き受けてくださる方がいらっしゃるとは思えませんが?」

「じゃ、じゃあ、自分たちで」

「お待ちなさいっ!!」

 

 一同の視線が声のした方に集まる。

 

「わたくし、セシリア・オルコットが弁護いたしますわ」

「セシリア……」

「一夏さん。どうぞ、わたくしにお任せください。見事嫌疑を晴らしてごらんにいれますわ」

「ん、あれ、でもそれって……」

「ありがとう、セシリア。お願いするよ」

 

 隣りで鈴が首をひねっているけど、今は気にしないでおく。

 

「はい、承りましたわ。大船に乗ったつもりでいてください」

「それでは弁護側、改めて反対意見を述べてください」

「はい、これは断じてデートなどと言うものではありませんわ。そもそもデートというものは恋人同士がするものであって、恋人関係にない一夏さんたちには該当いたしません」

「今週、例の週刊誌にフライデーされてましたが」

「あれも今回と一緒です」

「と言うと?」

「ただの友人同士が遊びに行っただけですわ」

「なっ、ちがっ」

 

 とっさに声を荒げそうになる鈴の口を塞ぐ。

 

「(鈴、落ち着いて。自供してどうするの)」

「(だってあの金髪、アタシたちのデートをなかった事にするつもりなのよ)」

「(仕方ないよ。このままじゃ待ってるのは姉さんによる確実なDead Endだよ)」

「(だからって)」

「(大丈夫だよ。僕たちがデートだって自覚してればいいだけの話なんだから)」

「(それは、そうだけど……。)」

 

 納得が行かない様子だけど、とりあえず抑えてくれた。

 

「分かりました。それでは、これより審議に入ります。検察側の証人、前へ」

「は~~い」

「の、のほほんさんっ!?」

「ごめんね、おりむぅ」

「それでは布仏さん、当日までの織斑くんの行動と当日朝の行動を証言してください」

「は~~い。わたしが部屋に帰って来ると、おりむぅが部屋の端末でディ○○ーシーについて色んなサイトを調べてたのを何度も目撃しました。それで、当日は朝早くからおめかしして出かけて行きました」

 

 なんだこの羞恥プレイ。

 

「このルームメイトからの証言により、織斑くんが事前に必要以上に入念に準備していたことと、当日の行動が証明されます。この気合の入れっぷりはデートだからと言えるでしょう」

「(一夏ったら、そんなに一生懸命準備してくれたんだ)」

「弁護側、反論は」

「遊びに行く先をリサーチするのは当然ですわ。しかも行く先は世界でも有数のレジャースポット。準備し過ぎるということはありません。早い時間からの行動はパスポートの金額から考えて開園から閉園まで遊びたいと思うのも自然なことではないでしょうか。服装については、身だしなみとして当然なことですわ」

「(くっ、こいつ本当になかったことにするつもりね)」

「それでは、次の証人」

「は~~い」

「ティ、ティナっ!?」

「悪いね、鈴」

「それでは鈴さんのルームメイトであるティナさんに質問です。布仏さんに質問した期間の鈴さん行動を教えてください」

「は~~い。鈴はこの一週間、突然ニヤニヤしたりブツブツ呟きだしたりして、ぶっちゃけちょっとキモかったです」

「キ、キモいって言うなっ!!」

「被告人は静粛に」

「くっ」

「続けてください」

「当日の朝は、普段着ないヒラヒラのワンピースなんか着て、鏡の前でクルクル回ったりして浮かれてるのが丸分かりでした」

「み、みみみ見てたのっ!?」

「バッチリと」

 

 親指を立て、ドヤ顔のティナ。

 

「恥ずかしさで死ねる」

 

 膝から崩れ落ちる鈴。

 

「鈴、あのワンピース姿、可愛くて僕は好きだよ」

「一夏~~」

 

 涙目ながら何とか持ち直す。

 

「弁護側、反論は」

「むろん、ありましてよ。鈴さんが妄想の世界に入って気持ち悪いリアクションをしているのはいつもの事ですわ」

 

 酷い言い様だな。

 

「それに、友達としてのお出かけだろうと相手が一夏さんなら浮かれるのもオシャレするのも当然ではなくて? 仮に皆さんでもそうなると思いませんか」

 

 取り囲む他の面々から「確かにね~~」「頑張っちゃうよね」「私なら勝負下着履いてっちゃうかも」と同意の声が上がる。

 

 最後の発言は聞かなかった事にしよう。

 

「それではここからは園内に入ってからの証言に移りましょう。 証人の方々、順番にどうぞ」

「オープン1時間前から並ぶほど気合入ってたのに、入場してから全然走ったりしなくて、むしろゆっくり余裕ある感じでした」

「お昼前でまだみんな元気にアトラクションを回ってる時間帯に、たっぷり時間をかけてショッピングをしていました」

「お昼はショーを待ちながらピクニックみたいに食べてました」

「いつもの鳳さんのイメージなら「全アトラクション制覇だーーっ」みたいな感じだと思うんだけど、午後はショーを3つも見てました」

「花火見た後に定番のデートスポット、○○アトピアに乗ってました」

 

 続々とされる証言。

 

「てか、みんな来てたのっ!?」

「「「「「うんっ♪」」」」」

「そして僕らをストーキングしていたと」

「それはたまたまだよ」

「そうそう」

「ちゃんと遊んでたよ?」

「抽選は外れちゃったけどね」

「お土産も買ったし」

 

 ちょっとジト目で見てしまう。

 

「(一夏、こいつら確信犯よ)」

「(やっぱりそうだよね)」

「これらの証言から、余裕を持った大人のデートをしていたのは明白です」

「異議ありっ!!」

 

 セシリアが吠えた。

 

「わたくしが一つ一つその誤解を解いてさしあげますわ」

 

 いつも不思議に思うんだけど、セシリアはどうしていつもこんなに自信満々なんだろう。

 

「まずは、余裕のある遊び方、時間をかけたショッピング、ショーを複数見たこと、これらは合わせて説明することができます。それは一夏さんだからです」

 

 みんなの頭にクエッションマークが浮かぶ。

 

「いいですか、鈴さんの視点から考えるからおかしくなるのです。エスコートするのはあくまで一夏さん。つまりこの遊び方は一夏さんの視点から見なければいけません」

 

 一旦言葉を切り、みんなの反応を窺う。

 

「一夏さんなら、子供みたいにハシャグ姿より、こんな大人な遊び方の方が合ってると思いませんか?」

「確かに」

「言われてみれば」

「落ち着いてるもんね~~」

 

 口々に同意の声が上がるが、

 

「それではデートをしていた反論になっていませんが」

 

 中には丸め込めない人も。

 

「いいえ、遠回しですが否定になりますわ。これは鈴さんから見て『いつもと違う行動をとっているからデート』という考え方の否定になっていましてよ。一夏さんにとってこれは誰をエスコートしていたとしても普通のことなのですから」

「(くぅぅぅぅっ!! あの金髪ロール、言いたい放題言ってぇぇぇぇ!!)」

「(どうどう)」

 

 鈴が爆発しそうだ。

 

「次に○○アトピアですが、綺麗なものが好きなのはなにも女性だけではありませんわ。それにただ特定のアトラクションに乗ったからというだけでデートの根拠にするのは無理があるのでは?」

 

 確かにあれは綺麗で僕も好きだな。

 

「そしてここからが、わたくしの反撃ですわ」

 

 腰と胸に手を当て挑戦的な微笑みを浮かべる。

 

「ランチについて、みなさんは疑問に思いませんでしたか? ピクニックのように食事をとると考えていたのなら、なぜお弁当を作って行かなかったのかとっ!!」

「そ、それは園内でのお弁当は禁止されていたからで」

 

 検察役の子が押されつつも何とか反論するが、

 

「それでも一度外に出ればピクニックエリアなるものがあり、お弁当を食べることができますわ」

 

 一蹴され、

 

「気合の入ったデートなればこそ、手作りのお弁当を一夏さんに食べて欲しい。これが自然な流れではなくて?」

「くっ」

 

 やり込められた。

 

「(鈴)」

「(な、なによ)」

「(作りたかった?)」

「(ちょっとは……ね)」

「(ごめん)」

 

 その発想はなかったや。

 

 「せっかくディ○○ーに行くんだから中のものを食べた方が楽しめるんじゃないかな」と思っただけど、女の子は難しいな。

 

「そして決定的な反論がありましてよ」

 

 みんなの視線が集まる。

 

「お二人はキスをしてませんわっ!!」

「「「「「おぉ~~~~」」」」」

 

 なぜか一斉に感嘆の声が上がる。

 

「日本では定番のデートスポットで朝から晩まで一緒にいて、花火も見て、カップル御用達のアトラクションまで乗って、結果、キスもしていない。これではカップルとは言えませんわ。つまり、翻って、これはデートではありませんっ!!」

 

 「どうだっ!!」と言わんばかりの勝ち誇った顔するセシリア。

 

「検察側、何か反論はありませんか」

 

 苦虫を噛み締めたような表情になる検察官。

 

「それでは陪審員のみなさんの決を採りたいと」

「待ってくださいっ!!」

「検察官?」

「こちらにはまだ切り札があります」

「な、なんですって……」

「これは使いたくなかったんですが、こう劣勢では仕方がありません。黛先輩、お願いします」

「はいは~~い♪」

 

 みんなの後ろから声がして、モーゼの如く人垣が割れる。

 

「証拠物件を」

「毎度あり♪」

 

 そう言って黛先輩は懐から3枚の写真を撮り出した。

 

 お金取ってるんですか?

 

「1枚目の写真はこれ」

 

 そこには手を繋いで歩いている二人が写っていた。

 

「んで、次はこれ」

 

 さっきよりも大胆に、鈴が僕の腕を取り引っ張っている写真。

 

「そして、とっておきの写真はこれだぁぁぁぁっ!!」

 

 大声で啖呵を切った示されたそれは――――――

 

 逆光でシルエットになっているが、花火をバックに、僕の頬に鈴がキスしている写真だった。

 

「「「「「キャーーーーー!!」」」」」

 

 瞬間、大歓声が上がり、

 

「な、ななな何てもの撮ってるのよっ!?」

 

 鈴もたまらず大声を上げる。

 

「いや~~、普通に花火バックのシルエット写真撮ろうと思っただけなんだけど、まさかあのタイミングでキスするなんてね~~♪」

「と、盗撮だわっ!! 訴えるわよっ!!」

「そんなこと言っていいのかな~~♪」

「な、なによっ」

「この写真欲しくないの?」

「うっ」

「被写体になってくれたお礼に焼き増ししてあげようと思ってたんだけど」

「うぅぅぅぅ」

「どうする?」

「わ、分かったわ」

「よっしゃ♪」

 

 黛先輩強いな~~。

 

 後で僕も頼もう。

 

「手を繋ぎ、腕を組み、ほっぺとは言えキスをしている証拠写真です。さぁ、これでデートだとみなさんにも分かってもらえたはずです」

 

 今度は検察側が勝ち誇る。

 

 セシリアの顔も険しくなるが、

 

「まだ……まだですわっ!!」

 

 裂ぱくの気合で跳ね返す。

 

「ふふ、無駄な事を」

「いいえっ!! いいですか、皆さん。腕を組むなどの行為は何も鈴さんだけでなく、わたくしや箒さん、布仏さんなどもしていますわ。そして問題のキスの写真ですが」

 

 何を言い出すか、みんなに緊張が走る。

 

「これは鈴さんが一方的にしているだけで、一夏さんがしているわけではありませんわ。言わば、これはただの不意打ち。写真の出来に惑わされてはいけませんっ」

 

 これには賛否両論のようで「確かに」「いや、それでも」「う~~ん」といった声が聞こえる。

 

 セシリア、ちょっと弱いか……。

 

 そしてみんなの視線は裁判官に集まる。

 

「これにて審議はお終いです。それでは陪審員のみなさんの決を採りたいと思います」

 

 みんなの顔に真剣みが帯びる。

 

「それでは有罪だと思う方は挙手を」

 

 半分くらいの手が上がる。

 

「次に無罪だと思う方は挙手を」

 

 こちらも半分くらいだ。

 

「それでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 12人対13人で無罪っ!!」

 

「「「「「わぁぁぁぁ」」」」」

 

 歓声と同時に拍手が起こる。

 

「やりましたわ、一夏さん♪ わたくし達の勝利でしてよ♪」

 

 セシリアが僕の手を取り喜びの声を上げる。

 

「ありがとう、セシリア」

 

 僕としては複雑な気分だったけど、頑張ってくれたセシリアにはお礼を言っておく。

 

 隣りの鈴に視線を向けると、

 

「…………」

 

 俯いていて表情が読めない。

 

「鈴?」

 

 声をかけても反応がないので肩に手を触れてみると、キッと顔を上げ、

 

「納得いかないわっ!!」

 

 吠えた。

 

 突然の大声に静まり返る。

 

「これはアタシと一夏の問題よ。関係ない人は首を突っ込んでこないでっ!!」

「私は関係あるぞ」

 

 いらっしゃったんですか、箒さん。

 

「わたくしだって関係者ですわ」

 

 まぁ友達だからね。

 

「わたしもわたしも~~」

 

 のほほんさんまで参戦ですか。

 

「あんた達はそう言うけど、アタシとあんた達には決定的な差があるわ」

 

 鈴は3人を睨みつけてから、僕に向き直る。

 

「アタシは一夏が好きっ!!」

 

 堂々とした告白に、その場にいる全員が息を飲む。

 

「確かにアタシ達はまだ恋人同士じゃないわ。でもこの気持ちは誰にも負けない。だから告白もしてない人がアタシの邪魔しないでっ!!」

「鈴……」

 

 鈴は気持ちを正直に表せる子だけど、だからってみんなの前で告白して平気ってわけじゃない。

 

 その想いの強さに僕の胸も熱くなる。

 

 鈴が気まずそうに「迷惑だった?」と言うような視線を僕に向けてくるが、それに首を横に振って応え、

 

「ありがとう。嬉しかったよ」

 

 と頭を撫でると、

 

「うん」

 

 頬を赤くし笑顔を浮かべてくれた。

 

「一夏、確認したいことがある」

 

 僕ら二人以外で最初に口を開いたのは箒ちゃんだ。

 

「なに、箒ちゃん?」

「おまえはどうなのだ? おまえの気持ちは」

「鈴が好きだよ」

 

 場がどよめく。

 

 鈴の気持ちに応えるために僕も正直に答える。

 

「一夏~~」

 

 隣りで鈴が嬉しそうな声を上げる。

 

「で、でも、付き合ってはいないんだろう?」

 

 さすがに狼狽を隠せない箒ちゃんが質問を重ねる。

 

「うん」

「なぜだ?」

「鈴には伝えてあるけど、それをわざわざ他の人に言う気はないよ」

 

 これは僕と鈴の内面に深く関わる問題だ。

 

 おおっぴらにするつもりはない。

 

 僕から強い拒絶が来るとは思っていなかったらしく、誰も後を次げないでいたが、

 

「分かった」

 

 やはり動いたのは箒ちゃんだった。

 

 しかも、

 

「一夏」

「なに?」

「私はおまえが好きだっ!!」

 

 聞き間違う余地のない告白。

 

 予想外の展開に驚きの声が上がる。

 

 僕も驚きでまともなリアクションを取れないでいると、箒ちゃんが言葉を重ねてきた。

 

「一夏、私は引っ越す前からおまえが好きだった。そして要人保護プログラムのせいで転校を繰り返す日々の心の支えがおまえへのこの想いだった。そしておまえがISを動かすという奇跡を経て、この学園で再会することが出来た。ニュースでおまえの顔を見た時は運命を感じたよ」

 

 一度言葉を切り、

 

「小学1年生で出会い、好きになり、4年生で離れ離れになって、再開するまで6年だ。まだたかだか16年に満たない人生だが、おまえへの想いは私の人生と言ってもいい。だからおまえが誰を好きでいようと簡単に諦められるものじゃない。そこの鈴とまだ付き合っていないというなら、私は自分を選んでもらえるチャンスに賭けたい」

 

 最後はしっかりと僕の目を見て、

 

「改めて言おう。一夏、私はおまえを愛している」

 

 自分の存在全部を賭けてぶつかってくる箒ちゃんの迫力に呑まれた。

 

 頭がうまく回らない。

 

 けど、何か言わないと……。

 

「あ、ありがとう。嬉しいよ」

 

 うん、嬉しいのは本当だ。

 

 そんなに想い続けてもらえるなんて男冥利に尽きる。

 

 でも、

 

「箒ちゃんの潔い所とか、凛々しい所とか、たまに見せる女の子らしい所とか、綺麗な黒髪とか、端正な顔立ちとか、ついつい目がいっちゃう所とか、好きな所いっぱいあるよ」

 

 言葉を探すが、傷つけない言い方なんて浮かばない。

 

「でも、ごめんなさい。僕は今誰かと付き合うつもりがないんです」

 

 真っ直ぐな気持ちには真っ直ぐに応えたい。

 

「それは……」

 

 若干血の気の引いた箒ちゃんが何とか声を出す。

 

「僕には絶対に譲れない事があって、今はそれだけで精いっぱいなんだよ。同時に全部やれるほど僕は器用じゃないんだ。だから、ごめんなさい」

 

 謝ってどうにかなる問題じゃないけど、傷つけたことは謝りたい。

 

「じゃあ、鈴はどうして」

「アタシは、一夏が好きだから全力で口説いてるだけよ。いつか一夏から付き合ってくださいって言わせてやるんだから」

 

 鈴が挑戦的な表情を浮かべ堂々と宣言する。

 

「そうか……そういうことか……」

「箒ちゃん?」

「一夏っ!!」

「は、はいっ」

「私は諦めない。今はまだ付き合うつもりがないと言うなら、その時が来た時に私を選んでもらえるよう全力を尽くす。いいなっ!!」

「え、あ、はい」

 

 勢いに負け、返事をしてしまう。

 

「鈴」

「なによ」

「負けないからな」

「こっちの台詞だっての」

 

 にらみ合う二人。

 

 それを微妙な表情で見つめるセシリア。

 

 そして、いつもの笑顔が固い感じのするのほほんさん。

 

 周りのみんなの反応は様々だった。

 

 この直後、見回りにきた姉さんに見つかり、一喝され、解散となった。

 

 




自分、バイト経験あり&年パス所持者だったんで詳しいんですよw
初デートで行くと別れると言う都市伝説はちゃんと理由があって、長い待ち時間を退屈しないで会話が続くかどうかとか、女の子の疲労に気付いて気が使えるかとか、初デートの緊張に加算される人混みのストレスとか、慣れていないと上手く回れない等々、デート初心者にはハードルが高いんですよね。きちんとした情報収集と事前の計画が大事なのです。ちなみに、一度でいいからパレードは一時間半待ってでも(一時間前に地面に座っていい放送が入るのでその前から立って待っている)最前列で見る事をおススメします。迫力が全然違うのですよ。ダンサーさんやキャラクターが構ってくれる事もありますし。

さておき、裁判ネタはどうだったでしょうか?
ぶっちゃけ最後の鈴と箒が全部持っていった感じでしたけど……。
でもこれで一夏を巡る戦いのスタートラインは、告白にランクアップしました。
してない人は論外って事で。

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