千冬さんはラスボスか   作:もけ

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前後編でラウラのお話ですが、かなりアンチと言うか、酷い扱いとなっておりますのでその点ご注意ください。
ただしこれはラウラがヒロインズから新たなステージへとクラスチェンジするための布石の様なもので、その先の展開ではラウラに萌えられる仕様となっております。



ラウラ・ボーデヴィッヒ、前編

 休み明けの月曜日、朝のHR。

 

 教壇の上に立つ真耶先生を「うん、今日もたわわに実ってるな」なんて呑気に見上げていると、

 

「今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります。なんと、このクラスに新しいお友達が増えます。転校生です」

 

 「え、鈴に続きまた転校生?」と疑問に思ったのも束の間、 

 

「「「「「えぇぇぇぇっ!?」」」」」

 

 教室が絶叫に支配され、あまりの大音量に耳鳴りがする。

 

「転校生だとっ!?」

「そんな情報、聞いてないよっ」

「くっ、私としたことが……」

 

 次いで、口々に悔しがる声が上がる。

 

 男の僕にはよく分からないけど、女子は噂好きだ。

 

 鈴の時も先に情報を掴んでたし。

 

 でも今回は完全に不意打ちだったみたいだ。

 

 そんなみんなの喧騒が収まらないうちに、教室のドアが開く。

 

 現れたのは、腰まで伸ばした綺麗な銀髪の小柄な女の子。

 

 しかし言葉は悪いかもしれないけど、その異様な外見にみんなが反応に困る。

 

 伏せられた瞳は右目のみで、左目は武骨な眼帯に隠されている。

 

 改造された制服は、軍服のように裾野のすぼまったズボン。

 

 そしてなにより、その良過ぎる姿勢と緊張感のある雰囲気はまさしく軍人といった感じで……。

 

「え~と、ドイツから来た転校生のラウラ・ボーデヴィッヒさんです」

 

 紹介する真耶先生も、ちょっと口元を引きつらせている。

 

 入ってくるまでの騒ぎが嘘のように静かになった教室。

 

 その沈黙を破ったのは教壇の隅で腕を組んでいた姉さん。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。織斑先生と呼べ」

「了解しました」

 

 教官ってことは、姉さんがドイツに居た時の教え子?

 

 じゃあ、やっぱり軍人なのか。

 

 鈴も所属は軍らしいけど、ISの部隊というのは一般的に連想される軍人とは大きく違い、学校の運

動部をちょっと厳しくした感じなんだそうだ。

 

 でも目の前の彼女は根っからの軍人といった雰囲気を醸し出している。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 軍人らしい簡潔な名乗り。

 

 みんなその続きを待つ……が、続くのは沈黙のみ。

 

「あ、あの~、以上ですか?」

「以上だ」

 

 恐る恐るといった感じで真耶先生がラウラに尋ねるがバッサリ切られてしまう。

 

 僕も含め一同唖然。

 

 呆けていると、その時、彼女の目と僕の目がかち合う。

 

 そして、

 

「貴様がっ!!」

 

 いきなり激昂した転校生に疑問を感じた瞬間、相手が僕に平手打ちを出したのが視界の端に映った。

 

 体に染みついた反射で、その手を受け止め手首を返し捻ろうとすると、相手も反射だったのだろう、いつの間にか握られていたナイフを持った逆の手が僕の顔面に突き出された。

 

 ギリギリで顔を反らしたが躱し切れず頬が切り裂かれ血飛沫が舞う。

 

 と同時に掴んでいた相手の手首でブチッという嫌な音がする。

 

 顔を反らしたと同時に、さらに手首を捻じり、筋を捻じ切ったのだ。

 

 痛みに顔が歪む転校生。

 

 しかし至近距離にあったはずの顔が急に視界から消えた。

 

 と同時に窓際で何かぶつかる音が聞こえた。

 

 ここで箒ちゃん、セシリア、のほほんさんがそれぞれ声を上げ、席を立つ。

 

 僕は転校生の行方と、音の原因を探るためそちらに顔を向ける。

 

 すると、窓際にうずくまる転校生とその前に立つ姉さんが……。

 

 認識した途端、姉さんが転校生を蹴り上げた。

 

 高々と宙を舞う転校生。

 

 そして、再度足が地面に着く前に姉さんが拳を――――――

 

「ダメだ、姉さんっ!!」

 

 僕の叫びに、寸前で拳を止めてくれた姉さん。

 

 再び倒れ伏す転校生。

 

 ここは3階だ。

 

 もしあのまま殴り飛ばされていたら……。

 

 箒ちゃんの横を通り過ぎ、姉さんを後ろから抱きしめる。

 

「姉さん、大丈夫だよ。僕は大丈夫だから……」

「一夏……」

 

 みんなが固まっている中、最初に動いたのは意外にも真耶先生だった。

 

「織斑先生、織斑くんを保健室に連れて行ってあげてください。ボーデヴィッヒさんは私が。皆さんはこのまま教室で待機していてください。後、織斑くんの血ですが、証拠写真を撮らないといけないのでそのままにしておいてください」

 

 いつもと違う厳しい大人の顔をした真耶先生が場を仕切ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室での騒動から1時間半が経過した日本時間午前10時、事実確認を終えた学園側が日本・ドイツ両政府とIS委員会に事件の報告が成された。

 

 いくら治外法権のIS学園といっても殺傷事件をもみ消すことはできない。

 

 日本政府は緊急会議を開き、日本時間11時、ドイツ政府に対して激しく抗議することを表明。

 

 IS委員会でも、世界でただ一人の男性IS操縦者を殺害しようとした彼女とドイツに対し、厳しい制裁措置をとることを日本時間13時に決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室を出た僕は姉さんに付き添われ保健室で治療を受けた。

 

 その際、傷はそこまで深くなく痕は残らないと言われ、姉さんと一緒に胸を撫で下ろす。

 

 髪や服に付いた血が気になったが、それよりも先に事情聴取を受ける。

 

 事件自体は目撃者がクラス丸々1つ分いるので問題なかったが、背後関係、つまり動機については姉さんの口から語られた。

 

 どうやら彼女はドイツ時代の姉さんの教え子で、第2回モンド・グロッソで姉さんが棄権した経緯に対して僕を逆恨みしていたらしい。

 

「後の事はこちらでやっておきますから着替えていらっしゃい」

 

 そんな学園長の言葉に甘え、姉さんと一緒に寮に戻る。

 

 姉さんは僕から離れるつもりがないらしく、一緒に僕の部屋へ向かった。

 

 部屋に着くなり「着替えを持って私の部屋に」と言われ、不思議に思ったが素直に従う。

 

 そして寮長室へ。

 

 入室すると、そのまま浴室に繋がる洗面所に連れ込まれた。

 

 いきなり脱ぎだす姉さん。

 

 慌てて止めようとするが、姉さんの追い詰められた子供のような表情に思わず手が止まる。

 

 観念して、僕も裸になる。

 

 そして子供の頃のように二人でシャワーを浴びた。

 

 まずは姉さんが、次に僕が、相手の頭を洗う。

 

 姉さんの頭を流し終わると、立ち上がった姉さんが振り向き、いきなり僕を抱きしめてきた。

 

「ね、姉さんっ!?」

 

 いくら姉弟といっても、思春期男子。

 

 美人でスタイルもいい大好きな姉さんと裸で抱き合うなんて理性がもたない。

 

 しかし、静止の声を続けることは出来なかった。

 

 姉さんの肩が震えていることに気付いたからだ。

 

 そして、

 

「すまない。すまない……」

 

 シャワーの音に消されてしまいそうな弱弱しい謝罪の言葉が耳朶に響く。

 

 さっきまでの動揺はどこかへ行ってしまった。

 

 いつも強く優しく甘く過保護に僕を守ってくれる姉さんが、今は僕の腕の中で子供のように震えている。

 

 最初は戸惑い、次に困って、最後には愛おしさだけが残った。

 

 ずっと思って来た事だ。

 

 姉さんを守ってあげたいと……。

 

 姉さんの背中に手を回し、優しく撫でる。

 

 姉さんが落ち着くまでずっとそうしていた。

 

 しばらくして姉さんの肩の震えが治まると、

 

「もう、大丈夫だ。すまなかった」

 

 と、俯いたまま体を離そうとしてきた。

 

 でも今度は僕が姉さんを抱きしめる。

 

「一夏?」

 

 不思議に思ったのか顔を上げた姉さんと至近距離で目が合う。

 

 僕は笑顔で、

 

「ありがとう。守ってくれて。姉さん、大好きだよ」

 

 と、思いの丈を口にする。

 

 それに驚き、目だけじゃなく顔まで赤くした姉さん。

 

「馬鹿者」

 

 と言ってそっぽを向いてしまったけど、こちらに向き直った時には優しい微笑みを浮かべて、

 

「私も愛している」

 

 と言ってくれた。

 

 その心を掴んで離さない魅力的な表情に見蕩れていると、自然と姉さんの唇に目がいって……。

 

「したいのか?」

 

 唐突な投げかけに我に返り、意味を理解する。

 

「え、あ、いや、その……」

 

 慌てて混乱する僕。

 

「嫌なのか?」

 

 重ねられる質問。

 

「……したい……です」

 

 恥ずかしくて姉さんの顔が見れない。

 

 俯いていると、

 

「私もだ」

「えっ」

 

 瞬間、唇をふさがれた。

 

 視界が姉さんでいっぱいになる。

 

     えっ? なに?

 

          やわらかい

 

               どうしてこんなに近いの?

 

                    やわらかい

 

                         分からない

 

                              やわらかい

 

 唇が離れる。

 

 姉さんの顔が離れる。

 

 姉さんから目が離せない。

 

 姉さんは目を伏せ、さっきまでの感触を確かめるように唇を指でなぞって……。

 

「っ!?」

 

 その動きに、目を見張った。

 

 息を飲んだ。

 

 心臓が痛いくらいに鼓動する。

 

 瞬間、顔に熱が集中する。

 

 理解した。

 

 やっと追い付いた。

 

 僕は姉さんとキスしたんだ。

 

 驚きと羞恥と歓喜が僕の中で暴れ出す。

 

 そして、目の前の姉さんが、可愛いと思った。

 

 綺麗だと思った。

 

 色っぽいと思った。

 

 もっと抱きしめたいと思った。

 

 もっとキスし――――――

 

 パチン。

 

 不意打ちでおでこに軽い衝撃が来る。

 

「そんな目で見るな。恥ずかしいだろう」

 

 姉さんにデコピンされたと遅れて気付き、我に返る。

 

 鳩が豆鉄砲くらった様な僕の様子に頬を緩める姉さんは、

 

「私のファーストキスは弟か。ま、悪くないな」

 

 と、また舞い上がる様な事を言ってくれた。

 




皆さんはこう思っていませんか?
せっかく一緒にお風呂に入ったのにキスだけなのかと。
思春期思春期言ってるくせにその程度で我慢できるのかと。
その不満は当然だと思います。
何を隠そう作者自身がそう思っているのですから。
と言うわけで、18禁の方にこの続きを上げておきます。
ストック分の範囲なのに更新遅れた理由はそれです。
人生初の18禁小説。
はっきり言ってかなり難しかった上に、満足のいく出来には持っていけませんでした。
まず語彙が不足している。
そして的確な表現方法、描写の仕方が分からない。
つまり知識が全く足りていませんでした。
それもそのはず、二次ならまだしも、ちゃんとした18禁小説を読んだ事がなかったんですよ。
なので、ご期待に沿えるとは思えませんが、良かったらそちらも読んでやってください。
読まないor読めない場合は「あぁ、色々したんだろ」くらいの認識でも大丈夫です。

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