千冬さんはラスボスか 作:もけ
義妹でも発動しますよ。
しかも過激になってます。
ではでは、お楽しみください。
「ここは……リビング」
意識が覚醒すると、そこは見慣れた自宅のリビングだった。
「あれ? でも、何でここに?」
昨日はラウラが二度目の転入を無事果たして、放課後は黒兎部隊の人達と初顔合わせ、一緒に夕飯を食べてから部屋に戻って、夜は普通にのほほんさんとお喋りしてから自分のベッドで寝たはずだけど……。
それにいつもより視点が大分低いような気がする。
座ってるわけでも膝立ちしてるわけでもないのに。
確認する様に足元に視線をやると、その距離が近い。
そして目に入る今の自分よりずっと細い脚。
両手を見ると、その手も小さくなっていて柔らかそうだ。
疑問を解消するべくさらに周りに視線を送ると、窓ガラスに小学生くらいの男子が写っていた。
右手を挙げるとガラスの中の少年も鏡合わせに手を上げる。
ていう事は、この少年は僕なわけか。
そこにきてやっと「あぁ、これ夢か」と結論に至る。
過去の自分の容姿なんて見ても分からないもんだね
毎朝見てるとは言っても鏡の中でちょっとの時間だし、それも髪型とかどっかに何んか付いてないかチェックするくらいだから仕方ないのかもしれないけど。
とりあえず、どうやら小学生の頃の夢を見ているみたいだね。
明晰夢なんて珍しい。
現状を理解した所で玄関から鍵を回す音が聞こえ、その瞬間頭に「姉さんだ」と閃く。
まぁ、二人暮らしだから当然なんだけど。
体が勝手に動き、子供の僕は嬉しそうに玄関まで駆けて行くと靴を揃えて振り返った高校生の姉さんのお腹に抱きつく。
「姉さん、お帰りなさい」
「ただいま、一夏」
紺のセーラー服を着た姉さんは、優しい微笑みを浮かべながら僕の頭を撫でてくれる。
そんな姉さんから鞄を受け取り、先導する形で姉さんの部屋へ向かう。
今でも続けているこの『鞄を受け取る』と言う行為だけど、当時の僕の中では大きな意味があった。
それは『鞄』と言うものが『出かける』と言う行為の象徴で、つまり姉さんから鞄を受け取ると言う事は、姉さんがもう出かけない、この後は二人でいられると言う事のサインだと感じていたからだ。
ではなぜ鞄なのかと言うと、想像してもらえると分かってもらえると思うんだけど、朝、姉さんは町内を一周してから庭で素振りをして、それからシャワーを浴びて身だしなみを整えてから朝食を食べる。
そして時間になると鞄を持って玄関に向かい、靴を履いて家を出る。
この一連の流れの中で、出発の合図になっているのが鞄なのだ。
だから僕は、帰って来てくれた嬉しさと、一緒にいられる嬉しさを併せて姉さんから鞄を受け取る。
その後は部屋着に着替えた姉さんと一緒に夕飯を食べる。
この頃の僕の料理はお世辞にも美味しいと呼べるものではなかったけど、姉さんは嫌な顔一つせず「美味しい」と言って食べてくれていた。
それが嬉しいやら申し訳ないやらで篠ノ之のおばさんに料理を習ったりもしていたな。
食事が終わったら一緒にお風呂に入る。
今思えば、家にいる時の姉さんは極力僕と一緒にいようとしてくれていた。
親のいない寂しさを少しでも埋めてくれようとしていたんだと思う。
今よりもスレンダーな姉さんと泡まみれになりながら洗いっこをする。
うん、夢の中でも姉さんは綺麗だ。
お風呂から上がったら一緒の布団で眠る。
石鹸の香りのする姉さんに抱き締められ、その温もりに安心して眠りにつく。
「姉さん大好きだよ。おやすみなさい」
夢の中で眠りに落ちるのとリンクして、現実世界で徐々に覚醒していく。
ぼんやりした頭で「いい夢だったな」と幸せな気分に浸る。
少し頭が回り始めると、今見た夢について考えが及ぶ。
こんな夢を見るのは、やっぱりこの前姉さんとシャワーを浴びたからだよね。
それにキスとか、あんな事までして……。
と問題の場面を思い出してしまい、たまらない気持になっていると、
「あれ?」
夢から覚めても自分とは別の体温と、柔らかな肌の感触がする?
そっと布団をめくって中を覗くと、そこには、
「ラウラっ!?」
驚いて声を上げてしまうが、目ではしっかりその肢体を見てしまう。
丸まっているので大事な所は見えないが、背中や腰、足を見る限り寝間着だけでなく下着まで何も着ていない模様。
いや、正確には待機状態のISを太ももに付けているが、別にどこも隠せていないから意味はない。
その透ける様な白い肌と綺麗な銀髪、それに反してあどけない寝顔のラウラに見蕩れ、じっくりたっぷり堪能してから、今更のようにハッと我に返り、とりあえず自分はベッドから抜け出してラウラにきちんと布団をかけ直す。
すると、振動のせいか、はたまた温もりがなくなったせいか「……兄様?」と呟いてラウラが目を覚ましてしまう。
そしてそのまま体を起こそうとすると掛け布団が捲れてしまい、慎ましい二つの膨らみと眩しいばかりの肌が露わになる。
慌てて肩に手を置き、体勢を戻して布団で隠してから
「ラウラ、なんでここにいるの?」
と当然の疑問をぶつける。
ラウラはさすが軍人といった感じで寝起きから頭が回るらしくハキハキと説明を始めた。
「私は兄様の護衛として、なるべく近くにいるのが望ましい。それにクラリッサから、妹は兄を起こしに来てうっかり一緒に寝てしまうのが喜ばれると聞いたので実践してみた。どうだ? 嬉しかったか兄様」
あの人のせいか……。
クラリッサという人は、ラウラが隊長を務める黒兎部隊の副隊長で、二十○歳と(詳しくは教えてくれなかった)一番の年長であることもあって部隊のまとめ役をしている……のだが、大の親日家でありながら、その情報ソースはアニメと漫画オンリーという大変残念な人でもある。
しかも困った事に、その色々間違った日本観を当然の様に他の隊員に教えるもんだから、部隊丸ごと変な感じになってしまっている。
昨日初めて全員と顔を合わせた時なんて「親方様と呼んでも構いませんか」とか、まだ中学校入りたてくらいの子に「わ、私たちハーレムにされちゃうんですよね」なんて涙目で言われて誤解を解くのが大変だった。
と、回想はこのくらいにして、今はラウラだ。
「そんな妹は現実にはいないから。それになんで裸なの」
「私は寝る時は裸と決めている」
いや、そんなドヤ顔で言われてもリアクションに困るから。
「とりあえず、裸は禁止。一緒に寝るのは……嬉しいけど、そういうのは姉さんにしなさい」
「姉様には追い出されてしまったのだ」
先に姉さんの方に行ったのか。
ちょっとシュンとなってしまったラウラに「今度一緒にお願いしてあげるから」と頭を撫でてあげると、
「本当か!? ありがとう兄様♪」
「わっ」
勢いよく飛びつかれ、ドタンと大きな音をたてて床に押し倒される。
軍隊育ちのラウラがこういう普通の子供みたいな反応をしてくれると義兄としては嬉しい限りだけど、いかんせんその体勢と格好がよろしくない。
胸の感触は、まぁよく分からないけど、事実として裸の女の子に抱きつかれ押し倒されて密着していれば、健康な思春期男子、しかも姉さんとのアレコレを思い出した直後とあっては暴走気味の下半身が反応してしまうのは必然で、しかも体勢と身長差的にちょうどラウラを下から押し上げる位置にアレが……。
「うんっ」
マズいと思った時には時既に遅く、普段のラウラからは想像もつかない様な可愛い声が上がり、反応した体が跳ね、僕の首に回している腕に力が入る。
「な、なんだ、今のは」
何が起きたのか分からない様子のラウラは、恐る恐る体を元の位置に下ろそうとして、
「あっ」
再度の接触で、甘い声が漏れる。
「ラ、ラウラ」
「に、兄様、これは……」
「と、とりあえず一旦離れようっ」
「ダメだっ」
体を離そうと肩に手をやった所で、逆に離れまいとして強く抱きしめられる。
「ラウラ?」
「クラリッサから聞いたのだ。男は、男性器は欲情した時とは別に、寝起きは大きくなってしまうものだと。そして、そういう場合は、その、介抱してやるのが妹の努めだと」
あんた、純真無垢な女の子に何教えてんだよっ!!
どこのエロゲ知識だっ!!
脳内でサムズアップしたクラリッサさんのドヤ顔が浮かぶ。
後で覚えてろよ。
「で、だな、兄様。クラリッサはやり方までは教えてくれなかったのだ。その時は兄様に聞けばいいと。言われるままに奉仕すればいいと言っていた。なのでな、その、」
話しているうちに腕の力が弱まり、言いよどんだ所で首に回されていた手は肩に移り、ラウラの上半身が起こされる。
間近で見る、赤い顔。
眼帯をしていないために綺麗な金と赤のオッドアイが一種蠱惑的な雰囲気を感じさせる。
そして視線を下げて行けば、二つのなだらかな曲線と雪の様な白い肌、そして……「生えてないんだな」と思った所で我に返り慌てて視線を戻す。
そして絡まった視線の先で、意を決したラウラが口を開く。
「私に兄様がどうすれば苦しくなくなるか教えて欲しい」
ぐはっ!?
勢い余って、少しだけ浮かせていた後頭部を床にゴンとぶつけてしまう。
「だ、大丈夫か、兄様」
「う、うん、大丈夫大丈夫。ちょっとラウラが可愛すぎて」
「か、可愛い……私が……」
そんなラウラの反応も後頭部の痛みも気にならないくらい、僕の頭の中は参ってしまっていた。
「(こ、これは、凄い威力だ)」
姉さんしかキョウダイがいなかった僕に、妹と言うこの刺激は新鮮で、かつ強力過ぎた。
いや、普通は妹とこんなシチュエーションにはならないんだろうけど。
未だに僕のお腹の上に座り、顔を赤くしているラウラを見ると、後頭部の痛みで収まりかけていた下半身が再度頭をもたげる。
「(いや、落ち着け自分。ここで流されてどうする)」
そう自分を戒めた所で、
「んん……おりむぅどうしたの~」
「マズいっ!!」と思った瞬間、ラウラを持ち上げ、ベッドの中に投げ入れ、布団をかける。
そして恐る恐る背後を振り返ると、まだ布団の中で寝起きのポヤヤンとした雰囲気をしているのほほんさんと目が合った。
「お、おはよう、のほほんさん」
「うん、おはよ~おりむぅ。何か痛そうな音したけど、大丈夫~」
「う、うん、大丈夫大丈夫。特に何があったわけじゃ」
「いきなり何をするのだ。兄様」
「あっ」
「へ?」
僕のとっさの隠蔽も空しく、布団から出てきた裸のラウラに僕とのほほんさんは違った意味で固まる。
そして、
「お~~り~~む~~」
いち早く復活した笑顔ののほほんさんの背後には怒りのオーラが立ち昇っていた。
誰か助けて……。
その後、のほほんさんに着ぐるみパジャマを着せられたラウラと一緒に正座でお説教タイム。
「あれ? 僕悪くないよね?」と思ったら、頭をぺしぺしされた。
30分ほど説教されてから3人で遅い朝食を食べ、休日という事もあり、買い物に行くことにした。
向かうのはこの近辺で一番大きい、というか関東最大のショッピングモール、鈴とデートで行った『レゾナンス』。
休日という事で結構人もいたけど、ラウラの服やパジャマを買って回った。
最初ラウラは「必要ない」と言って拒否していたけど、のほほんさんに「ラウちんが可愛い格好してた方が織斑先生もおりむぅも喜ぶと思うよ」と言われ動揺。
こちらに視線を向けるので「うん、ラウラが可愛い格好してくれたら嬉しいよ」と頭を撫でながら後押しすると「に、兄様がそう言うなら仕方ないな」と頬を赤くしながら了承してくれた。
そして始まる着せ替えと言う名のショッピング。
ピタTにチェックのプリーツスカートとニーハイソックス。
半そで膝丈のワンピースにつば広帽子。
フリルをあしらったシャツにサスペンダーのついたショートパンツとストライプのストッキング。
そして極め付けは、ゴスロリ調の黒のワンピースとお揃いの帽子。
元々妖精のような容姿をしているラウラが、オシャレする事でまさかここまで可愛くなるのかと驚きの連続だった。
試着しながら恥ずかしそうにしているラウラに「凄く可愛いよ」と絶賛の嵐を浴びせていると、ショートしたのか途中から何か頭から煙が出てる様だったけど、まぁ大丈夫だろう。
ちなみにパジャマはのほほんさん御用達のお店で着ぐるみパジャマを数点買った。
あえて言わせてもらおう。
のほほんさん、グッジョブだ。
その夜、さっそく黒兎の着ぐるみパジャマを着たラウラと一緒に姉さんに直談判に行ったところ、見事に添い寝の許可がおりた。
その際、真っ赤な顔で何かを必死に我慢しているという大変レアでアレな姉さんが見れた事を追記しておく。
姉さん、普段はシンプルで落ち着いた感じの物が好みだけど、動物とかだと結構可愛いもの好きなんだよね。
うん、作戦勝ちだ。
ちなみに僕の部屋で寝る時は、僕とのほほんさんの間に簡易ベットをはめ込んで、そこで寝るという条件でお許しが出た。
残念になんて思ってませんよ?
何がとは言いませんが。
自分で書いといて何ですが、いや、もう、義妹ラウラ最高です。
「兄様だけど血が繋がってないから問題ないよね」
はい、ノープロブレムです。
いや、ラウラをヒロインから外したつもりだったんですが、ちょっと調子になってしまいました。
しかし反省も後悔もしていないw
まぁ、ラウラは家族としての愛情を求めているので、100%クラリッサに騙された形になります。