ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか   作:ウンニーニョ

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サポーターの少女

ベルとクロが次々にわいてくるモンスターを倒していく姿を見て後ろをついて行く少女は口を開けて見とれていた。

 

「…すごい」

 

少女の名前はリリ、リリルカ・アーデ。【ソーマ・ファミリア】に所属するサポーターで今日から二人のサポーターをしている。

と言っても今日はお試し期間だ。

ベルには快く受け入れてもらえたのだが、クロは取り付く暇もない位「いらない」と言われてしまった。

それでもこうして共にダンジョンに潜っているのはベルが説得してくれたからだ。

 

見とれている間に二人はモンスターを全滅させてしまう。

リリは惚けている場合ではないとモンスターの死骸を一ヶ所に集め手際よく魔石を取り出していく。

その時ベルとクロは話していてリリの視線がベルのナイフとクロの指輪に注がれている事に気づかなかった。

 

「お二人は本当に駆け出しの冒険者なのですか?」

 

魔石を取り出しながら質問する。今倒したのはキラーラントが12匹、パープル・モスが7匹、ニードルラビットが20匹の39匹。この数のモンスターを倒したのに二人は傷一つ付いていない。

ベルは腕で光るエメラルドのプロテクターで攻撃を完璧に防御していたし、クロに限っては全て躱していた。

聞けば二人は冒険者になって一ヶ月も立たない駆け出しの冒険者。

すでにこの階層を探索しているだけでも驚きなのにとリリはたずねる。

 

ベルが「そうだよ」と笑顔で答える。

リリが褒め称えると謙遜し、話の論点がずれていった。

クロはというと話には加わらずに先にモンスターがいないか見に行ったようだ。

 

リリは最後に、壁に埋まっているキラーラントの魔石も取ってしまおうとベルにナイフを渡し切り落としてもらう。

魔石を回収し終えるとクロが戻って来てモンスターもいないしそろそろ帰ろうと提案し、この日の冒険は終わった。

 

☆★☆★

 

リリは知り合いのノームの鑑定士の元へと向かっていた今日手に入れた(、、)を売りにだ。

 

そこに黒髪に黒いロングコート。槍を肩に担いだ冒険者、クロが立ちはだかった。

 

リリは目を見開き固まる。

 

「ベルのナイフを返してくれないか?」

 

「な、なんの事ですか?」

 

リリは顔が引きつりながらもとぼける。

クロはため息を吐きながら自身ののしている指輪を外すとリリに向かって投げる。

 

「じゃあコレと交換してくれ。そのナイフよりも価値がある事は保証する」

 

リリは力では冒険者に敵わないのはわかっているし、この指輪も狙っていた物だ。コクリと頷いて恐る恐るクロに近づくとナイフを渡す。

 

「明日もちゃんと来てくれよ。ベルが悲しむから」

 

そう言って去って行くクロを見て「へんなの」とこぼし鑑定士の元へと急いだ。

 

 

白い髭を蓄えたノームの鑑定士はリリの差し出した指輪を鑑定すると目を見開いてリリにたずねた。

 

「お前さん、コレを何処で手に入れた? こんな物、うちでは買い取れんよ。」

 

「ガラクタという事ですか?」

 

リリは騙されたと顔をしかめる。

 

やっぱり、冒険者なんて……

 

「とんでもない‼︎ コレを買い取れるだけの金はうちにはないよ。」

 

え?

 

「コレを買い取れるだけの店はそうそうないだろう。 下手な店で安く騙されないようにな。 …いや、それは大事に持っといた方がいいな。」

 

「そんなに価値のある物なのですか?」

 

「それは特別な指輪さ。今世界には無いはずのな」

 

リリは首を傾げると店を後にする。

鑑定士が「また頼むよ」と言っているがリリの耳には届かなかった。

 

売れない物は必要無い。やっぱりあのナイフを…

 

リリは夕闇に消えていった。

 

 

☆★☆★

 

 

翌日、リリはこそこそとバベルへ来ていた。

クロを警戒しての事だ。

 

「あっ! いたいた。リリ、探したよ」

 

リリはビクリと肩が強張る

 

「じゃあ行こうか」

 

そう言うベルにリリは拍子抜けしてしまう。

 

ダンジョンをベルが先行し後を歩くクロにリリが近づき喋り掛ける。

 

「機能の事、ベル様に言ってないんですか?」

 

「ナイフは戻って来たんだ。言ってあいつが落ち込むのは見たくないし、俺がいればもうお前もあんな事できないだろ? それに、人はやり直せる」

 

リリはクロをそれを聞いて目を見開く。

どれだけお人好しなのだろうと。

 

「あの指輪は高く売れただろう?」

 

「…売れませんでしたよ。買い取れるだけのお金が無いと言われました」

 

「そうなのか? それは悪い事をしたな」

 

「あなたが言うことじゃない」そうリリが言おうとした時「そろそろ行かないとな」クロはそう言って走って行った。

 

 

その日の稼ぎは六八○○○ヴァリス

 

「「やあーーーーーーーーっ‼︎」」

 

ベルとリリが歓喜して飛び上がる。

 

「すごい、すごいですっ! ドロップアイテムは数えるくらいしか出なかったのにっ、ベル様とクロ様お二人で六五○○○ヴァリス以上稼いでしまいました‼︎」

 

「わっ、わっ、わっ! 夢じゃないよね! 現実だよね⁉︎ 一日でこんなにお金が手に入るなんて……これもリリのおかげだね、クロ!」

 

「そうだな。リリが居たからこれだけの魔石を持って帰ってこれた。ありがとう。リリ」

 

「馬鹿言っちゃいけないです、ベル様、クロ様っ。モンスターの種類やドロップアイテムにもよりますけどLv.1の五人組パーティが一日かけて稼げるのがニ五○○○ヴァリスちょうどくらいなんです。つまり、お二人は一人で彼らを優に凌ぐ働きをした事になりますっ!」

 

「いやあ、ほら、兎もおだてりゃ木に登るって言うじゃない?」

 

ベルが変な事を言っている。リリもそれに便乗し、落ち着くまでしばらく掛かったが、クロはそれを笑顔で見守っていた。

 

落ち着いたところでベルがリリの前にどばっっ、とニ三○○○ヴァリスを渡す。

 

「……へ?」

 

っとリリが間抜けな声を漏らした。

ベルはというと残りのお金で神様に何をしてあげようかと考えているようだ。

 

「ベル様、これは…?」

 

リリがおずおずとベルに質問する。分け前だというベルにクロと二人で分けようかと考えないのか? とたずねるが、ベルはキョトンとした顔で「どうして? 」と返すだけでなく「リリがいてくれたから」と感謝まで言っている。

 

お金を受け取り「……へんなの」と言うリリの言葉はベルとベルをなだめるクロには届かなかった。

 

 

☆★☆★

 

 

リリが帰り道を歩いていると昨日と同じ様にクロが行く先を遮った。

 

「……今日は何も取ってませんよ」

 

「わかってるよ。…ほら」

 

クロが投げた袋をリリが受け取る。ガシャンと音がした袋の中身はお金だった。

 

「昨日は悪い事したからな」

 

「それは指輪の事ですか? それでクロ様がこんな事する必要は___」

 

「じゃあそれはリリが今日何もしなかったご褒美だ」

 

リリの言葉を遮りくしゃくしゃと頭を撫でるとクロは帰って行った。

それを見てリリはまた「へんなの」と呟いた。

 

 

☆★☆★

 

 

それから数日、毎日リリと共にダンジョンへ潜った。

 

その日、バベルへ行くとリリが冒険者に絡まれていて、止めようとすると別の冒険者に肩を掴まれた。その冒険者に「あのチビとつるんでんのか?」と聞かれ、パーティを組んでいる事を伝えると報酬を出すからリリをはめるのを手伝えと言って来た。

鼻で笑って突っぱねると冒険者は睨みをきかせて去って行った。

 

リリに声を掛けられ合流してダンジョンへ潜る。

リリも先ほど冒険者と話しているのを見ていたようでどうしたのかと聞かれたが言って気分を悪くさせる必要もないと誤魔化した。

 

 

次の日、リリに勧められ10階層まで降りていた。

 

そこでオークの群れに囲まれてしまった。

床にはモンスターを誘き寄せる特殊な加工をされた肉が置かれている。

そして、この場にリリはいない。

肉を置き、モンスターを誘き寄せると、リリはベルのナイフを奪い去って行った。

その時残した言葉は「ごめんなさい。もうここまでです。」「ベル様はもう少し人を疑う事を覚えた方がいいと思います」「クロ様は甘過ぎますよ…ほんとに」「さようなら。もう会う事はないでしょう」だった。

 

クロとベルはリリを追うためにオークを蹴散らす。霧で視界が悪い中声でコミュニケーションをとりつつ敵を倒す。

他のパーティが来たのかオークの数が減り始める

隙を見て二人はリリを追いかけた。

 

☆★☆★

 

リリはダンジョンの床に倒れていた。ダンジョンで会ったファミリアの仲間に金庫の鍵を奪われモンスターから逃げる為の餌にされて。

 

そして、神と冒険者に恨みを抱いて、孤独に、死を向かうようとして浮かんだのは今裏切ってきた二人の冒険者だった。

 

迫り来るキラーアントに見た事のある槍が突き刺さった

 

「……え?」

 

その槍は最近毎日見ていた槍だった。

 

☆★☆★

 

リリの前に現れたのは先ほど裏切ったばかりの冒険者だった。

 

「……ベル様にクロ様?」

 

「そうだよ。無事、だよね?」

 

ベルは涙ぐみながらリリを心配し、迫り来るキラーアントに魔法を放っていく。

 

クロはキラーアントから槍を抜くとリリの前にかがみこむ

 

「もう少し待ってろ。話はそれからだ」

 

そう言ってくしゃくしゃと頭を撫でると群がるモンスターを倒す為に立ち上がった。

 

 

モンスターを全て倒すと二人はリリに駆け寄る

リリは顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら二人に言葉を投げつける

騙された事に気付いてないのかと、なぜ盗人を助けたのかと、どうして助けたのかと

 

「お前がリリだからだ」

 

クロのその言葉にリリ頬を染めながら目を見開く。

 

「そうだよ。僕達はリリだから助けたかったんだ。 リリだから、いなくなってほしくなかったんだ」

 

「リリ、俺は出来てしまった繋がりは失くしたくない。 俺の…ワガママだ」

 

その言葉で止まりかけていた涙がまた溢れ出す

二人は言う。困っているなら言えと、言わなきゃ分からないから。ちゃんと助けるからと。

 

リリは二人に抱きつき、思い切り泣く。

ベルとクロは顔を合わせるとニコリと笑う

 

「ごめっ、ごめんっ……ごめん、なさい……!」

 

しゃくりを上げるリリの頭をクロは泣き止むまで撫で続けた。

 

 

 

「とは言っても俺達は騙された訳だしリリには罰が必要だな」

 

「ちょっとクロ⁉︎」

 

リリが泣き止むとクロはリリに話し始める。ベルの言葉も無視して続ける

 

「リリ、お前凄い価値のある指輪持ってるだろ? それを俺によこせ」

 

リリは目を見開いた。

それはもともとクロの持ち物で、罰になどなりはしない。

しかしクロは手を出すと、ほら。と手を動かす。

リリが、指輪をクロに渡すとベルもそれがもともとクロがしていた物だとわかったようで、そうかと頷く。

これは、クロなりにリリに許しを与えたのだと

 

そして三人は顔を綻ばせた。

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

パゥルムの少女は自分の背丈よりも大きなカバンを背負いダンジョンの入り口にやってくる。

その時、後ろから声が掛かった。

 

「サポーターさん、サポーターさん。冒険者を探していませんか?」

 

振り向くと見知った二人の冒険者、ベルとクロ。

 

「混乱していますか? でも、今の状況は簡単ですよ? サポーターさんの手を借りたい半人前の冒険者が、自分達を売り込みに来ているんです」

 

二人が交互に話すのは少女が初めて二人の冒険者にかけた言葉。

 

二人はまた少女と、リリとパーティを組もうと言っているのだ。

改めて、一から信頼を積み上げようと。

 

「_____はいっ、リリを連れて行ってください」

 

二人の手を取るリリの顔はこれまで見たどの顔よりも輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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