ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか   作:ウンニーニョ

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VS階層主

駆け出したスピードを殺さ無いように体を捻って回転しゴライアスの腕を避ける。

目の前を通り過ぎる腕に冷や汗を流しながら矛先でゴライアスの顔を穿つ。

 

グラリとゴライアスの体が後ろへ揺れるが倒れる訳はなく、その頬にかすり傷をつけた程度だ。

クロは着地すると振り返り、ゴライアスを見据えると舌打ちをし、またゴライアスへ向かって駆け出した。

 

同じ様に体を捻ってゴライアスの攻撃を躱すとそのまま次は胸を攻撃しようとゴライアスに肉薄する。

しかしゴライアスも馬鹿では無い。同じ攻撃を何度も食らってくれるわけもなく、ガードしようと空いている腕を引き寄せる。

ただクロのスピードの方が速い為にその腕はそのままクロを横薙ぎにえぐる攻撃へと変わる。

 

クロはスピードを殺すため地面に槍を突き立て、横に伸びるゴライアスの腕を蹴り、無理やり方向転換し、なんとかその一撃を交わすことに成功する。

 

しかし距離を詰めたままスピードを殺してしまった為にヒットアンドアウェイには戻れずにそのまま戦うしかない。

 

逃げれば……殺られる

 

クロは集中し、先ずは体を屈めゴライアスの攻撃を紙一重で躱し胸へ一太刀お見舞いする。

 

ゴライアスの攻撃がカスったのかクロの頬からツゥっと血が流れる。

確実に攻撃を食らったゴライアスと傷跡が同じ位なのだから嫌になる。

 

(もう少し大きく避けないとな)

 

クロは血を拭う暇も無くくるゴライアスの攻撃を今度は先程よりも半歩大きく避けて攻撃する。

今回もまたゴライアスの胸、先程の場所と寸分違わず同じ場所へ攻撃する。

今回もまたかすり傷程度、しかし諦めず又次に迫り来る攻撃を対処していく。

 

 

 

どの位ゴライアスの攻撃を避けて、そして攻撃を食らわせただろうか?

ゴライアスも避けられる事を学習し、コンビネーションを増やす。

そしてクロは先読みしてそれを全て躱し、攻撃する。

ありがたいのはこの体格差の所為か避けてさえいれば必ずゴライアスの懐へ潜り込む隙ができる事だろうか?

今回もまた隙ができたところで攻撃を繰り出す。

 

ガキリ

 

それは狙った効果。しかし大きな誤算。

 

同じ所へ繰り返された攻撃はその強固な外皮を貫き、ゴライアスへ深く突き刺さる。

そして深く刺さった槍はクロの動きを制限し、ゴライアスの一撃をクロへ届かせる原因となってしまう。

 

クロの体は軽々と吹っ飛び、壁に激突すると地面へと落ちる。

 

(前にもここまで飛ばされた事があったな……)

 

(ヴェルフに…感謝しないとな……)

 

クロはヨロヨロと立ち上がると右手に持つ己の武器を見る。

 

(コレも意地を張らずにヴェルフに作って貰うんだったかな……)

 

そこには槍の柄の部分だけがあり矛先はゴライアスに刺さったままだ。

セール品の槍ではなくヴェルフの槍だったならこうはなっていなかったかもしれない。

しっかりと自分を守ってくれたこの光を返さない黒いプロテクターの様に。

 

しかし、丸腰で戦うにはゴライアスは強すぎる。

勝機を掴む為にプロテクターを外し、クロは全速力でゴライアスへ向かって駆け出す。

コレはこの戦い最大の賭け。

ゴライアスの攻撃はプロテクターを外し、微妙に速度の上がったクロの動きを捉えきれず、その伸びきった手をジャンプ台にしてクロは高く飛び上がる

 

そして一回転体制を整えると右足を突き出し、自分に出せる最大限のスピードでゴライアスの胸に刺さる槍の穂先を蹴り抜いた。

 

するとゴライアスの目からは光が失われ、後ろへ向かって倒れていく。

 

賭けは、クロの勝ち。

 

大きな誤算は合ったもののクロの狙い通り、ゴライアスの魔石は胸にあったのだ。

突き刺さった矛先の向こうに。

矛先を無理矢理押し込んで無事に魔石を破壊する事ができた。

 

これで魔石が頭など別の場所にあったなら倒れていたのはクロの方だっただろう。

 

しかし、まだ危機的状況である事にかわりはない。

先ほどの攻撃で力を使い果たし、ゴライアスの死骸を背もたれに立つ事もままならない。

今モンスターに襲われたならひとたまりもないだろう。

 

その時、出口から見知った少女が息を切らしてやって来た。

 

ちょうど良いとクロは手を振り助けを求め、ついでに大切な、マットブラックのプロテクターを拾ってくれるよう頼んだ。

 

 

☆★☆★

 

 

17階層へと登ってきたハクアはそこで信じられないものを見た。

階層主を背もたれに自分に助けを求める少年。

状況から見るにこの人は階層主を単独撃破してしまったのだろう。

 

驚いているうちに後ろから追いついてきたレフィーヤや、ベートにティオネティオナ姉妹も驚いて声が出ないようだ。

 

これはそれほどありえない事なのだ。

 

Lv.3に上がった自分でさえゴライアスと一対一で戦えと言われれば遠慮願いたい……いや断固断る。

それをベートさんが駆け出しと笑ってから一カ月、ミノタウロスに敗れてから一週間の冒険者が倒せる訳がない。

 

ベートさんが「お前、何をしやがった‼︎」と声を荒げてクロに詰め寄って行く。

ティオネティオナ姉妹も興味深々といった様子で後に続く。

そしてその後にレフィーヤに手を引かれ私も続いた。

 

 

クロに頼まれて光を返さない黒いプロテクターを拾ってクロへ届ける。

どうやら、ゴライアスをクロが倒したのは間違いないようだ。

ゴライアスの胸に刺さった槍の矛先もそう語っている。

 

今、先頭を歩いているのはクロ。

そして意外な事に、肩を貸しているのはベートさんだ。

単独で階層主へ挑んだ事についてはバカだのアホなのとクロに注意しているが…(そう聞き取るのは難しい)

 

ベートさんは口が悪いが認めた相手にはそれなりの対応をしてくれるし、身の程をわきまえずに死に急ぐ奴には凄く厳しい。

今回の行動は、そういうことなのだろう。

 

そう考えると、なぜかハクアは誇らしく、自然と笑みが零れる。

 

そして18階層、モンスターの出現しない、自然豊かな階層を見て目を見開くクロを、仲間がまつテントへと案内した。

 

 

 

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